報連相とは?部下と上司、それぞれの実践ポイントを解説

更新:2023/09/07

作成:2021/08/05

高嶋 阿由里

高嶋 阿由里

株式会社ジェイック

報連相とは?部下と上司、それぞれの実践ポイントを解説

「報連相」は、報告、連絡、相談の頭文字をとった言葉で、ホウレンソウと読みます。

 

報連相は、社会人にとって欠かせないコミュニケーションスキルの一つです。

 

しかし、実際には、「報連相という言葉は知っている、報告・連絡・相談のやり方は理解していていてもキチンと実践できておらず損している」ビジネスパーソンは意外と多いものです。

 

記事ではまず、報連相の概要や目的、得られるメリットを解説します。また、後半では報連相を行なう際のポイントと、部下に報連相を指導する際のポイントを紹介します。

<目次>

報連相とは?

報連相とは、ビジネスにおけるコミュニケーションの基本となるものです。

 

どちらかといえば部下が上司に対して行なうようなイメージもありますが、決して上司-部下の関係などに限定されるものではありません。

 

この章では、まず、報連相の構成要素である「報告」「連絡」「相談」の意味を詳しく見ていきましょう。

報告の意味

報告は、依頼された業務の進行状況や問題点などを依頼者に対して知らせる「義務」です。

 

たとえば、業務が終了したら、「仕事が終わりました!」と作業完了の報告を行ないます。

 

また、仕事量が多かったりプロジェクトが長期間で続いたりする場合には、進捗状況を上司と共有するために定期的な報告することもあるでしょう。

 

報告の目的は、業務進行中や完了などの情報を共有することです。報告は、組織内の円滑な運営と信頼関係の構築に不可欠なものとなります。

 

依頼者は上司であることが多いでしょうか、例えば、顧客や他部門であることもあるでしょう。

連絡の意味

連絡は、一緒に仕事をする上司やほかのメンバーへの「気配り」です。具体的には、自分が得た情報を関連する人に共有し、役立ててもらうために行なうものです。

 

たとえば、商談の進捗を後々関係するCS部門や製造部門のなどに共有する、訪問先で聞いた競合商品への評価や感想を営業チーム内に共有するなども連絡にあたるでしょう。

 

また、自分が得た情報を、喜びそうな顧客に共有するのも連絡の一種です。

 

連絡をするうえでは、「この情報を欲しがっている人はいるかな?」「役に立つ人はいるかな?」と想像してみることが大切です。

 

なお、連絡には、決まったタイミングはありません。状況に応じて都度行なうものとなります。

 

いまの時代であればメールやチャットなど、相手の業務を邪魔しない連絡手段を使うことも「気配り」という意味で有効でしょう。

相談の意味

相談は、「問題解決」をするために必要なものです。具体的には、先輩や上司などに意見や解決策を求めるときに行なわれることが多いものとなります。

 

たとえば、新人が「この作業はどう進めれば良いのだろう?」と悩んだとき、上司や先輩に相談することで解決の糸口が見つかり、問題の早期解決につながりやすくなるでしょう。

 

相談で大切なのは、上司や他のメンバーに判断を委ねるのではなく、より正しい判断をするために相手の意見を聞き、判断材料を増やすための行動だということです。

 

相談は、「まわりの力を借りて成果をあげる方法」ともいえるでしょう。

報連相の目的

報連相には、大きく分けて3つの目的があります。この章では、各目的のポイントを解説しましょう。

情報の共有

報連相における第一の目的は、現状や事実を共有することです。営業報告や出張報告、会議の議事録などでは、事実を共有するための記録や書類を使用することが一般的になります。

 

報連相で情報共有する際には、事実(ファクト)と推察・意見などをしっかりと区分することが大切です。

問題の共有と解決

先述の情報共有と少し似ていますが、問題の場合は、以下のような報連相を通じて早く関係者に共有することで、トラブルの拡大を防いだり、早期解決や改善を取り組んだりすることができます。

  • 介護の現場でヒヤリハットにつながる事案があった
  • 原材料Aの納期が3日遅れることになった  など

緊急事態では、迅速かつ正確な問題共有が必要です。また、事実を簡潔に伝えることも重要でしょう。

トラブルの防止

報連相はトラブルを防ぐうえでも大切です。

たとえば、上司とメンバーの間に以下のような認識のズレがある場合、部下であるメンバーが報連相をすることでお互いの認識が一致し、ずれた指示やフィードバックが出てくるといったことを防ぐことができます。

