高卒の新入社員は、大卒新人とは異なる“高卒ならではの特徴”があります。
また、HR分野では、「7-5-3」ともいわれるように、新卒の入社3年以内離職率は、中卒7割、高卒5割、大卒3割となっています。
したがって、高卒社員を採用・戦力化していくには、高卒の特徴に合ったフォローや仕組みづくりが必要です。
記事では、まず、新人・若手研修に強い研修会社としての視点も踏まえて、高卒新入社員の特徴と彼らのフォローをする重要性を確認します。
確認したうえで、後半では、高卒新入社員に必要な研修と、高卒新人向けの研修を成功し戦力化していくためのポイントを解説します。
<目次>
高卒新入社員の特徴
高卒新入社員を受け入れるうえでは、高卒の就職活動における独自ルールや、高卒人材の特徴を知っておく必要があります。
特殊な就職活動
高校生の場合、社会全般への知識・経験が乏しいうえに学業も忙しいことから、原則として学校による斡旋やハローワークを通じた仕組みのなかで、就職活動を行なうようになっています。
また、高校生の就職活動は、応募できるのが“1人1社”という1社ルールが原則になっています。
1社ルールは、1社目で内定をもらえなかった場合にのみ、2社目に応募できるというものです。(一部地域では、2社以上も解禁済みですが、2023年時点では1社ルールが運用されているエリアが大半です)
高卒採用を希望する企業は、ハローワークに申し込みを行ないます。そして、ハローワークから発行された求人票は、各高校に送られる流れです。
求人票を見た高校生が、学校推薦を受けたうえで面接などの就職活動に進んでいきます。
ただ、人によっては、「◯◯の受験が難しいなら、就活に切り替えてみては?」などの先生の提案から、受け身の姿勢で就職活動に入っていくこともあります。
つまり、高校生の場合、そもそも大卒のようにナビサイトなどを通じて多数の企業を見て、企業のなかから何十社もの説明会に参加して、選考での合格/不合格を体験しながら内定を経て、内定承諾する大学生の就活は行なわないということです。
そのため、高卒と大卒では、就活で醸成される就業意識や“この企業を選んだ”という自覚が大きく異なり、意識や自覚の違も離職率の高さにつながる要因、また、育成のハードルになりうると考えられます。
早期離職率の高さ
高卒の新入社員は、大卒と比べて早期離職率が高くなっています。
冒頭でも紹介したとおり、HR分野では「7-5-3」といわれており、入社3年以内の早期離職率は、中卒7割、高卒5割、大卒3割となっていました。
なお、最近では、中卒・高卒の離職率が多少改善しており、中卒7割-高卒5割まではいかなくなっています。しかし改善しても、中卒・高卒の離職率は、大卒と比べれば依然として高いです。
厚生労働省が令和4年10月に公表したデータ(新規学卒就職者の離職状況(平成31年3月卒業者))によると、高卒・大卒の新規学卒就職者の就職後3年以内離職率は、以下のとおりになります。
- 高卒:35.9%
- 大卒:31.5%
具体的な離職率は、事業所規模や業種などによっても変わってきます。ただ、大卒よりも高卒のほうが早期離職しやすい傾向は、大半の企業に共通しています。
出典:新規学卒就職者の離職状況(平成31年3月卒業者)を公表します(厚生労働省)
社会経験の少なさ
高校生の多くは、学業や部活動が忙しかったり親の収入のなかで生活していたりしているため、大学生のようにアルバイトやインターンシップなどを通じて社会経験を積んだ経験が少ないケースも多いです。
ベネッセ教育総合研究所の「第1回子ども生活実態基本調査報告書」によると、高校生の約8割にアルバイト経験がないことがわかっています。
こうした点も就活のやり方と併せて、「正社員として働く」感覚がない要因です。
出典:第1回子ども生活実態基本調査報告書(ベネッセ教育総合研究所)
高卒新入社員をフォローする重要性
高卒新入社員をフォローするうえでは、以下2つの目的・ゴールがあります。
早期離職を防ぐ
高卒に限らず、新入社員の早期離職が生じた場合、企業には以下の問題が生じやすくなります。
