現場のプレイヤーがマネージャーや課長などに昇格したときには、優秀な人材でもすぐ管理職らしい振る舞いをしたり成果を出せたりするわけではありません。
管理職としてパフォーマンスを発揮できるように支援するには、各々の課題やレベルに応じた管理職研修を実施することが大切です。
記事では、多くの企業が抱える管理職教育の課題、外部の研修会社を選ぶポイントを紹介するとともに、管理職の能力開発に活用できる研修サービスも紹介します。
<目次>
- 管理職に求められる役割
- 管理職に必要な能力
- 管理職研修が必要な理由
- 管理職研修の内容
- 管理職の階層ごとに必要な研修内容
- 管理職研修を実施する手順
- 管理職研修の成果を高める方法
- おすすめの管理職研修サービス
- 管理職研修を利用した企業の体験談
- 管理職研修のまとめ
管理職に求められる役割
管理職は担当組織の「長」としての役割を担い、担当組織の成果に責任を持つ立場です。組織の成果ということ以外にも、管理職に求められる役割には様々なものがあります。管理職の階層によって役割も変わってきますが、基本的には以下のようなことを求められます。
目標設定・目標達成
管理職には、担当組織の目標設定と達成が求められます。組織全体の事業計画を踏まえて、担当組織がどのような貢献をする必要があるかを設定し、部下とともに目標を達成します。
「組織の成果にコミットする」ということが、一般メンバーと管理職の最大の違いです。
自社の戦略や計画を踏まえて部門の目標を設定するとともに、部門やチームの目標と方向性を合わせながら、部下それぞれの目標も設定する必要があります。部下1人ひとりと話し合って設定して、部下のパフォーマンスを最大化しながら、目標達成に導くことが求められます。
進行管理
管理職は、組織の成果に向けて業務の進行を管理することも求められます。
管理職は業務の進捗を管理しながら、遅れている場合はフォローを行います。また、業務がうまく動いていなかったり壁にぶつかっていたりする時には、原因を究明したうえでプロセスの見直しや改善を行います。
いまの時代には部下の労働時間なども管理しながら、生産性を改善し、業務を完了させる必要があります。
課題解決
管理職には、課題解決力も求められます。組織の目標を達成するために業務を行う際には、思うような進捗や結果にならないことは当たり前です。壁にぶつかったとき、管理職が率先して課題を発見し、原因を突き止め、解決していかなければなりません。
特にビジネスが激しく変化する現代では、内外の環境変化を的確にとらえ、組織の方針や課題を定めて、迅速に解決していく能力が求められます。。
人材育成
管理職には、人材育成の役割も求められます。
部下に業務の手順や知識、技術などを教えるだけでなく、部下の強みや弱みを把握し、部下の目標達成のために後押しを行わなくてはなりません。部下のモチベーションを高める、動機付けることも管理職の大事な役割です。
部下それぞれの育成を行うことと、組織の成果を出す、2つを両立することが管理職の業務の難しさです。
管理職に必要な能力
管理職として活躍するには、以下の能力をバランス良く持つ必要があります。
セルフリーダーシップ
管理職にはセルフリーダーシップが必要です。セルフリーダーシップとは自分に対するリーダーシップであり、主体的かつ責任感を持って、意思決定・判断を下し、物事にあたる姿勢です。
管理職は、他者にリーダーシップを発揮していくべき人材です。他者にリーダーシップを発揮するためには、自分自身に対してリーダーシップを発揮する必要があります。自分にリーダーシップを発揮できない人間が、他者にリーダーシップを発揮できるわけがありません。周囲に対するリーダーシップの源泉がセルフリーダーシップなのです。
管理職が十分なセルフリーダーシップを発揮していけば、メンバーへのリーダーシップが発揮されることはもちろん、メンバー自身がセルフリーダーシップを発揮することにも好ましい影響を与えるでしょう。
意思決定力
意思決定力も管理職に必要な能力です。
ビジネスにおける意思決定は、正解が見えることは少ないものです。そんな中でも意思決定を求められるのが管理職です。管理職が意思決定を求められる場面は多様であり、以下のような場面で意思決定が求められるでしょう。
