シナジー効果とは?シナジー効果の種類と実践するための方法・成功させる3つのポイント

シナジー効果とは?シナジー効果の種類と実践するための方法・成功させる3つのポイント

近年、企業経営において「シナジー効果」が注目されています。シナジー効果とは2つ以上の要素を組み合わせることによる相乗効果のことで、とくに、事業間・企業間の相乗効果を指して、よく使われます。

 

業種や規模を問わず、M&Aや業務提携が一般的になってきた中で、改めてシナジー効果が注目されています。記事では、シナジー効果の意味や種類、シナジー効果を得るための方法、失敗しないためのポイントを紹介します。

<目次>

シナジー効果とは?言葉の意味や重要性が増す背景

シナジー効果とは事業間、企業間の相乗効果を指し、変化や競争が激しい中で企業が生き残るために、M&Aや事業連携によるシナジー効果が注目されています。

 

 

シナジー効果とは?

シナジー効果とは、企業同士の事業提携や協業、企業内の異なる部門等が互いに協力し合うことで得られる「相乗効果」を意味します。つまり、販売網や物流網、技術、バックヤード業務、提供サービス等を組み合わせたり、相互に活用し合ったりすることで、効率化や提供価値の向上を目指すということです。

 

 

シナジー効果が求められる背景

経営シーンでシナジー効果が求められる背景には、企業価値の向上に対する市場からのプレッシャー、また、技術の進化や価値観の多様化、競合の激化等の変化があります。シナジー効果により、経営効率をあげたり、新たな価値を創出したりしていかないと成長・存続できなくなっているのです。

 

また、消費者や市場ニーズの多様化等が進む中で、事業やサービスの専門化も進んでいます。GAFAのような強大なプラットフォームを築くことに成功すれば話は別ですが、現実的には1社で顧客を囲い込んだり、多様なニーズに応えることが難しくなってきたりしている側面もあります。

 

上記のような背景から、事業提携等も一般的になっています。また、M&A自体も一般化しつつあり、とくに大手企業のみならず、後継者不足等を背景にした中小企業のM&Aや事業譲渡の件数は伸びています。このような中で、改めて、経営レベルにおけるM&A等を通じた事業間のシナジー効果が注目されています。

シナジー効果 3つの種類

握手が交わされている様子

シナジー効果は主に「事業シナジー」「財務シナジー」「組織シナジー」の3種類があり、それぞれ得られる効果が異なります。

 

 

事業シナジー

事業の推進に対して働くシナジー効果で、複数の事業者が統合・連携することで実現します。最もイメージしやすいM&Aや業務提携の目的です。統合・連携することで、新たな価値を生み出したり、資源の生産性を高めたりすることができます。

 

<得られる効果の例>

  • コスト削減:各事業において重複している部門を統合したり、投資を削減できたりする
  • スケールメリット:生産量を増やすことで仕入れや生産の効率性を高め、利益を増やすことができる
  • 優秀な人材の獲得:複数の事業者が合同で人材を募集することで競争力を強化できる

 

 

財務シナジー

企業のお金や税金に対して働くシナジー効果で、主にM&Aにおいて効果が得られます。

 

<得られる効果の例>

  • 余剰資金の有効活用:合併や買収により、余剰資金を有効活用することができる
  • 節税:M&Aで繰越欠損金等の債務を受け継ぐことで、節税効果が期待できる

 

 

組織シナジー

別々の組織が連携・協力して、1つの組織として活動することで得られる効果のことです。

 

<得られる効果の例>

  • 業務効率化:連携・協力することで販促や販売活動の効果性が高まり、効率的に利益を生み出せる
  • モチベーションアップ:連携・協力したり、逆に競争したりすることで、メンバーの意欲を向上させることができる
  • 生産性向上:個人が互いに連携・協力して、役割分担したり、新たなアイディアを生み出すことで、個人の力を合計した以上の実力を発揮することができる

 

経営において、シナジー効果を実現する4つの方法

シナジー効果を実現するためには、他社もしくは企業内の他部門と協働・合同することになります。具体的な方法となるのが「M&A」「グループ一体経営」「多角的化略」「事業提携」の4つです。

