営業力を強化するトレーニングは?具体的な内容や営業研修のポイントを解説

営業力を強化するトレーニングは?具体的な内容や営業研修のポイントを解説

近年、ECサイトやWebマーケティングなどが普及するなかで、営業に求められる能力は上昇しています。こうしたなかで重要性が増しているのが、営業トレーニングです。

 

ただ、営業トレーニングで実施するプログラムにも、さまざまな種類があります。

 

そのため、自社で営業トレーニングを実施しようと思っても、具体的にどういうプログラムを採用すれば良いかわからないこともあるかもしれません。

 

記事では、まず営業トレーニングの概要と必要性、営業職に必要なスキルを確認します。

 

確認したうえで、記事の後半では、営業トレーニングの具体的内容と、効果的な営業トレーニングを行なうためのポイントを解説します。

<目次>

営業トレーニングとは?

営業トレーニングは、営業パーソンに対して行なう営業研修や教育の総称です。

 

詳細は後述しますが、営業トレーニングの主目的は、営業メンバーのパフォーマンスを向上させて、企業の業績アップにつなげることです。

営業職に必要なスキル

営業職が顧客から信頼され、受注を上げるには、以下のスキルを身に付けることが求められます。各スキルを詳しく見ていきましょう。

関係構築能力

営業活動で成果を出すには、顧客との良好な関係(信頼関係)を構築することが不可欠です。

 

とりわけ提案型のソリューション営業の場合、適切な課題解決策の提案をするためには、顧客の悩みや事情などの深い本音を聴き出す必要があります。

 

深い話をヒアリングするために必要となるのが、「この人なら悩みを話しても大丈夫かな?」と感じてもらえる信頼関係です。

 

適切なソリューション提案につながる顧客の情報や本音は、高い関係構築力があってこそ収集できるものとなります。

ヒアリング能力

ヒアリング能力は、顧客との会話のなかから潜在ニーズを探り出す力、いわゆる傾聴力(積極的傾聴力)ともいえます。また、質問力もヒアリング能力の一つです。

 

高いヒアリング力は、顧客との良好な関係のなかで発揮されるものです。質問がうまく、聞き役に徹し続けられることは、提案型のソリューション営業に不可欠な姿勢になるでしょう。

プレゼンテーション能力

プレゼンテーションは、顧客に商品・サービスを理解してもらい、購入(成約)という意思決定につなげるために行なうものです。

 

営業の場合、わかりやすい説明や強いインパクトで顧客の心をグッとつかみ、相手に行動や意思決定を促すプレゼンテーション能力が求められます。

 

近年は、単なる商品性能であれば、Web上からカタログをダウンロードするだけで把握できる時代です。

 

そのため、多くの顧客は、企業の製品・サービスが、自分にとってどのような価値があるか、どのような効果があるかを知りたがっています。

 

営業の仕事では、こうした相手のニーズに合わせたプレゼンテーションが必要となります。

クロージング能力

クロージングは、見込み客に購入を意思決定してもらうための最終プロセスです。

 

人が買わない理由には「4つの不」というものがあり、なかでもクロージングでは、不急を解除し「いま決めたほうがいい!」と最後の後押しをする形になります。

 

「4つの不」の詳細に興味があれば、以下の資料をご覧ください。

ロジカルシンキング

コンスタントに成果を上げるには、顧客のニーズや、成約に至らない理由(4つの不)を論理的に分析し、筋道を立てた説明で相手の心を動かす必要があります。

 

論理的な分析や筋道を立てた説明で必要となるのが、ロジカルシンキング(論理的思考力)です。

 

ロジカルシンキングを鍛えると、以下のような「なんとなく」がなくなり、成約への確実性が高まりやすくなります。

  • 「この顧客は、なんとなく製品Aに興味を持っている気がする……」
  • 「お客様には、なんとなく製品Bが合っていると思います……」
  • 「なんとなくですが、今年が買い替えときだと思う……」 など

また、コンスタントに成果を上げるための商談やアプローチ管理、顧客構造のマネジメントなどにもロジカルシンキングは欠かせません。

営業トレーニングの必要性

ビジネスセミナー

 

