クレーム対応と聞くと、苦手と感じる人も多いものです。とりわけメールでの対応は、相手の状況がつかみにくく、こちらの感情も伝わりにくい。
しかも、文章として形に残ってしまうため、対応を間違ってしまうと面倒なことにもなりかねません。
一方で、クレームは商品やサービスの質を向上させるヒントを与えてくれます。適切に対応することができれば、クレーマーの方もリピーターやファンになってくれるものです。
ピンチの裏には、チャンスが隠れています。ピンチをチャンスに変えるには、どのようにクレーム対応のポイントを押さえればいいのでしょうか?
記事では、クレーム対応メールのポイントや例文を紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
<目次>
クレーム対応メールを書く前の準備や気をつけるべきポイントとは?
クレームへの対応は、いかに早く対応するかが重要になってきます。
問題が発生してから対応するまでに時間がかかってしまうと、相手が受ける印象は悪くなってしまいます。
しかし、“クレームが来たらとりあえず謝っておく”という姿勢は、二次クレームにつながったり、悪質なクレーマーに付け入られる隙を作ったりすることにもなります。
相手に悪い印象を与えず、かつ悪質なクレーマーやカスハラにも毅然として対応するために、クレーム対応で返信メールなどを書き始める前に押さえておくべき大切なポイントを消化介します。
書き出す前にまず事実確認
トラブルに対処するためには、適切な初期対応が重要です。
最初の打ち手を間違ってしまうと、クレームをエスカレートさせてしまい、トラブルを拡大させることにも成りかねません。
最近、詐欺まがいである可能性や、日常のストレスのはけ口として理不尽なことを言ってきているだけということも考えられます。
とくにメールでの対応となると、相手の顔や状況が見えないため、しっかりと状況をつかんでおく必要があります。
従って、まずは返信メール等を書き始める前に、きちんと事実を確認することが何より大切です。その上で、どのような提案ができるのかを冷静に判断しましょう。
事実確認をしっかり行っておくことは、お詫びのメールの中で解決策について提案する際にも重要になってきます。
最適な解決策、また改善策を提示するために、どこでクレームが起きたか、何が原因だったか、事実を正確に把握しましょう。
クレーム対応メールで気をつけるポイント
まずクレームをいただいた際には、可能な限り速やかに対処する必要があります。
なるべくその日のうち、遅くともクレームを受けてから24時間以内に返信しましょう。
対応が遅れてしまうと、相手に与える印象が悪くなってしまい、後のやり取りに支障をきたしたり二次クレームにつながったりする可能性が出てきます。
前節で「まず事実確認」と書きましたが、事実を確認するのに時間がかかる場合には「クレームをいただいたことを認識し、事実の確認中である」ことは迅速に変身しましょう。
なお、メールでのクレーム対応は文字だけのやり取りになりますので、雰囲気や感情が伝わりにくい点があります。
誠意を持って丁寧に対応したつもりでも、言葉の使い方によっては相手に冷たい印象や誤解を与えてしまったりします。言葉選びは慎重に行いましょう。
また、メールでのクレーム対応は、誤字・脱字にも注意が必要です。
何らかの問題を感じてクレームをしてきた相手に、お詫びのメールで誤字・脱字があるとさらに信用を落としてしまいます。
送信前に、必ず読み直して確認することが大切です。
悪質なクレーム、カスハラへの対応
近年、悪質なクレームやカスハラ(カスタマーハラスメント)は社会問題にもなっています。
背景には、デフレと高齢化、ネットの普及があるとも言われます。
日本では、デフレの中で“お客さまは神さま”という意識に加えて、サービス競争も激化したなかで過剰なサービスの提供が行われるようになっています。
その結果、顧客側でもサービスに対する期待値が上がってしまい、期待に見合わないとすぐにクレームにつながってしまうという状況が生まれてしまったのです。
従って、クレームの予防措置として、あらかじめ期待値をコントロールしておくことも大切です。
また、高齢者への対応にも注意が必要です。怒りや不安、不満といったネガティブな感情を抑え込むことは、かなりエネルギーの要ることです。
