女性活躍推進法改正で2022年4月から中小企業も義務化!企業が取るべき対応とは?

更新:2023/09/26

作成:2022/09/06

古庄 拓

古庄 拓

株式会社ジェイック執行役員

女性活躍推進法改正で2022年4月から中小企業も義務化!企業が取るべき対応とは?

近年の日本では、少子高齢化の進展による影響で、労働力人口の著しい減少が進んでいます。また、世界経済フォーラムが発表する「ジェンダーギャップ指数2020」によると、日本の総合スコアは0.652、順位は153ヵ国中121位となっており、主要7ヵ国のなかで最も男女間格差があることが浮き彫りになりました。

 

出典:共同参画 令和2年3・4号(男女共同参画局)

 

こうしたなかで注目されているのが、女性を労働力の重要な担い手として位置づけ、国をあげて彼女たちが働きやすい環境を整備していくことです。

 

記事では、まず、こうした背景のなかで、2022年4月から全面施行となった改正女性活躍推進法の基礎知識を紹介します。続いて、改正女性活躍推進法の施行によって企業に求められる取り組みや女性活躍が企業にもたらすメリットを確認しましょう。

<目次>

女性活躍推進法の基礎知識

談笑する女性社員

 

まずは、女性活躍推進法の概要と、2019年の改正内容におけるポイントを確認しましょう。

 

女性活躍推進法とは

女性活躍推進法の正式名称は、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」です。女性活躍推進法が制定された背景には、以下のように働く女性の現状とともに、少子高齢化による急速な人口減少と将来の労働力不足の懸念を解消する目的がありました。

 

  • 女性の就業率(15歳~64歳)は上昇している一方で、就業を希望しながらも働いていない女性(就業希望者)は約300万人に上っている
  • 第一子出産を機に約5割の女性が離職するように、出産・育児を理由に離職する女性は依然として多い
  • 女性が出産・育児後に再就職した場合、パートなどの非正規雇用になる場合が多い。そのため、女性雇用者における非正規雇用者の割合は6割近くに上っている
  • 管理的立場にある女性の割合は12.5%(平成27年)と、近年緩やかな上昇傾向にあるものの、国際的に見ると12.5%はとても低い など

女性活躍推進法では、こうした現状を踏まえて、女性の個性と能力が十分に発揮できる社会を実現する目的で、国や地方公共団体、民間事業主(一般事業主)の各主体の女性の活躍推進に関する責務などを定めることになりました。

 

なお、当時の日本政府では、上記を重要かつ喫緊の課題と位置づけ、「指導的地位に占める女性の割合を2020年までに30%とする」という目標を掲げています。

 

出典:女性の職業生活における活躍の推進に関する法律に基づく一般事業主行動計画を策定しましょう!!

 

2019年の改正内容のポイント

2019年に改正された女性活躍推進法では、以下3つが特に重要なポイントになります。

 

・1.一般事業主行動計画の策定義務の対象拡大
一般事業主行動計画とは、企業が自社の女性活躍に関する状況把握と課題分析を行ない、分析結果を踏まえた自社の行動計画を策定するものです。行動計画には、以下の事項を盛り込まなければなりません。

 

  • 計画期間
  • 数値目標
  • 取組内容
  • 取組の実施時期

改正前の従来制度における一般事業主行動計画の策定は、常時301人以上を雇用する企業だけに義務付けられていました。一方で、改正女性活躍推進法の全面施行となる2022年4月1日以降は、101人以上300人以下の企業にも、策定・届出・情報公表が義務化されることになります。なお、対象拡大は、今後も継続すると考えられています。

 

・2.女性活躍に関する情報公表の義務化
自社の女性の活躍に関する状況について、以下の項目から1項目以上を選び、求職者などが簡単に閲覧できるように情報公表することも義務付けられるようになりました。

【1.女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供】

  • 採用した労働者に占める女性労働者の割合(区)
  • 男女別の採用における競争倍率(区)
  • 労働者に占める女性労働者の割合(区)(派)
  • 係長級にある者に占める女性労働者の割合
  • 管理職に占める女性労働者の割合
  • 役員に占める女性の割合
  • 男女別の職種または雇用形態の転換実績(区)(派)
  • 男女別の再雇用または中途採用の実績

【2.職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備】

  • 男女の平均継続勤務年数の差異
  • 10事業年度前および前後の事業年度に採用された労働者の男女別の継続雇用割合
  • 男女別の育児休業取得率(区)
  • 労働者の一月当たりの平均残業時間
  • 雇用管理区分ごとの労働者の一月当たりの平均残業時間(区)(派)
  • 有給休暇取得率
  • 雇用管理区分ごとの有給休暇取得率(区)

なお、上記の「区」「派」の意味は、以下のとおりです。

  • 「(区)」のある項目は、雇用管理区分ごとに公表を行なうことが必要
  • 「(派)」のある項目は、労働者派遣の役務の提供を受ける場合には、派遣労働者を含めて公表を行なうことが必要

・3.特例認定制度(プラチナえるぼし)の創設
従来まで存在していた、女性活躍に関する状況などが優良な事業主に対する「えるぼし認定」のさらに上位に「プラチナえるぼし認定」が創設されることになりました。

 

プラチナえるぼしとは、えるぼし認定企業のなかで、一般事業主行動計画の目標達成や女性の活躍推進に関する取組の実施状況が特に優良であるなどの一定の要件を満たした企業に認定されるものです。

 

なお、従来のえるぼし認定企業とは、女性の活躍推進に関する取組の実施状況が優良であるなどの一定の要件を満たした場合に、付与される認定になります。

 

出典:えるぼし認定、プラチナえるぼし認定

企業に求められる取り組みとは?