営業職では近年、以下の理由から営業トレーニングの必要性が高まっています。

業績向上

営業は、顧客接点の最前線であり、企業の業績向上や成長に欠かせない部門です。

 

ただ、近年では、デジタルマーケティングとECが発達したなかで、いわゆる“御用聞き営業”や“お願い営業”、“値下げ営業”などでは営業成果は得られなくなっています。

 

こうしたなかで新規開拓力や受注率を高めるには、営業トレーニングを通じて体系化された営業プロセスや営業マインドを学ぶ必要があります。

営業に求められる能力の上昇

前述のとおり、最近では、ECサイト、Webマーケティングなどが発達するなかで、顧客が自ら情報収集を行ない、インターネット上から自分で商品購入や契約をすることが多くなっています。

 

こうしたなかで、生身の営業パーソンに求められるのは、顧客の課題を顕在化したり、商品の導入メリットやイメージを顧客に合わせて説明したりする“提案営業”や“ソリューション営業”です。

 

提案営業やソリューション営業では、ヒアリングのなかでくみ取った顧客ニーズに合わせた提案を行なうことが求められます。

 

ソリューション営業で顧客の心を動かすには、営業トレーニングを通じて、先述の関係構築力やヒアリング力、プレゼンテーション能力などを向上させる必要があるでしょう。

共通言語の構築

営業の場合、各担当者が接する顧客は千差万別です。

 

こうしたなかで、上司が営業メンバーの管理やフォローをするには、新人からベテランまですべての人が理解できる共通言語の構築・浸透が有効です。

 

とくに見込管理や商談ステージに関して、共通言語を構築・浸透している営業のマネジメントや指導が容易になります。

 

共通言語を構築すると、たとえば、「“4つの不”のなかで、解除できていないのはどれ?」といったように簡潔で的確なコミュニケーションが可能になります。

営業トレーニングの具体的な内容

営業トレーニングに盛り込まれる内容には、一般的に以下のようなものがあります。

営業マインドの構築

営業活動で成果を出し続けるには、成果を上げる営業としての思考パターンや考え方が必要となります。

 

営業マインドの研修では、以下のようなことを考えながら、各自の営業マインドを構築していく必要があります。

  • “営業”という仕事にどういう価値があるか?
  • なぜ“営業”が必要なのか?
  • “営業”で成功するには、どういう考え方が必要か? など

製品やサービスに関する知識・事例

自社製品・サービスの知識がなければ、顧客ニーズに合う提案はできません。ただ、いまの時代は、メーカー公式サイトやレビューサイトなどに、自社製品・サービスの情報が掲載されています。

そのため、ソリューション営業で成果を出し続けるには、単なるカタログスペックを覚えるのではなく、営業トレーニングを通じて、以下のように深い知識や事例を身に付ける必要があります。

  • 自社製品の導入で解決した顧客課題の事例
  • 自社製品が競合と比較されることが多いポイント
  • 多様な顧客事例
  • 原材料へのこだわりと生産者情報
  • デザイナーや開発担当者などの制作秘話 など

営業のフレームワーク

以下3つのフレームワークでは、全メンバーが同じ理解、共通言語をもっていると、組織全体の営業力を底上げしやすくなります。

 

    • 《1.営業活動全体のプロセス(広義の営業活動)》
    • ・リード(見込み客)創出 ⇒ 商談 ⇒ 案件化 ⇒ 受注 ⇒ 利用 ⇒ リピート

 

    • 《2.商談のプロセス(狭義の営業活動)》
    • ・アイスブレイク ⇒ ヒアリング ⇒ 提案 ⇒ テストクロージング ⇒ クロージング

 

  • 《3.商談のフレームワーク(顧客の購買心理)》
  • ・不信解除 ⇒不要解除 ⇒ 不適解除 ⇒ 不急解除

上司や先輩のフォローを行なったり、日報などで商談の進捗を共有したりするうえでも、全メンバーが同じフレームワークを理解して営業活動を進めることが大切です。

コミュニケーション能力の向上

顧客と良好な関係を築き、成果を出し続けるには、以下4つからなるコミュニケーション能力を向上させる必要があります。

  • 信頼関係を構築する力
  • 聴く力(訊く力)
  • 伝える力
  • 背中を押す力

上記の能力がバランス良く高まると、顧客の悩みや課題などの深い話を聴き出し、適切な解決策を提案しやすくなるでしょう。

プレゼンテーション能力の向上

顧客に商品・サービスの内容を理解・納得してもらい、契約などの意思決定につなげるには、トレーニングを通じて以下のようなプレゼンテーション能力を向上させることも大切です。

