トップセールスの特徴や育成のポイント、普通の営業職との違いを解説

トップセールスの特徴や育成のポイント、普通の営業職との違いを解説

トップセールスは会社にとって大きな武器となる存在です。顧客の獲得や売上アップに結びつくのはもちろんのこと、社内全体の営業スキル向上にも貢献してくれるからです。

 

トップセールスになり得る人材を採用・育成するには何が必要なのでしょうか。

 

記事ではトップセールスの定義と特徴、標準レベルの営業職との違い、また、トップセールス育成に向けたポイントを解説します。

<目次>

トップセールスとは?

最初に、トップセールスという言葉の意味を改めて確認しておきましょう。

トップセールスの定義

トップセールスは、一般的に「営業売上が1位の人」を指します。

 

それも1位を1回取っただけでトップセールスと呼ばれることはなく、連続して1位もしくは上位の売上成果を残し続けることで、トップセールスと呼ばれるようになるでしょう。

 

もちろんこの認識は間違っていません。トップセールスと目される人は、売上や営業成績で常にトップクラスの成果を残しているものです。

 

しかし、単に売上No.1というだけでは、トップセールスと呼ぶには不足です。

 

一時的な幸運に恵まれて数字を出すことや、顧客に不必要なものを売りつけて業績を上げることも可能であり、売った後のことまで視野に入れた場合、単に「数字を上げればOK」とは言えないことも少なからずあるからです。

 

例えば、近年急増したサブスクリプションモデルなど継続課金のサービス形態では、一時的に受注を獲得しても、短期で解約された場合は販売コストを回収できず赤字になるケースが多いでしょう。

 

その意味で「短期的な売上数字を残すだけの人」はトップセールスとは呼べないのです。

本来あるべきトップセールスとは?

もちろん、短期的に売上数字を残すだけでもスゴイことです。しかし、本来あるべきトップセールスとは、顧客と信頼関係を築き、価値提供した結果として売上を残す人です。

 

こうしたトップセールスは、自社に必要とされるだけでなく、同時に顧客から求められる存在でもあります。

 

その意味では、数字と同時に、自社と顧客の双方から認められ求められ続けることが、トップセールスの条件だと言えるでしょう。

 

大切なのは長期的に顧客との関係性を築くことであり、そのためには売上を「点」ではなく「線」で捉える必要があります。

 

特にSaaSビジネスも主流となっている現代、LTV(生涯顧客価値)の意識は必要不可欠であり、顧客の課題を解決することで価値を感じてもらい、ずっと付き合い続けたいと思わせることが大切です。

トップセールスの特徴

業界や商材が違っていても、トップセールスにはいくつか共通の特徴があります。それを知っておくことで、トップセールスになり得る人材を採用・育成するための道筋が見えてくるでしょう。

目標達成に対する執着心が強い

トップセールスは目標達成に対して強い執着心を持ち、成果を出すためにあらゆる手段を考え実行する姿勢を持っています。

 

それは闇雲に頑張ったり、遅くまで残業したりということではありません。

 

断られた顧客に対して別の角度から何度でもアプローチしたり、新しい方法論にトライしたりする、自分の営業手法を変えてみるなど、目標達成に向けて多彩なアクションを起こし続ける粘り強さがあるということです。

会話や商談から常に新しい知識を吸収している

トップセールスは新しい知識の吸収を怠りません。他者の成功事例を参考にしてみたり、客先で聞いた話題やニュース、最新情報などを吸収し、商談前に世間話的に業界動向を話したり、提案内容に組み込んだりします。

 

吸収力に優れ、どんなことでも役立てるつもりで目を光らせ、自分の情報資産に加え続けています。

目標達成から逆算して考える習慣を持っている

トップセールスは目標達成から逆算して、行動する習慣を持っています。

 

よく言われる話ですが、トップセールスは「目標がいくつで、現状がいくつで、現状の着地見込みがどうなっていて、目標とのGAPを埋めるために何をするか?」が即座に答えられます。

 

それだけ、常にゴールから逆算して行動しているのです。もちろん前提として営業プロセス、即ち目標達成のために必要なステップをよく理解し、整理して、行動計画に落とし込んでいます。

 

