中堅社員は、若手社員や管理職と同様に、人材育成や組織開発の領域でよく使われる言葉です。ただ、中堅社員は、企業によって対象とする年齢層・位置づけが異なる場合も多くなります。
ただ、一般的に言えば、中堅社員は管理職に向けた準備に入る大事な時期である一方で、人によっては新人~若手時代と比べてモチベーションが下がったり、伸び悩みが生じやすかったりして滞留してしまうケースが見られやすい特徴があります。
企業側でも、次世代リーダー育成の必要性を感じながらも、中堅社員に対して、具体的にどのような教育をすべきかわからないこともあるでしょう。
本記事では、研修会社としての知見も踏まえて中堅社員の定義と3つの役割、中堅社員に求められる5つのスキルを確認します。確認したうえで、企業で中堅社員が育たない原因と、中堅社員を育成する5つのコツと注意点を解説します。
記事の後半では、HRドクターを運営する研修会社ジェイックの中堅社員の育成に役立つ研修サービスも紹介します。
<目次>
- 中堅社員とは?
- 中堅社員に求められる3つの役割とは?
- 中堅社員に求められる5つのスキル
- 中堅社員が育たない原因は?
- 中堅社員を育成する5つのコツ
- 中堅社員を育てる際の注意点
- 中堅社員の育成に役立つジェイックの研修サービス
- まとめ
中堅社員とは?
一般的に、「入社3年目ぐらいまでの若手社員」と「管理職」の間にいるメンバーを中堅社員と呼ぶことが多いです。ただし、“管理職になる年齢”は、企業によって大きく異なります。そのため、中堅社員の年齢層も、企業によって大きく変わってきます。
たとえば、管理職になるのが30代後半といった企業では、20代後半ぐらいの社員までを“若手”ということもあります。また、平均年齢が40代の中小企業では、30代も年齢的に“若手”扱いしたりすることもあるでしょう。
本記事では、入社3年程度を過ぎて「一人で成果をあげることが期待される」ところから「管理職として組織の成果に責任を持つポジション」までの間を中堅社員として表現していきます。
中堅社員に求められる3つの役割とは?
中堅社員に求められる一般的な役割は、以下の3つです。
自立したプレイヤー
中堅社員は、新人や若手とは異なり、ひと通りの知識・スキル・経験が備わった一人前であることが求められます。自分で目標から逆算、また、課題などを分析して計画や施策を立案、自分の判断と責任で成果を出す自立性が必要です。
新人・若手が成長するうえでのロールモデルとなることが求められています。
若手社員と管理職のパイプ役(上司の良きフォロワー)
組織の場合、チームを構成するメンバー間の役割・立場・世代などが異なり、仕事への価値観や考え方に相違が生じるのは、ある程度は自然なことです。
<生まれ育った時代背景と立場による価値観の違い>
・少し前まで学生だった「新入社員」
・Z世代の「若手社員」
・昭和生まれの「管理職・リーダー」
しかし、リーダーとメンバーで価値観や仕事のやり方に相違があるままでは、チームの目標達成に向けた協働はできません。
中堅社員は、企業の事情や管理職の想いなどを理解しやすいですし、同時に管理職と比べて新人・若手と近い立場でもあります。たとえば、中堅社員が管理職の話をかみ砕いて新人・若手に説明したり、逆に新人・若手に寄り添ったうえでその想いを上司に伝えたりすることで、チーム内の相互理解が進みやすくなります。
中堅社員の場合、こうした組織内のパイプ役、また、管理職の良きフォロワーとなることも求められます(フォロワーというのは、管理職のいうことに従う、というだけではなく、現場の意見を吸い上げて管理職に意見を伝えるといったことまで含んだ言葉です)。
管理職の候補
中堅社員は、次世代リーダー、管理職になるための準備をする期間でもあります。たとえば、OJT指導者として新人の育成に携わったり、既存メンバーのフォローなどに携わったりしながら、リーダーに必要な人間力やコミュニケーション力などを向上させていく必要があるでしょう。