 

 

M&A

M&A(Mergers and Acquisitions)は、企業の買収および合併を意味します。M&Aで期待できるメリットは「シェアの向上」「スケールメリット」「繰越欠損金の特例」等のシナジー効果となります。

 

 

グループ一体経営

グループ一体経営は、グループ企業が複数存在する場合に、グループ一体で経営を行なうという方法です。これにより顧客へのアプローチの強化や、共通業務の集約によるコスト削減等、経営のスリム化が可能となります。

 

 

多角化戦略

多角的戦略とは、自社の主力事業とは別の分野へ進出し、シェアの獲得および拡大を目指すという経営戦略です。多角化戦略には「水平型」「集中型」「垂直型」「集成型」の4種類があり、この中から自社に合った戦略を構築することが必要です。

 

・水平型多角化戦略:自社の技術やノウハウをもとに、既存顧客を対象に新製品を投入する戦略です。

 

・集中型多角化戦略:技術か顧客のどちらか、もしくは両面に関連性を有する多角化戦略のことです。

 

・垂直型多角化戦略:バリューチェーンの領域を広げる戦略で、川上から川下へ広げることを「前方的多角化」、川下から川上へ広げることを「後方的多角化」といいます。

 

・集成型多角化戦略:既存事業と関連のない新規分野に進出する多角化戦略です。

 

 

事業提携

事業提携は、異なる商品やサービス、技術を持つ企業同士が提携するという方法です。事業提携ではそれぞれの事業のノウハウやリソースを共有することで、新規市場への進出や生産性の向上、新たな価値の提供等のシナジー効果を狙います。

シナジー効果を発揮するために必要な3つのポイント

しっかりハマっている3片のパズルのピース

シナジー効果は、M&Aや事業提携をしたからといって必ず得られるものではなく、失敗してしまうケースも少なくありません。シナジー効果を得るためには、3つのポイントをしっかりとおさえることが大切です。

 

 

リスクを分析する

シナジー効果を得るための手法には、さまざまなリスクが存在します。例えば、M&Aや業務提携ではお互いの財務情報をしっかり把握しておかないと、想定外の思わぬ損失を被る可能性もあります。また、社員のモチベーションや人材流出、企業文化の不適合等、あらゆるリスクを事前に想定・対策しておくことが重要です。

 

 

明確な事業計画を立てておく

シナジー効果を得るためには、M&Aや多角化戦略を含んだ綿密な事業計画やどこでシナジー効果を得るのかという明確な方針を描いておく必要があります。また、合併・統合後は作成した事業計画を適切に実行していくことが求められるでしょう。

 

 

PMIを重視する

PMIは「Post Merger Integration(買収後の統合プロセス)」の略称で、買収や合併等の後に複数の組織を融合させて、新たな組織を構築するプロセスを指します。PMIは、「経営の視点」「業務の視点」「意識の視点」という3つに分けられ、いずれもシナジー効果を得るためには欠かせません。

 

  1. 経営の視点:経営理念やビジョン、経営戦略、人事制度等に焦点を当てた統合施策
  2. 業務の視点:人員配置やコスト削減、情報システムの統合等に焦点を当てた統合施策
  3. 意識の視点:合併後の方向性や社員の相互理解を深めるための統合施策

 

統合の失敗や遅れは、機会損失を生み、社員のモチベーション低下や人材流出につながります。

シナジー効果の実現に成功した4つの事例

シナジー効果の実現に成功した事例を4つの手法に分けてご紹介します。

 

 

M&A:JT

喫煙者の減少により、日本国内での売上が低下していたJT(日本たばこ産業株式会社)ですが、2000年前後からアメリカ、イギリス、ロシア、バングラデシュ等で積極的なM&Aを展開して、海外のたばこ事業を拡張しました。

 

結果的に、国内のたばこ市場が縮小する中でも海外事業を順調に成長させて、売上高は2兆円を突破、たばこ事業における売上の2/3は海外で獲得するという状況になっています。海外でのたばこ事業はJTにとって初の試みでしたが、M&Aにより海外市場での展開ノウハウや顧客を手に入れて、成功を収めています。

