「主体性を発揮する」とは?自分の意志に基づいて選択する重要性

「主体性を発揮する」とは?自分の意志に基づいて選択する重要性

「若手に主体性を持ってほしい」、「社員たちが主体性を発揮する企業風土に変わってほしい」、「上司はもっと部下育成に主体的に関わってほしい」など、主体性の発揮は多くの組織で課題・関心のある事柄です。
世界的なベストセラーである『7つの習慣』でも、7つある習慣の一つ目、第1の習慣として「主体性を発揮する」が取り上げられています。

 

記事では、書籍『7つの習慣』を基にして、主体性を発揮することの意味主体性を発揮している人としていない人の違い、そして主体性を発揮するうえで大事になる考え方を解説します。

 

<目次>

第1の習慣「主体性を発揮する」の意味とは?

本章では、書籍『7つの習慣』で主体性の発揮をどう説明しているかを解説します。そして、主体性を発揮するうえでポイントとなる「刺激」と「反応」について述べたうえで、なぜ「主体性を発揮する」が『7つの習慣』の一つ目に取り上げられているかを紹介します。

 

「主体性を発揮する」は『7つの習慣』ではどのように説明されているか?

「主体性」というと、一般に「自発的に率先して行動する」の意味で使われるケースが多いかもしれません。しかし、『7つの習慣』では、上記とは少し違った意味で使われています。

『7つの習慣』では、「主体性を持つ」という意味を、自らの行動を周りの状況ではなく、自分自身の決定と選択の結果として捉え、自分の人生の責任を引き受けることであると説明しています。これだけでは少し分かりづらいかもしれませんので、『7つの習慣』で考える主体性の発揮について、次項でさらに深く解説します。

 

主体性を発揮するために知っておく必要がある「刺激」と「反応」

第1の習慣「主体性を発揮する」を理解するうえでは、「刺激と反応」という考え方を知っておく必要があります。『7つの習慣』において「刺激」とは、自分の身に起こる出来事であり、「反応」とは、刺激に対して「どう反応するのか」を意味します。
『7つの習慣』の著者、フランクリン・コヴィー博士は、書籍の中で「刺激と反応の間にはスペースがあり、選択の自由がある」ことを発見します。『7つの習慣』では、人間はどんな状況でも、自分で反応を選べるとしています。

 

例えば、満員電車の中で隣の人に足を踏まれる状況を想像してみて下さい。どんな風に感じるでしょうか。不快に思い、相手に苛立つ人もいるでしょう。場合によっては肩やカバンで相手を押しのけるような人もいるかもしれません。一方で、「満員電車だししょうがないな」と思う人もいるでしょうし、相手に「大丈夫ですか」と声をかける人もいるかもしれません。

 

ここで重要なのは、どういう行動をすることが適切かという話ではありません。重要なのは「足を踏まれる」という刺激に対して、どう捉えて、どう反応するかは自分が選択できるということです。そして、どういう反応を選択したかによって、得られる結果も自分自身の気分や感情も変わってくるのです。

 

刺激と反応の間にスペースを空けられる理由

刺激に対して自分の反応を選択することを、『7つの習慣』では、「刺激と反応の間にスペースを空ける」と表現します。私たちは、刺激と反応の間にスペースを空けて、そのスペースでどういう結果を望み、どういう反応をするか選択できると言えます。

 

私たちが刺激に対して反応を選べる理由は、人間がもともと持っている4つの能力によるものです。本能で行動する動物と異なり、人は生まれつき、自覚・想像力・良心・自由意志という4つの力を備えています。

人間が持つ4つの力
  • 自覚:自分自身を客観的に見つめる力
  • 想像力:現在の状況の先を考える力
  • 良心:善悪を区別し、自分の行動を導く力
  • 自由意志:自覚・想像力・良心を基に行動を選択する力

4つの力が具体的にどんなものか、先ほど例に挙げた「満員電車で足を踏まれた状況」で考えてみましょう。
隣の人はなぜ私の足を踏んだのだろうか?