手に顎を乗せて思案する経営者

 

2022年4月1日から101~300名以下の企業にも求められるようになった一般事業主行動計画の策定から届出までの取り組みは、以下の4のステップで進めていきます。

 

ステップ1.自社における女性の活躍状況を把握

まず、自社の女性の活躍状況を、以下の基礎項目に基づいて把握し、課題を分析します。

 

  • 採用した労働者に占める女性労働者の割合(区)
  • 男女の平均継続勤務年数の差異(区)
  • 管理職に占める女性労働者の割合
  • 労働者の各月ごとの平均残業時間数などの労働時間の状況

自社の状況を把握し、原因の分析を深めるには、基礎項目に加えて選択項目(必要に応じて把握する項目)を活用することが有効です。選択項目は、以下のパンフレットの5ページに記載されています。

 

参考:女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定しましょう!

 

ステップ2.行動計画の策定と周知

ステップ1の分析結果を踏まえて、以下内容を盛り込んだ一般事業主行動計画を策定し、労働者への周知と外部公表を行ないましょう。

 

  • A)計画期間
  • B)一つ以上の数値目標
  • C)取組内容
  • D)取組の実施時期

たとえば、女性社員ならびに女性からの応募が少ない企業の場合、以下のような行動計画になります。

【〇〇株式会社 行動計画】
  • 1.計画期間:2022年4月1日~2025年3月31日
  • 2.目標と取組内容
  • 目標:営業職の女性社員の採用を2人以上増やす
  • 取組内容①:2022年4月1日~:自社サイトとSNSで自社の女性活躍のPR
  • 取組内容②:2022年6月1日~:女性社員向けのキャリアアップ研修を実施 など

なお、一般事業主行動計画のサンプルは、以下のパンフレットにも記載されています。

 

参考:女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画策定かんたんガイド

 

ステップ3.都道府県労働局への届出

行動計画を策定したら、各都道府県の労働局のサイトから「一般事業主行動計画策定・変更届」をダウンロードし、内容記載のうえで郵送などの方法を使って労働局に提出します。

 

控えが必要な場合は、正副二部と切手を貼った返信用封筒を必ず同封してください。(詳細は、届出を行なう労働局に要確認)

 

策定届の提出を終えたら、「女性活躍推進企業データベース」に自社の女性活躍の情報を登録し、年1回更新していきます。

 

ステップ4.実施と効果測定

一般事業主行動計画の届出後は、計画の実行に移ります。数値の達成や女性活躍の状況などを定期的に評価し、問題点があれば改善をするPDCAをまわしていきましょう。

女性活躍は企業の業績に直結する

顧客ニーズの多様化やグローバル化、労働人材不足が進むなかで、経済産業省では、多様な人材を活かし、能力が最大限に発揮できる機会の提供を目指すダイバーシティ経営を推進しています。

 

少子化が進む中で、人口の半分を占める女性の採用・活躍促進は、企業が中長期的に人財確保して成長を続けるうえで欠かせない取り組みです。なお、女性管理職の登用が進んだ企業のほうが、業績が好調であるというデータもあります。

 

男性の正社員が中心だった従来型組織においては、女性目線のアイデアや価値観を積極的に取り入れることで、プロセスやプロダクトのイノベーションが生まれやすくなるでしょう。企業イメージの向上も、女性活躍による大きなメリットと考えられます。

 

2020年1月のダボス会議(世界経済フォーラムの年次総会)で世界的な金融機関であるゴールドマン・サックスのCEOによる以下の宣言が、世界的に大きな反響を呼びました。

 

「女性など、多様な取締役メンバーがいない企業については、IPO(新規株式公開)の主幹事を引き受けない」

 

上記の方針は、アメリカと欧州を対象としたもので、アジアは対象から外れています。しかし、女性の活躍推進は世界的には非常に注目されているテーマです。同時に、上記のメッセージは「女性が活躍していない企業は成長が期待できない」というメッセージでもあることに注意が必要です。

まとめ

2019年に改正された女性活躍推進法によって、2022年4月から従業員101人以上300人以下の中小企業にも、以下のことが義務化されることになりました。

 

  • 一般事業主行動計画の策定・届出
  • 自社の女性活躍に関する情報公表

また、女性活躍に関する状況などが特に優良な事業主に対する特例認定制度(プラチナえるぼし)も創設されています。

 

改正女性活躍推進法によって、101人以上の企業は、以下4ステップで取り組む一般事業主行動計画の作成と届出・実行をする必要があります。

  • ステップ1.自社における女性の活躍状況を把握
  • ステップ2.行動計画の策定と周知
  • ステップ3.都道府県労働局への届出
  • ステップ4.実施と効果測定

女性の採用・活躍は、顧客ニーズやグローバル化、労働人材不足が進む時代に、企業が業績を上げ、成長するうえで不可欠になっています。中長期的な競争力を高めるためにも、女性が働きやすい環境整備に早めに取り組むことが必要でしょう。

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック執行役員

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。専門は新卒および中途採用、マーケティング、学習理論

著書、登壇セミナー

・Inside Sales Conference「オンライン時代に売上を伸ばす。新規開拓を加速する体制づくり」など

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