  • 上司:3月末までに余裕で納品できるだろう
  • メンバー:急な障害対応で人的リソースが減っている、3月末の納品はかなり厳しい

人は、それぞれが持っている情報と価値観に基づいて物事を見る傾向があります。そのため、報連相を通じてコミュニケーションをしっかり行うことで認識ずれによるトラブルを防ぐことができます。

報連相で得られるメリット

組織で報連相がしっかり行われることで、さまざまなメリットが生まれます。報連相で得られる7つのメリットを詳しく解説します。

コミュニケーションが円滑になる

報連相は、行なうこと自体が上司とメンバーのコミュニケーションのきっかけになります。

 

たとえば、新人は上司に報告したり相談したりすることで、上司とのコミュニケーションを増やし、人間関係を構築することができます。そこから相互理解や信頼関係が深まることもあるでしょう。

周囲が状況を把握できる

各メンバーが報連相を行なえると、上司やほかのメンバーは「誰がどういう案件に携わっているのか?」や「チーム内にどういう課題が生じているのか?」などを把握できるようになります。

 

それぞれの状況がわかれば、上司や各メンバーはたとえば、「Aのサポートに入る」「余裕のあるBにAの仕事を手伝ってもらう」といった提案や対応も可能になります。

迅速に対応できる

たとえば、新人が「現場で昨日、このような出来事がありました……」と上司に報告をしたと仮定します。

 

経験豊富な上司は、新人の報告内容から「その出来事は、◯◯の工程を怠ったからでは?(正しいやり方を早く教えなければ!)」などのミスや課題に気付けることがあるかもしれません。

 

仕事を覚えたばかりの新人や若手の場合、知識や経験の不足から、ベテラン社員と比べてミスや問題に気付くことが遅れがちな傾向もあるでしょう。

 

しかし、報連相の習慣をつけていれば、上司は、報告からミスや課題に早く気付き、スピーディーな対処が可能になります。

周囲からフォローをもらえる

たとえば、オンライン上の営業日報などで各メンバーが商談状況などを報告すれば、お互いが抱えている案件や作業進捗などを把握しやすくなります。

 

また、たとえば、報告書に「来週から新宿エリアをまわります。

 

競合Aも動いているようなので……」などの情報を入れておけば、その内容を見た上司・メンバーから以下のような助言をもらいやすくなるかもしれません。

  • 新宿エリアのお客様は、製品Jより製品Kを好む傾向が高い……
  • 競合Aが推している新製品は、うちの製品Jとよく似ている……

報連相を通じて進捗やスケジュール、状況などを共有されていれば、上司やほかのメンバーは、フォローなどのタイミングを見極めやすくなるでしょう。

問題を解決できる

たとえば、現場に配属されたばかりの新人の場合、上司や先輩メンバーに話しかけづらかったり、自分が直面した問題をうまく伝えられなかったりなどの理由から、問題を一人で抱えがちなこともあるでしょう。

 

報連相の習慣を付けさせると、たとえば、「昨日こんなことがありました……」などの報告をきっかけに、本人も気付かなかった問題が見えてくることもあるでしょう。

 

これは新人などに限ったことではなく、報連相を通じて各メンバーの困りごとや懸念が共有されると、各メンバーが自身の経験や知恵を活かして解決策やアドバイスもしあえるようになります。

機会が生まれる

報連相による情報共有は問題解決だけでなく、機会の創出にもつながります。とくに「連絡」による情報共有は、イノベーションや新規施策の可能性につながります。

 

たとえば、「顧客からのこういう相談が増えている」という営業からの共有があることで、マーケティングや商品開発部門は早期に顧客ニーズの変化を掴み対応できるかもしれません。

 

また、「これが解決できるとこんな効果があるのだけど…」という情報がチームや部門内で共有されると「こうやれば解決できるよ」というアイディアやノウハウが出てくるかもしれません。

 

こうした報連相を通じた情報共有は、チームにおける改善や機会創出、イノベーションを生み出すきっかけにもなるでしょう。

部下の成長や機会につながる

報連相の習慣は、新人・若手と先輩・上司のコミュニケーションを増やす効果もあります。

 