  • 自覚:隣の人に足を踏まれて痛かったことにイラッとしている
  • 想像力:足を踏んだ人に対して怒ったり、足を踏み返したりしたらどうなるだろうか?
  • 良心:満員電車の中で怒ったり手を出したりするのは果たして良いことだろうか?
  • 自由意志:以上を踏まえて、痛かった事実はおいておき、適切な自分の行動を選択する

 

上記のように私たちは、刺激と反応の間にスペースを空けて、自分の行動を選択することができます。そして、『7つの習慣』では、「刺激に対して行動を選択する」ことこそが、主体性であると言っています。

 

「主体性を発揮する」ことが、なぜ1番最初の習慣であり、重要なのか

書籍『7つの習慣』には、名前の通り7つの習慣が紹介されており、7つの習慣を実践し習慣化すれば、何事に対しても自信を持ち、自分の価値観を大事にしながら充実した時間を過ごせるようになるとされています。また、周囲の人と好ましい人間関係を築き、お互いに協力して新しい価値を創造することもできます。

 

7つの習慣®を実践して習慣化するためには、自分がどうなりたいかを自ら選択し、望む自分に向けて行動を選択することが必須です。4つの力を活用して「選択する」ということは、すべての行動や実践の基礎となります。だからこそ、『7つの習慣』の中でも、「主体性を発揮する」ことが、第1の習慣として最初に書かれているのです。

 

主体性を発揮している人、発揮していない人

主体性の発揮は、人生で望む結果を手にするうえで不可欠な考え方です。では、主体性を発揮するとは、具体的にどのような行動や状態を指すのでしょうか。

冒頭で触れたように、多くの組織がメンバーに主体性を発揮することを期待しています。しかし、主体性を発揮しよう!と言われても、大半の人は、具体的に何をすれば良いのか分からない、どう行動を変えれば良いのか分からない、と困惑してしまいます。

 

前章で解説したように『7つの習慣』では、「刺激に対して行動を選択する」ことが主体性の発揮であるとしています。本章では、主体性を発揮している人としていない人の違いを、考え方や使う言葉、また、「影響の輪」と「関心の輪」というキーワードを通じて解説します。

 

主体性を発揮している人とそうでない人の違い

7つの習慣®では、主体性を発揮している人を「主体的な人」、発揮していない人を「反応的な人」と呼んでいます。では、主体的な人と反応的な人では、言動はどう変わるのでしょう。

 

主体的な人は、どんな状況でも、刺激と反応の間にスペースをおき、原則に基づいて考えるので、言動が一貫しています。一方で反応的な人は時々の状況や自分の感情に言動が大きく左右されます。

 

また主体的な人は、結果がどうであれ、自分の選択として結果を受け止めます。逆に反応的な人は、自分の期待する結果を得られなかった場合、原因を環境や他人のせいにしがちです。

 

主体的な言葉、反応的な言葉

主体的な人と反応的な人とでは、使う言葉にも違いがあります。主体的な人は、「私は〇〇と考えます」、「私は▲▲で対応します」というように「私」を主語にします。

 

一方、反応的な人は、「あなたがもっと我慢強ければいいのに…」、「あなたが○○してくれないから…」、「商品がこうだから…」など、「相手」や「環境」など自分以外のものを主語にします。反応的な人が相手を主語にしがちなのは、責任を自分以外のものに転嫁しようという無意識の思惑も働いています。

 

影響の輪、関心の輪

「主体性の発揮」を考える時、「関心の輪」と「影響の輪」というキーワードを知っておくと理解しやすくなります。

 

「関心の輪」は自分が関心のある事柄を指します。例えば、明日の天気、好きなスポーツチームの勝敗、景気、上司からの評価、毎月の給料などが関心の輪に入るかもしれません。
関心の輪に入る事柄の中には、自分の影響が及ばないことも多くあります。現実的に“明日の天気に影響を与えられる”という人はいないでしょうし、好きなスポーツチームの勝敗や景気にも影響できないでしょう。上司から評価されるための行動や給与を上げるための行動は影響できても、評価や給与そのものを操作することは難しいでしょう。

 

一方で、「影響の輪」は、自分自身が影響したり、コントロールしたりできる事柄を指します。前述の通り、「上司から評価されるための行動」や「給与を上げるための行動」は影響の輪です。具体的には、1日1回は上司に電話して報連相を実施する、週に1回は上司の興味関心を知る、給与を高めるために四半期目標の達成を目指す、といったことです。

 

 