老化によって脳の機能が衰えてくると、ネガティブな感情を制御する力が衰え、ちょっとしたことで負の感情が暴走しやすくなると言われます。
高齢者の対応にあたっては、このような背景があるということも理解しておく必要があるでしょう。
さらに近年では、SNSの登場によって個人でも影響力を行使できるようになりました。
それに伴って、商品やサービスに不満があると、すぐに「ネットに晒す」と脅してくるクレーマーも出てくるようになりました。
明らかに悪意があると感じる相手には毅然とした態度も取れますが、そうでない相手に対しては対応が難しいものです。
ひとつ大事なポイントは、組織としてのルールに基づいて対処するということです。
誰かを特別扱いしてしまうと、要求がエスカレートしてしまうということもあり得ますし、その特別対応が次のクレーム要因になることも有ります。
どこまで対応するのかということに対して、きちんと組織で意思決定して、過大な要求に対しては丁寧な態度で対応できない旨を伝えることも大切です。
状況別クレーム対応メールの書き方と例文
ここからクレーム対応メールを書くポイントや例文を紹介していきます。
メールでクレーム対応する上では、相手にこちらの誠意がちゃんと伝わるようにすることが重要です。
従って、テンプレートをそのまま使い回したような文章はNGですが、読みやすく、かつ抜けや漏れのない文章にするためには、一定の型があります。
また、こちらに落ち度がない場合には、相手の不満をさらに掻き立ててしまわないために書き方の注意が必要です。
本章では、クレーム対応メールの基本構成や企業向け、個人向けの例文を紹介します。
クレーム対応メールの基本構成
クレーム対応メールの基本構成は、以下の6項目です。それぞれの注意点を押さえ、適切な文章を作成できるようにしましょう。
①件名
件名を記載する際には、「●●に関するお詫び」といった形で、相手が一目見てクレームに対する返信だと分かるようにしましょう。
迅速に対応する必要があるからといって、クレームメールにそのまま返信してしまい、件名が「Re:無題」となってしまったりすると、ぶっきらぼうな印象を与えてしまいます。
②宛名
本文に入る前に、宛名を記載するようにし、相手が企業の場合には、部署名なども記載します。
宛名を入れることで丁寧な印象になるだけでなく、名前を呼ばれることで親密さが増すという心理学的な効果もあります。
なお、クレーム対応のメールで宛先の企業名や個人名を間違えると、怒りの感情に油を注ぐことになりかねません。
“名前”は法人にとって、個人にとって、とても重要な要素です。とくにクレーム対応メールで名前の誤りがないようにくれぐれも注意しましょう。
②挨拶文と感謝
本文に入る前に、まずは挨拶文を入れるようにします。いきなり謝罪文から書き始めてしまうと、読み手に雑な印象を与えかねません。
また、クッションとして挨拶文を入れることで丁寧な印象を与えるとともに、相手に気持ちを落ち着けてもらうという意味もあります。
ただし、メール文の場合には、手紙のような丁寧な時候の挨拶などは不要です。
日ごろから取引がある相手であれば、相手の重要性を認識している旨も含めて取引への感謝を記載したり、クレームを連絡するという手間をかけてもらったことへの感謝を記載したりする形が良いでしょう。
④謝罪と対応の概要
本文では、まず謝罪した上で、対応の概要について述べます。
ビジネス文章においては結論ファーストが重んじられますが、とくにクレーム対応では、相手は「どういう対応を取ってもらえるのか」を早く知りたいという気持ちがあります、相手の不安や不満に寄り添うためにも、分かりやすく簡潔にまとめるようにしましょう。
⑤経緯や対応の詳細
結論ファーストで謝罪と対応の概要を記載した後で、問題が発生した経緯、解決策の提案の詳細などを記載します。
原因究明などに時間を要する場合には、その旨を伝えた上で、後日あらためて連絡を入れることを記載しましょう。
再発防止を伝えることが重要な場合には、再発防止への対応などについても、ここで記載します。
⑥再発防止の約束と結びの挨拶
最後に再発防止の約束、また、改めての謝罪や感謝を記載して文章を締めます。
企業向けと個人向けの対応文面
なお、企業向けと個人向けのメール文面では、文章の構成に大きな違いはありません。
