役員教育の重要性!取締役や執行役員の教育がなぜ重要か?研修のポイントは?

役員教育の重要性!取締役や執行役員の教育がなぜ重要か?研修のポイントは?

役員教育はどの企業にとっても重要な課題です。しかし、現実には中堅中小企業においては、「十分な教育機会を作れていない」という声も多く耳にします。本記事では、役員教育の意義や重要性を踏まえて、役員教育に手をつけられず先延ばしになっている、あるいは役員教育の方法がわからないという企業に向けて、役員教育を実施するポイントや注意点を解説します。

 

<目次>

役員教育の重要性!取締役や執行役員の成長が企業の成長を左右する

取締役や執行役員といえば、大手企業はもちろん、中堅中小企業においても、社内で十分な実績をあげた末に、役員として就任しているメンバーが大半です。また、外部から招へいした場合にはCXOとして外部で経験を積んだ方であることが多いでしょう。そんな役員に教育が必要な理由はなんでしょうか。

 

 

役員の能力は経営の成果に直接影響を与える

当たり前の話ですが、役員は経営陣の1人として事業運営や経営に対して、大きな影響を与える立場です。営業・マーケティング・技術・管理などの領域における責任者、また〇〇事業といった事業の統括者として、多くの部下を持ち、組織に影響力を発揮し、意思決定を行います。従って、役員の意思決定やマネジメントは経営の成果を直接的に左右します。だからこそ、役員の能力レベルが組織の業績を左右することは自明です。

 

 

経営者の負担増加

役員が能力不足の場合、しわ寄せは経営者に向かい、最終的な意思決定やマネジメントを経営者がすべて行うトップダウン型の組織になりがちです。例えば「採用において経営者が最終面接をしないと内定を出すことはできない」「数値管理や計画に不安が残り続けるので役員を飛ばして経営者が部課長に指示を出す」「顧客クレームが部門で収めきれず経営者がトラブル対応しなければならない」といった状況です。

 

経営者の業務を分担して、経営者が「中長期の経営戦略」を考えられるようにするためには、役員メンバーの能力向上は必須です。

 

 

中長期的な企業のビジョンや戦略があいまいになる

役員の能力不足により、経営者の負担が増加していくことは、経営者が中長期のビジョンや戦略立案に十分な時間を割けなくなることを意味します。当然、戦略の精度は下がり、業界の変化を見通した一手なども打てなくなるでしょう。

 

取締役・執行役員などの役員教育は、座学や研修だけではなく、時には経営者自身も参加して、共に企業の経営方針やビジョンを描いたり、経営チームとしての一体感を作り上げたりするプロセスでもあります。経営チームがビジョンや未来を描く言葉を共有していないことは、社員から見ればすぐに分かります。

 

経営陣がチームになっていない、未来を描けていない状況は、経営の実行力、スピード感の欠如につながりますし、社員が企業の将来に不安を抱いて退職することにも繋がります。

 

役員教育は中期的な企業成長を左右する重要なテーマです。また、役員候補層までの育成を視野に入れるなら、10年後20年後の成長、事業承継にも関わってきます。役員の成長は、組織の未来と深く関わるものであり、非常に重要です。

 

役員教育が意外と実施されない理由とは?

役員の能力不足は、組織全体に深刻な問題を引き起こしますが、一方で役員教育を実施している企業はさほど多くありません。役員教育の実施が難しい、やり方がわからない、といった課題が多くの企業に共通するのは、以下のような事情が考えられます。

 

 

役員本人が研修の必要性を感じていない

1つ目の理由として「役員本人が“自分自身に教育が必要だ”という自覚を持っていない」という課題があります。役員はビジネス社会の中でさまざまな経験、苦難を乗り越える経験をして、成果を出したからこそ、役員のポジションにいます。社内を見ても、ビジネスやマネジメントの能力は飛び抜けているはずです。

 

だからこそ、役員のポジションが「あがり」になってしまい、「いまさら教育を受けることは必要ない」と思っている場合があります。

 

役員自身が成長の必要性を感じていない場合、無理に研修等を行ったところで、経営者が期待する効果は得られず、コストやリソースを無駄にしてしまう可能性もあります。「本人に必要性を自覚させる」という部分で、役員教育に、他の社員教育とは異なるハードルがある点は認識しておく必要があります。

 

 

役員教育を行う余裕がない

成長企業になればなるほど役員は多忙です。各業務の責任者ですので、当たり前のことです。各分野において事業計画の遂行に責任をもつ以上、現状の把握、施策の立案、顧客やパートナー対応、組織のマネジメント、意思決定、とやるべきことは無数にあります。その場合、前述した「本人が必要性を自覚していない」状態と相まって、役員教育への反発は強くなります。

 

 

何を教えればいいか分からない

「そもそも役員に教育する」といっても、「何を教えれば良いかが分からない」ということもあるでしょう。“役員にとって効果のある研修プログラム”を社内で作り上げることは困難です。

 

