人材育成は企業共通の課題であり、そのために多くの企業が社員研修を実施しています。 記事では、研修会社としての知見も踏まえて、社員研修を成功に導くための内容設計の基本を、研修内容や実施方法の種類なども踏まえながら紹介します。
<目次>
- 社員研修の企画は内製と外注、どちらが良い?
- 研修内容の設計でありがちなNG例
- 効果的な研修内容を企画するためのポイント
- 階層研修における一般的な研修内容
- 職種・目的研修の一般的な研修内容
- 人気のある研修内容
- 研修の実施スタイルとそれぞれのメリット・デメリット
- まとめ
社員研修の企画は内製と外注、どちらが良い?
社員研修の企画を具体的に進めていく際、まずは設計から実施までを内製する(社内で行う)のか、あるいは外部の研修サービス、研修会社に外注するのかが、差し当たっての検討事項となります。
内製と外注には、それぞれ下記のようなメリットとデメリットがあります。研修の目的や中身、社内事情に応じてうまく組み合わせて進行することがポイントです。
内製のメリットとデメリット
[メリット]
・自社の実情をよく分かっており、実際の業務に即した内容で設計できる
・費用が掛からない
・教える側の成長も期待できる
[デメリット]
・講師としての育成や研修内容を準備するのに時間と工数がかかる
・必ずしも研修のプロではないので、品質が高まらない場合がある
・講師役の社員の準備や実施の工数分、通常業務が止まってしまう
外注のメリットとデメリット
[メリット]
・プロの品質で研修が実施できる
・体系的な学びや吸収しやすい教え方などが期待できる
[デメリット]
・費用が生じる
・自社の実情把握度が低い(研修会社によっては内容のカスタマイズができなかったり、自社に合わせた調整をしてくれなかったりするため効果が下がる)
外注と内製、組み合わせのポイント
まずはシンプルに費用面は抜いて、研修効果や品質を考えましょう。上述したように内製する最大のメリットは、自社の実態に合わせられることです。例えば、事例共有、ロールプレイング、実務ノウハウなど、自社の商品・サービスや実務と密着度が高い、具体性が高いものは内製が向いています。
一方で、汎用的・体系的な知識、社内にないノウハウなどは、外部のプロに任せた方が研修品質をあげやすいと言えます。
1~2時間程度の勉強会、具体的な実務ノウハウや事例の共有程度であれば別ですが、半日~1日のきちんとした研修プログラムをつくるのはかなりの工数も必要になります。費用面はおいておいて、研修自体の効果性という視点でまずは検討しましょう。
その上で、前述したような内製のメリット・デメリット、ノウハウの蓄積や講師の成長機会と工数投下・機会損失の発生、また外注のメリット・デメリット、プロ品質や外部の知恵と費用発生を比較して決定しましょう。
なお、ミッション・ビジョン・バリューの浸透などを目的として研修も、内容は自社固有のものになってきますが、一方で、外部の第三者が進行することでワークなどが進行しやすい、従業員に自分の人生などとも紐づけながら考えてもらうためのフレームワークなど、外部の研修会社を使うメリットもあります。
ミッション・ビジョン・バリューの浸透などは、込められている想いや実務への紐づけ、また繰り返し実施するようなものは社内での実施、全体として考えるきっかけを作ったり浸透させたりする初期は外部の研修会社を使うといった組み合わせ方がおススメです。
研修内容の設計でありがちなNG例
研修内容の設計を進めていく際に、やってはいけないことがいくつかあります。ありがちなNGの例を5つ紹介します。
① いきなり研修内容を考え始める
研修内容を考える前に、まず研修の背景とゴールを明確にすることが最も重要です。研修の目的は参加者の行動変容であり、結果変容です。「研修が終わった後、職場で何を実践し、どう変わるか」というゴールを明確にしないと、研修内容を考える軸がブレてしまいます。
② 研修内容を詰め込み過ぎる
設計する側は良かれと思ってこれもあれもと詰め込みがちですが、やり過ぎると一方的な知識の詰め込み教育となり、研修効果を損ねてしまうので要注意です。
③ 実務と乖離してしまう
研修内容が実務と乖離してしまうケースは、大きく分けて2通りあります。ひとつは内容が教科書的になってしまい、実務とのブリッジングがきちんとできていないケース。もうひとつは、理論的には正しいが現場の実態や社員のレベルなどと乖離しているケースです。
④ 場当たり的になり過ぎる