  • 説得力・信ぴょう性を高める方法
  • 強いインパクトを与える方法
  • 複雑な情報をわかりやすく伝える方法
  • プレッシャーのかかる場面での対応方法
  • 聞き手に行動や変化を促す方法 など

営業ツール活用法の習得

営業活動によって収集した顧客情報・商談情報などの管理や、さまざまな事務作業を効率化するには、以下のような営業ツールを組織的に活用することも大切です。

  • 営業支援システム(SFA)
  • 顧客関係管理ツール(CRM)
  • 名刺管理ツール など

特に、継続して成果を上げるための商談管理やアプローチ管理には、営業ツールの活用が欠かせません。

 

また、CRMに登録された購買履歴や問い合わせ履歴、SFA内に入力されたほかの営業パーソンの日報などを参考にすれば、顧客の潜在ニーズや効果的なアプローチ方法なども分析・入手しやすくなるでしょう。

ロールプレイング

たとえば、研修で教えてもらった商品知識やセールストークは、ロールプレイングなどで実際に口に出してトレーニングすることで、初めて現場で使えるようになります。

 

したがって、営業経験のない新人や若手の営業力を高めるには、ロールプレイングを繰り返し行なうことが大切です。

 

場合によっては、入社1~3年ぐらいまでの新人・若手向けには、朝の時間帯などに週1回のロールプレイング研修を実施してもよいでしょう。

 

また、上手な商品紹介や効果的なセールストークなどを身に付けさせるうえでは、ベテラン社員と一緒にロールプレイング研修を実施することもおすすめです。

効果的な営業トレーニングを行なうためのポイント

プレゼンテーションする女性

 

営業トレーニングの効果を最大化するには、準備や実施の際に以下のポイントを大切にするとよいでしょう。

目的と対象者の選定

まず、「どういう“目的”のトレーニングを“誰”に受けてもらうのか?」を明確化する必要があります。そのために必要となるのは、営業課題の洗い出しです。

 

たとえば、営業パーソン全員が自己流の営業活動をしている場合、全メンバーを対象とするフレームワーク研修を実施する必要があるでしょう。

 

また、商談がなかなか進まない営業パーソンに対しては、それぞれの課題を以下のように明確化したうえで、課題解決という目的につながる研修を実施する必要があります。

  • 新規顧客と良好な関係を築けない → ラポール形成を中心とするコミュニケーション研修
  • SFAやCRMデータの利活用ができていない → 営業ツール活用の研修 など

自社に合わせたアレンジ

営業トレーニングを実施するときには、各自が現場ですぐに実践できるように、自社の商材や業界、商談スタイルなどに合った内容にする必要があります。

 

とくに外部講師に研修を依頼する場合は、講師に情報を提供したうえで、自社に合わせたアレンジができるかどうかの確認が大切です。

 

営業メンバーは、営業研修の講師に「この人の話は聞く価値があるか?」とシビアな目を向ける傾向があります。

 

だからこそ、力量がある、かつ、自社に向けたアレンジをしっかりとできる講師を選ぶことが必要です。

実践への落とし込みとフォローアップ

営業トレーニングで習った内容を成果につなげるためには、テレアポや客先などで“実践できる状態”になる必要があります。

 

そのために有効なのが、研修内と研修後に実施する以下2つのフォローアップです。

  • 1.研修内容が「自分の営業活動にどう落とし込むか?」を確認する(関連付け)
  • 2.次回の研修で「研修内容をどのように実践したか?」を発表してもらう(宿題)

ただし、研修で習ったことを現場で実践しても、実践から生まれた結果(成果・失敗)を考えなければ、効果は限定的になってしまいます。

 

