若手リーダーが幹部となるために期待されることとは?社長の分身となるための4つのステップ

若手リーダーが幹部となるために期待されることとは?社長の分身となるための4つのステップ

組織の規模が大きくなえれば、課長や部長などの役職が生まれます。若手リーダーは、課長、マネージャー、事業部長といった階層を駆け上がって、組織を支える「幹部」となることが期待されています。では、社長の分身や右腕ともいうべき「幹部」になるためにはどうすれば良いのでしょうか?

 

記事では、若手リーダーが幹部となるための4つのステップ、また、経営者から若手リーダーへの期待事項を解説します。

<目次>

若手リーダーが社長の真の分身になるための4つのステップ

抜擢した若手リーダーには、経営者の分身ともいうべき「幹部」へと成長して欲しいというのが多くの経営者からの期待です。社長が若手リーダーに対して幹部となるまでに期待する「4つの成長ステップ」を紹介します。

4つのステップ

 

ステップ1:トップにいわれたことを部下に伝えることができる

最初のステップは、社長に言われたことをきちんと理解して部下に伝えられることです。例えば社長が「今年の目標は昨対比で売上20%アップだ!」と宣言したのであれば、「そうか、昨対比で売上20%あげるんだ!」と理解して、部下に対しても「売上20%アップの目標達成に取り組もう!」と号令をかけることができるレベルです。

 

当たり前のことに聞こえるかも知れませんが、社長の方針に対して、「そうは言っても…」とか、「方針は分かるけど、現場は違う…」と考えてしまい、“ちゃんと受け止められていない”若手リーダーは少なくありません。

 

まずは、社長の打ち出したことを「受け止めて理解しようとする」姿勢はいの一番に持っていて欲しい姿勢です。ただし、あくまでもステップ1のレベルは、最低限の基準です。ステップ1に留まっていては、たとえ役職上はリーダーであっても、社長の言葉を繰り返しているだけであり、組織や部下を動かすことはできません。

 

ステップ2:自分の言葉に置き換えて、具体化することができる

「今年の目標は昨対比で売上20%アップだ!」という社長の指示に対し、「そのために我々の部門では、新規契約を○○件取る。こういう示唆をしていこう」など、自チーム自部門の具体的な目標・施策に置き換えられれば、ステップ2のレベルです。

 

ステップ2のリーダーは、単なる掛け声だけではなく、実現する方法を自ら考え、部下に具体的な指示を出すことが求められます。若手リーダーがステップ2に育ってくると、社長の方針が組織の末端まで浸透し、社員達の行動も変わり始めます。

 

一方で、リーダーがステップ2で留まっていると、組織のあらゆる意思決定は依然として社長に委ねらている状態であり、社長は1日たりとも会社をあけることはできなくなります。

ステップ3:社長と同じ判断基準を持ち、社長に代わって意思決定できる

経営者は常に意思決定を迫られているため、どの社員よりも情報には敏感です。若手リーダーが幹部となるためのステップ3は、社長と同じように情報へのアンテナを張り、「社長と同じものさしで状況を判断し、意思決定できる」レベルへと成長することです。

 

ステップ3は、「この状況で、社長はどう判断するのだろうか?」というように、社長と同じような判断基準で考えられる必要があります。社長のコピーになれということではなく、社長が見ている景色や判断基準を想像できるようになるということです。

 

リーダーがステップ3まで育つと、社長は現場の意思決定をリーダーへと任せていくことが出来ます。ステップ3のリーダーこそ、「社長の分身」といえます。

 

社長と同じ物差しを身に付けるのはそう簡単にできることではありません。HRドクターを運営する株式会社ジェイックは、社員研修事業を展開しています。研修を提供する企業のリーダーや管理職からは、「うちの社長は言うことがしょっちゅう変わる!」「社長の基準が分からない」という悩みは多く耳にします。

 