- 方針の決定
- ゴールの設定
- 施策の決定
- 部下の提案に対する可否
- トラブルへの対応方針 等
迅速で適切な意思決定を行なうためには、組織目標のより上位にあるミッションやバリュー、経営方針や事業計画、また、実行するチームメンバーの能力や特性等の把握も必要になります。また、セルフリーダーシップによる自己効力感、リスクを見積もって決断する姿勢も大切となるでしょう。
問題解決スキル
問題解決スキルは管理職が持っておかなければならない能力です。問題解決スキルは、課題や問題を発見・定義して、どのようにすれば解決できるか導き出し、実行するスキルです。
目標達成に向けて計画を実行していくと、必ず多くの問題が出てきます。問題を長く放置すると、組織の生産性やパフォーマンスに悪影響を及ぼします。組織の目標を達成して、成長していくためには、管理職による迅速な問題解決や意思決定が大事な鍵となります。
管理職は、組織の目標達成に向けて課題を解決したり、チームメンバーが抱える課題にアドバイスしたりする必要があります。
問題解決は多くの場合、以下のようにロジカルシンキングを中心に、時にラテラルシンキングを組み合わせて行なうことが多いです。
- なぜ問題が起こっているのか?
- そもそもの原因は何なのか?
- どのような解決策があるのか?
調整力、交渉力
調整力や交渉力は管理職において重要な能力です。
管理職になると、社外や他部署の人たちとの関わりが増加します。例えば、他部署や社外のメンバーとの協働で進めるプロジェクトの場合、それぞれの力量や都合を加味してスケジュールを組む調整力がなければ、効率よく仕事を回すことはできません。
また、お客様や取引先、上司や部下といったさまざまな人と話し合いを行ない、お互いがWin-Winの関係へ到達できることを目指して交渉していく必要もあるでしょう。
管理職になると、組織の長として調整や交渉する場面も増えてきますし、調整や交渉の結果が与える影響も大きくなります。
ファシリテーションとコーチング
管理職になると、ファシリテーションやコーチングなどのコミュニケーション能力も磨く必要があります。
参加メンバーの意見や知恵を引き出して、より優れた案を生み出し、合意形成するのがファシリテーションスキル、質問を通じて相手の能力や意欲を引き出すのがコーチングスキルです。
目標達成に向けて協働するチームには、さまざまな価値観や能力を持つ人材が集まります。こうした人々に自身のスキルを最大限に発揮してもらう、また、メンバーを育成していくうえためには、会議やミーティングが円滑に進むように舵取りするとともに、方向性を示し、導いていかなくてはなりません。そのためにファシリテーションやコーチングが必要です。
どちらも相手の話に耳を傾ける傾聴力が必要であり、また、効果を発揮するためには普段からメンバーと信頼関係を築くことが必要です。
管理職研修が必要な理由
管理職研修のプログラム設計を考えるうえでは、そもそも、企業の成長や業績アップにおける管理職の重要性を認識しておくことが大切です。
求められる役割・スキルの変化
プレイヤー時代とは求められる役割やスキルが変化することは管理職研修、とくに新任管理職が必須となる理由です。
管理職は、プレイヤーとは、求められる役割・スキルが大きく異なります。プレイヤー時代には、自分の営業力などのテクニカルスキルを使って個人の成果を出すことが責任でした。しかし管理職になると、ヒューマンスキルを使ってメンバーを動かし、組織としての成果を出すことが求められるようになります。
また時代の変化もあり、現在の管理職は実務スキル面だけでなく、モチベーションマネジメント、コンプライアンスやハラスメント、勤怠管理等の能力も求められます。
プレイヤーから管理職になった直後に行なう新任管理職研修は、管理職の役割と責任、必要なマインドやスキルを教えるうえで不可欠なものです。
管理職は、経営計画や事業方針を現場で形にして業績を生み出す“要”となるポジションです。自分の担当組織で成果をあげることに加えて、上位組織の意思決定を担う一員として、組織内で管理職同士が連携することで組織全体を達成へと導いていくことも可能です。
