新人研修のプログラムは、どれも同じようなものに見えることも多いものです。しかし、新人研修の効果性を高めるには、採用する人材の層などによって内容を変えることも大切になります。
中小企業の新人研修は、自社で採用した新人をマインド面から含めてしっかり育て、離職を防いだうえで、OJTでのスムーズな成長につなげることが大切です。
記事では、まず、中小企業の新人研修における4つの課題を確認します。
確認したうえで、新人研修を得意とする研修会社の知見を踏まえて、中小企業における新人研修のポイント、研修で行ないたい内容と工夫を紹介します。
記事の後半では、内製での新人研修が難しい中小企業に外部研修をおすすめする理由なども解説していきます。参考になれば幸いです。
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<目次>
中小企業における新人研修の課題
中小企業の新人研修には“中小企業ならでは”ともいえる以下の課題が生じやすいものです。
研修の担当者がいない
中小企業の場合、企業規模が小さいため、専任の教育担当者や社内トレーナーがいないことが多いでしょう。
人事担当者が採用から教育、人事評価、労務までを兼務していたり、そもそも総務が人事業務を兼務していたりするようなこともあります。
なお、公益財団法人 中小企業研究センターの「中小企業白書 2007年版」では、40.1%もの中小企業が「指導できる社員・職員がいない」と答えています。
研修する体制が整っていない
たとえば、大企業や中堅のように毎年数十名、数百名規模の新入社員を受け入れているのであれば、会場確保やスケジュール調整などの準備が必要となり、ある意味では、規模が大きいだけ研修の実施体制なども整っています。
一方で中小企業の場合は、1~数人の少人数採用になることも多いです。
少人数採用の場合、研修内容を土壇場で考えたり対応したりしてもどうにかなってしまうため、研修を続ける仕組みや体制が軽んじられがちになります。
研修体制がない場合、教育ノウハウの蓄積や共有、改善なども難しくなります。
研修の予算がない
先述の「中小企業白書 2007年版」では、23.9%もの中小企業が「教育にコストをかけられない」と答えています。
近年では、コロナショックやウクライナ侵攻などの影響で、人件費・輸送費・原材料費などのさまざまなコストが高騰しています。
また、大企業と比較すると、中小企業の利益率や労働生産性は低いことも多く、教育研修費などを出しにくい構造であることも多いのです。
こうした背景から考えても、中小企業が新入社員の研修などに費用を割きづらい傾向は、今後もなかなか改善が難しい部分もあるでしょう。
入社人材の意欲
大手企業と比べると、中小企業の新卒採用は難易度が高いです。知名度や規模の問題から、母集団形成にも苦労したり、自社をはじめから第一志望にしてくれている学生は少なかったりします。
あくまで一般的な傾向となりますが、結果として、大手企業と同じレベルの新入社員を確保する難易度は高く、たとえば、基礎学力や思考力、また、働くことへの前向きさや意欲などに課題も生じるでしょう。
また、大手企業の場合には、採用人数が多いことから、同期内での競争意識も生じるため、新人研修をするなかでも、ある種の対抗心やライバル意識をあおったりすることも可能になります。
一方で中小企業の場合には、同期は数人になるため、競争意識が生まれることも少なく、状況としては熱心に学び行動する意識をつくることが難しい側面もあります。
中小企業における新人研修のポイント
中小企業の場合、新人研修を限られたリソースのなかで実施せざるをえない現状があります。また、先述のとおり、働くことに対する意識や基礎能力のレベルなどに課題が生じがちです。
こうしたなかで研修の効果性を高めるには、以下のポイントを大切にするとよいでしょう。
社会人としての意識を身につける
今まで学生や消費者だった新入社員は、企業への就職を通じて「ビジネスのプロ」になることが求められます。
そのため、中小企業の新人研修では「社会人になる」とはどういうことなのか、「ビジネスのプロ」というのはどのような意識が求められるのかをきちんと伝え、今から仕事するうえでの意識改革をする必要があります。
また、OJTに入ったあとスムーズに成長してもらうためには、「仕事を教わるためのマインドセット」も必要です。
“教わるマインドセット”とは、先輩社員や上司から可愛がられる新人、素直に学びを吸収する新人になることであり、現場配属後の成長スピードの差につながってきます。
ビジネスマナーを身につける
ビジネスマナーは、お客様・取引先などの相手を不快にさせず、信頼関係を構築する土台として大切なものです。
ビジネスマナーの本質を理解し、きちんと身につけてこそ、さまざまなビジネスシーンでの応用ができるようになります。