社長の判断基準や意思決定の拠り所は、マニュアル化できるものでもありません。会社を取り巻く状況は日々刻々と変化するものであり、財務から会計、組織の人間関係、事業展開、オペレーションまで…すべてに最終責任をもつ経営者の意思決定も、社内外の状況に影響されます。

 

一例を挙げれば、ある大型受注案件を、朝の段階では「無理してでもとろう」という意思決定をしたものが、夕方には「いや、今回はリスクを取るべきではない」と変わることもありえるのです。

 

1日の中で、顧客についての新情報が入ったり、製造ラインの状況が変わったり、他の顧客との商談が進捗したり、融資の話に動きが合ったり、競合に目立った動きがあったり…と状況は刻々と変わります。それに応じて経営者の意思決定も変わるのです。

 

状況の中で、最善と思われる意思決定をして最終責任を担うのが経営者です。情報に鋭くアンテナを張り、他の社員が気づかない兆しからも変化を感じ取ろうとしています。

 

社長の真の分身になるためには、「なぜ社長は今回こういう意思決定をしたのか?」という背景や真意を、深く理解することが必要になります。「どうせ社長はすぐ変わるから…」と、社長の意思決定を待つのではなく、「社長ならこういう意思決定をするだろう」と考察する習慣は、若手リーダーが幹部へのステップアップを目指すうえでぜひ身につけてほしい重要事項です。

 

ステップ4:社長ができない発想をして、結果を出すことができる。

第3ステップのリーダーを育てるのは簡単なことではありません。しかし近年、顧客企業の経営者と話していると、「社長の分身を超えた」リーダーや幹部を期待する声も増えてきました。

 

「社長の分身を超える」とは、社長が発想出来ないものを生み出し、新たな価値を創造できる=結果につなげられるリーダー像です。過去のやり方や成功体験にとらわれず、自ら事業を構想し、実行できるリーダーが求められています。

 

ステップ4のリーダーは、「経営理念=何のためにわが社は存在しているのか」「世の中にどんな価値を提供しようとしているのか」という企業の根源的な価値は大切に守ります。その上で、企業のミッション・理念を実現するために、社長にはない発想やアイデアでの挑戦を行います。

 

大改革を推し進めたパナソニック元社長の中村邦夫氏は、「創業者 松下幸之助の経営理念以外のものはすべて打ち破る、でも、大事な決断をしなければならないときは、松下幸之助の経営理念に戻る」と言っています。

 

グローバル化とITの進化等により、市場の変化スピードはどんどん早まり、また複雑化しています。顧客が求めるものは変化し多様化しています。かつてないスピードで商品展開が求められるようにもなりました。

 

現在、変化のすべてを社長が掴み取って、考えて意思決定をして…ということは既に不可能な時代になっています。社長と同じような目線を持ちつつ、社長にはない新たな発想ができ、そして結果を出せるリーダーが求められ、期待されているのです。

若手リーダーが目標を達成し、成果を上げるために欠かせない3つの勘所

前章では、組織の将来を背負って立つことを期待される若手リーダーが、幹部へと成長していくためのステップを紹介しました。

 

本章では、「将来の組織を背負う若手リーダーに対して、経営者が期待すること」を紹介します。経営者からリーダーへの期待はずばり「目標を達成して、組織の成果を上げる」ということです。「目標を達成して、組織の成果を上げる」ことは、どんなリーダーにも共通して求められる使命です。本章では、リーダーとしての使命を達成するために不可欠な3つの勘所をお伝えしていきます。

勘所1:若手リーダーが担うのは“業務遂行責任”ではなく、目標を達成するという“結果責任”

ある不動産会社で、課長に昇格したばかりの新任リーダーを対象に、管理職研修を行ったときのことです。研修前半の休憩時間に『課長に昇格して前よりも一生懸命仕事に打ち込んでいるのですが、社長が褒めてくれないんですよ。むしろ言うことが厳しくなってきて…』とこぼす受講生が出いました。

 