ただし、表現としては企業向けでは少しきっちりとした言い回しで書いていくことが多いのに対して、個人向けでは相手の感情に寄り添った文章にすることが多いでしょう。
ただし、これもケースバイケースであり、どういったケースなのか、また誰に対してお詫びのメールを送るのかによって、クレーム対応のメール文面は変わってきます。
ひとつの例文として、企業向け、個人向け、それぞれの文面を紹介しますので、参考にしてください。
<企業向けの文面(製品の不具合に対応するクレームへの対応)>
件名:
◯◯の破損に関するお詫び
本文:
△△株式会社
△△部
▲▲様
平素は格別のご厚情を賜り、厚く御礼申し上げます。
□□株式会社、法人営業部の■■と申します。
この度は、弊社製品の不具合によりご迷惑をおかけしており、
誠に申し訳ございません。
まず、該当の製品に関しては、
本日中に新しい製品と交換対応させて頂きます。
なお、どの工程において破損が生じたのかは、
品質管理部の担当者が現在調査を行っております。
大変恐縮ではございますが、原因解明につきましては
今しばらくお時間をいただけますと幸いです。
原因がわかり次第、ご報告をいたします。
恐れ入りますが、今しばらくお時間を頂けますよう、
よろしくお願いいたします。
今後このような事態が起こりませんよう、
原因を明らかにし、再発防止を徹底して参ります。
この度はご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございませんでした。
まずは取り急ぎ、ご連絡申し上げます。
<個人向けの文面(店舗スタッフの対応に関するクレーム対応)>
件名:
店舗スタッフの不適切な言動についてのお詫び
本文:
●●様
平素は格別のお引き立てを賜り、心より御礼申し上げます。
株式会社△△の▲▲と申します。
先日は、弊社◯◯店に足をお運びくださり、
誠にありがとうございました。
このたびは●●様に対し、弊社のスタッフの不適切な言動で
不快な思いをさせてしまいましたこと、深くお詫び申し上げます。
ご指摘の点について、
当該スタッフに厳重な注意を行いました。
今後、このようなことがないよう、
社員教育を見直し、サービスの向上に力を入れていく所存です。
このたびは、大変申し訳ございませんでした。
今後とも、ご愛顧のほど心よりお願い申し上げます。
こちらに落ち度がない場合の書き方と例文
クレームの多くは、こちらに落ち度があるものですが、中には相手のミスや勘違いというケースもあります。
こちらに落ち度はなく、相手に原因があった場合でも、相手を不快にさせる可能性のある言葉を避け、やわらかな表現を選ぶことが大切です。
相手を不安や不満にさせてしまったことは謝罪した上で、対応できない旨は丁寧かつしっかりと伝えましょう。
<こちらに落ち度がない場合の返信メールの文例(発送日の勘違いによるケース)>
件名:
商品の発送ついてのご案内
本文:
●●様
平素は格別のお引き立てを賜り、心より御礼申し上げます。
株式会社△△の▲▲と申します。
この度は、弊社商品「◯◯」をお買い上げいただき、
誠にありがとうございました。
また、商品の発売日につきまして、十分なお伝えが出来ておらず、
不安を感じさせてしまい、大変申し訳ございません。
「◯◯」につきましては、当社ホームページにも掲載しております通り、
×月×日の発売となっております。
そのため、商品のご注文からお届けまで、
1か月程度のお時間を頂戴しております。
発売後、順次お送りして参りますので、
大変恐縮ですが、今しばらくお待ちいただけますと幸いです。
お待たせしてしまい、大変申し訳ございませんが、
何卒ご理解のほど、よろしくお願いいたします。
クレームをチャンスにする重要性
クレーム対応は気が重くなるという人も多いでしょうし、クレーム発生をネガティブに感じる人も多いでしょう。
しかし、実は企業にとっては一番恐ろしいのは、クレームがあるにも関わらず何も言ってこない顧客です。
わざわざ不満を伝えてくるのは、「言えば何とかしてもらえる」と相手が考えていることの裏返しという見方もできます。
クレームを受けることはピンチではありますが、その裏にはチャンスが隠れています。うまくチャンスをつかみ取るには、どうすればいいのでしょうか。
本章ではクレームをチャンスに変える重要性をお伝えします。
最も怖い「サイレントクレーマー」とは?