また、プロジェクトの中核として動きながら、チームビルディングやマネジメントへの理解を深め、身に付けていく時期でもあります。そのなかで、管理職の右腕、管理職の代理としての役割を担い、管理職としての視座や基準を身に付けた人材が、管理職として登用されていくことになります。
中堅社員に求められる5つのスキル
中堅社員が先述の役割を担うには、以下5つのスキルを身につける必要があります。
セルフマネジメント
たとえば、「タスクに抜け漏れがある」「時間管理ができない」のようにセルフマネジメントができなければ、新人・若手のロールモデル(お手本)になれないですし、将来の管理職になることも難しくなるでしょう。
上記のような自己管理はある意味で基本ですが、管理職になれば、「他人のタスク」「プロジェクトの進捗」といったより広い範囲をマネジメントすることが求められます。基本スキルをどこまで磨けるかが重要です。
また、管理職の右腕としてチーム内での意思決定を担ったり、メンバーの指導に携わったりするうえでも、自分自身の心身を良い状態に保ち、感情をきちんとセルマネジメントすることも必要です。
そのため、中堅社員は、自分自身のパフォーマンスを高めて成果を出すために、以下のような事項の自己管理ができる必要があります。
- 時間管理
- タスク管理
- 良好な肉体・精神状態
- 感情やモチベーション など
フォロワーシップ
フォロワーシップとは、管理職に対する主体的かつ自律的な支援のことです。わかりやすくいえば、チーム全体のパフォーマンスを高めるために、以下のように献身的な言動・行動ができることになります。
- 管理職が示すビジョンを新人・若手にわかりやすく伝える
- 現場の課題や解決策などを意見として管理職に伝えられる
- 管理職のミスや失敗にきちんと指摘する
- 意見が求められる場面で自分の考えを述べる
- チームで決めた計画や施策を進んで実行する など
中堅社員にフォロワーシップの姿勢があるからこそ、チームビルディング⇒目標達成が可能になります。
フォロワーシップは「上司の意見や指示に盲目的に従う」という受け身の姿勢ではなく、「チームの成果に向けて能動的に上司をサポートする」という能動的な姿勢です。
リーダーシップ
リーダーシップは、フォロワーシップとも関係することですが、現場のリーダーとして管理職や組織の方針を理解して、新人・若手を導く力です。
フォロワーシップの次に求められるのが、リーダーシップです。つまり、組織や上司などの方針を理解したうえで、方針をかみ砕いて周囲をリードする、細かな実務に落とし込みを自分で決めていくといったところです。
中堅社員には、管理職の右腕として、チームに対する影響力を発揮することが求められます。そして、中堅社員は管理職のトレーニング期間であり、管理職として必要なリーダーシップを磨けた中堅社員が、管理職として昇格していくのが正当な姿です。
課題解決力
課題解決とは、目標と現状のギャップを明確化して埋め方を考えて実行することです。発生した問題や課題の原因を分析し、解決策を考え、実行していくことが求められます。
管理職になれば、チーム内で起こる課題解決の責任をすべて担うことになります。特に管理職は、“自分の問題・課題”だけでなく、“他人の問題・課題”に対して主体的に取り組むことが求められるでしょう。中堅社員は、そのトレーニング期間ともいえます。
コミュニケーションスキル
中堅社員に求められるコミュニケーション力とは、以下4つを総称したスキルです。
- 信頼関係を築く力
- 聴く力(訊く力)
- 伝える力
- 交渉する力
新人・若手社員と管理職のパイプ役になるためには、両者から信頼されることが大切です。
また、信頼されるためには、実務的な能力に加えて、人間力や人格、若手や管理職の話に耳を傾け、「この人なら自分の話を理解してくれる(聴いてくれる)」「この人は信頼できる」と感じてもらう必要があります。
そのうえで、チームの課題解決や目標達成のために、自分の意見やアドバイスなどを伝えることが大切です。
また、中堅社員の場合、単にパイプ役として双方の意見を“つなげる”だけでなく、自分自身が間に入って調整して解決に導いていく交渉する力が求められるでしょう。
中堅社員が育たない原因は?