その方は「課長」というリーダーの役割と責任をまだ理解できていない状態です。一生懸命、工夫して仕事することが求められるのは一般社員のレベルです。課長というリーダーに求められるのは、「目標を達成する」「組織の成果をあげる」という結果を出すこと。つまりはリーダーとは結果責任なのです。

 

目標は、たとえ自分・自社を取り巻く条件がどのように変わろうとも、何が何でも達成すべきものです。企業は継続して成長しなければ生き残れません。

 

そして、目標達成を目指す若手リーダーの人が知っておくべき大切なことがあります。それは、売上や利益目標を出せばいいと考えるのではなく、『顧客満足(顧客貢献)』を常に念頭におくということです。

 

企業の存続に無くてはならない売上や利益は、どこからもたらされるのでしょうか。商品・サービスに対価を払ってくれたお客様からです。故に顧客満足(顧客貢献)なくして、目標達成し続けることはありえないのです。当たり前の話ですが、このことを意識できているかどうかで、目標達成が一時だけで終わってしまうのか、継続して達成し続けられるのか、大きく変わってきます。

 

顧客満足を踏まえて目標達成を目指すには、どういうプロセスで利益を出しているか、どういう商品でお客さまに貢献できているか、どんな売り方でお客さまに商品・サービスを納得いただいているか…など、顧客の方向を向いて考えることが何より重要です。リーダーとしての結果責任を自覚して、商品・サービスを通じて顧客満足を追求していくことが重要です。

勘所2:過去のやり方にとらわれずイノベーションを起こす事は若手リーダーの特権である!

日々の経済ニュースでは、景気の見通しや、設備投資額、倒産件数、雇用情勢など、様々な報道がなされています。これらの経済動向や指標は日々変動し、会社の業績にも影響します。したがって、どの会社もずっと安泰ということはなく、経営状況は常に変化しています。

 

その中で、取引先の中堅・中小企業の経営者の方に現状をお聞きすると、「景気に関係なく、伸びている会社と苦戦している会社がはっきり分かれてきた」という声を多く耳にします。前年対比で2倍近くの売上や利益を生み出している会社もあれば、「景気が良いなんてどこの話でしょうか」という企業もあります。伸びている会社と苦戦している会社にはどんな違いがあるのでしょう?

 

業績の良い会社は、過去3~5年の間に、思い切った改革をしていることが大半です。例えば、不採算事業からの撤退、重点商品のリニューアル、営業スタイルの変革…など様々ですが、いずれも過去のやり方にこだわらず、大鉈を振るっての思い切った改革という共通点があります。

 

長期的に見て、人口減少によって日本経済が縮小することは避けられないでしょう。市場全体の拡大が期待できない状況において、会社の将来を背負って立つ若手リーダーには、過去のやり方にとらわれずイノベーションを起こす事が期待されています。

 

イノベーションはどうしたら起こせるのでしょうか。私なりの答えを言うと “疑問を持つこと”です。自分が今やっていることに疑問を持つ、あるいは自社・自業界で当たり前とされている常識を問い直してみる、ということからイノベーションは始まります。

 

ある異業種交流に参加したときの話です。グループワークで建設業と製造業の幹部が意見交換をしていました。建設業の会社では、受注段階で価格が決まっていないのが当たり前で、終わってみると、なんとなく利益が出ているというのです。

 

その話を聞いた製造業の部長は大きなカルチャーショックを受けていました。製造業ではコスト算出こそ肝であり、事前に緻密な計算が不可欠です。「それはおかしいよ!」と製造業の部長の言葉に、建設業の専務は驚きを隠し切れない様子でした。

 

このような自社と別業界の常識、自社にとっての“非常識”を取り入れることで、ビジネスのチャンスが、グッと拡がることがあります。実際に異業種交流会の建設会社の専務は、すぐさま製造業出身のコンサルタントを入れて指導を受けました。そして、製造業で行っているコスト管理の手法を取り入れた結果、厳しい環境の中で、高い確度で利益を生み出せる仕組みを作り上げました。

 

若手リーダーは幹部への成長を目指すうえで、何事にも「疑問を持つ」ことを習慣化して、イノベーションを起こすことにチャレンジしましょう。

 

勘所その3:若手リーダーは、誰よりも成長せよ!