研修の内容は、現場で起きている問題・課題の解決に役立つものであるべきですが、目先の短期的な問題解決だけに焦点を当ててしまい、場当たり的に実施しても効果は上がりません。場当たり的な研修を繰り返していると、費用対効果が悪くなります。組織のビジョンや中期の事業計画から逆算して、継続的に取り組むテーマを選定することが大切です。
⑤ 参加者を広げ過ぎる
研修背景やゴールともリンクしますが、研修で解決すべき問題や課題、ゴールが明確なほど効果的な研修内容を設計できます。実施する側からすると、なるべく多くの対象者に実施したくなるものですが、対象者をあまりに広げ過ぎると、内容が一般的・抽象的になり、行動変容への効果が薄れがちです。
効果的な研修内容を企画するためのポイント
効果的な研修内容を企画するためには、次の4つのポイントを押さえておくと良いでしょう。
ニーズを探索する
研修内容を企画する上でまず大切なのがニーズの探究であり、主に下記の3つの観点から探究します。
- 経営陣のニーズ(戦略ニーズ)
- 現場のニーズ(事業ニーズ)
- 人事のニーズ(組織ニーズ)
経営陣のニーズは中期視点で見ている一方で、現場の課題と乖離が生じることがある。現場のニーズは、実務課題に即していますが、場当たり的・短期的な視点になることもある。人事のニーズは、理論的・体系的ですが、経営や実務上の優先順位とズレるケースがあります。
人材開発担当者は、経営陣・現場とコミュニケーションを取り、組織内を歩き回って、「何が真の課題か」をしっかり見極めていく、また、合意形成していく必要があります。
研修以外の施策を検討する
研修以外の施策を検討する
人と組織に関する課題を、すべて研修で解決できるわけではありません。人と組織の開発施策には「採用」「育成」「配置」「評価・処遇」等があり、研修はもちろん大切ですが、一方で、育成の一手法に過ぎません。
研修の一形態とも言えますが、eラーニングや自己啓発の促進といった手法も考えられますし、マネジメント手法やマネジメントの仕組みといった部分での施策もあり得ます。さらには異動や採用といった方法での取り組みが適していることも有り得ます。
研修以外の方法を考えることで、より効果的な手法が見出せる可能性もありますし、他の手法と組み合わせる中で「研修で実現したいこと」が明確になり、研修内容のスコープがクリアになることもあります。
学習者(研修対象者)の分析
研修内容を企画する際、誰を対象にするかは重要な意思決定です。また、上述した通り、対象と課題の組み合わせによっては、研修が最適な解決手段と限りません。以下のような側面で、研修対象者のことを理解しましょう。
① 対象者の検討…目的やゴールから逆算して最適な対象者
② 参加人数・参加単位(各職場から2人ずつ、職場単位、個人等)
③ 可能な期間・場所・コスト
④ ソーシャルサポートの状態(職場の上司・先輩・同僚から協力が得られるか
⑤ 望まれる効果と予想される困難(研修を行うメリット・デメリット)
といった観点で研修対象者を分析、考察してみましょう。誰に対して、どのような研修を行うのかを様々な観点から決めることが必要です。
経営陣と現場のトップの「お墨付き」を得る
研修の利害関係者である経営陣や現場マネジャーらに対し、早期から研修実施、また内容に関する報告・提案を行い、協力を得られやすくしておくことも大切です。利害関係者を巻き込み「お墨付き」を得られるかどうかで、当該研修企画の組織内での位置づけは変わり、参加者のモチベーションも左右されます。
研修を持続していく上でも、経営陣や現場マネジャーに早期から研修企画の背景や問題意識、企画意図をすり合わせ、「同じ船に乗ってもらう」ことで、研修終了後の実践率なども高めることが出来ます。
階層研修における一般的な研修内容
本章から続く3章では、研修内容についていくつかの視点で種類を紹介します。まずは、最も一般的な切り口である階層別の研修における、各階層向けの一般的な研修内容です。
新入社員~若手社員
新卒社員には社会人としての基本的な考え方やルールやビジネスマナーを中心とした新入社員研修を実施することが一般的です。また、入社2年目以上の若手には、ビジネスやコミュニケーションの基本スキルを向上させるための研修が多くなってきます。
●ビジネスマナー研修
あいさつの仕方や身だしなみ、電話での受け答えなど、社会人としての基本的なマナーを学びます。
●ビジネススキル研修