新人を早期の即戦力化につなげるうえでも、ビジネスマナー研修は早めに行なう必要があるでしょう。
特に中小企業の新入社員の場合、“敬語やビジネスマナーに自信がない”という層も多いものです。
昔と比べるとビジネスカジュアルやリモートワークが当たり前になり、ビジネスマナーの基準も多様化しています。
ただし、社会人の場合、自分よりも20歳上、30歳上の人と仕事をすることもあるため、初期にビジネスマナーの「型」を知っておくことはとても大切です。
OJTで教えやすい状態をつくる
中小企業の新人研修では、OJTで教えやすい/成長しやすい状態をつくることが大事なポイントの一つです。
具体的には、先述のような仕事を教わるためのマインドセットであったり、メモを取る・振り返るといった行動習慣、また、報連相であったりします。
たとえば、ビジネスマナーや敬語は少し課題があったとしても、継続して取り組むうちに慣れてくる側面もあります。
一方で、OJTで学ぶ姿勢に課題があると、先輩社員やOJT担当者との関係性がうまくいかなくなり、結果的に成長が遅れたり、人間関係に課題を感じたりすることもあるでしょう。
中小企業で新人研修を行なう際の工夫
中小企業が少ないリソースのなかで効果性の高い新人研修を実施するには、以下の工夫をすることも大切です。
業務の標準化・マニュアル化
中小企業の場合、業務が属人化していることが多いものです。
属人化した業務で「先輩の仕事を見て覚えろ」というスタンスの育成をやると、たとえば、先輩AさんとBさんの作業のやり方が大きく異なり、OJTに入った新人を混乱させてしまうこともあります。
属人化の問題を解消するには、現場の仕事を標準化し、誰が携わっても同じ手順ややり方になるようにすることが大切です。
また、標準化とともにマニュアル化を進めると、たとえば、「マニュアルを見て予習・復習をしてもらう」などの対応も可能になり、OJTでの吸収も良くなるでしょう。
OJT担当者の育成
新人を効率よく戦力化するには、新人に指導するOJT担当者のレベルを上げることも大切です。OJT担当者への研修やトレーニングでは、以下のような内容を盛り込むとよいでしょう。
- OJTのゴール
- 教え方の5ステップ
- 動機づけのポイント
- タイプ別のコミュニケーション
- フィードバックのやり方 など
「教え方の5ステップ」とは、新人教育がうまい企業が意識しているポイントの総称です。詳細は、以下の関連記事をチェックしてください。
eラーニングの利用
教育に十分な人的な工数を投下できない場合、eラーニング(イーラーニング/e-Learning)を活用することも一つの方法です。
eラーニングとは、情報システム、動画などを用いて行なう学習のことになります。
eラーニングを活用すれば、以下のような学習を自分のペースで進めてもらうことも可能になるでしょう。
- Off-JT前にビジネスマナーの基礎を学んでもらう
- 基礎研修で教えた内容をeラーニングで復習してもらう
- プログラム言語の基礎知識を身につけてもらう など
補助金の活用
金銭的コストがネックで新人教育を充実できない場合は、以下のような補助金・助成金を活用するのも一つの方法です。
- 人材開発支援助成金
- キャリアアップ助成金 など
助成金を利用する場合、支給要件に合った実施計画の作成などの準備・手続きが必要となります。支給要件は年度によって変わることもあります。
利用時は必ず厚生労働省や自治体などの最新情報を確認してください。
参考:人材開発支援助成金(厚生労働省)
参考:キャリアアップ助成金(厚生労働省)
公的機関の新人研修
全国の商工会議所や東京都中小企業振興公社などの公的機関でも、新人研修を実施している場合があります。
具体的な内容は機関によって異なりますが、たとえば、東京都中小企業振興公社では、2019年にビジネスマナーや社会人基礎力、コミュニケーション力などを3日間で学ぶ研修を実施しています。
新人研修のコストを抑えたい、新人研修を実施できる担当者がいないなどの場合、地域の公的機関に問い合わせてみるのも一つの方法です。
参考:新入社員研修(3日間)~デキる新入社員になるためのビジネスマナー、社会人基礎力とプロの仕事力に必要不可欠な考え方と基本能力の習得(公益財団法人 東京都中小企業振興公社)
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外部研修のすすめ
中小企業で自社に講師を担当できる社員がいない場合、新人を外部研修に派遣するのがおすすめです。外部研修への派遣には、内製研修にはない以下3つのメリットがあります。
社外同期を作れる
中小企業に入社した新人は、同期がとても少なかったり、配属先で同年代の人がいなかったりするなどの理由で、孤独を感じたりすることもあります。