それだけ重要となるポジションであり、業績や組織文化に大きな影響を与えるからこそ、新任管理職研修だけでなく、多くのスキルを身につける必要があるのです。
体系として教える必要がある
管理職に必要な能力は、体系として教える必要があります。
管理職に求められるスキルや資質は、各々が独立しているのではなく、体系的かつ連動して機能するものです。だからこそ体系として教えることで、管理職としての力をよりしっかりと発揮することができます。
しかし、中堅中小企業などで研修体制がしっかりと整備されていないような場合、創業期や組織が小さかったころから自学自習して成長してきた幹部も多く、管理職に求められるマネジメントやスキルに関して体系的な説明や言語化ができる上層部がそう多くない場合もあります。
管理職研修の検討と実施を通じて、管理職に必要なスキルや知識を体系化し、管理職のあるべき姿を言語化するとともに、より成果をあげることができる管理職を育成することができるでしょう。
身につけるべき能力が多岐にわたる
管理職は身につけるべき能力が多岐にわたることも、管理職研修を実施する必要性のひとつです。
ビジネスで成果をあげるために必要なスキルを3つに区分けして、階層ごとに必要とされる比率を表した「カッツ理論」という考え方があります。
図における「監督者」層は係長やチームリーダーなどの現場でプレイングもしながら数人の組織を担当する下級管理職、「管理者」層は課長やマネージャーなどで担当組織のメンバー数が10人を超えたり複数階層になる中級管理職、「経営者」層は部門長や事業部長など複数の課や機能をまとめてビジネス全体を管轄するような幹部、上級管理職です。
このように一言で管理職と言っても、その中には複数の階層があり、求められる能力の比重が変わってきます。プレイヤー時代とは違う「人を動かして組織の成果をあげる」ヒューマンスキルはもちろん、管理職としてのテクニカルスキル(目標設定や進捗管理、計画立案など)、ビジョンやコンセプト、戦略設計につながるコンセプチュアルスキルなど、求められる能力は多様です。
幅広い能力や資質を習得させるには、それなりの時間とコストが必要になります。新任管理職研修だけではなく、各ステップで新たに身に付ける、また磨き上げるスキルを対象やテーマ別の管理職研修で身に付けていく必要があります。
対象者が少ない
管理職研修は、たとえば新入社員研修などと違って、受講者が限られてくることも特徴の人です。
たとえば、10人に1人が管理職だとすれば、200人の組織で管理職は20人です。そのうち、新任の管理職や昇格する管理職となると、数人になってくるでしょう。このように中小企業の場合、組織規模を踏まえて管理職の人数自体が少なくなります。また、管理職の入れ替わりもそう多くなければ、必須で実施すべき新任管理職研修の対象も一年に数人しかいないようなことがほとんどでしょう。
そうすると、社内での研修実施は難しいですし、社内における管理職教育のノウハウもたまりづらくなります。そのような状態では社内で管理職研修を行っても、カリキュラムの内容が練られていないですし、効果的な研修とはならないでしょう。
そのような場合は、外部の研修会社を利用することで、効果的な管理職育成が実施できるでしょう。
人によって課題が異なる
人によって課題が異なることも研修が必要な理由です。
カッツ理論でも紹介した通り、管理職といっても、新任の下級管理職から中級管理職、そして経営陣の一歩手前の上級管理職までいくつかの階層があります。各々に求められるスキルは、管理する部門やプロジェクト、対象メンバーによっても変わってくるでしょう。当たり前の話ですが、同じ管理職と言っても、係長と課長、部長と事業部長では求められる能力は変わります。
大手企業で、管理職が数百人以上いるような場合であれば、テーマを細分化しても数十人の対象者が出てきます。一方で、中堅中小企業の場合、絶対的な管理職の人数が少ないので、各々の管理職のレベルや鍛えるべきスキルを細分化していくと、社内で研修を実施できる規模になりません。
研修会社が提供する管理職研修であれば、各レベルに応じたコースが用意されているので、それぞれの課題に合った研修を受けることができるでしょう。
