新入社員研修プログラムの作り方!設計の基本とカリキュラムの具体例・オンライン実施のポイントを解説

更新:2023/07/28

作成:2020/12/25

高嶋 阿由里

高嶋 阿由里

株式会社ジェイック

新入社員研修プログラムの作り方!設計の基本とカリキュラムの具体例・オンライン実施のポイントを解説

新型コロナウイルスの影響で働き方が大きく変わる中で、「新入社員研修のプログラムはどうすればいいか?」と相談をいただくことが増えています。

 

とくにテレワークを導入している会社からは、「新入社員研修もオンラインで実施するのか?」「オンラインで実施する場合にはどんなことを考慮すればいいか?」といったご相談も多くなっています。

 

記事では、新入社員研修を設計する時の基本なポイントからニューノーマルに対応するための注意点まで、新入社員研修の担当者が知っておきたいことを幅広く解説します。ぜひ参考にしてください。

<目次>

新入社員研修の目的とゴール

新入社員研修のプログラムを見直したり、考えたりするうえで、最初に確認しておきたいのが研修の目的とゴールです。新入社員にどのような人材になってほしいのか、研修を終えた時点で何を達成したいのか、目的とゴールを明確にしておきましょう。

 

新入社員研修は教えるコンテンツがある程度決まっており、かつボリュームも多いため、「何を教えるか?」「どう教えるか?」というところから検討を始めてしまいがちです。しかし、研修効果を高めるためには、ぜひ「目的とゴール」という原点に立ち返ることをおすすめします。

 

以下は、一般的に新入社員研修の目的・ゴールとなる3つの事項です。ぜひ自社なりにアレンジ、具体化して、目的・ゴールを設定してください。

 

 

学生から社会人への意識の切り替え

新入社員研修を受けるのは、つい最近まで学生だった若者です。入社後、早期に活躍してもらうためには、社会人マインド、つまり、ビジネスのプロフェッショナルとしての意識を植え付ける必要があります。

 

新入社員のほとんどは、アルバイト等の経験はあっても、正社員として働いたことなく、消費者としての感覚が強い中で日常生活を送ってきています。

 

一方で、社会人になるということは、「価値を提供して対価を受け取る」ことを生業とするわけです。

 

ここでいう「価値の提供と対価を受け取る」には2つの側面があります。一つは「個人として会社に価値を提供して、会社から給与を受け取る」という意味。もう一つは「会社の代表として顧客に価値を提供して、顧客から対価を受け取る」という意味です。

 

会社によって「社会人マインド」や「ビジネスのプロフェッショナル」が意味するものや新入社員に求めるレベルは変わってくるでしょう。しかし、学生から社会人、ビジネスのプロへの立場の変化は、どの会社においてもすべての新入社員に理解してもらう必要があります。

 

マインドセットを疎かにすると、会社からの指導や現場配属後のコミュニケーションでリアリティショック(入社前のイメージと現実とのギャップ)が生じやすく、モチベーションダウンや早期離職の原因となり得ます。

 

 

社会人として必要な基礎スキルの習得

新人研修においては、社会人として必要な基礎スキルの習得も大きな目的です。基礎スキルは大きくは、

 

 

  • 業種や職種に関わらず求められる社会人としての基礎スキル

Ex)ビジネスマナー、PCスキル、ロジカルシンキング等

 

  • この会社で働くうえでのルール

Ex)勤怠に関するルール、基本的なシステムの扱い方、各種申請の仕方等

 

  • OJTの実施を前提とした業務で必要なスキル

Ex)営業であれば…商品・サービス知識、商談の基本、顧客管理システムの見方等

ITエンジニアであれば…プログラミングの基礎知識等

 

の3つに分けることが出来ます。

 

 

業種や職種に関わらず求められる基礎スキルに関していくつかポイントを解説すると、ビジネスマナーについては、基本となる「型」と「心」をしっかり理解してもらうことが大切です。