文書作成、仕事の進め方、ホウレンソウ、プレゼンテーションなど、社会人としてまず身につけるべきスキルを学びます。社会人として姿勢や心構えなども、ビジネススキルの一種と言えるでしょう。
●コミュニケーション研修
相手の話に対する傾聴の仕方や、相手に伝わる表現方法など、仕事で成果をあげるうえで不可欠となる人間関係の構築に必要なノウハウを教わります。コミュニケーションは“誰もがやっている”一方で、意外ときちんと教わる機会が少ないものです。
中堅社員
入社4~5年目以降の中堅社員は、後輩を育てたり、管理職をサポートしたりしながら、管理職になる準備が求められる時期です。チームマネジメントや課題解決能力の向上などを中心に実務的なスキルを身につける研修が多くなってきます。
●チームビルディング研修
チームの枠内における自らの役割を認識し、多彩なリーダーシップのスタイルを知ることで、個々の能力を最大限に引き出す大切さを学びます。
●課題解決、ロジカルシンキング研修
仕事で成果をあげる上で、人間関係の構築などはもちろん大切ですが、同時に、管理職になっていく上では、課題解決やタスク管理、目標設定や計画作成などの「対コト」のスキル向上が必要なってきます。その際に役立つのが課題解決やロジカルシンキングの能力です。
なお、実務スキルの研修が中心と紹介しましたが、働き方に対する感覚が変わる中で、入社数年目~中堅社員の時期に、一度キャリアプランやキャリア自律などに関する研修を実施する重要性が増しつつあります。
管理職
管理職は、組織の実務的な運営を担う中心的な存在として経営陣と部下とのパイプ役となり、周囲をまとめるリーダーシップやマネジメント力を発揮して、組織の成果をあげることが求められるポジションです。
そのため、組織をマネジメントする、メンバーを動かすためのヒューマンスキルや、実務を進行するための管理職としてのマネジメントスキルが研修内容として必要になります。
●マネジメント研修
管理職に求められる役割を認識し、目標達成に向けての業務マネジメントのやり方や部下育成の手法などについて学びます。
●リーダーシップ研修
管理職に求められるヒューマンスキルのひとつである「リーダーシップ」について、リーダーシップとは何か、どう発揮するかを改めて学び、身に付けます。
●コーチング研修
部下のパフォーマンスを向上させたり、部下の成長を促進させたりするうえで役立つコーチングスキルを身につけます。
幹部層
幹部層は、事業の方向性を決定し、経営の一端を担う存在です。従って、マーケティングやアカウンティングなどの知識・スキルが求められるようになります。また、管理職よりも大きな組織をマネジメントする上で、コンセプチュアルスキル、ビジョン構築やプレゼンテーションなどの能力も必要となってきます。
さらには、大きな影響を与える意思決定をする立場だからこそ、コンプライアンスやリスクマネジメントに関しても一定の見識が必要となってくるでしょう。
●マーケティング研修
3C分析やSWOT、PESTなどの基本的な事業を捉えるフレームワーク、また、大きな視点で市場や顧客、ビジネスモデルなどを捉えて、事業戦略につなげていくスキルです。
●アカウンティング研修
事業を運営、方向性や資源配分を決定する上で必須となるアカウンティング(企業会計)について、P/L(損益計算書)、B/S(貸借対照表)、CF(キャッシュフロー計算書)などに現実のビジネスと紐づけて理解します。
●コンセプチュアルスキル、プレゼンテーション研修
事業運営し、大きな組織を運営する上では、ミッションやビジョンなどの抽象的な組織の共通目的、また、中長期視点での事業ゴールや事業計画などの構築・立案するスキルが必要です。マーケティングスキルと重なる部分もありますが、思考力を磨いていく必要があります。また、ミッションやビジョン、事業ゴールを実際に伝えて、人を動かす上では、プレゼンテーション能力なども、より高めていくことが求められるでしょう。
●コンプライアンス研修
不祥事防止や企業価値向上のため、コンプライアンス(法令遵守)の重要性や違反のリスク、遵守すべき法令や企業規則の知識を学びます。もちろんメンバー時代から学んでいるはずですが、意思決定する立場として、リスクマネジメントと合わせて、確認が必要です。
●リスクマネジメント研修
企業が抱える様々なリスクに関する知識と認識を深め、トラブルが発生することを防ぐ手立てを学びます。
職種・目的研修の一般的な研修内容
階層別研修と並んで、一般的な研修内容が職種別研修、また、職種横断のテーマ研修です。これらについて、簡単に初会します。