- 採用コストが無駄になる
- 人員構造の最適化など、中長期的な計画がくるってしまう
- 新たな人材を採用せざるをえなくなる
- 採用担当者や受け入れ部署の負担が増加する など
高卒の場合、先述のとおり、就職活動の特徴や社会経験の少なさから早期離職率が高くなっています。したがって、高卒新人の早期離職を防ぐフォローは、大卒以上に注力する必要があるでしょう。
早期戦力化による生産性向上
早期戦力化も高卒に限ったことではありませんが、新人が早く戦力になれば、戦力が増えただけ上司や先輩社員の負担が減り、組織の生産性も向上します。
社会経験のない高卒社員のフォローはもちろん大変なことですが、丁寧なフォローで早く戦力になってもらったほうが組織のためにもよいでしょう。
高卒新入社員に必要な研修
高卒新入社員向けの研修を通じて、“早期離職の予防”と“早期の戦力化”という2つの効果をえるためには、以下の要素をプログラムに入れる必要があります。
社会人としての心構え
高卒新入社員は、先日まで高校生だった未成年です。さらに大学生と比べると、社会との接点やアルバイトをした経験も少ない傾向があります。
大卒の新入社員と比べると、「見知らぬ大人とコミュニケーションをとる」「お金をもらって働く」ことへの意識も薄いでしょう。
彼らに新入社員研修を通じてビジネスのプロになってもらうためには、最初に以下のことをきちんと伝え、本人にもじっくり考えてもらい、学生気分を払拭する必要があります。
- 社会人とは何か?
- 給与をもらう正社員としてどういう心構えが必要か?
- 仕事に対する責任とは何か?
OJTを通じて早く仕事を覚えて戦力になってもらうためには、素直に学びを吸収するうえで欠かせない「仕事を教わるための心構え」も必要となるでしょう。
ビジネスマナー
ビジネスマナーは、仕事で関わる人から信頼され、良好な関係のなかで成果を出すための土台になるものです。
必要なビジネスマナーは企業や職種によって異なりますが、おおむね以下のような基本を教えたうえで、ロープレや現場での実践をしていく必要があります。
- あいさつ
- 身だしなみ
- 名刺交換
- 敬語の使い方
- 電話応対
- ビジネスメールの書き方
- コミュニケーションツールの使い方
- ITリテラシー など
高卒にビジネスマナーを教える際には、「なぜこのマナーが必要なのか?」を事例つきで教え、ビジネスマナーの必要性を腹落ちさせることが特に大切です。
たとえば、高卒にITリテラシーを教えるときには、社会人にとってのSNSやインターネットには“大事な仕事道具”の側面があり、SNSなどで自社の情報などを漏洩したらどのような問題が起こるかを、リアルに想像させることなども必要でしょう。
コミュニケーションスキル
コミュニケーション能力は、ビジネスマナーと重なる部分でもあります。高卒新入社員の場合、まずは、報連相ができるようになることが重要です。
そのためには、「報連相はなぜ必要か?」「報連相をするとどういうメリットがあるか?」を伝え、納得させる必要があります。
高卒の新入社員の場合、「家庭」と「高校」という狭い世界で生きてきたこともあり、なじみの薄い大人たちへの報連相は、大卒社員以上に高いハードルを感じるものです。
だからこそ丁寧な研修が必要となります。
また、以下3つの基本的なコミュニケーションスキルの重要性とやり方を教え、現場での実践を通じて成長を促していくとよいでしょう。
- 信頼関係を築く力
- 聴く力(訊く力)
- 伝える力
一般教養
先述の心構えやコミュニケーション方法とも関連する要素ですが、高卒新人が仕事で成果を出し続けるうえで必要な知識・手法なども教える必要があります。
具体的には、以下のようなものになるでしょう。
- パソコンや文書作成ソフトの使い方
- 仕事をするうえで必要な価値観
- 自社の業界の基礎知識や近年の動向
- ストレスコントロールの方法
- セルフマネジメントに必要な手法 など
高卒新入社員研修のポイント
高卒新入社員向けの研修を成功させるには、以下のポイントを大切にする必要があります。