コミュニケーション能力も鍛えられますし、若手にとっては上司や先輩の思考プロセスや経験値を吸収する機会になります。

 

こうした助言を通じた成果創出や成長機会、また、自分が提供した情報がチームの役に立ったりすることに気付くと、報連相の重要性や効果をさらに理解できるようになるでしょう。

報連相を行なうポイント

報連相の効果性を高めるには、以下5つのポイントを押さえることが大切です。

できるだけスピーディーに行なう

報告・連絡・相談すべき出来事が起きたら、なるべく早く報連相することが大切です。特にトラブルなどは、問題が大きくなる前に早めに報連相しましょう。

 

報連相が早ければ早いほど、迅速な課題解決が可能になります。

相手の状況に応じて適切なタイミングで行なう

報連相には、上司やほかのメンバーへの“気配り”の側面もあります。そのため、報連相を行なうときには、相手のスケジュールや業務を考えて、適切なタイミングを選ぶことも大切です。

 

最近は、ビジネスチャットなどを導入する会社も増えていますので、急がない連絡や相談などは、こうしたツールを活用することも大切です。

 

ただし、新人のうちなどは、上司に話しかけづらかったり、タイミングがわからなかったりすることもあるかもしれません。

 

新人の場合は、なるべく早く報連相することが優先と指導するといいでしょう。

適切なツールを使う

情報が埋もれないようにするために、情報整理が簡単なマネジメントツールを使うことも大切です。

 

特にいまの時代は、上司やメンバーが在宅勤務やリモートワークをしていて、そもそも出社していないケースも多いでしょう。

 

こうしたなかで、全メンバーが迅速な情報チェックやフィードバックをするには、オフィス以外の外出先などでも確認できるツールを選んだほうが効率的でしょう。

 

緊急度や会話の必要性、テーマ、相手に応じて、対面、電話、メール、チャットなどをうまく使い分けましょう。

 

とくに急ぎではない連絡などは、相手を邪魔しないツールを使うことも“気配り”として大切です。

情報を整理してから報告する

報連相では、効率よく情報を伝えるために結論から報告することも大切です。

 

また、何をどう伝えたら良いかわからない場合には、5W1Hのフレームワークなどを使って情報を整理させることも有効でしょう。

事実と意見を分ける

報連相では、客観的な事実と、自分の推測・意見などは、きちんと区別することが大切です。

 

たとえば、現場でヒヤリハットと思われる出来事が起きたと仮定します。

 

この出来事に対して、報連相をする本人の「よくあることなので、大した問題ではないと思います……」などの主観が入ると、報告を受ける側は適切な判断・指示を出せなくなることもあるでしょう。

 

報連相の内容には、どうしても「事を大きくしたくない」や「受注したい」といった本人の願望、また、経験値や知識による主観が入りがちです。

 

主観的な内容や見解、考察が悪いわけではありません。しかし、「事実」と「意見」は明確に切り分けて報連相することは徹底しましょう。

部下に報連相を指導する際のポイント

全メンバーが適切な報連相を行えるようにするには、新人や若手に報告・連絡・相談のやり方など指導することも必要です。

 

この章では、新人や若手、部下に報連相を指導する際のポイントを解説しましょう。

「報連相上手は仕事もできる」ことを伝える

いまどきの新人や若手は、一方的にルールや価値観を押し付けられることを嫌います。

 

そのため、上司や会社が口うるさく「報連相をしっかりやりなさい」や「報連相をもっとうまくなりなさい」と伝えても、それだけで報連相をちゃんとやろうとは思わないものです。

 

新人や若手、部下に報連相をやるようになってもらうには、報連相が必要とされる理由、とくに相手にとってのメリット、考え方をしっかり伝えて、「報連相上手は仕事もできる」を腹落ちさせることが大切です。

報連相により仕事がうまくいった事例を話す

報連相の必要性やメリットを腹落ちさせるには、報連相によって仕事がうまくいった事例を示すことも有効です。

 

たとえば、「迅速な報告が必要」ということを教える場合、「報連相を早く行なったことで得られた効果」と「1日遅れた場合に想定される問題」などを以下のように具体的に伝えると、報連相にスピードが求められる理由もリアルに想像可能となるでしょう。

