欠勤や時短勤務の人の仕事をどう対応する?多様化する職場での受け止め方と対処法

更新:2025/04/20

作成:2025/04/15

欠勤や時短勤務の人の仕事をどう対応する?多様化する職場での受け止め方と対処法サムネ

現代の職場では、フレックスタイム制や時短勤務・リモート勤務など、自分のライフスタイルに合わせてさまざまな働き方が選ばれるようになってきました。この変化は、働き方や生き方に対する価値観の多様化やワークライフバランスの重要性が高まったことに起因しています。

 

こうした変化に伴い、過去と比べて職場で欠勤や時短勤務の人が増えることによって生じる「終わっていない仕事を誰が引き受けるのか?」「どのように業務を分担するのか?」といった問題が生じやすくなっています。

 

本記事では、欠勤や時短勤務が生じた場合の職場や個人への影響、適切な受け止め方と対処法を探ります。多様化する職場環境への理解を深め、相互補助の重要性を再認識するための参考にしていただければ幸いです。

 

<目次>

多様化する働き方

近年、人々の「働き方」「生き方」に対する考え方が大きく変わってきました。従来は「全員が週5日8時間勤務」といった画一型のスタイルでしたが、最近は価値観の多様化によりワークライフバランスや自分に合った働き方などが重視されるようになっています。

 

産休や育休の取得率も増加

従来と比べて産休や育休を取得する労働者の割合も増えており、厚生労働省が発表した「雇用均等基本調査(*1)」のデータによれば、令和4年度の育児休業取得率は、女性が80.2%、男性が17.13%に達しました。

 

特に男性の取得率が上昇傾向にあり、家族との時間を大切にする意識が高まっています。背景には、企業の育児支援制度の充実や、社会全体での育児に対する理解が深まったことが挙げられます。

 

産休育休からの復帰後は、時短勤務を選ぶ人や、子どもの看護休暇(急な体調不良や熱への対応など)を活用してやむを得ず休まなければならない人もおり、子育て世代の従業員のサポートや、欠勤時のフォロー体制を整えることは職場にとって必須事項と言えるでしょう。

 

※1参照元:https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/23/backdata/01-01-01-04.html

 

中高年層において介護取得の割合が顕著

介護休暇の取得も徐々に普及してきています。令和4年度の「雇用均等基本調査(*2)」によれば、令和3年4月1日から令和4年3月31日までの間に介護休業を取得した者がいた事業所の割合は1.4%(令和元年度2.2%)となっています。

 

1.4%という数字だけを見るとまだまだ低いですが、休業という形ではなく「時短勤務」「テレワーク対応」「フレックスタイム制の活用」など、介護のための援助措置を導入する企業も増えているようです。

 

高齢化社会が進展する中、介護を必要とする家族を持つ人が増え、仕事と介護の両立は重要な課題です。

 

一般社団法人日本経済団体連合会が2018年に発表した「介護離職予防の取り組身に対するアンケート調査結果(*3)」によると、調査対象のうち4割以上の企業が、社員の介護問題への支援を人事労務管理上の重要課題と位置づけており、職場環境や制度の改善・検討の必要性に迫られていることが分かります。

 

※2参照元:https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/71-r04/02.pdf
※3参照元:https://www.keidanren.or.jp/policy/2018/005.pdf

 

多様化する働き方に伴う業務の変化

変化する社会背景の中、代替要員をどう確保するのか等は、企業において重要な課題です。チームの生産性やモチベーションにも大きな影響を与えるため、慎重に対応しなければなりません。

 

まず、業務の引き継ぎや代替要員の確保が重要です。欠勤や産休、時短等の社員の業務をカバーするためには、他のメンバーがその業務を一時的に引き受ける必要があります。しかし、全ての業務をカバーできる適任者が常にいるわけではなく、業務の専門性や複雑さによっては、適切な代替要員を見つけることが難しい場合もあります。

 

このため、業務の可視化や、誰がどの業務を担当しているのかを明確にする、また業務の可視化や、ナレッジシェアリングの仕組みを導入する等を日頃から取り組むことが大切です。

 

次に、業務の再振り分けも必要です。欠勤や時短勤務が発生した場合、単に業務を他のメンバーに振り分けるだけではなく、業務の優先順位を見直し、重要なタスクにリソースを集中させることが求められます。

 

リソースの最適化によって、より重要な業務にメンバーが専念できるようになれば、業務の効率性が向上し、チーム全体の負担を軽減することが可能となります。

 

