若手と中堅、役割の違いと若手を「真」の中堅へと成長させる3つの育成ポイント

若手と中堅、役割の違いと若手を「真」の中堅へと成長させる3つの育成ポイント

若手社員と中堅社員にはどのような違いがあるのでしょうか。一般的に入社して2、3年目ぐらいまでを若手社員、その後、役職につくまでの間を中堅社員と呼ぶ企業が多いでしょう。中堅社員は単に社歴が長いだけでなく、管理職になるための準備をする立場であり、さらなる成長が必要です。
 
しかし、中堅社員と呼ばれる年次になっても意欲が低く、会社の期待に応えようという姿勢も乏しく伸び悩んでいる人も少なくありません。記事では、まずは管理職になる準備段階としての中堅社員の立場や役割を明らかにしたうえで、次に若手から「真の」中堅に成長できない理由や背景、最後にどう指導すれば壁を乗り越えることができるのかを解説します。

 

<目次>

中堅に求められる役割、新入社員や若手との違いは?

まず本章では中堅社員に期待される3つの役割と、新入社員や若手社員との違いを確認します。

中堅社員の役割① 成果を出し業務上の責任を全うする

若手社員は、知識や経験を積み重ねる勉強の段階ともいえます。失敗は学びの機会であり、業務で大きな責任を負わされることも少ないでしょう。一方で中堅社員は、一通りの業務知識や経験が備わった「一人前」として仕事を任されます。当然、責任もともないます。

 

求められる仕事の質と量は若手社員とは大きく違うことを理解してもらう必要があります。中堅社員に関しては成長や勉強も自分自身で取り組んでいくフェーズであり、自立して成果を出すことは大前提となります。

中堅社員の役割② 管理職と新人・若手をつなぐパイプ役となる

仕事上の立場や役割の違いは、仕事に対する考え方や価値観、常識のレベルの違いになります。立場や役割の違いが価値観や常識の違いを生むと考えると、管理職と新人・若手社員の間には大きな隔たりが生じるのが自然であり、手を打たなければ相互理解が深まりません。

 

中堅社員は、自身の経験から会社の事情や管理職の想いも理解できる立場であると同時に、新人・若手社員の悩みに寄り添うこともできます。したがって、積極的に両者のつなぎ役、パイプ役を務めることが期待されます。どちらか一方に肩入れするのではなく、新人や若手への伝わり方、現場の実情を管理職に伝えたり、改善策を提案したりするとともに、会社の思いや管理職のメッセージを若手や新人に伝える仕事です。

 

また、現場のリーダーとして、チームや組織の方針を理解して、周囲を観察して適切にサポートしたり、周囲の協力を得ながら物事を進めたりすることも期待されます。つまり、自分だけでなく、周囲や外に目を向けて働きかけるリーダーシップが求められるのです。

中堅社員の役割③ 後輩の指導や育成にあたる

若手社員はまだ勉強の段階であり、指導を受けたり、教えてもらったりする側です。一方、中堅社員は後輩にあたる若手社員を指導する側であり、最も身近な存在として良いお手本、若手のロールモデルである必要があります。新人や若手社員の成長は本人の意思や意欲の問題もありますが、指導する側の責任やロールモデルの存在は重要です。

 

中堅社員が役割を果たせない3つのケース

前章では中堅社員に期待される役割を整理しましたが、期待される役割を果たせず伸び悩んでいる中堅社員もいます。伸び悩みの原因となる本人と組織の特徴や理由を簡単に紹介します。

ケース① 仕事のレベルについていけない

若手から中堅社員になると、求められる仕事の質と量が大きく変わります。自立した状態で仕事をさばき、成果を出すことが求められ、プレッシャーも重くのしかかります。うまくこなせれば成長しますが、失敗すると余裕がなくなり、目の前しか見えなくなるでしょう。そうした状況で、周囲に気を配り良い影響をおよぼすことは困難です。中堅社員が役割を果たすうえでは、「自立した状態で求められる仕事の成果をあげる」スキルや能力が不可欠です。

 

ケース② 将来のキャリアに不安になる

社内で今後のキャリアを考えたとき、管理職などの上のポストは埋まり、新人が入らない状態ですと、中堅社員は年次を重ねながらも「組織の下っ端」扱いです。中堅社員にもなってくると、さまざまな社内事情も見えてくるなかで、「この会社で働き続けていいだろうか?」と不安を感じる人も出てきます。組織や仕事へのエンゲージメントが低い状態で高いパフォーマンスを出すことはできません。中堅社員にとってキャリアプランへの不安は、エンゲージメントに悪影響をおよぼす大きな要因となります。

 

ケース③ 教育する仕組みが不足している

HRドクターを運営する研修会社ジェイックでは、多くの企業から研修のご相談を頂戴しますが、圧倒的に多いのは管理職と新入社員に関する内容です。多くの会社で教育の優先順位は現場の業績を担う管理職、そして、入社してきたばかりの新人、この2つが人材育成の中心となり、次に伸び悩みや離職が生じてくる若手社員、最後に中堅社員というイメージです。