職種別研修
各職種で必要となる実務スキルを学ぶ研修です。例えば、営業職であれば、営業の仕事で成果をあげるためには、ラポール形成、ヒアリング、サービス提案、クロージング、業界動向や商品知識のインプット、顧客情報の検索方法といった、固有のスキルが求められます。
こういった職種別に必要なスキルや姿勢を学ぶのが職種別研修です。新規の配属者向け、全体向け、習熟度別、特定のスキルに関して、といった形で、細分化されて実施されます。当然、職種の数だけ、必要なスキル体系がありますが、一般的なものは以下のようなものがあります。
- 営業:新規開拓営業研修/ルート営業研修/営業プレゼンテーション研修/営業クロージング研修など
- 人事労務:人事評価研修/人事労務管理研修/ダイバーシティ研修/社内講師育成研修など
- 販売:販売力強化研修/集客販促研修/印象力研修/店舗マネジメント研修など
- 財務:財務研修/管理会計研修/与信管理研修など
- 技術:イノベーション研修/機械製図研修/部品加工技術研修/プロセス生産技術研修など
- 製造:QC研修/ISO研修/現場改善研修/5S研修/物流改善研修など
職種横断のテーマ研修
職種横断のテーマとして実施される研修は、実務的にはハラスメント研修、Pマーク研修などのコンプライアンスに関する研修、また、ミッション・ビジョン・バリューの浸透やキャリア研修など、実務とは離れたテーマで実施されるものが多くなります。
個人の権利や人権への意識が強まる、企業の社会的責任が重視される、SNSなどで容易に拡散されるといった時代背景を踏まえて、コンプライアンス研修は企業のリスクマネジメント上、欠かせないものになっています。
とくに昭和世代の管理職や幹部層などは、自分たちで生まれ育ったり、社会人としてマネジメントされていたりした頃と現在で大きく価値観が変わっていますので、注意が必要です。
また、この数十年で終身雇用が崩壊して、年功序列も崩れているなかで、働き方や組織に関する感覚が過去とは大きく変わってきています。会社として一生の安定や年功序列は約束できませんし、それを受けて、いまのZ世代などは“新卒入社時から転職を意識する”ような感覚になっています。
組織へのエンゲージメントを高める上で、精神的な連帯感を生み出すミッション・ビジョン・バリューの浸透や、キャリア自律を促進するためのキャリア研修などの重要性も高まっています。
人気のある研修内容
上述したカテゴリ内に重複しますが、昨今人気がある、よく問い合わせをいただくよな研修テーマとしては、下記のような内容が挙げられます。
コミュニケーション研修
どんな職種・階層においても、成果を上げるために必要となるのがコミュニケーションと人間関係の技術です。コミュニケーション研修では、ふだん無意識に行なっているコミュニケーションについて、心理学的な見地等も踏まえて体系やスキルを学びます。
講義型と違って実際に周りの参加者と会話をしながら行うため、楽しみながら学べるのが特徴です。社内の人間関係も円滑になり、チームワークの向上が期待できます。具体的な内容としては、ファシリテーション、コーチング、アサーティブコミュニケーション、ソーシャルスタイルなどがあります。
強み研修
自分の強みを知り、仕事の成果につなげるやり方を学ぶ研修です。強みを活用できると生産性が上がると共に、自己効力感やストレス耐性も向上します。また、お互いの強みを軸に相互理解を深めたり、マネジメントしたりするとチームビルディングにもつながります。
リーダーシップ研修
ホワイトカラーの大半が「知識労働者」となっている中で、すべての従業員にリーダーシップの発揮が求められます。そこで、対象に応じてセルフリーダーシップ、チームやメンバーに対するリーダーシップの発揮方法を身に付けてもらうのがリーダーシップ研修になります。
セルフリーダーシップを身に付けていない人が管理職になってから、周囲に対するリーダーシップを発揮するのは困難です。従って、新入社員や若手に対する実施が増えています。
仕事術
仕事術の研修は、新人・若手から業務に慣れたベテラン社員まで人気があります。世の中では“DX”がトレンドになっていますが、中堅中小企業などにおいては、組織としてのDX、事業のDX化以前に、個々人がITの基本スキルを身に付けて活用することで、生産性をあげることが大切です。
効率的な働き方や業務時間の短縮方法等についての研修は、実務に活かせる、自分のメリットが分かりやすいため、研修後の満足感も高くなる傾向にあります。