学ぶ時間的余裕がない
管理職は、組織の成果に対して責任を担うからこそ、常にマネジメントで忙しい日々を過ごしています。最近では、プレイングマネージャーも増えています。
管理職が日々の業務に忙殺されてしまっていると、成長するための時間投資を実施できません。だからこそ、自己啓発だけに任せていては、管理職として必要な成長が実現できません。
管理職研修を設定することで、強制的に日々の業務に優先して学びや振り返りを行う場を作ることも大切です。研修カリキュラムは効率よく習得できるように作られていますので、短時間で効率よく学習することができます。
管理職研修の内容
管理職研修を実施するうえでは、どのようなテーマを盛り込めば良いかわからないこともあるでしょう。本章では、労働白書の「近年の管理職に不足している能力・資質」なども踏まえながら、管理職研修に盛り込みたい内容を紹介していきます。
*出典:平成26年度 労働白書
役割や責任の理解
管理職研修では、管理職の役割と責任をまず理解させなくてはなりません。
プレイヤーと管理職は役割と責任が異なりますので、プレイヤー時代と同じ感覚では、管理職としての役割は担えません。個人の成果がゴールであったプレイヤー時代と、組織の成果がゴールであり、加えて人材育成も必要となる管理職は明確に役割が異なります。
従って、特に新任管理職を対象とする研修では、プレイヤーと管理職の役割と責任の違いをしっかり教えるとともに、管理職としてのマインドセットをする必要があります。
テクニカルスキル
管理職研修では、管理職に必要なテクニカルスキルも教える必要があります。これは、管理職で身につけなくてはならないテクニカルなスキルは、プレイヤー時代とは異なるからです。
もちろん共通するスキルもありますが、管理職になると、プレイヤー時代よりも高レベルなスキルが求められるようになります。
管理職になると、組織の目標達成や課題解決に向けて、ヒト・モノ・カネの管理が求められるようになります。そのためには、時間管理やタスク管理、KPIマネジメント、優先順位の意思決定などの知識が必要です。
これらはプレイヤー時代にも求められたかも知れませんが、自分のタスクや時間だけをマネジメントするのと、チームのタスクや生産性を管理するのでは必要なレベルが変わるわけです。
そういった部分も含めて、管理職研修では、管理職に必要なスキルやフレームワークなどを教える必要があります。
リーダーシップ
管理職研修で、身に付けるべき重大なテーマのひとつがリーダーシップです。
管理職にはチームの目標を決定したり、メンバーに対して仕事への取り組む姿勢を見せたりすることを通じて、組織を引っ張っていく役割が求められます。進行の管理をすることがマネジメントだとすれば、目標決定しチームメンバーを引っ張る力がリーダーシップです。管理職にはマネジメントとリーダーシップ、両方が求められます。
リーダーシップの習得には、セルフリーダーシップの再確認と組織のメンバーに対してリーダーシップを発揮する方法や理論などを学び、実践することが大切です。なお、座学を通じた基礎的な知識のインプットはもちろん大切ではありますが、同時にグループワークやワークショップ、職場実践などのプログラムを通じて、自分の殻を壊し「身に付ける」ことが何より大切です。
メンバーの指導・育成方法
管理職研修では、メンバーの指導や育成方法も学ぶ必要があります。
管理職には、目標達成に向けてメンバーのモチベーションを高める、また、次世代のエースや管理職を育成することが求められます。
メンバーへの指導力や育成力を高めるには、ティーチング、コーチング、適切なフィードバックの方法、指導をする前提となる信頼関係の構築方法などを身に付けなければなりません。
マネジメントスキル
管理職はメンバーを動かして組織の成果を出すことが求められます。そのためには、マネジメントスキルが必要となります。前述の通り、ゴールを決めて鼓舞することがリーダーシップだとすれば、そのゴールにたどり着かせることがマネジメントです。
マネジメントは大きく分けるとタスクマネジメントとピープルマネジメントに分けられます。