マインドセット
新入社員における早期離職の原因で多いのが、入社後に生じる「こんなはずじゃなかった!」というリアリティギャップです。
先述の社会人の心構え・プロ意識などのマインドセットは、高卒新入社員は入社前に想像している「仕事のイメージ」と「リアルな仕事・社会人」とのギャップを埋めるうえで不可欠なものとなります。
特に高卒新人の場合には、働くイメージがアルバイト程度の感覚になっていることもあり、ギャップが生じやすい傾向があります。しっかりとマインドセットしていくことが大切でしょう。
目標をもたせる
仕事をするなかで達成感や成長実感が得られないと、モチベーションの低下や将来への不安などから、早期離職につながりやすくなります。
達成感などが得られない問題を防ぐには、「作業Aを7月までに習得する」や「半年間で5つの受注を獲得する」といった個人の目標を設定させることが大切です。
ただ、目標に本人が価値を感じていなければ、「上司に立てさせられた目標」という他人事になってしまい、目標に高いモチベーションで取り組むことが難しくなります。
目標に対して前向きに取り組んでもらうためには、目的目標の4観点というフレームワークを使って、目標達成に対するワクワク感などを感じてもらう必要があります。
目的目標の4観点とは、「自分-他者」「有形-無形」という2つの軸、4つの分類で価値づけしていくものです。
目的目標の4観点を使うと、以下のような価値づけが可能になります。
《目的目標の4観点》
目標:1年間で100万円の売上を達成し、社内新人賞を獲得する | |
---|---|
観点 | 価値 |
自分×有形 (自分が物理的に得られるもの) | ・社内新人賞で表彰状と賞金をもらう ・上司や先輩からほめられる |
自分×無形 (自分が精神的に得られるもの) | ・目標達成できてうれしい ・社内新人賞を獲得できてうれしい ・上司や先輩にほめられてうれしい |
他者×有形 (自分に関わる誰かが物理的に得られるもの) | ・自分が社内新人賞を獲得したことで、上司の社内評価も上がる |
他者×無形 (自分に関わる誰かが精神的に得られるもの) | ・上司や先輩が喜ぶ |
長期的な視点での育成
高卒新入社員の場合、前述の通り、アルバイト経験がないことも多く、また高校の先生にいわれて就職活動を始めたような人も珍しくありません。
そのため、大学1・2年頃からアルバイトを行ない、さまざまなインターンシップにも参加しながら業界研究をすることが多い大卒の新人と比較すると、高卒は働くことへの自覚などが未熟なことも多いでしょう。
とくに現在の日本だと、大学進学率は60%近い数字になっていますので、大学進学した同級生に対して複雑な思いを持っている高卒の新入社員もいます。
また、一般教養などに関しても、当然のことながら大卒の新入社員とは大きく異なります。新入社員世代における4年間の差は、やはり非常に大きなものがあります。
こうした高卒と大卒の違いは、高卒採用をするのであれば受け入れざるを得ないことです。
高卒を採用する場合、短期間で戦力化することだけにこだわるのではなく、中長期な視点で社会人基礎力なども育んでいく必要があるでしょう。
丁寧なOJT
高卒新入社員のリアリティギャップからくる離職を防ぎ、なるべく早く戦力になってもらうためには、現場での丁寧なOJTやフォローが大切です。
また、歳の離れた高卒新入社員が現場で臆することなく報連相をしたり、自分の立てた目標達成に向けて積極的なチャレンジをしたりするには、新人が組織に早く馴染むオンボーディングの仕組みや心理的安全性の高い環境づくりも欠かせません。
高卒採用に力を入れる企業では、OJT指導者となる先輩社員が新人の指導やフォローをする体制もつくる必要があるでしょう。
定期的なフォローアップ
研修は、本人の行動変容を促し、ビジネスマナーやコミュニケーション方法などを現場で実践できる“身についた状態”にするために行なうものです。
ただ、新入社員の行動は、座学で知識を教えただけでは変わりません。研修内容を行動変容につなげるには、“研修前の準備”と“研修後のフォローアップ”が大切です。