そこで、複数の中小企業から参加する公開型の新人研修を使うと、新入社員は社外同期と知り合えます。
同じプログラムを一緒に学ぶ仲間とのつながりは、今から社会人として活躍するうえで、プラスになることが多いでしょう。また、良い意味でのライバル意識などを作ることもできます。
緊張感が生まれやすい
中小企業の場合、企業規模が小さいため先輩などと仲良くなりやすい特徴があります。
ただ、新人歓迎会などで先輩と仲良くなりすぎた場合、先輩から社内研修を受けるときに、馴れ合いの進行になる側面もあるでしょう。
馴れ合いを防ぐよう外部研修にすれば、講師や社外同期は初対面の相手となります。適度な緊張感のなかで、メリハリのある学びができるでしょう。
第三者のほうが指導しやすい
たとえば、以下のようなビジネスマインドの話をするとき、「給与を支払っている企業側」から伝えると、「都合のいいことを教えようとしている」といったようにとらえられたりして、新人の違和感につながる場合もあります。
- 「給与の3倍は稼ぐ必要がある」
- 「新人のうちは給与をもらいながら学ばせてもらっている状態」
- 「上司・先輩から可愛がられる新人になる」 など
こうしたビジネスマインドの話は、第三者からのメッセージとして伝えたほうが、新人の心に刺さりやすいです。また、内製と外部の研修を組み合わせる場合、以下のように考えるとよいでしょう。
- 納得してほしいビジネスマインドは「外部研修」
- ビジネスマナーなどの基礎スキルは教えられる人の状況に応じて「外部or内部」
- 自社が大切にしている独自の価値観や共通言語は「社内研修」
- 業務で必要な実務スキルは「社内でのOJT」
おすすめ新入社員研修
HRドクターを運営する研修会社ジェイックでは、中小企業におすすめの新人研修を2種類提供しています。2つのおすすめ新入社員研修の特徴を紹介しましょう。
仕事の基礎の基礎
4月の本研修2日間、7月のフォロー研修1日間、合計3日間のプログラムです。中小企業の新入社員に不可欠となる、以下の内容を身につけていく新人研修となっています。
- 企業に貢献する社会人マインド
- ビジネスマナー
- 目標設定と達成スキルの基本
- 時間管理の方法
- ホウレンソウの重要性と方法 など
3ヵ月後のフォロー研修では、「春に決めた目標を目指せているか?」や「企業の期待に応えられているか?」などを振り返り、初心を取り戻させます。
「仕事の基礎の基礎」を受講すると、社会人としての心構え、また、先輩やOJT担当者が教えやすい状態への行動変容を実現できるでしょう。
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新入社員研修PRO
新入社員研修PROは、全世界4,000万部のベストセラー「7つの習慣®」をもとにした、新しい時代やビジネス環境のなかで求められる“プロ意識”を徹底的に醸成する研修内容です。
すでに成長意欲がしっかりしていて、働くことに前向きな状態の新入社員に対して、「プロとして成果を上げるための思考パターン」を身につけるプログラムになります。
新入社員研修PROは、学びを加速させる「4:2:4の法則」に基づき、以下3つを大切にするプログラム設計となっています。
- 4:研修前のマインドセット
2:質の高い教育コンテンツ
4:研修後の行動変容・継続
新入社員研修PROは、対面orオンライン、公開セミナーor講師派遣から選択可能です。
採用レベルにある程度の満足があり、入社後に自立するプロ社員を育てたい人は、新入社員研修PROを選ぶとよいでしょう。
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まとめ
中小企業の新人研修には、以下の課題が生じやすい傾向があります。
- 研修の担当者がいない
- 研修の体制が整わない
- 研修の予算がない
- 入社人材のレベルと意欲
こうした課題を抱える中小企業が新人研修を実施する場合、新入社員の戦力化に必要となる以下3つのポイントを中心にプログラム設計していくとよいでしょう。
- 社会人としての意識を身につける
- ビジネスマナーを身につける
- OJTで教えやすい状態をつくる
なお、コストや人手不足などの問題で社内での研修実施が難しい場合、自社での内製と外部研修を組み合わせるのがおすすめです。
HRドクター運営する株式会社ジェイックでも、記事内で紹介したとおり、2つの新人研修「仕事の基礎の基礎」と「新入社員研修PRO」を提供しています。
効果性の高い外部研修を探している方は、以下のページから記事をダウンロードしてみてください。
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