タスクマネジメントは、タスク管理、優先順位の決定、KPIマネジメント、問題解決など、「事(こと)」の管理です。同時に、マネジメントはタスクマネジメントだけでなく、ピープルマネジメントも大切です。メンバーはロボットとは異なり、「感情を持った生きもの」です。したがって、論理的に目標設定をして指示するだけでは、メンバーの心は動きませんし、モチベーションを高めることはできません。
従って、たとえば、メンバーに本気で行動してもらうための「動機付け」の能力は管理職に不可欠です。また、昔とは異なり、今は指揮統制型のコミュニケーション以上に、対話型のマネジメントが求められる時代になっています。コーチング的な技術、前提となる信頼関係の構築力、心を動かすプレゼンテーションやストーリーテリングなど、ピープルマネジメントの技術は昔以上に重要となっています。
企画・立案の技術
管理職研修では、企画・立案などの技術を学ぶこともあるでしょう。
管理職になると、新規事業や新規プロジェクトなどに関わることも出てきます。特定の職種や上級管理職などであれば、クリティカルパスのマネジメントやボトルネックの見極め、ビジネスモデルキャンパスやマーケティング、アカウンティングなどの知識が必要になってくる場合もあるでしょう。
管理職の階層ごとに必要な研修内容
管理職研修を実施するに際しては、対象者のレベルに応じてプログラム内容を変える必要があります。レベルは、新任管理職、中堅管理職、上級管理職という3つの区分で考えることが一般的です。
レベルに応じた内容を考えるうえでは、前述したカッツ理論を参考にすると考えやすいでしょう。カッツ理論では、スキルを「テクニカル(実務スキル)」「ヒューマン(人間関係力)」「コンセプチュアル(概念化能力)」という3つに区分けして、管理職のレベルに応じて必要なスキルの割合を示したものです。
新任管理職
新任管理職研修で大事なことは、プレイヤーから管理職の違いを理解して、意識変革を行なったうえで、新たに必要となるスキルを学ぶことです。
新たに必要なスキルとしては、管理職としてのテクニカルスキル(目標設定やPDCA、KPIマネジメント、労務管理、コンプライアンス等)とヒューマンスキル(部下との関係構築、指導、育成)が中心となります。
管理職のテクニカルスキルは、チームの目標を設定し、計画を作成して実行を管理する能力です。また、予期せぬ問題に対応し、解決策やキャッチアップ施策を作成する能力も必要です。さらに、ロジカルシンキングや計数管理などのスキルも求められるでしょう。
また、プレイヤー時代と管理職では、ヒューマンスキルの使い方が大きく変わってきます。単に正しいことを言うだけではなく、個々人と信頼関係を築き、メンバーの意見や意欲を引き出し、チームの計画や施策を実行させる力が求められます。
褒める・叱るといったことや、ファシリテーション、コーチングなどのコミュニケーションスキル、ヒューマンスキルの土台となる“あり方”(人格)を磨くことが必要です。
中堅管理職
管理職に昇進して3~5年程度が経過した中堅管理職のための研修では、対象者の状況に応じて内容が多様になってきます。大別すると3つのテーマで行なわれることが多いでしょう。
1つ目は、目標達成に向けたテクニカルスキルです。不足するテクニカルスキルを磨き上げるためのトレーニングです。たとえば、実務に即した内容でPDCAのスキルやロジカルシンキングを学ぶような内容です。
2つ目は、部下を動かし育てるためのヒューマンスキルです。“褒める”や“叱る”といったコミュニケーションスキルやファシリテーション、コーチングスキルなどです。
最後に、マンネリ感の打破や主体性の向上です。ヒューマンスキルの根本ともなる“あり方”に関する部分であり、360度評価や内観、キャリアプランなどを組み合わせて行なうことが多いでしょう。
上級管理職
上級管理職になると、次のステップとして経営幹部の一員となることが視野に入ってきます。したがって、研修では新たに必要なスキルを身に付けさせながら、部門経営者としての意識やスキルを醸成することが主目的となってきます。
管理職というのは、組織成果に責任を担っているからこそ、自分の担当部署のことに視界が狭まりがちです。しかし、ひとつの事業を経営するとなると、これまでに見ていなかったマーケティングやアカウンティング、経営戦略など、ビジネス全体を見て判断するための知識が必要です。