若手リーダーが、目標を継続的に達成して成果を生み出す経営幹部になるためには、5つの条件を満たすことを意識しましょう。

 

1:自ら誰よりも成長すること2:経営管理の基本をマスターすること

3:新しい行動を起こすこと

4:組織と人を動員すること

5:スピード感を高めること

 

5つの中で特に重要なのは、一つ目に挙げた若手リーダー自らが誰よりも成長することです。成長とは、「できることが増える」ことを言います。一緒のタイミングで入社した同期と同じ時間を過ごしているにも関わらず、数年後、ダントツにできることが増えている、これが成長スピードです。

 

近年では、年上の部下を持つ若手リーダーの存在も当たり前になりました。年功序列の人事制度が崩れ、今後はさらに、年齢・経験に関係なく若手が抜擢されるケースも増えていくでしょう。

 

メンバーが年下だろうが年上だろうが、リーダーは部下に良い影響を与え、信頼される存在であることが求められます。そうでなければ、部下やメンバーを動かしてチームや部門の目標を達成することができません。

 

イノベーションに関しても同様です。これまでに無い新しいことをやろうとするときは、抵抗勢力がつきものです。従って、イノベーションの実現には、皆を同じ方向に向かせるリーダーシップが求められます。

 

多くの人は、リーダーが目標に執着する姿、努力する姿を見て、心を揺り動かされます。上に立てば立つほど、誰よりも成長しなければ、人はついてきません。とくに、年上でしかも経験豊富なメンバーを持つ若手リーダーこそ、「自ら誰よりも成長する」という姿勢や生き様をメンバーに示しましょう。

おわりに

記事では、若手リーダーが社長の分身となるための4つのステップと目標を達成し成果を上げるために不可欠な3つの勘所を紹介しました。

スポーツの世界では「名選手、名監督にあらず」と言われます。ビジネスの世界にも共通する教訓です。プレイヤーとして成果を上げてきたビジネスパーソンでも、課長に昇進後、マネジメントに苦しみ、リーダーに期待される結果を出せずにいるなどは、多くの企業に共通する課題です。

逆に、社長の分身として、チームや部門に大きなインパクトを生む若手リーダーが1人、2人、と輩出されれば、中小企業は次のステージに飛躍できます。中小企業においては、若手リーダーの成長と、組織の発展は一蓮托生です。記事の内容を参考に、幹部へと成長する若手リーダーを輩出していただければ幸いです。

著者情報

近藤 浩充

株式会社ジェイック|取締役 兼 常務執行役員

近藤 浩充

大学卒業後、情報システム系の会社を経て入社。
IT戦略事業、全社経営戦略、教育事業、採用・就職支援事業の責任者を経て現職。企業の採用・育成課題を知る立場から、当社の企業向け教育研修を監修するほか、一般企業、金融機関、経営者クラブなどで、若手から管理職層までの社員育成の手法やキャリア形成等についての講演を行っている。
昨今では管理職のリーダーシップやコミュニケーションスキルをテーマに、雑誌『プレジデント』(2023年)、J-CASTニュース(2024年)、ほか人事メディアからの取材も多数実績あり。

著書、登壇セミナー

・社長の右腕 ~上場企業 現役ナンバー2の告白~
・今だからできる!若手採用と組織活性化のヒント
・withコロナ時代における新しい採用力・定着率向上の秘訣
・オンライン研修の「今と未来」、社員育成への上手な取り入れ方
・社長が知っておくべき、業績達成する目標管理と人事評価
・社長の右腕 ~ナンバー2の上司マネジメント / 部下マネジメント~
・オーナー経営者が知っておきたい!業績があがる人事評価制度と組織づくりのポイント
・社長の右腕 10の職掌 など

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