 

一つひとつのマナーをただ説明するだけでなく、「なぜそのような振る舞いが必要なのか」「どういったマインドで振る舞えばいいのか」を併せて教えることで、実践する意味付けを行なったり、TPOに合わせたアレンジを出来るようにしたりすることが大切です。

 

また、スマートフォンに慣れ親しんだ若者世代は、意外とパソコンスキルが低いケースもあります。ブラインドタッチが出来なかったり、ショートカットキーを使えなかったりすると、業務効率にも差も出がちです。内定者時代に確認して対応を考えておくことがおすすめです。

 

 

能力を発揮するための「組織社会化」

新入社員研修において、スキルの習得と同じくらい大切なのが、組織社会化のプロセスです。組織社会化とは、新たに組織に加わったメンバーが、組織の理念や歴史、暗黙知や規範、言葉を獲得して、組織に適応するプロセスを指します。

 

研修としては見落とされがちですが、個人が組織に参入する時には、必ず組織社会化の過程を通過する必要があります。事前に獲得すべき事項をリストアップ、設計しておくことで、新入社員がスムーズに組織に馴染み、持っている能力を発揮できるようになります。

 

組織社会化は、大別すると下記の6分野でなされる必要があると考えられています。

 

  • ミッションやビジョン、バリューなど組織の目標や価値観
  • 上記にも関連する会社の沿革や事業の歴史
  • 組織構成や意思決定のされ方
  • 業界用語や社内用語などの言語
  • 組織メンバーの顔と名前の一致等から始まる人間関係
  • 役割を果たすために必要な職務スキル

 

6つのうち、職務スキルは社会人としての必要な基礎スキルで検討済みです。残り5つの分野に関して、「自社の場合はどのような事項が該当するか?」をリストアップして研修に組み込むことがおすすめです。

 

研修プログラムは3つのポイントを意識して作る

効果的な新入社員研修プログラムを設計するうえでは、以下3つのポイントは基本として意識しておきたいところです。

 

 

ゴール設定

繰り返しになりますが、何よりもまず研修のゴールを設定しておくことが重要です。研修終了後、新入社員にどうなっていてほしいのかを明確にしましょう。

 

ゴールを設定することで、何をどのように教えれば良いかが明確になります。なお、新入社員研修の場合、「現場配属後にどれぐらいの水準で実践できているか」、「研修終了の時点でどのような状態になっていればいいか」という2つの時間軸でゴールを設計することがおすすめです。

 

 

アクティブラーニング

新入社員研修は、働いたことがない新入社員を現場配属できるところまで鍛える短期速習プログラムです。従って、目的とゴールでも確認したように教える内容が幅広く、ボリュームも多くなります。

 

その結果として新入社員研修に慣れていない担当者がプログラムを組むと「知識をインプットする研修」になりがちです。

 

しかし、知識をインプットする座学タイプの研修は、最も研修の効果性が低いことが分かっています。また、座学タイプの研修で知識をインプットすると、「知っている=出来るつもり」になり、現場配属後にトラブルが起きがちです。

 

研修効果を高めるうえでも、参加者が主体的に学ぶアクティブラーニングを導入しましょう。例えば、グループ討議やプレゼン、新入社員同士での教え合いなどを導入するのがおすすめです。また、研修の中に「アウトプットの機会」をしっかりと設けると、研修内容の定着率がぐんと上がります。

 

 

OJTとOff-JTの組み合わせ

インプット・アウトプットをうまく組み合わせても、やはりOff-JTだけでは、実践的なスキルは身に付きません。そうした実践的な能力やノウハウは、OJTで補完しましょう。

 

学んだことを実践してもらうだけでなく、その後適切なフィードバックを行なうことも重要です。実勢とフィードバックの繰り返しで、ノウハウ・スキルをしっかり落とし込み、自分のものにしてもらいましょう。