また、中級管理者から上級管理者へ、そして経営幹部へ昇格していく中で、必ず高めていく必要があるのが、抽象的な概念や思考を扱うコンセプチュアルスキルです。
コンセプチュアルスキルは、組織のミッションやバリューを浸透させたり、ビジョンを描いてメンバーを鼓舞したりすることに不可欠なスキルです。また、ビジネスモデルの全体像をつかみながら最適化していったり、新たなビジネスモデルを描いたりする上でも、コンセプチュアルスキルが必要になります。
管理職研修を実施する手順
管理職研修を実施する際には、研修実施までに社内で行うこと、決めておかなくてはならないことがあります。
育成のゴールを言語化する
管理職研修を開始する前に、まずは育成のゴールを明確に言語化しておきましょう。目的やゴールが明確でなければ、どのような状態になれば研修ゴールが達成されたのかがわかりませんし、研修の内容や方向性も設定できません。
例えば、「新規事業を任せられるプロジェクトマネージャーになってもらう」「将来の幹部候補になってもらう」などのゴールを設定することで、研修の目的と方向性がクリアになります。
課題を明確にする
次に、最初に行った「育成のゴール」と「現状」との間にどれくらいギャップがあるのかを把握して、課題を明確にします。
課題を把握するための手順は、
1)実績や360度評価の部下や上司のフィードバックをもとに「現状」を認識する
- 例:「メンバーと協力して業務を進捗する管理職が少ない」
2)「ゴール」と「現状」のギャップに生じる、「具体的な課題」を明確にする
- 例:「メンバーが相談しやすいと感じてもらうための
- ・傾聴力
- ・理解する力
- ・信頼関係を築く力
- ・コーチングスキル
- を身につけてもらいたい」
3)課題解決の優先順位を付ける
- 例)「上述した5つのスキルを身に付けてもらう順番を決める」
といった順番で実施すると、次のステップである「研修テーマの決定」がスムーズに進みます。
課題解決に向けて研修テーマを決める
課題が明確になったら、課題を解決するための研修テーマを決めます。
先述した課題を例にすると、今回のテーマは「管理職に身に付けて欲しいコミュニケーションスキル」が研修テーマになるかもしれません。テーマが決まったら、研修で学んでもらいたい内容を具体化しましょう。そうすることで、選ぶべき研修がわかります。
研修で学んでほしい内容を考えていくと、どうしても盛りだくさんになってしまいがちです。前のステップで設定した優先順位を踏まえて、研修で習得して欲しい能力を具体的に洗い出し絞り込むことで、効果性の高い研修を選ぶことができるでしょう。
研修プログラムを選定する
研修テーマが決まったら、具体的な研修プログラムの選定に移ります。ここでのポイントは、「4:2:4の法則」にを踏まえたプログラムを選ぶことです。
「4:2:4の法則とは」、研修による行動変容を左右するのは、じつは研修内容よりも、研修実施の前後の影響こそが大きいという考え方です。
- 4割:研修前の目的意識や事前学習
- 2割:研修内容
- 4割:研修後の振り返りやフィードバック、職場での実践
上記を踏まえて、研修自体のプログラムだけでなく、研修前にどういった働きかけで参加意欲を高めるのか、研修後に実践してもらうためにどんなフォローアップがあるかを確認しましょう。
研修を実施する
研修プログラムを選定したら、いよいよ研修の実施です。
実施する際には、参加者が積極的に参加できるようにアナウンスを行うなど、環境を整えて研修の質を高めることが大切です。
とくに管理職研修の場合、プレイヤー層以上に多忙なカンロ職の時間をロックして実施します。どんな課題感があるのか、何を学んで欲しいのか、学ぶことでどんな成果につながるのかなど、自分事として参加してもらえるような事前アナウンスや冒頭のワーク等が大切です。
フォローアップや効果検証をする
研修が終わった後は、研修で学んだことが現場で実践できているかなど、フォローアップを行うことが重要です。
また、研修後の成果や変化を定期的に確認し、研修の効果や今後の改善点を見極めることで、より質の高い研修を実現することができます。