そのプロセスに沿って目標達成から逆算して行動しているのです。

フィードバックを受けて次につなげている

トップセールスといえども、毎回商談を成功させられるとは限りません。野球の世界でよくいわれる通り、「トップバッターでも打率は3割」なのと同じです。

 

しかし、トップセールスは、商談が上手く受け入れられなかった場合はできる限り理由を聞き、改善へとつなげています。

 

成約した顧客からも、作成した資料や提案書、見積などに分かりづらい部分がなかったかなど、フィードバックを求めます。

 

他人からの評価を恐れず積極的に意見を求める姿勢が、トップセールスが常に成長を続ける理由だと言えるでしょう。

商談に向けて準備を怠らない

トップセールスは商談の前に、あらゆる状況を想定した対策を用意します。

 

「競合製品やサービスと比較されるかもしれない」「他の商品の説明を求められるかもしれない」「予想外の角度から質問されるかもしれない」など、起こり得る多様な可能性を想定し、必要な資料や返答を準備しています。

 

出たとこ勝負の臨機応変な対応力に頼るのではなく、用意周到に準備した上で商談に臨んでこそ高い確率で結果を出せるのです。

契約後もフォローを欠かさない

トップセールスは契約後のフォローを欠かしません。顧客にとっては契約後が本番です。

 

自社商材を愛用し続けてもらうには、トラブルへの迅速な対応や新たな課題点への助言、情報提供をする必要があります。

 

対応が遅れたり、契約前と比べて営業の姿勢が消極的だったりすれば、信頼度が下がって解約にもつながりかねません。

 

アフターフォローを怠らないことで高いリピート率や紹介による新規獲得につなげているからこそ、継続して成果をあげるトップセールスになれるのです。

約束を守る

トップセールスは仕事で交わした約束を、些細なことでも守ります。例えば依頼された追加資料や質問への回答を怠ることはなく、直接利益に結びつかない約束でも必ず守る姿勢を見せます。

 

また、何かのタスク等に対して自ら期限を設けるのもトップセールスの特徴です。

 

例えば追加資料を請求された時に、「明日の17時までに提出します」など自ら期限を決めて伝えます。こうすることで顧客は「優遇されている」「優先的に対応されている」と感じます。

トップセールスと普通の営業職との違い

次にトップセールスと普通の平凡な営業職には、思考と行動パターンにどのような違いがあるのかを具体的に見ていきましょう。

仮説を立てて動いているか

顧客毎にニーズは細かく異なるものですが、営業の場数を踏んでいくうちに「こういう顧客のニーズはこれに決まっている」と、大雑把に顧客のニーズを決めつけてしまう営業が多くいます。

 

経験を踏まえて考えることは重要なことではありますが、それが決めつけになってしまうと事前準備がおろそかになり、商談におけるヒアリング精度なども落ちていきます。

 

トップセールスは、顧客の課題に対する営業手法の仮説をしっかりと立てています。過去の案件や見込客の属性、企業分析などを通じて顧客のニーズを想定します。

 

そのうえで、商談に入れば、仮説に固執したり思いこんだりせずに、丁寧に顧客と向き合って、顧客のニーズや課題を組み取ります。

相手の真のニーズを理解しているか

トップセールスは、普通の営業よりも顧客のことを深く理解しようとします。そして真のニーズ、顧客自身ですら認識できなかった潜在ニーズを掘り起こしたり、顕在化させたりします。

 

これを通じて、顧客からの信頼を勝ち取り、商談規模を大きくします。

 

また、顧客の真のニーズに対して提案することで、競合する商品やサービスと単純な機能や価格だけでは比較されない状況をつくります。

顧客のベネフィットを伝えているか

顧客のベネフィットとは、「目の前の相手が得られるメリット」です。

 

普通の営業は「売りたい」という気持ちが強いため、機能や特徴の説明だけに終始してしまったり、通り一遍のサービス内容を伝えたりしていることが多々あります。

 

しかし、トップセールスは単に機能や特徴を伝えるのではなく、機能や特徴が顧客にもたらす価値とメリットをしっかりと伝えます。

 

さらに画一的なメリットを伝えるのではなく、仮説を基に掘り起こした顧客の「真のニーズ」に沿う形で、しっかりとベネフィットを伝えます。

 