商品やサービスに不満を持った際に、それをクレームとして伝えようとする人の割合は4%ほどといわれます。
つまり、残り96%の人は、不満があっても何も言ってこないのです。これを「サイレントクレーマー」と言います。
クレームを伝えるには、自分から連絡して、どういった点に不満を持ったかなど細かい情報を伝えなければなりません。
自分の時間や労力を費やすのを面倒に感じ、「放っておいても、誰か代わりに言ってくれるだろう」「今後はもう買わないからいい…」と思う人の方が圧倒的に多いのです。
つまり、「クレームが来ない=商品・サービスに満足してくれている」とは限らないのです。
改善すべき点があるにも関わらず、何も教えてもらえないまま、他社の商品・サービスに切り替えられてしまうということになっては、有効な手立てを考えるのも困難です。
つまり、クレームを言ってきてくれる人は、残り96%の人に代わって、サービス満足度をあげるためのヒントを教えてくれるのです。。
なお、クレーム対応の重要性を考える上で、知っておきたいのが「グッドマンの法則」と呼ばれるものです。
グッドマンの法則は、アメリカのTRAP社が全米の大企業を対象に実施した消費者苦情処理調査をもとに、白鷗大学経営学部の教授を務めた佐藤知恭氏が、クレームや顧客満足度に関する法則を見つけ出してまとめたものです。
グッドマンの法則には、以下の3つの内容があります。
②不満を感じた顧客の非友好的な口コミの影響は、満足した顧客の友好的な口コミに比較して2倍も強く影響を与える(グッドマンの第二法則)
③企業が顧客に適切に情報提供することで、顧客との信頼関係が構築されポジティブな口コミが広がり、購買そして市場の拡大に貢献する(グッドマンの第三法則)
グッドマンの第2法則を見ると分かる通り、「悪い口コミ」は「良い口コミ」以上に影響力があるものです。
実際の調査によれば、好意的な口コミは1人につき5人に広がるのに対して、非友好的な口コミは1人につき10人に伝わるとされています。
従って、まずクレームにきちんと対応して悪い口コミが広がらないようにすることが非常に大切です。
クレーマーをリピーターにつなげるポイント
クレームの発生は、多くの人にとって嫌なものである一方で、じつは売上アップにつなげるチャンスでもあります。
前述したグッドマンの第1法則と第3法則を見ると、そのことが分かります。
まず「クレーム対応が上手くできると、クレーマーの人は再購入してくれる」というのがグッドマンの第1法則です。
分析によると、クレームの解決が迅速で、顧客満足につながった場合、82%の顧客(クレーマー)が再購入するのに対して、クレームを言わなかったけど不満をいただいた顧客(サイレントクレーマー)の再購入率は、わずか9%しかありません。
次に、顧客が欲しがる情報を的確に提供することが出来れば、クレーマーを自社のファンにすることができ、好意的な口コミを広めてもらえるというのがグッドマンの第3法則です。
このようにクレームを言ってくれる人は、何も言ってくれず見放していくサイレントクレーマーに代わって商品やサービス改善のポイントを教えてくれる貴重な相手であり、かつ、対応に満足してもらえれば再購入する可能性が非常に高い顧客軍でもあるのです。
クレーム対応のポイントを押さえて、前向きにクレーム対応できるようにしていきましょう。
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