イニシアチブとは?意味とビジネス場面での使われ方、発揮する3つのポイントを解説

イニシアチブとは?意味や発揮させる3つのポイントを解説!

イニシアチブは、日本語では「主導権」、また、「主体性」や「率先垂範」といった意味合いを持つ言葉です。

 

本記事では、イニシアチブの一般的な意味や使い方、例文、また、イニシアチブを高めるポイントを紹介します。また、近年注目されているGRITとイニシアチブの関係、GRITにおけるイニシアチブの意味なども紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

 

<目次>

イニシアチブの一般的な意味とは?

悩む男性のビジネスマン

 

イニシアチブのもとになっている英単語「initiative」には、大きく分けて以下3つの意味があります。

[Initiative]

  • 「主導権」
  • 課題解決するうえでの「構想」「新たな取り組み」
  • 「自発性」「率先」「やる気」

 

上記を見ると、イニシアチブは、かなり広い意味を持つことに気付かされます。また、イニシアチブが意味するニュアンスが、なんとなく見えてくるでしょう。なお、日本では、イニシアチブは「主導権」などと訳されることが多いようです。

 

なお、カタカナでは「イニシアチブ」と「イニシアティブ」の表記が混在していますが、表記が違うだけであり、同じinitiativeの翻訳です。

 

イニシアチブの一般的な使い方と例文

イニシアチブは、以下のように名詞もしくは副詞的な使い方をするのが一般的です。

  • 【名詞】
    メンバーにイニシアチブを発揮してもらうために、○○業務を任せることにした。
  • 【副詞(「率先して」の意味)】
    次のプロジェクトでは、イニシアチブをとって参加してほしいんだ。

 

「イニシアチブ」を発揮するための3つのポイント

イニシアチブの発揮は、性格や幼少期に育まれた価値観などからくるところもありますが、後天的に身に付けられる姿勢であり、一種のスキルでもあります。

 

本章では、イニシアチブを向上させるポイントを紹介しましょう。

 

「意思決定」を意識する

イニシアチブを発揮するには、まず「自分で決める」ことが大切です。具体的には、日常の行動一つひとつで“なんとなく流される”のでなく、自分で意思決定することを意識するとよいでしょう。

 

たとえば、ランチをとる店を選ぶにしても、「自分で決める」とか、「同僚の“この店に行きたい”という意見に同意する」などの形で、数ある選択肢のなかで自ら決める感覚を意識することが大切になります。

 

「意味づけ」する

一つひとつの物事に対して、自分にとってどのような意味があるかを意識します。意味づけとは、「何のためにやるか」「なぜやるか」といったことです。

 

すべての意味づけが、崇高なミッションのようなものである必要はなく、自分軸、たとえば「これをすることで評価があがる」「誰かに感謝されることがうれしい」「賞与を増やして、これを買いたい」といったことも立派な意味づけです。

 

自分にとっての取り組む意味を明確にすることで、物事が自分事になり、イニシアチブを発揮しやすくなります。

 

「ゴール」を明確にする

意味づけの次に来るのは、「ゴール」の意識です。具体的には、「どういう状態にするか?」「何を達成するか?」「ゴールは何か?」を明確にしましょう。

 

意味づけが、イニシアチブを発揮するうえでの心理的なガソリン・動機づけだとすれば、ゴールの明確化は、実際に行動を起こすためにガソリンです。どこに向かうか、ゴールがどこかが明確になることで、行動しやすくなります。

 

「イニシアチブ」を発揮させるマネジメントのポイント

前述のとおり、イニシアチブの発揮度は、生来や幼少期に形作られる側面もありますが、後天的にトレーニングできるものでもあります。本章では、メンバーにイニシアチブを発揮してもらうマネジメントのポイントを紹介します。

 

自己決定権を尊重する

イニシアチブを向上させるうえで大切になるのが、まず主体性や自己決定感です。人は、生まれながらにして、「自分のことは自分で決めたい」という欲求を持っています。そのため、他者から目標などを一方的に押し付けられると、無意識に反発する感情が生じます。反感が生じることを、心理的リアクタンスと呼びます。

 