つまり、目の前にいる顧客の視点で魅力をしっかりと訴求できることが、トップセールスの大きな特徴です。

デメリットやリスクについて説明しているか

どのような商材にもデメリットやリスク、不完全さが存在します。顧客と信頼関係を築くには、そうしたネガティブな側面に対する十分な説明が欠かせません。

 

トップセールスはデメリット等についても厭わずきちんと伝えます。

 

売上を継続的に上げていくことを考える場合、デメリットやリスクを隠すことは、結果的に自社のためにならないと理解しているからです。

 

一方で、しっかりと顧客の真のニーズを捉えているからこそ、自信を持って商品価値を話すことができますし、仮に譲歩を迫られてもたやすく引き下がりません。

 

そうした気構えがあってこそのトップセールスなのです。

顧客へのヒアリングを重要視しているか

顧客との会話で重要なことは、顧客にたくさん話してもらいながら信頼関係を築き、会話の中から顧客の潜在ニーズを探り出すことです。

 

営業ばかりが、自社商材のアピール・説明をしていては、顧客の真のニーズが分からず最適なアプローチはできなくなってしまいます。

 

トップセールスは聞き役に徹すること、そして質問することが上手であり、一方的に話し続けることはありません。

 

何気ない会話からも相手の心情を読み取り、思考パターンを知ることが、最適な提案を行う上でとても重要な要素となるからです。

顧客の合意を取りながら説明しているか

トップセールスと普通の営業の大きな違いは、独りよがりで顧客を置き去りにした商談をしないことです。

 

普通の営業は、「商談の型」にはめようとして、たとえば、相手が「あなたに本音を教える信頼関係はまだない」と感じているのにヒアリングを始めたり、顧客が十分に「理解してもらった」と思っていないにも関わらず商品説明を始めたりしがちです。

 

商談の型は確かに大切ですが、相手の心境や態度を注視しながら進めることが何より大切です。独りよがりな営業では顧客の信頼は得られません。

 

顧客の納得と合意を大切にして、細かく確認を取りながら商談を進めるのがトップセールスの特徴です。

圧倒的な行動量を持つかどうか

トップセールスは、通常の営業メンバーと比べると、ベースとして圧倒的な行動量であることが大半です。ムダなことはやらない一方で、目標達成に必要なプロセスをきちんとやりきっています。

 

たとえば、顧客との商談数、顧客との連絡数などを比較してみると、トップセールスは行動量も非常に多く、かつマメであることが分かります。

トップセールスは育成できるか?

これまでトップセールスの特徴と、普通の営業職との違いを見てきましたが、最後にトップセールスを育成するための方法論を紹介したいと思います。

本当のトップセールスは育成できない!?

「トップセールスを育成できるか」というテーマに対して、はじめから「育成できない」と記載してしまうのは恐縮ですが、本当にずば抜けた営業、一種の「異常値」を出すようなトップセールスは、これまでに紹介したようなトップセールスの特徴を押さえた上で、なおかつ強烈な個性や強みを持っていることが少なくありません。

 

例えば、相手の関心を見抜く驚異的な洞察力、懐に深く入り込める真似できないコミュニケーション力、ずばぬけた提案力といったものです。

 

そうした意味で、異常値を出すようなトップセールスを計画的に育成するのはかなり困難です。

 

一方で、「上位20%に入り続けるような優秀なセールス」は育成可能です。

 

次にご紹介するような幾つかのポイントをしっかりと押さえて育成することで、全体が底上げされると同時に、ある種「標準的なトップセールス」を継続的に生み出すことができるでしょう。

営業の仕事と目標に意味付けを徹底する

前述したようにトップセールスの仕事は、強烈な目標達成意欲、そして、顧客貢献の意識が両立して生み出されるものです。

 

こうしたマインド面は、スキル研修をしただけで醸成できるものではありません。

 

自社の商品・サービス価値に対する誇り、商品・サービスが提供できる価値、また、営業の仕事の意味、自分個人にとっての目標達成の意義やメリットなどを徹底して伝え、また考えてもらいましょう。

 