中堅社員は、新人・若手や管理職などと比べて育成が難しい存在です。中堅社員が育たないことで悩む組織には、以下のような原因・特徴があります。
新人や若手がいない
チームに新人・若手がいなければ、以下のような役割を果たせず、自立したプレイヤー止まりになってしまいます。
- 若手社員と管理職のパイプ役(良きフォロワー)
- 後輩社員の育成
- プロジェクトの中核として動く
結果として自分の上司や管理職と信頼関係を築けたとしても、周囲に対するリーダーシップや人材育成、また、他人の仕事に対するマネジメントや課題解決などの経験を積む機会が少なくなります。そして、管理職への成長もしにくくなるでしょう。
等級制度がない
等級制度とは、組織内のメンバーを職能や役割に応じて等級で分ける人事制度のことです。
当たり前の話ですが、新卒と管理職の間には、やはり何段階かのステップがあります。近年では、成果主義が広がり、人によっては数年で管理職になることもありますが、企業によっては管理職になるまでに10年ぐらいの時間がかかることもあります。
管理職になるまでのステップのなかで、モチベーションを落とさずしっかりとステップアップしていくためには、成長の目標や目安として等級制度があるとよいでしょう。
教育や研修制度が整っていない
中堅社員を次世代リーダー、管理職へと育てるための仕組みがないことも中堅社員の成長を妨げる要因となります。
中堅社員は、若手社員を経て、自分自身の仕事はある程度できるようになった状態です。成長意欲が高い人は別ですが、成長していく過程で外部からの刺激がなければ、マンネリ化してモチベーションが低下してしまうことも多くなります。
モチベーションが低下した場合、中堅社員に求められる“管理職の良きフォロワー”にならず自分の仕事だけをやる滞留人材になってしまうでしょう。
管理職の育成力不足
中堅社員を次世代リーダーへと引き上げていくのは、管理職の役割でもあります。
また、中堅社員の場合、先述のとおりマンネリ化しやすい時期だからこそ、管理職が日々のマネジメントやフィードバックを通じて成長意欲や主体性を引き出すことが大切になるでしょう。
なお、以下のような管理職の下にいる中堅社員は、成長しづらい傾向があります。
- 中堅社員と新人・若手を同じ扱いにしている
- 中堅社員に対してフィードバックしていない
- 中堅社員との面談を通じて成長プランを描いていない
- そもそも、メンバーとの信頼関係が構築できていない など
中堅社員を育成する5つのコツ
中堅社員を管理職につながる人材に育てていくには、以下5つのポイントを大切にしながら育成する必要があります。
キャリアを描かせる
まず、若手から中堅社員まで「自分がどうなりたいか?」のキャリアを描いてもらうことが大切です。
ただし、近年では、終身雇用が崩壊し働き方が多様化するなかで、そもそも中堅社員⇒管理職のキャリアを本人が望まないことも多くなっています。そのため、一律的に管理職を希望させるのではなく、スペシャリストを目指せるようなキャリアパスを構築することも一つです。
こうした上司・組織と社員の間で起こるキャリア観のミスマッチを防ぐには、キャリアにおける互いのニーズを照合し育成計画を立てるキャリアデベロップメントプログラムの考え方も有効となります。
いずれにせよ、「未来にどうなりたいか?」というビジョンが成長意欲や主体性の発揮につながるポイントになります。
メンバー、後輩を持たせる
中堅社員に必要なリーダーシップ力、信頼関係力などのコミュニケーションスキルは、新人・若手との関わりのなかで身に付いていくものです。また、自立したプレイヤーとしての自覚やロールモデルになるような振る舞い、自己管理能力も、新人・若手に見られることで向上していくでしょう。
中堅社員としての成長を促すなら、チームメンバーの世代やレベルのバランスも考える必要があります。
責任のある業務をまかせる
課題解決力やリーダーシップスキルは、日々の仕事を通じて実践することで身に付いていくものです。
たとえば、責任ある仕事を任せてもらえば、中堅社員の上司である管理職に対して「自分は今のチームで信用されている」と思えるようになります。結果として、自信やフォロワーシップも向上するでしょう。
こうした効果を高めるには、管理職の“右腕”、チームの“No.2”として扱ったり、プロジェクトを任せたりすることが有効となります。
なお、任せる際には、次世代リーダーとして求める基準を上げていくことも伝えたうえで、成長に向けた支援とフィードバックをしていくことが大切です。
必要なスキルの研修を実施する
必要スキルの研修では、以下のような管理職へのステップアップに向けて普遍的なスキルやフレームワークの使い方を教え、業務のなかで磨いてもらうことが大切になります。
- セルフマネジメントで用いる「時間管理のマトリックス」
- 目標設定に不可欠な「SMARTの法則」
- 目標達成の技術 など
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ヒューマンスキルを磨く