メンタルヘルス研修
ストレスを与えないノウハウやストレス解消法など、社員の心の健康を守るために行う研修です。情報社会となり、一日に受け取る情報量、求められる処理スピードなどはどんどん速くなり、仕事でのストレスは増えがちです。また、リモートワークが増える中で、新たな人間関係のストレスも生まれています。
社員数50名以上の企業ではストレスチェックも義務化されているなかで、メンタルヘルス対策への関心は年々高まっています。
研修の実施スタイルとそれぞれのメリット・デメリット
社員研修は内容もさまざまですが、実施方法にもいくつかの種類があります。代表的な実施スタイルのメリットとデメリットを整理してみました。メリット・デメリットを踏まえて、研修の目的、内容に応じて、最適な実施スタイルを組み合わせていきましょう。
外部講師による集合研修
[メリット]
外部講師はその道のスペシャリストであり、自らの知識や経験を他者に伝えることにおいても訓練を積んでいるため、的確で分かりやすい研修が期待できます。
[デメリット]
費用が発生することが最大のデメリットです。また、研修会社によっては、カスタマイズに対応してくれず、実務との乖離が生じて、研修効果が落ちることもあります。また、外部講師の場合、講義などをビデオで収録して、動画等を使いまわすことはNGとなるケースが大半です。
社内講師による集合研修
[メリット]
前述した通り、企業の実情を踏まえて、実務に役立つノウハウを伝えやすいことが最大のメリットです。また、社内の知識を体系化したり、教える社員の成長も期待できたりします。
[デメリット]
研修内容の企画、準備、実施などに慣れていない社員の場合、高い品質で実施することが難しい場合があります。また、研修講師とする社員の工数もかなり使いますので、通常業務への影響や機会損失が生じる可能性もあります。
オンライン研修
[メリット]
オンライン研修は、会場費はもちろん、移動や宿泊に伴うコスト・工数がないため、企業、社員の双方の負担を減らせることが最大のメリットです。研修前後の異動が生じないことで、アポイントや作業時間との両立もしやすく、また研修効果性を高めるためのフォローアップ研修なども設定しやすくなります。
[デメリット]
ネットワークを介して実施することで、当然、対面で実施できる内容とは少しズレが生じます。また、グループワークなども実施できますが、「空間」を共有できないため、効果性に限界がある、集中力が続きにくいといった傾向があります。
公開研修/公開講座
[メリット]
最大のメリットは、1人からでも参加できるため企業規模に関係なく、研修機会をつくることができます。また、一種の「他流試合」となり、視野が広がったり、緊張感を持たせたりすることができます。
[デメリット]
講師派遣してもらう場合と比較すると、研修内容のカスタマイズはできなくなります。また、研修日程の融通も利かなくなります。また、公開講座は玉石混合ですので、質の高い研修を選ぶことが重要です。
OJT
[メリット]
実際の現場で、実務に必要な知識やスキルを学べるので、即戦力化が早い。また、マンツーマンや少人数で実施するからこそ、相手にあわせた指導ができます。
[デメリット]
トレーナーとなる社員のスキルや対象者との相性によって育成効果が異なるため、成長に差が出やすくなります。また、実務的・個別具体的だからこそ、体系的な知識が身に付かない、応用が利かなくなる側面もあります。
●Eラーニング
[メリット]
動画を使ったEラーニングは、時間や場所を選ばず学ぶことができます。また、繰り返し見ることも出来ますし、一度準備した動画は使いまわすこともできます。LMSと呼ばれる受講管理機能がついたシステムであれば、研修担当者の管理負担も軽減されるでしょう。
[デメリット]
動画学習が中心になりますので、事後テストなどを実施するとしても、どうしても知識のインプットに限定されます。また、研修対象者が能動的に動画を見る必要がありますし、閲覧時の集中度なども個人任せになりますので、学習進捗や効果が個々のモチベーションや管理能力に依存します。
まとめ
社員研修の内容は職種、階層、目的等に応じて様々な種類があります。また、外注or内製という選択肢、さらに実施スタイルも多様化しています。
効果的な研修を組むためには、まずきちんと経営陣・現場・人事という異なる視点を踏まえて、優先順位をすり合わせる必要があります。その上で、研修の目的やゴールを明確化してから研修内容の企画に入っていきましょう。