上記の優先順位になること自体は自然なことなのですが、一方で期待値が変わってくる若手から中堅社員の育成ステップ、また、仕事の責任が大きくなるなかで能力やスキルアップの機会が一切与えられないとなると、中堅社員がうまく成長できない、役割を果たせない状況に陥ることは起こりがちです。

 

若手を中堅へと成長させるための3つの育成ポイント

本章では若手社員を、役割を果たせる中堅社員へと成長させるためにどのような点を指導・育成すべきか、3つのポイントを解説します。

育成ポイント① 中堅の役割を正しく認識させる

基本的なことですが、「真」の中堅へと成長を期待するならば、まずは若手と中堅の違いを認識させ、適切なアドバイスとともに期待を伝えることがまず大前提です。3年目研修などは、中堅社員へのマインドセットを伝えるうえで格好の機会です。
 
一方で、組織からの期待値が変わっていることを自覚しないままに年次だけが経過すると、「何となく組織内での立ち位置が変わっている気がするけど、まぁできることをやって日々を過ごしていこう」と期待外れの中堅社員ができあがってしまいます。
 
伸び悩んでいる社員の多くは、中堅に求められるマインドセットができていません。面談の場を設けたり、階層の社員と集合研修を行なったりして、求められる役割の変化や期待をしっかりと伝えましょう。
 

育成ポイント② 強みや能力を整理する

中堅社員になると、前述のとおり、目の前の仕事で自立して成果をあげる、管理職とメンバーのパイプ役を果たす、現場でリーダーシップを発揮する、後輩の指導をするなど、多彩な仕事が求められるようになります。もちろん仕事時間は変わりませんので、それだけ生産性をあげていく必要があります。

 

「真」の中堅社員として生産性を高めていくためには、自分の強みや能力を生かして成果をあげていくことが不可欠です。また、同時に客観的に自分自身の弱みや不足スキルを把握して、補ったりスキルアップをしたりする必要もあります。

 

したがって、中堅社員の育成に際しては、自分の強みと弱み、できることとできないこと、身に付けた知識や経験を棚卸して整理することが効果的です。自分で整理するだけでなく、適性検査や360度評価など客観的な評価も材料にするとなおよいでしょう。

 

なお、強みやポジティブな側面に焦点を当てていくと、今後のキャリアの方向性が見えてくる場合もあります。強みや能力の棚卸をキャリアプランの作成ともつなげると、モチベーション低下への対策とすることも可能です。

ポイント③ 将来に目を向けさせリーダーシップ発揮の課題を与える

中堅社員の育成では、将来に目を向けさせることも重要です。中堅社員は、管理職やマネジメントへとステップアップしていくプロセスでもあります。最近ではプロフェッショナル職種への分岐点となるケースもあるでしょう。

 

いずれにしても目の前の仕事をこなすだけの受け身の姿勢ではなく、自ら行動を起こす、自己研鑽に励む、周囲を巻き込むなどのリーダーシップが求められます。ポイント②で触れたキャリアプランともつながりますが、上司面談などの機会を利用して、仕事で何を実現したいのか、会社をどうしていきたいか、どのように成長していきたいのかなどを整理・共有して、必要なリーダーシップの発揮課題を与えていきましょう。

 

おわりに

中堅社員は、まだまだ一人前としての成長過程である若手社員とは異なり、自立して成果をあげる、管理職とメンバーのパイプ役を果たす、現場でリーダーシップを発揮する、後輩の指導をするなどの役割が期待されています。

 

一方で、仕事のレベルについていけない、キャリアへの不安、育成不足などで伸び悩む若手や中堅社員も多くいます。「期待される役割を正しく認識させる」「強みや能力を実感させる」「将来に目を向けさせリーダーシップ発揮の課題を与える」などの取り組みを通じて、若手社員を「真」の中堅社員に育成していきましょう。

 

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著者情報

近藤 浩充

株式会社ジェイック|取締役 兼 常務執行役員

近藤 浩充

大学卒業後、情報システム系の会社を経て入社。
IT戦略事業、全社経営戦略、教育事業、採用・就職支援事業の責任者を経て現職。企業の採用・育成課題を知る立場から、当社の企業向け教育研修を監修するほか、一般企業、金融機関、経営者クラブなどで、若手から管理職層までの社員育成の手法やキャリア形成等についての講演を行っている。
昨今では管理職のリーダーシップやコミュニケーションスキルをテーマに、雑誌『プレジデント』(2023年)、J-CASTニュース(2024年)、ほか人事メディアからの取材も多数実績あり。

著書、登壇セミナー

・社長の右腕 ~上場企業 現役ナンバー2の告白~
・今だからできる!若手採用と組織活性化のヒント
・withコロナ時代における新しい採用力・定着率向上の秘訣
・オンライン研修の「今と未来」、社員育成への上手な取り入れ方
・社長が知っておくべき、業績達成する目標管理と人事評価
・社長の右腕 ~ナンバー2の上司マネジメント / 部下マネジメント~
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