管理職研修の成果を高める方法
360度評価と組み合わせる
管理職研修の成果を高めるには、研修を360度評価と組み合わせることも有効です。
管理職になるとプレイヤー時代と比べて、周囲からフィードバックをもらえる機会が格段に減ります。フィードバックは自分の現状を知り、健全な成長への刺激となるものです。
そこで管理職研修と組み合わせて、360度評価によるフィードバックを取り入れるのです。360度評価の結果を見ることで、自分の現状の問題や周囲に与えている印象などを客観視できるようになります。
360度評価を通じて、自分の成長課題や強みなどを認識すると、管理職研修の受講などに対する前向きな意識や危機感、成長意欲も生まれやすくなるでしょう。
スキルマップ等で成長目標や要素を可視化する
管理職の育成を行う上では、スキルマップなどを用いて成長目標や要素を可視化することも効果的です。
スキルマップなどを用いて、自分の現状や強み、課題などが分かると、自分事として主体的に研修に参加しやすくなります。
「 学び ⇒ 実践 ⇒ 学び 」のサイクルを回す
管理職研修の効果を高めるには、「学び ⇒ 実践 ⇒学び」のサイクルを回すことが必須です。
- 座学による学び ⇒フレームワークや価値観、ノウハウをインプットする
- 現場での実践 ⇒いまの仕事で成果を上げるために実践する
- 体験からの学び ⇒現場での成功・失敗を振り返って、知恵として身に付ける
まず研修で学んだだけで終わらず、「現場での実践」に繋げるためのブリッジングや課題設定、フォローアップは、管理職研修に限らず、研修効果を高めるために必須といえるでしょう。
そして、研修で学んだ“知識”を“生きた知恵”として身に付けるために必要なのが、「体験からの学び」です。とりわけ管理職の場合、置かれた環境も部下の経験や性格も千差万別です。知識をスキルとして身に付けるためには、現場での成功や失敗を振り返り、自分なりの知恵として昇華することが不可欠です。
ぜひ管理職研修のアフターフォローとして、「研修内容を現場で実践して何が起こったか。何が成功して、何が失敗だったか」「体験から何を学べるか」「次にどうするか」を整理・シェアする時間を設けましょう。
おすすめの管理職研修サービス
管理職研修をする際、外部の研修会社を利用するときには、単純な費用ではなく、効果が出るかどうか?を重視すべきです。ポイントとしては、研修の理論が明確な企業を選ぶとよいでしょう。また、講師が一方的に理論などを説明し続けるよりも、学習と実践を繰り返すようなタイムスペース・ラーニングの考え方を取り入れている研修のほうが、学習効果も高まりやすくなります。本章では、おすすめの管理職研修サービスを紹介します。
JAICリーダーカレッジ
サービスの概要
HRドクターを運営する研修会社ジェイックでは、「JAICリーダーカレッジ」という管理職向けの研修を提供しています。
「JAICリーダーカレッジ」は、全世界4,000万部を誇るリーダーシップの金字塔『7つの習慣』や、日本の主要企業約500社で導入されている「原田メソッド」などのコンテンツを通じて、中堅・中小企業の管理職に“管理職としての責任感”を身に着けさせ、活躍できるリーダーへと成長を促す研修です。
料金体系
32,000円/1名・1カ月
※プランによって料金は変わります
- 月1回×12回の継続型教育
- 1クラス約20名の同期と他流試合
- アウトプット中心の講義
- 360度診断による危機感の醸成
- 学びを実務に落とし込む、反復実践
「学び、職場で実践して、振り返る」を繰り返す継続学習によって、管理職の行動変容と成長が実現するプログラムになっています。
おすすめポイント
JAICリーダーカレッジでは、毎回の研修で職場での実践行動を必ず計画します。 そして、次回の研修で「実践した結果」をクラス内で発表します。学び、実践し、再度学ぶというサイクルを繰り返すから、行動変容と成長に繋がる仕組みです。
また、クラス制で開催。他社のリーダー陣との他流試合により、成長への危機感が刺激されると同時に、担任講師が1対1で変化をフォローするので、密度の濃い学習が実現します。