多様化する働き方が職場に与える影響

多様な働き方が進み、子育てやプライベートを重視したい個人にとっては働きやすい環境が整う一方で、代わりに業務を引き受けるメンバーにはネガティブな影響を与えてしまう場合があります。

 

個人への影響

個人への影響としては、メンバー内に欠勤や時短勤務、産休等が増えることで、業務量が増えてストレスや不安が生じることが挙げられます。

 

自分の業務とは別に追加の業務が発生すると、責任やプレッシャーを感じたり、残業になったりするケースも少なくありません。「全然仕事が終わらない」「自分の仕事に影響が出てしまう」などと自己評価が低下することもあります。

 

職場への影響

職場全体への影響では、チームの負担が増大し、モチベーションが低下するリスクがあります。

 

社員同士の相互補助が必要とされる場面が増える中で、「なぜ私たちが対応しなければいけないのか?」「ただでさえ人数が少ないのに、もう業務を捌ききれない」といった疑問や不満が生じて、職場の雰囲気や心理的安全性にも影響を受ける可能性があるでしょう。

 

育休産休や時短勤務、介護休暇などは従業員に認められた権利であり、働きやすい職場環境を維持するために重要な制度です。半面、残されたメンバーは業務負担を感じる場合もあり、課題に対処するためには職場全体での理解と協力が不可欠となります。

 

適切な受け止め方と対処法 -個人編-

職場において欠勤や時短勤務、産休等のメンバーが出た場合に、個人はどのように対処すればいいのでしょうか。ここからは適切な受け止め方と対処法を詳しくお伝えします。

 

【受け止め方①】自分の感情を認識する

感情の認識と整理は、ストレス管理において重要なステップです。

 

まずは、自分が感じている感情を明確にすることから始めましょう。ストレスや不安、怒りといった感情を無視することはできません。ネガティブな感情が起こっていることを受け入れ、何が感情を引き起こしているのかを分析することで、自己理解が深まります。

 

具体的には、日記をつける、瞑想をする、または信頼できる人に話すといった方法で、自分の感情を整理することが効果的です。

 

ストレスを軽減する方法を身に付けるのも有効です。運動や趣味、リラクゼーション法(ヨガや深呼吸など)を取り入れることで、心身の健康を保つことができます。

 

感情を認識し、受け入れることで、ストレスに対する耐性が高まり、より良い判断ができるようになります。自己理解のプロセスは、自己成長のためにも重要な一歩と言えるでしょう。

 

【受け止め方②】発想を転換しスキルアップのチャンスと捉える

発想の転換は、困難な状況を乗り越えるための強力な手段です。ほかのメンバーの業務を代わりに担当することによって新たなスキルを習得することは、自己成長の機会として捉えることができます。

 

たとえば、業務量が増えたり、他人の仕事が回ってきたりした場合に「嫌だな」「やりたくない」とネガティブに捉えるのではなく、効率化に取り組んだり他者の業務を体験したりすることで「新たな知識が手に入る」「業務フローがより理解できるようになる」「自分の市場価値を高めることができる」といったように発想を転換することがおすすめです。

 

実践しながらスキルを高めていくことで、専門知識を深めたり、新しい技術・経験を身に付けることもできます。

 

仮に他人の仕事を引き受けて失敗や困難を経験したとすると、瞬間は大変かもしれませんが、長期的な目線で見れば必ず成長の糧となります。また業務を通して、自分の強みや弱みを理解することで、自分自身を見つめなおすきっかけとなったり、業務フローの見直しや効率化に繋がったりする場合もあります。

 

発想を転換しスキルアップのチャンスと捉えることで、ポジティブな思考が育まれ、結果として、仕事へのモチベーションが高まり生産性も向上するでしょう。

 

【対処方法】優先順位をつけて対応する

他人の仕事が回ってきたときの対処方法として最も重要になるのは優先順位です。タスクを緊急性と重要性で分類することで、どの業務に最も集中すべきかを判断できます。時間管理のマトリックスをはじめとする手法を活用して、タスクを4つのカテゴリに分けると、効率的に時間を管理しやすくなります。

 

自分の仕事への影響を避けるためにも、時間管理を徹底することが求められます。スケジュールを立て、計画的に業務を進めることで、成果を上げることが可能です。困ったときには早めに上司や同僚に相談し、適切なアドバイスやサポートを求めるのも良いでしょう。

 

さらに、リソースの活用も重要です。社内ツールやプラットフォームを積極的に利用して、他のメンバーとコミュニケーションを取ったり、役割分担したりして、情報共有を図りましょう。業務の透明性が向上し、チーム全体の生産性が高まります。