 

新入社員研修カリキュラムの具体例

講義に熱心に聴き入っている若手ビジネスパーソンたち

新入社員研修の具体的なカリキュラム例をいくつかご紹介します。「新入社員研修の目的とゴール」の章で取り上げた3つのゴールに分けてご紹介しますので、ぜひ研修プログラム作りの参考にしてください。

 

 

「学生から社会人への意識の切り替え」を実現するカリキュラム

  • 社会人としてのマインドセット
  • 給与をもらうプロとしての心構え
  • 仕事に対する責任感
  • 顧客への貢献
  • 成果を上げ成長するための考え方
  • 主体性
  • インサイドアウト
  • 時間の価値
  • 新入社員に求められる姿勢と行動

 

 

「社会人として必要な基礎スキルの習得」を目指すカリキュラム

  • 業種や職種に関わらず求められる社会人としての基礎スキル
  • 社会人としてのビジネスマナー

Ex)挨拶、敬語、ビジネスメール

  • コンプライアンス

Ex)個人情報の扱い方、インターネットやSNSとの付き合い方

  • 顧客対応

Ex)電話応対、来客対応、名刺交換

  • 報連相
  • タイムマネジメント
  • この会社で働くうえでのルール

ex)就業規則、勤怠や経費等の申請方法、仕事で必要なシステムの基本的な扱い方

  • 配属に向けたビジネス基礎
  • 営業:商品・サービス知識、商談の基本、顧客管理システムの見方等
  • ITエンジニア:プログラミングの基礎知識等

 

 

「能力を発揮するための組織社会化」を目指すカリキュラム

  • ミッションやビジョン、バリューなど組織の目標や価値観
  • 上記にも関連する会社の沿革や事業の歴史
  • 組織構成や意思決定のされ方
  • 業界用語や社内用語
  • 組織メンバーの顔と名前の一致

 

ニューノーマルに向けた新入社員研修プログラムのポイント

新型コロナウイルスの影響を受けて、働き方が大きく変わりつつあり、テレワークを恒久的に取り入れる会社が増えています。テレワークを前提にした場合、新入社員研修のカリキュラムにも変更が必要です。

 

テレワークを導入している場合は、ここまで紹介したマインドセットや基礎スキル、組織社会化のプログラムを設計する中で、とくに以下の要素に注意を払うと良いでしょう。

 

 

「○○社の一員」としてのエンゲージメント形成

テレワークでは上司や同僚とのコミュニケーション頻度が落ち、また、自分が「○○社に入社した/所属している」という意識が希薄になりがちです。従って、「学生から社会人」への意識切り替えと同じぐらい、「学生→○○社の一員」という意識形成をプログラムに盛り込む必要があります。

 

これまでは「○○社の一員」という意識は、研修の休憩時間に同期と雑談して仲良くなり、長い新入社員研修期間を人事や同期と過ごし、オフィスで先輩社員に声をかけられる中で、自然と形成されていました。

 

従って、上記を代替するプログラムを意識的に実施することが大切です。まずは「同期との人間関係」を形成する、そして「先輩社員や幹部との交流機会」を作りましょう。

 

交流機会の創出とエンゲージメント形成を同時に行なううえでは、組織社会化におけるミッションやビジョン、バリューなどの共通目標や価値観の浸透、歴史や沿革などの学習にウェイトを置くこともおすすめです。

 

 

オンラインを前提とした報連相や主体性の発揮

テレワーク環境では、職場での報連相もオンラインで行なわれます。メールではなくチャットツールでコミュニケーションを取る企業も増えてきました。

 

今までの職場環境では、分からない点や質問があった時、前を向けば人事や上司がいたかもしれません。しかし、テレワーク環境では、能動的に「チャットする」「メールする」「電話する」「テレビ会議の時間をもらう」などの行為をする必要があります。

 