「上から落ちてきた目標数字だから」「○○営業部に配属されたから」といった意識では、行動量や顧客貢献の意識は生み出されません。

顧客の購買心理を理解する

トップセールスになる上では、顧客を理解することが非常に大切です。トークスクリプトやプレゼンの技術、商談の型などはもちろん大切ですが、上述したように顧客の真のニーズは個々に異なるものです。

 

だからこそ、顧客をしっかりと理解する、顧客の購買心理を知るということが大切です。

 

マーケティングの世界でよく言われることに「顧客はドリルを買いたいのではなく、穴を買いたいのだ」という言葉があります。

 

顧客にとって、ドリルというのは、あくまで穴をあけるためのツールであって、顧客が欲しいのは「自分が必要な穴」なのだということです。これが顧客心理です。

 

商品やサービス理解を考える際、つい商材のスペック、サービスの機能などを考えてしまいがちですが、顧客の購買心理は違います。

 

顧客は何を解決したいのか、何を実現したいのか?という視点で商品・サービスを理解することが大切です。

顧客の購買プロセスを理解する

トークスクリプトやプレゼンの技術といった営業に必要なスキルの中でも、ある程度普遍的に使える考え方やフレームワークがあります。

 

例えば、「4つの不(不信、不要、不適、不急)」と呼ばれる購買決定に至るまでの心理ステップや、BANT判定(予算、権限、必要性、納期)と言われるような購買プロセスのフレームワークです。

 

「ベネフィット(顧客にとっての利益)」という考え方も、購買心理のフレームワークと言ってもいいでしょう。

 

こうした普遍的に使える「購買心理とプロセス」に関するフレームワークを身に付けることで、目の前の顧客を理解しやすくなります。

営業マネジメントを整える

目標達成から逆算して必要な行動計画や顧客構造の考え方、見込管理のやり方、商談の振り返り、必要なツールやトークスクリプトの整理など、営業が強い会社というのはこうした営業マネジメントが高いレベルで実施されているものです。

 

また、多くの会社でトップセールスと呼ばれる人に話を聞いてみると、天性の勘やキャラクターに支えられているようで、実は大前提としてこうした営業マネジメントを自身でしっかりと行っているものです。

 

成果を上げ続ける営業を育成する上では、やはりこうした営業マネジメントのレベルUPが不可欠です。
NLP-JAPANラーニング・センターによるこちらの記事では、営業やビジネスで結果を出すために役立つ心理学について解説しています。

まとめ

並外れた数字を叩き出すトップセールスの育成は難しいですが、常に上位2割に入り続けるような「標準的なトップセールス」というのは育成が可能です。

 

紹介したトップセールスに共通する特徴や、普通の営業職との思考・行動パターンの違い、育成へのポイントが参考になれば幸いです。

 

なお下記の記事で、効果的な営業研修のポイントなどを解説していますので、ご興味あればご覧ください。

なお、HRドクターを運営する研修会社ジェイックでは、営業研修を提供しています。営業組織を「新規開拓」「提案営業」ができるようにしたいとお考えであれば、ぜひお気軽にお問い合わせください。

著者情報

近藤 浩充

株式会社ジェイック|取締役 兼 常務執行役員

近藤 浩充

大学卒業後、情報システム系の会社を経て入社。
IT戦略事業、全社経営戦略、教育事業、採用・就職支援事業の責任者を経て現職。企業の採用・育成課題を知る立場から、当社の企業向け教育研修を監修するほか、一般企業、金融機関、経営者クラブなどで、若手から管理職層までの社員育成の手法やキャリア形成等についての講演を行っている。
昨今では管理職のリーダーシップやコミュニケーションスキルをテーマに、雑誌『プレジデント』(2023年)、J-CASTニュース(2024年)、ほか人事メディアからの取材も多数実績あり。

著書、登壇セミナー

・社長の右腕 ~上場企業 現役ナンバー2の告白~
・今だからできる!若手採用と組織活性化のヒント
・withコロナ時代における新しい採用力・定着率向上の秘訣
・オンライン研修の「今と未来」、社員育成への上手な取り入れ方
・社長が知っておくべき、業績達成する目標管理と人事評価
・社長の右腕 ~ナンバー2の上司マネジメント / 部下マネジメント~
・オーナー経営者が知っておきたい!業績があがる人事評価制度と組織づくりのポイント
・社長の右腕 10の職掌 など

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