また役員教育において伸ばすべき能力とは「経営者としての力量」であり、「座学や研修で伸ばせるものじゃない」という思いもあるでしょう。だからこそ、新人や若手、管理職などと比べて、役員教育は設計すること自体が圧倒的に難しいと言えます。

 

具体的な役員教育の内容とは

役員教育では、どのような内容を取り扱っていくのが良いのでしょうか。代表的な内容としては、以下の要素があげられます。

 

 

1.経営に関する基礎知識のインプット

経営に関する基礎知識が不足している場合には、知識のインプットは必須です。長年の選抜や異動を潜り抜けてきた大手企業の役員であれば話は別ですが、中堅中小企業の場合には、役員や役員候補は各職種におけるトップであったり、現場で叩き上げてきた各部門の責任者という位置づけであったりすることも多いものです。

 

その場合、専門領域の知見やマネジメントスキルはあっても、経営者としての知識がないことが課題になります。

 

経営においては「理解する/考えるための知識」がないと、そもそも思考できない、アイディアが出てこないことが多々あります。「理解する/考えるための知識」が不足している場合、知識のインプットは必須です。一例としては、以下のような知識が挙げられます。

  • 経営戦略(SWOT分析、アンゾフの成長マトリクス、事業ライフサイクル、ドラッカーの5Qなど)
  • マーケティング(4Pや4C、3C分析、ペルソナ設定、最近のマーケティング手法など)
  • アカウンティング(自社の経営状況や事業をP/L、B/S、キャッシュフローから理解できる知識)

 

 

2.実践するための学び

役員教育におけるゴールは「学んだことを基にして、自社の経営を成功させる」ことです。知識や机上の空論に意味はありません。また、「経営者としての経験や力量は経営することでしか身に付かない」というのも事実です。従って「実践」が存在しない役員教育には意味がありません。研修の設計・選定においても重視すべきことは、ここに尽きるといっても過言ではありません。

 

管理職の成長は、「7:2:1の法則」に従うと言われます。すなわち現場での経験が7割、周囲からの助言やアドバイスが2割、教育が1割という割合で成長をもたらすということです。

 

管理職が「7:2:1」なら、経営者や役員の成長は「9:0.7:0.3」かも知れません。経営者や役員は経営での成功と失敗を通じて成長するのです。だからこそ、大手企業ではグループ内の出向を通じて「経営」を経験させますし、サイバーエージェントは若手を子会社の社長として抜擢します。すべての役員研修は、「経営での実践」を意図して設計されている必要があります。

 

 

3.内省と器の拡張

経営者、役員になると、社内でフィードバックをもらえる機会は極度に減ってきます。そのため、他人からのフィードバックを待つのではなく、徹底して自分自身と向き合うことが必要です。かつて「電力王」と呼ばれた実業家、松永安左エ門は、大経営者になるためには、3つの「T」が必要であると述べています。

 

3つのTとは「投獄」「倒産」「大病」です。3つのTを役員教育で実践するわけにはいきませんが、それぐらい「苦難と向き合い、自分と向き合う時間」が経営者としての器を確立していくということです。そこに少しでも近づくための内省や器の拡張を行う役員教育は必須です。

 

 

4.経営チームとしての思考

チームコーチングのような手法を取り入れながら、経営陣での合同研修を取り入れることも有用です。一般の経営合宿では、経営者や役員は主催・運営側になることが多いでしょう。経営者も含めた経営陣で自社の経営を考え、1つの経営チームを作っていくことは効果的な役員教育の1つです。

 

なお、経営チームを作るうえでは、経営陣が共通言語、共通のフレームワークを持っていることが重要です。経営の共通言語、共通のフレームワークを持つには、中堅中小企業であれば、経営者が参加して役に立った研修に役員を一貫して派遣することも有効です。違う研修にバラバラと人を派遣していくと、個々の成長には役立っても、経営チームとしての強化には非効率的な場合もあります。

 

まとめ

「役員の能力が企業の経営を左右する」ことは多くの企業が理解していますが、一方で、「役員教育に取り組んでいる」企業は意外と数少ないものです。事業運営は多忙を極めますし、役員に学ぶ姿勢をつくることは難しい場合もあります。しかし、重要性に鑑みれば、役員教育は先延ばしに出来るものではありません。

 

役員が成長することで、事業が成長して、若手が次のリーダーへと成長していく環境が出来ます。人材育成の好循環を作っていくためにも役員の成長は不可欠です。非常に難しいテーマではありますが、知識のインプット、実践するための学び、内省と器の拡張、経営チームとしての思考という4つの側面から、ぜひ役員教育に取り組んでください。

著者情報

知見寺 直樹

株式会社ジェイック 執行役員|上海杰意可邁伊茲企業管理咨詢有限公司 副董事長

知見寺 直樹

東北大学を卒業後、大手コンサルティング会社へ入社。その後、株式会社エフアンドエム副本部長、チャレンジャー・グレイ・クリスマス常務取締役等を経て、2009年ジェイック常務取締役に就任。総経理として上海法人(上海杰意可邁伊茲企業管理咨詢有限公司 )の立ち上げ等を経て、現在はHumanResourceおよび事業開発を担当する。

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