『7つの習慣』は、主体的な人は影響の輪、つまり自分が影響できる領域に集中すると言います。しかし、反応的な人は、影響の輪の外側、関心の輪で考えてしまいます。

 

例えば、仕事で上司と意見が合わなかった場合を考えてみましょう。主体的な人は影響の輪に集中します。自分にできること、例えば、上司と考えが重なるポイントを探すかもしれませんし、上司が異なる意見に至ったプロセスを聞くかもしれません。また、上司の意見を受け入れるという選択をするかもしれません。

 

しかし、反応的な人はコントロールできない事柄、「上司と意見が合わない」「自分の意見が通らなかった」といった関心の輪にフォーカスしてしまい、上司の愚痴や不満をこぼしたり、モチベーションを落としてしまったりします。
上司との関係に限らず、大事なことは影響の輪に集中することです。影響の輪に集中する人は、コツコツと行動を積み上げ望む結果に近づく、そして、徐々に影響の輪を大きくしていきます。

 

主体性を発揮するために必要な2つの考え方

人生で望む結果を手に入れるためにも、周囲と良い人間関係を築くうえでも、主体性の発揮は不可欠です。記事の最後で、主体性を発揮するために必要な2つの考え方を整理して紹介します。

 

刺激と行動の間で、一時停止する

主体性を発揮するために必要な考え方の一つ目は、「刺激と行動の間で一時停止する」ということです。私たちの日常生活では、日々さまざまな出来事(刺激)が起きます。自分の身に降りかかってくる刺激に対して、反応的に行動している限り、結果はコントロールできません

 

前述したように主体性の発揮とは、「刺激に対して行動を選択すること」なのです。選択するために大事な考え方が「刺激と行動の間で、まず一時停止する」ことです。“自分の額についている一時停止ボタンを押す”ようなイメージです。

 

一時停止したうえで、自分が持っている4つの力、自覚・想像力・良心・自由意志を使うことで、「望む結果」のために、また「ありたい姿」のために、自分がどういう行動をすれば良いか?を導き出し、選択できるようになります。

 

影響の輪に焦点を当てて、物事を考える

主体的な人は、「私にできることはないだろうか」など、「私」を主語にして考え行動します。私たちが直接的に影響できる、コントロールできる最大の資源は「自分の言動」です。だからこそ、主体的な人は、「私に何ができるだろうか?」という視点で常に考えます。

 

結果自体に影響やコントロールできない場合も、「結果を動かすために、自分に何ができるだろうか?」と考える習慣がつくと、影響の輪の外にある事柄にも間接的に影響できることが分かってくるでしょう。

 

おわりに

さまざまな組織でメンバーに「主体性を発揮する」ことが求められています。しかし、主体性を発揮するとはどういうことなのか。どうすれば主体性を発揮できるのかをキチンと説明できる人は意外と少ないものです。

 

書籍『7つの習慣』では、「主体性を発揮する」ことを第1の習慣としており、刺激(出来事)に対して反応(言動)を選択することであると説明します。私たちの日常はたくさんの刺激(出来事)に溢れています。一つひとつの刺激に対して、スペースを空けて一時停止する。そして、原則や自覚・想像力・良心・自由意志に基づいて、望む結果に向けて選択することが大事です。

 

また、主体性を発揮するうえでは、「影響の輪」に集中することも大事です。自分自身が影響を与えられる、コントロールできる事柄に集中することが、望む結果を手に入れる近道です。私たちが影響を与えられる最大の資源は「自分自身の言動」です。「自分ができることは何か?」という視点を習慣化して、行動を選択するようにしていきましょう。

 

主体性の発揮は、7つの習慣®の実践に不可欠な基本となる考え方です。また、人生や仕事で臨む結果を手に入れるために非常に有効な考え方でもあります。「なかなか思うようにならない…」「7つの習慣®をイマイチ実践できない…」「現状を変えたい」と思った時には、ぜひ「主体性の発揮する」に立ち返りましょう。

著者情報

宮本 靖之

株式会社ジェイック シニアマネージャー

宮本 靖之

大手生命保険会社にて、営業スタッフの採用・教育担当、営業拠点長職に従事。ジェイック入社後、研修講師として、新入社員から管理職層に至るまで幅広い階層の研修に登壇している。また、大学での就活生の就職対策講座も担当。

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