慣れれば当たり前のことですが、まだ会社や人に馴染んでいない新入社員にとっては、心理的なハードルがかなり上がります。対面環境だった時以上に求められる「コミュニケーションにおける主体性」を、具体的にどのように発揮するかをしっかりと教えましょう。

 

また、研修プログラムを実施するうえでも、オンラインになると“ちょっとした疑問”や“モヤっとした何か”が対面よりも拾いにくくなるということを前提に、コミュニケーションの仕組みを作ることが大切です。

 

例えば、全体での朝礼や夕礼を終えた後に、「まだ少し残っているから、何か質問したいこと、相談したいことがあれば声をかけて」と意図的に声をかけやすい場を作ったり、5分程度の1対1での会話の時間を順番に設けるといった工夫です。

 

 

オンライン+リアルのブレンド型教育の構築

今後は、テレワークを導入したり、新入社員人数が多い会社では感染防止を考えたりして、オンライン+リアルのブレンド型教育が増えるでしょう。

 

オンライン研修は、感染リスクの回避と同時に、移動時間やコストが要らない大きなメリットがある一方で、実技を行なったり、人間関係を一気に深めたり、感情的な交流をしたりすることは難しいというデメリットもあります。

 

その中で増えているのが、オンライン研修とe-learning、そしてリアルでの対面研修を混ぜ込むブレンド型学習(ハイブリッド学習)です。

 

オンライン研修をベースにしながら、ピンポイントでリアルの集合研修を混ぜ込む形で行ない、リアルの集合研修では、実技トレーニングなど、リアルでしか出来ないことを重点的に行ないます。

 

 

4:2:4の法則における「研修後の4」の重視

研修を成功させる法則として広く知られているものに「4:2:4の法則」があります。これは、研修による行動変容の実現に対して、「研修前の意識付け:研修そのもの:研修後のフォロー」が4:2:4の割合で影響するというものです。

 

オンライン研修では、リアルの空間を共有していないため、研修が終了してオンラインの研修との接続を切った瞬間に、精神的な接続も切れてしまいます。そのため、質疑による理解の促進、実践へのブリッジング、またテレワークであれば実践時における疑問の解消など、実践後のフォローがされづらくなります。

 

従って、オンライン研修&テレワーク環境下では、4:2:4の「後ろの4」、つまり「研修後のフィードバックやレビュー、フォローアップ」がより重要になります。始めからオンラインで進めている分、オンライン上でのフォローがしやすいという利点もあります。

 

講師&受講者によるチャットグループを使って、実践状況の共有や質疑応答を行なったり、移動時間が必要ないメリットを生かしてフォロー研修をこまめに行ったりすることがおすすめです。

 

なお、オンラインの新入社員研修におけるプログラム設計の具体的なポイントは、以下の記事もご覧ください。

 

まとめ

記事では、新入社員研修の目的やゴール、新入社員研修カリキュラムを設計するうえで基本となるポイントやカリキュラムに盛り込むべき内容の具体例を紹介しました。

 

2021年入社の新入社員研修は、感染拡大の防止やテレワークの拡大を受けて、今までとは違うプログラム実施を検討する企業も増えています。オンライン研修やテレワークに対応する「ニューノーマルに向けた新入社員研修プログラムのポイント」も参考に自社に合ったプログラムを構築してください。

著者情報

高嶋 阿由里

株式会社ジェイック

高嶋 阿由里

明治学院大学卒業後、精密機器メーカーに勤務。新規事業をPJとして立ち上げから収益化までを行い、事業部にまで発展させる。その後、住生活関連のベンチャー企業に入社し、人事として社長直下で働いた後、ジェイックに入社。ジェイックでは、講師として受講者に寄り添い、現場でチームメンバーと協働して動ける「自立型人材」を育てる研修に特徴がある。

保有資格

「7つの習慣®」担当インストラクター、アンガーマネジメントファシリテーター、EQPI®トレーナー等

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