若手社員と管理職のパイプ役になったり、後輩社員の育成をしたりするには、上司とメンバーから信頼されるような高い人間力が必要です。基礎となる人間力や人格に、“聴く”“伝える”“質問する”などのコミュニケーションスキルを加えたものがヒューマンスキルと呼ばれます。
ヒューマンスキルは、管理職として成果をあげるうえで特に重要な能力です。
ただ、人間力は、一朝一夕ですぐに身に付くスキルではありません。そのため、管理職を目指すうえでは、中堅社員や若手社員のうちからヒューマンスキルをしっかりと磨いていくことが重要です。
なお、当然のことながら、中堅社員の上司である管理職のヒューマンスキルも高めておくことも大切になります。
中堅社員を育てる際の注意点
中堅社員の育成では、以下の点に注意をする必要があります。
指示を与えすぎない
上司には、中堅になったばかりのメンバーに責任ある仕事や課題解決を任せることに対して「失敗したらどうしよう」などの不安が生じることもあるかもしれません。
しかし、管理職が中堅社員に指示を出しすぎると、いつまで経っても自立したプレイヤーにはなりません。また、主体性やフォロワーシップなども育まれなくなってしまいます。
また、あまりに指示が多いと「自分は信用されていない」などと思ってしまうこともあるでしょう。
中堅社員を育てるには、まず、中堅の役割と必要なスキルなどを教えます。教えたうえで、期待を明確に伝えることが大切です。そうすることで、中堅社員は自分の新たな役割を認識して挑戦できるようになります。
マンネリ化しないようにする
中堅社員は、プレイヤーとして必要なスキルや知識も身に付けているため、マンネリ化しやすい時期でもあります。
マンネリ化を防ぐには、本人のステップに応じて新たな役割を与えたり、次ステップの目標を見出し、目標達成に必要なスキルを身に付ける機会を提供したりすることが必要でしょう。
中堅社員の育成に役立つジェイックの研修サービス
HRドクターを運営する株式会社ジェイックでも、中堅社員の育成に役立つさまざまな研修を実施・提供しています。
「7つの習慣®」研修
世界的ベストセラーであり、多くの企業が社員研修に導入する名著『7つの習慣』を用いた研修です。
「7つの習慣®」研修を受講すると、主体性やセルフリーダーシップを発揮できるようになります。そのため、管理職になるための準備期間にもおすすめの研修です。また、モチベーションやエンゲージメントの向上につながる効果もあります。
行動変容に欠かせない研修前のアプローチと、研修後のフォローも含めた内容です。受講しっぱなしではなく、確実な効果性を求める人におすすめとなります。
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JAICリーダーカレッジ研修
将来の管理職になるための“責任感”を身に付けさせられる研修です。
JAICリーダーカレッジ研修は、360度評価を通じて、チーム内における自分の現状を把握することから始まります。診断結果を通じて自分の強み・弱み・周囲からの見え方などを知ることで、研修に入る前に“変化すること”を決意させることが可能です。
1ヵ月に1回の研修で学んだあとは、「職場での実践行動」を必ず計画します。そして、次回の研修で、「実践した結果」をクラス内で発表する流れです。リーダーカレッジ研修では、「学び、職場で実践して、振り返る」を繰り返す継続学習をすることで、確実な行動変容を促します。
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【人を動かす】リーダーシップ&コミュニケーション研修
国内1,000万部の歴史的ベストセラー『人を動かす』で知られるデール・カーネギーと公式提携して提供する研修です。中堅社員が、新人と若手・管理職から信頼を得て、組織内のパイプ役になるうえでも非常に役立つプログラムになります。
リーダーシップ&コミュニケーション研修は、ISOに基づく品質管理基準をクリアしたプロフェッショナルが講師を担当します。
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まとめ
中堅社員とは、「入社2、3年目ぐらいまでの若手社員」と「管理職」の間のメンバーのことです。中堅社員には、以下3つの役割が求められます。
- 自立したプレイヤー
- 若手社員と管理職のパイプ役(良きフォロワー)
- 管理職候補
中堅社員が上記の役割を担うには、以下5つのスキルが求められます。
- セルフマネジメント
- フォロワーシップ
- リーダーシップ
- 課題解決力
- コミュニケーションスキル
中堅社員を育成するには、以下5つのポイントを実践することが大切です。
- キャリアを描かせる
- メンバーを持たせる
- 責任のある業務をまかせる
- 必要なスキルの研修を実施する
- ヒューマンスキルを磨く
記事内で紹介したとおり、HRドクターを運営する株式会社ジェイックでも、中堅社員の育成に役立つ研修サービスを提供しています。自社の中堅社員に、人間力やリーダーシップ力、セルフマネジメント力などを高めさせたいと考える人は、ぜひ以下の資料をダウンロードしてください。
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