一方で、「自分の指示どおりに動けばいい」というような上司の下で長く働いていた場合、自分で課題を見つけたり目標設定をしたりするなどの主体性は低下し、受け身になる可能性が高いです。

 

こうした問題を防ぎ、メンバーのイニシアチブを向上させるには、たとえば、仕事のなかでの小さなステップの方法や目標などを自分で決められる環境をつくることが大切です。ある程度の決定を任せる、メンバーの意見・提案などを、上司が受け入れて応援する姿勢を持つ必要があるでしょう。

 

情報や方針を共有する

正しい情報がなければ、正しい判断はできません。上司よりも情報が少ないのに、上司と同じように考えて判断しろ、ということはできないでしょう。

 

メンバーにイニシアチブを発揮してもらうには、自社やチームが置かれている状況や組織の目標、ビジョンなどの情報をきちんと公開・共有する必要があります。また、公開・共有と並んで大切になるのが、企業やチームの方向性をすり合わせることです。

 

たとえば、「今年度は製品Aの販売に力を入れる」という方針を共有すれば、メンバーは自分の売上アップを目指すなかで「自分は100個の製品Aを売る」などのチームの方針に合った目標を立てられるようになります。

 

また、「競合が製品Bを発売した」や「コロナ禍で顧客ニーズが変わった」などの情報を共有すれば、目標や計画の変更も自発的に考えやすくなるようになるでしょう。例に挙げたように、メンバーにイニシアチブを発揮してもらいたい場合は、情報の共有・透明化が大切になります。

 

成功体験をつくり、自己効力感を高める

イニシアチブの発揮を高めていくには、「自分が立てた目標を達成できた!」という成功体験による自信、自己効力感も大切になってきます。

 

ただ、いきなり「今月の売上は1,000万円」などと大きな目標を立てても、成果は出しづらいかもしれません。そのため、まだ自信や実績のない新人の場合、たとえば、「今週はテレアポを毎朝10本やってから営業に出る」などの低いハードルから成功体験を積ませるのがおすすめとなります。

 

また、立てた目標をうまく達成できなかったときにも、強みや成長、未来などにフォーカスした承認やフィードバックを与えることで、「失敗を恐れずチャレンジしよう!」という自信が高まってきます。

 

成功体験をつくる、自己効力感を高めるには、必ずしも絶対的な成果をあげることが必要なわけではありません。先述のとおり、小さなハードルをクリアした、成長の手ごたえを感じたなど、目標設定やフィードバックのやり方で生み出せます。

 

また、「自分との約束を守る」といったことも、自己効力感の向上につながるでしょう。

 

イニシアチブと「GRIT」の関係

エッセンシャルワーカーが抱える課題

 

冒頭でも触れたとおり、近年のビジネス界では、「GRIT」というスキルに注目が集まっています。そして、イニシアチブは、GRITにおける4スキルの一つとしても、注目を集めています。

 

本章では、イニシアチブとGRITの関係を、詳しく掘り下げていきましょう。

 

GRITとは?

GRITは、端的にいうと「やり抜く力」です。アメリカのペンシルヴァニア大学教授で心理学者でもあるアンジェラ・リー・ダックワース氏が提唱した概念になります。なお、アンジェラ・リー・ダックワース氏の著書「GRIT やり抜く力」は、日本のビジネス書部門でもベストセラーとなりました。

 

アンジェラ・リー・ダックワース氏の研究によると、優れた成果を残す人には、「後天的に伸ばすことができる情熱・粘り強さ」があります。また、生まれ持った才能・資質ではなく、情熱・粘り強さをもとにした「やり抜く力(=GRIT)」こそが、優れた成績につながります。

 

GRITは、大きな成功を収める起業家の多くにある特徴でもあります。たとえば、Facebookのマーク・ザッカーバーグ氏も、自身の成功要因としてGRITを挙げています。

 

GRITにおける「イニシアチブ」の意味とは?

GRITは、以下の4要素(4つのスキル)から構成されています。

  • Guts :困難に立ち向かう力
  • Resilience :失敗しても諦めずに続ける力
  • Initiative :自分で目標を見据える力
  • Tenacity :最後までやり遂げる力

 

上記のとおり、GRITにおけるイニシアチブとは、「自分で目標を見据える力」です。これは、主導権や率先するなどといった意味とどうつながるでしょうか?