 

適切な受け止め方と対処法 -管理職(人事・経営層)編-

職場で欠勤や時短勤務、産休等のメンバーが出た場合が出た場合に管理職(人事・経営層)がどのように受け止め、対処すべきかを見ていきます。

 

【受け止め方】職場の視野を広げるきっかけにする

管理職は、日頃から職場の視野を広げることが大切です。部署内や他部署との連携を強化することで、業務の効率化や情報共有が促進されます。具体的には、定期的なミーティングや共同プロジェクトを通じて、他部署との関係を築くのが有効です。

 

部署間のコミュニケーションが活性化し、共通の目標に向かって協力できるようになれば、欠勤や時短勤務等が発生した場合にも互いにカバーリングし合う土壌が育まれるでしょう。

 

また、チームワークの強化も不可欠です。メンバー間の信頼関係構築は、業務の円滑な遂行に欠かせません。欠勤や時短勤務、産休等が生じたときに応急処置的に問題解決を図るのではなく、チームビルディング活動やワークショップなどの取り組みを通じて、日頃からメンバー同士の理解を深めることが効果的です。

 

このような取り組みは、互いの状況を理解するきっかけにもなるため、職場の雰囲気が改善され、社員のモチベーションを高める要因となります。

 

【対処法】業務への影響をいち早く把握し、タスクの優先順位をつける

欠勤や時短勤務が発生した際には、管理職が迅速かつ柔軟に対応することが重要です。

 

まずは、業務のボリュームや締め切り、進捗状況などを確認し、業務への影響を把握しましょう。その後、タスクの優先順位を見直し、他のメンバーに業務を再分配します。

 

管理職が率先してメンバーとコミュニケーションを図り、チーム全体の状況理解を深めることで、必要なサポート内容や人員を把握でき、適切かつ迅速に対応が可能です。これにより、業務の円滑な進行を確保し、チーム全体の士気を保つことができます。

 

また、従業員が働きやすい環境を整備するために、日頃から「従業員が職場に何を求めているのか」を理解しておくことも重要です。たとえば、常に業務負担を感じていないか、働きづらさを感じる点がないかなどを把握しておかなければなりません。

 

定期的な面談やフィードバックを通じて、従業員が抱える問題点を早期に発見できれば、早めに適切な対策を講じられます。

 

他人の仕事が回ってきたら適切な受け止め方と対処法で乗り越えよう

記事では、多様化する職場において、欠勤や時短勤務、産休等の人の仕事が回ってきた場合の対処法や受け止め方を詳しくお伝えしました。

 

現代の職場環境は多様化が進み、フレックスタイムや時短勤務、リモート勤務など、個々のライフスタイルに応じた働き方が選ばれるようになっています。その一方で、誰かの仕事を代わりに引き受けなければならない状況も増えており、職場または個人で、適切に対応することが必要です。

 

体調不良や産休・育休、介護などにより休暇を取得する可能性は誰にでもあります。だからこそ、チーム内での相互補助の意識を日頃から高めておけば、特定の人に業務が偏らず、円滑に業務を進められる体制を築けます。従業員の連帯感が強まれば、職場全体の雰囲気も良くなり、社員のモチベーション向上や生産性アップにも繋がるでしょう。

 

多様な働き方の中で、柔軟な思考と協力を重んじる姿勢を育むことが、持続可能な職場環境を構築する上で最も重要なのです。

 

著者

小野 みか氏
一般社団法人日本心理的安全教育機構代表理事
合同会社MYGIFT 代表社員
小野 みか氏
1978年生まれ東京育ち。牧師である父親が運営するプロテスタント系教会で育つ。教会の結婚式で牧師と新郎新婦が行う「結婚教育」に豊かな人間関係の秘訣が全て詰まっていると気づき、教会の枠を超えて誰でも学びが受けられるように講演・研修活動を始める。全国35を超える地方自治体や、官公庁、上場企業の講師として全国を飛び回り活動をしている。登壇回数は600回超、動員実績はのべ30,000人を超える。参加者満足率98%と高い評価を維持し、国内最大手の結婚相談所にてマリッジアドバイザー教育、3万6千人を有する会員向け教育事業の企画プロデュース及び筆頭講師も務める。タカラトミー、出雲市などと共同で女性向け人生ゲーム「出雲縁結び人生ゲーム」を監修、女性が魅力あふれる人生の選択をゲームを通して体感できるようなイベントも開催している。

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