 

 

グループ一体経営:東京海上ホールディングス

東京海上ホールディングスは、2008年に欧州ロイズ市場とのパイプができたことをきっかけに、北米のフィラデルフィア、デルファイ、HCC等を買収。現在では海外のポートフォリオが5割ほどとなり、2017年からはグループ一体化経営も強化されています。金融業界のグローバル化が進む中で、コーポレート機能の高度化やグローバルなリスクマネジメントを実現しています。

 

 

多角化戦略:セブンイレブン

コンビニエンスストア最大手として、小売業の中でも圧倒的な存在感を占めるセブンイレブンですが、かつてはスーパーマーケットとの価格競争で伸び悩んでいた時期がありました。しかし、自社の販売力を背景にプライベートブランドを立ち上げることで、単なる“小売業”から一種の“メーカー”としての顔も持つ存在への多角化に成功。

 

その後も、銀行業への参入、運送会社・クリーニング会社との提携、コピー機のネットワーク化を通じたチケット販売等、サービスの多角化を進め、高い集客力を誇っています。

 

 

事業提携:ENEOSとファミリーマート

ガソリンスタンドのENEOSと大手コンビニエンスストアのファミリーマートは、M&Aではなく、業務提携を組むことでシナジー効果を得ています。今では、コンビニ併設型のガソリンスタンドも増えてきましたが、先駆けて手掛けたのが総合商社の伊藤忠商事を通じて関係性があったENEOSとファミリーマートです。

 

ドライバーにとって「エンジンを切って車外に出る」という行為はちょっとした面倒くささも伴います。しかし、ドライバーが必ず立ち寄り、車を止めてエンジンを切るガソリンスタンドとちょっとした買い物を行なえるコンビニエンスストアが連携することで、ドライバーにとってはワンストップで用事を済ませることができるようになります。お互いの集客力をプラスにするというシナジー効果が発揮された異業種間の業務提携です。

まとめ

シナジー効果は、企業同士のM&Aや事業提携や協業等により得られる「相乗効果」を指します。これまでM&Aといえば、外資や大手企業が中心でしたが、国内の中堅中小企業でもプラットフォームの整備や後継者不足等を背景にM&Aや事業譲渡等が増える中で、改めて、企業価値の向上や競争力の強化を狙った企業間・事業間のシナジー効果が注目されています。

 

シナジー効果の実現方法は、M&A、グループ一体経営、多角化戦略、事業提携の4種類に大別されますが、これらを実行したからといって必ずシナジー効果が得られるわけではありません。むしろ、失敗している事例のほうが多いでしょう。シナジー効果を得るためには、入念なリスク想定やシナジー効果を得るための明確な方針と実行、そして、組織を融合させていくPMIの迅速な実行等が必要となります。

著者情報

近藤 浩充

株式会社ジェイック|取締役 兼 常務執行役員

近藤 浩充

大学卒業後、情報システム系の会社を経て入社。
IT戦略事業、全社経営戦略、教育事業、採用・就職支援事業の責任者を経て現職。企業の採用・育成課題を知る立場から、当社の企業向け教育研修を監修するほか、一般企業、金融機関、経営者クラブなどで、若手から管理職層までの社員育成の手法やキャリア形成等についての講演を行っている。
昨今では管理職のリーダーシップやコミュニケーションスキルをテーマに、雑誌『プレジデント』(2023年)、J-CASTニュース(2024年)、ほか人事メディアからの取材も多数実績あり。

著書、登壇セミナー

・社長の右腕 ~上場企業 現役ナンバー2の告白~
・今だからできる!若手採用と組織活性化のヒント
・withコロナ時代における新しい採用力・定着率向上の秘訣
・オンライン研修の「今と未来」、社員育成への上手な取り入れ方
・社長が知っておくべき、業績達成する目標管理と人事評価
・社長の右腕 ~ナンバー2の上司マネジメント / 部下マネジメント~
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