更に1年間の研修プログラムの最初と最後で、上司・部下・同僚からの360度評価や上司面談を実施。自身の強みや研修による変化を客観的に捉えることができます。
インソース
サービスの概要
管理職としての基本的なマネジメントスキルを理解するための研修です。管理職に求められる役割を、上司・部下の視点から改めて認識してもらい、「部下育成/指導」「業務管理」「リスク管理」の3つの要素を身に着けることができます。
料金体系
3万/1日程(1名)参考:インソース
おすすめポイント
マネジメントの考え方や手法を基礎から学んでもらいたい新任管理職におすすめの研修です。上司や部下とのコミュニケーションの取り方や目標管理、リスクマネジメントの具体的なポイントを理解することができます。
リクルートマネジメントソリューションズ
サービスの概要
リクルートマネジメントソリューションズの研修は「役割意識の転換」を重視しているのが特徴で、ピラミッド型のヒエラルキー的な組織構造にフィットします。
そして、「個」の成長を打ち出した多彩なプログラムが、意欲の高い人材の自律的な学びを支援するものとなっています。
料金体系
15万円/2日程(1名)
参考:リクルートマネジメントソリューションズ
おすすめポイント
「プレイングとの両立で管理職の負荷が高まっている」など、個性の強いタイプや、業務を人に任せられないタイプの人材などに、柔軟な変化を求めていく内容に有効な研修が豊富です。
schoo
サービスの概要
こちらのサービスは、動画による管理職研修です。「大人たちがずっと学び続ける生放送コミュニティ」という新しいスタイルで、生放送や録画の講義を受けることができます。短時間の動画授業が基本で、チャットのようにコメントでの参加もできるようになっています。
料金体系
1,500円 /1ID(60分×6コマの動画)
参考:schoo
おすすめポイント
先述で紹介した2社の研修とは異なり、動画サイトに近いラフな感じがあり、親しみやすさはとても現代的です。一種のe-leraningサービスとなりますので、社内でどのように運用するかが大きなポイントになります。
参考:schoo
管理職研修を利用した企業の体験談
繰り返しにはなりますが、HRドクターを運営しているジェイックでは、「リーダーカレッジ」という管理職研修を提供しています。実際に、リーダーカレッジを利用された企業の体験談を紹介します。
アサヒグローバルホーム株式会社
元々トップ営業マンで店長になったBさんは、研修前は「自分が成果を出していけばよい」という意識が強かったのですが、研修後は、自分の成績を出すだけでなく、周囲を引っ張り、部下を成長させて、店も良くする、という風に考え方がだいぶ変わりましたね。
株式会社ライフ設計事務所
参加した社員が皆、実際の行動に移していることがよく分かりますね。研修を受けてから、私に「これから毎朝、部下全員へおはようメールを送ります」と報告して、自主的にやり始めたんです。 もともと技術屋でそんなことするタイプではないのに、マメに続けていて感心していますよ。
管理職研修のまとめ
管理職は、経営戦略や事業方針を形にして業績を生み出す“要”のポジションです。しかし、そこで求められる役割や責任は、自分が動いて成果をあげるプレイヤー時代とは異なるものになります。
だからこそ、新任管理職はもちろん、管理職それぞれが成長して次のステージに進めるように管理職研修を通じて支援することが大切です。
管理職研修を実施する場合には、管理職本人に不足しているスキルや資質を補うことが必要です。しかし、中堅中小企業における管理職向け教育は、体系だって教えられる人が社内にいない、そもそも対象となる新任管理職が少ないので社内では研修を実施できないといった問題が起こりがちです。
その場合は外部の研修会社の利用を考えるとよいでしょう。
HRドクターを運営する研修会社ジェイックでは、管理職を対象とした「JAICリーダーカレッジ」などを提供しています。
「7つの習慣®」やメジャーリーガーも実践していた原田メソッドなど、効果が実証されているフレームワークを用いるとともに、学びと実践を繰り返すカリキュラムによって、リーダーとして必要な知識や考え方、ノウハウを習得できるプログラムです。
ご興味あれば資料をダウンロードしてください。