研修分野で有名なプリンカーホフの「4:2:4の法則」の考え方では、研修を通じた受講者の行動変容に対する影響力は、以下の割合になると示しています。
《プリンカーホフ「4:2:4の法則」:行動変容に影響を与える割合》
- 4割:事前学習や参加姿勢
- 2割:研修内容
- 4割:研修後の実践やフォロー
フォローアップで大切なことは、以下の2つです。
- 1.研修内容が自分の仕事にどう役立つかを把握するブリッジング(関連付け)
- 2.研修内容をどのように実践するかという実践行動(宿題)の設定
たとえば、研修で“報連相の重要性”の解説をする場合、自分の仕事だとどのような報連相があるかを考えてもらいます。(=関連付け)
考えてもらったうえで、報連相の実践で「どのような成果が得られたか?」を次回のフォローアップで報告・発表してもらう(=宿題)といった形で実行すると、効果的でしょう。
フォローアップすることで、研修の受講→実践・経験→報告を通じた振り返り→次につながる気付き→気付いたことを実践で試す……という経験学習のサイクルが回ります。
また、繰り返し述べているように、高卒の場合、大人との距離感やコミュニケーションの心理ハードルなどは、大卒と比べて非常に大きく、ストレス要因にもなりえます。
したがって、高卒新入社員に対しては、研修のフォローアップというだけではなく、大卒以上に小まめな入社後のフォローアップ面談などを入れたほうがよいでしょう。
外部研修の利用
中小企業の場合、人手不足などの理由からOJT中心の教育しか行なえず、行動変容に不可欠なマインドセットやフォローアップまで手が回らないことが多くなっています。
こうした問題を抱えている場合、学生から社会人へのマインドチェンジのノウハウに長けた外部研修を利用するのも一つになります。
HRドクターを運営する研修会社ジェイックでは、「仕事の基礎の基礎」という新入社員研修を提供しています。
「仕事の基礎の基礎」研修の大きな特徴は、高卒新入社員の学生気分を払拭し、企業に貢献できる社会人マインドに変えていけることです。
また、仕事をするうえで不可欠なビジネスマナーやコミュニケーションの取り方などを、実践を通じて“身についた状態”にさせることも可能となります。
「仕事の基礎の基礎」の場合、入社3ヵ月後のフォロー研修もセットになっています。
「仕事の基礎の基礎」は、今まで高卒新入社員も多く参加している新入社員研修になっています。「仕事の基礎の基礎」に興味がある人は、以下の資料をダウンロードしてみてください。
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まとめ
高卒の新入社員は、ハローワークと学校を通じた大卒の就職活動とは大きく異なる仕組みのなかで、就職活動を行なう形になります。
また、高卒の場合、アルバイトなどを通じた社会との接点も大卒と比べて非常に少ないです。
結果として、高卒の新入社員は、大卒と比べて早期離職しやすい傾向があります。また、社会経験の少なさから戦力になるまでに時間もかかるでしょう。
そのため、高卒新入社員の早期離職を防ぎ、早期の戦力化を図るためには、高卒ならではのフォローが大切になってきます。
高卒の新入社員に必要な研修には、以下のようなプログラムがあります。
- 社会人としての心構え
- ビジネスマナー
- コミュニケーションスキル
- 一般教養
また、高卒新入社員の戦力化を成功させるためにも、教育では以下のポイントを大切にするとよいでしょう。
- マインドセット
- 目標をもたせる
- 長期的な視点での育成
- 丁寧なOJT
- 定期的なフォローアップ
- 外部研修の利用
HRドクターを運営する研修会社ジェイックでは、高卒新入社員の研修に不可欠な社会人としてのマインドセット・ビジネスマナー・コミュニケーションスキルを身に付けられる「仕事の基礎の基礎」という研修を提供しています。
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