 

イニシアチブで大切なのは、上司などの他者から設定された目標ではなく、自分で見出したり設定したりした目標を見据えるということです。

 

たとえば、上司から与えられた目標に対して「言われたから達成に向けて頑張る」では、場合によっては、我慢して耐え忍ぶ状態になることもあるでしょう。我慢しているようでは、モチベーションも上がりませんし、仕事の質も低下する可能性も出てきます。

 

一方で、たとえば、「今年度こそは売上1,000万円を達成する!」や「DXチームの課題を今月中に絶対に解決させる!」などの目標を自分で見出し設定することができれば、目標達成は“自分事”になり、達成までの過程で困難や新たな課題が生じても、諦めずにやり遂げようとするでしょう。自分事にとらえるのがイニシアチブです。

 

現実の組織においては、目標設定には、チームの目標や上司の意向なども反映されてきます。こうしたなかでイニシアチブを発揮するには、前述したような「意思決定」する力や「意味づけ」する力が重要になってくるでしょう。

 

 

GRITにおける「イニシアチブ」の重要性

近年では、コロナショックやウクライナ侵攻、DX化の影響など、企業が置かれる環境や顧客ニーズなどが激動し、ビジネスするうえで複雑な課題がいきなり生まれることも多くなっています。

 

また、産業がサービス化するなかで、トップダウンで事業や組織を動かすのではなく、より小さな単位や現場の一人ひとりが自律的に動くことが求められています。

 

こうしたなかで、迅速な課題解決や変化対応し続けるには、上の指示がなくても各メンバーが自発的に課題を見つけ、目標・計画を立て、実行する姿勢を持つことも大切です。また、各企業が困難な時代を乗り越えるためには、イニシアチブを含めたGRIT(やり遂げる力)の高いメンバーの育成が大切になってきます。

 

イニシアチブの類語「リーダーシップ」との違い

イニシアチブやリーダーシップには、「組織を引っ張るリーダーが発揮するもの」というイメージもあるかもしれません。しかし、イニシアチブとリーダーシップは組織を引っ張るリーダー、たとえば管理職だけが発揮すればいいものではありません。

 

アスリートの世界では、自分から主体的に思考して行動することを、「セルフ・イニシアチブ」と呼びます。同じようにリーダーシップに関しても、自分自身に発揮するリーダーシップは「セルフ・リーダーシップ」と呼ばれます。

 

自分自身の内面、そして、自分自身の言動において、セルフ・イニシアチブやセルフ・リーダーシップを発揮している人が、周囲の人やチーム、組織にもイニシアチブやリーダーシップを発揮できるようになるというイメージです。

 

 

まとめ

イニシアチブは、主導権・構想・自発・率先など、幅広い意味を持つ言葉です。メンバー個人がイニシアチブを発揮するには、以下3つのポイントを押さえることが大切です。

  • 「意思決定」を意識する
  • 「意味づけ」 する
  • 「ゴール」 を明確にする

 

また、組織のマネジメントなどにおいてメンバーのイニシアチブを高めるには、以下3つのポイントを大切にするとよいでしょう。

  • 社員の自己決定権を尊重する
  • 情報や組織の方針を共有する
  • 成功体験をつくり、自己効力感を高める

 

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著者情報

近藤 浩充

株式会社ジェイック|取締役 兼 常務執行役員

近藤 浩充

大学卒業後、情報システム系の会社を経て入社。
IT戦略事業、全社経営戦略、教育事業、採用・就職支援事業の責任者を経て現職。企業の採用・育成課題を知る立場から、当社の企業向け教育研修を監修するほか、一般企業、金融機関、経営者クラブなどで、若手から管理職層までの社員育成の手法やキャリア形成等についての講演を行っている。
昨今では管理職のリーダーシップやコミュニケーションスキルをテーマに、雑誌『プレジデント』(2023年)、J-CASTニュース(2024年)、ほか人事メディアからの取材も多数実績あり。

著書、登壇セミナー

・社長の右腕 ~上場企業 現役ナンバー2の告白~
・今だからできる!若手採用と組織活性化のヒント
・withコロナ時代における新しい採用力・定着率向上の秘訣
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