 

「開発チームで起きたトラブルは、リーダーAくんが早く僕に報告してくれたから、あの程度の損失で済んだんだ。あの報告が1日遅かったら、取り返しのつかないトラブルになっていただろう……。」

上司や先輩が報連相を当たり前と思わない

報連相ができない部下やメンバーにも、それぞれに報連相ができない理由や事情があります。

 

その理由や事情が正当かということは置いておいて、たとえば「上司が忙しそうで話しかけづらい」「報連相する必要があると思わなかった」「すぐ次の商談が入ってうっかりしてしまった」等々です。

 

報連相がなかなかできない新人・若手には、相手の抱える理由や背景を想像し、理解する姿勢を見せることも大切です。

 

また、「あの件はどうなっているの?」などの質問を通じて、上司から歩み寄る姿勢を見せることも必要でしょう。

 

一方で、積極的に報連相をしてくれるメンバーには、その報連相による効果などを適切に評価し、「いつも早く報告してくれてありがとう。とても助かるよ。」などの感謝の気持ちを伝えることも、モチベーション維持に有効となります。

報連相がなかったときは「怒る」のではなく「教える」

たとえば、報連相ができない部下に「なぜ早く報連相しないんだ!お前のせいで◯◯の問題が生じただろう!」と厳しく怒ると、相手を萎縮させてしまう可能性があります。

 

萎縮してしまうと心理的な距離が生じして、報連相をするうえで更に迷いが生じるようになります。

 

従って、報連相が遅い・できないメンバーがいた場合、上司は、その理由を一緒に考えて寄り添う姿勢を持つことも必要です。

 

そういう姿勢で部下と関わり続けると、「この上司は自分のことを理解しようとしてくれる……」などの安心感から、報連相が苦手な理由なども話してくれやすくなるでしょう。

ピグマリオン効果を使う

ピグマリオン効果とは、「他者からの期待を受けることで、そのとおりにしようとする効果」のことです。

 

メンバーが上手な報連相、タイムリーな報連相などをしてきた際には、「○○さんはホウレンソウがうまいね!」と褒める、期待をかけて相手の自己肯定感や自己効力感を高めることで、報連相が徹底されやすくなるでしょう。

まとめ

報連相とは、業務上でコミュニケーションをとるための流れや必要事項をまとめたものです。報連相の構成要素である「報告」「連絡」「相談」には、以下の意味があります。

  • 報告:「義務」
  • 連絡:「気配り」
  • 相談:「問題解決」

報連相を行なうと、以下のメリットが得られます。

  • コミュニケーションが円滑になる
  • 周囲が状況を把握できる
  • 迅速に対応できる
  • 周囲からフォローをもらえる
  • 問題を解決できる
  • 機会が生まれる
  • 部下の成長や機会につながる

報連相を効果的なものにするには、以下のポイントを大切にする必要があります。

  • できるだけスピーディーに行なう
  • 相手の状況に応じて適切なタイミングで行なう
  • 適切なツールを使う
  • 情報を整理してから報告する
  • 事実と意見を分ける

また、新人・若手や部下に報連相の指導をする場合、以下のポイントを心がけるとよいでしょう。

  • 「報連相上手は仕事もできる」ことを伝える
  • 報連相により仕事がうまくいった事例を話す
  • 上司や先輩が報連相を当たり前と思わない
  • 報連相がなかったときは「怒る」のではなく「教える」
  • ピグマリオン効果を使う

なお、上司は、新人や部下が報連相をしやすい空気を作ることも大切です。

 

報連相しやすい空気を作ると共に、報連相をすることのメリットを感じてもらい、相手が積極的に報連相する組織をつくりましょう。

著者情報

高嶋 阿由里

株式会社ジェイック

高嶋 阿由里

明治学院大学卒業後、精密機器メーカーに勤務。新規事業をPJとして立ち上げから収益化までを行い、事業部にまで発展させる。その後、住生活関連のベンチャー企業に入社し、人事として社長直下で働いた後、ジェイックに入社。ジェイックでは、講師として受講者に寄り添い、現場でチームメンバーと協働して動ける「自立型人材」を育てる研修に特徴がある。

保有資格

「7つの習慣®」担当インストラクター、アンガーマネジメントファシリテーター、EQPI®トレーナー等

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