研修内容を本当に身に付けるうえでは、実践から生まれた結果を多面的に振り返ることが大切です。振り返りをすると、以下のように次につながる“学び”が得られます。

  • 「傾聴を実践したらお客様の笑顔が増えた」→「信頼関係を築くうえで、傾聴はかなり効果の高い方法かも……」
  • 「ベテランAさんに教えてもらった伝え方を実践したら、商談が進みやすくなった……」→「今後も朝のロープレ研修に参加し、ベテランAさんのセールストークをどんどん吸収しよう……」 など

人が実践(経験)からどのように学ぶかをモデル化したものに、コルブの経験学習モデルというものがあります。

コルブの経験学習モデル
  • ステップ1:具体的経験(業務や活動のなかで具体的な経験をする)
  • ステップ2:省察的観察(経験した内容を自分のなかで多面的に振り返る)
  • ステップ3:抽象的概念化(経験に共通点を見つけ出し概念化させる)
  • ステップ4:能動的実験(得られた概念が正しいかを他のケースで試してみる)

営業トレーニングのプログラム設計をするときには、コルブの経験学習モデルを意識して、フォロー研修や振り返りの仕組み化を考えるとよいでしょう。

 

おすすめの営業研修や研修の選び方は、以下の記事で紹介しているので参考にしてください。

まとめ

営業トレーニングは、営業職に対して行なう営業研修や教育の総称です。

 

近年では、ECサイトやWebマーケティングなどが発達するなかで、営業には提案営業やソリューション営業のスキルが求められるようになっており、営業トレーニングが欠かせないものになりつつあります。

 

また、営業部門に共通言語を構築・浸透させるうえでも、営業トレーニングはとても大切です。

 

営業職として成果を出し続けるには、営業トレーニングを通じて以下のスキルを身に付ける必要があります。

  • 関係構築能力
  • ヒアリング能力
  • プレゼンテーション能力
  • クロージング能力
  • ロジカルシンキング

そして、営業力の強化に向けたトレーニングには、目的に応じて以下のようなプログラムが盛り込まれることが多いでしょう。

  • 営業マインドの構築
  • 製品やサービスに関する知識・事例
  • 営業のフレームワーク
  • コミュニケーション能力の向上
  • プレゼンテーション能力の向上
  • 営業ツールの活用法習得
  • ロールプレイング

営業トレーニングを効果的なものにするには、以下3つを大切にすることがポイントです。

  • 目的と対象者の選定
  • 自社に合わせたアレンジ
  • 実践への落とし込みとフォローアップ

なお、HRドクターを運営する研修会社ジェイックでは、提案営業のスキルが身に付けられる営業トレーニングを提供しています。

 

ジェイックの営業トレーニングは、グローバルのCRMトップ企業なども導入する営業フレームワークをベースに、誰もが提案営業をできるようになるプログラムです。

 

自社の営業部を新規開拓や提案営業ができるチームにしたいと考えている人は、ぜひ詳細を確認してください。

著者情報

近藤 浩充

株式会社ジェイック|取締役 兼 常務執行役員

近藤 浩充

大学卒業後、情報システム系の会社を経て入社。
IT戦略事業、全社経営戦略、教育事業、採用・就職支援事業の責任者を経て現職。企業の採用・育成課題を知る立場から、当社の企業向け教育研修を監修するほか、一般企業、金融機関、経営者クラブなどで、若手から管理職層までの社員育成の手法やキャリア形成等についての講演を行っている。
昨今では管理職のリーダーシップやコミュニケーションスキルをテーマに、雑誌『プレジデント』(2023年)、J-CASTニュース(2024年)、ほか人事メディアからの取材も多数実績あり。

著書、登壇セミナー

・社長の右腕 ~上場企業 現役ナンバー2の告白~
・今だからできる!若手採用と組織活性化のヒント
・withコロナ時代における新しい採用力・定着率向上の秘訣
・オンライン研修の「今と未来」、社員育成への上手な取り入れ方
・社長が知っておくべき、業績達成する目標管理と人事評価
・社長の右腕 ~ナンバー2の上司マネジメント / 部下マネジメント~
・オーナー経営者が知っておきたい!業績があがる人事評価制度と組織づくりのポイント
・社長の右腕 10の職掌 など

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