人事評価制度とは?評価指標や手法、導入のチェックポイントを解説!

人事評価制度とは?評価指標や手法、導入のチェックポイントを解説 !

組織が一定以上の規模になると、メンバーの貢献度を適切に評価して待遇等に反映するために人事評価制度が必要となります。適切な人事評価制度の運営は、組織全体のパフォーマンス向上にもつながります。

 

本記事では、人事評価制度の導入を検討している方や既存の人事評価制度を改善したいといった方向けに、人事評価制度の役割や評価指標、手法や導入のチェックポイントなどを紹介します。

<目次>

人事評価制度とは?

面談をするビジネスマン

 

人事評価制度とは、メンバーの実績や貢献度、スキル等を評価して、待遇に反映するための制度を指します。人事評価制度の適切な運用は、メンバーの業績やモチベーションを向上させることにつながります。

人事評価制度の役割

  • 処遇の決定
  • バリューや価値観の浸透
  • 人材育成への活用
  • 配置の最適化

人事評価制度は上記4つの役割を担います。

 

処遇の決定

人事評価制度によって、給与、昇格、降格などといった人材の処遇を客観的な評価に応じて、決定することができます。

 

評価基準が不透明なまま悪い評価を受けた場合、社員が企業に不信感を抱いたり、モチベーションが下がったりすることにつながりかねません。適切に人事評価制度を運用することで、明確な根拠をもって人材の処遇を決定し、評価される側の納得感を担保することが大切です。

 

バリューや価値観の浸透

人事評価制度は、「どんな言動を評価するか?」という会社からのメッセージでもあります。人事評価制度に、業績的な成果だけではなく、企業のバリューや価値観の推進などをきちんと盛り込んで運用していくことで、バリューや価値観の浸透を助けるものになります。

 

人材育成への活用

人事評価制度は人材育成にも役立ちます。まず定期的に人事評価をきちんと実施して、社員の能力や組織への貢献度を客観的に判断することで、適切なフィードバックができるようになります。

 

また、人事評価制度の評価基準は、前述のとおり、「どうすれば評価されるか?」というメッセージですので、評価基準をきちんと制定・運用することで、自然と社員の成長が方向づけられ、人材育成につながります。

 

さらに、経営陣が人事評価制度の運用にしっかり関わることで、本人へのフィードバックだけでなく、職種や部門の垣根を越えて人材の育成や抜擢を協議することができます。

 

配置の最適化

人事評価制度は、社員の能力を客観的に見定める機会となりますので、人員配置を最適化するうえでも有効です。記憶に頼る人員配置は組織が一定規模を超えると限界を迎えます。きちんと人事評価の履歴に基づいて、何が得意で強みかなどを把握して配置を検討していくことがポイントです。

人事評価制度の主な指標

  • 業績評価
  • 能力評価
  • 情意評価

人事評価制度の主な指標は次の3つです。どの指標を重要視するのかは、組織の風土や体制によっても異なります。

 

業績評価(成果評価)

業績評価は、個人やチーム、部門の業績貢献を評価指標とするものです。

 

業績評価は、営業職であれば売上高など成果が目に見えやすいのが特徴です。そのため、評価基準がわかりやすく、社員のモチベーションが高められますし、目標設定をしっかり実施することで、社員の動きも適切な方向に向かうことになります。いわゆる目標管理(MBO)制度とリンクさせて、間接部門なども一律に運用することが一般的です。

 

業績評価は人事評価制度で基本となるところですが、評価が短期的な業績や成果に偏り過ぎると、「部門間や職種間にあるような仕事が拾われない」、「中長期的な仕組み改善や種まきとなる活動が疎かになる」、「チームワークが悪くなる」といった弊害も生じます。

 

能力評価

能力評価では、業務を遂行するうえで必要となるスキルや知識を評価指標とします。短期的な業績や成果は本人のパフォーマンス以外の要素も影響しますので、成長目標やプロセス評価など、能力評価の要素をポジションに応じて一定程度盛り込むことがおすすめです。

 

ただし、能力評価は客観的な評価が難しい側面もあり、評価者である上司の力量も問われます。したがって、あまり大きなウェイトにはせず、業績評価と組み合わせることが一般的です。

 

情意評価

情意評価では、業務遂行への意欲や取り組み姿勢を指標とします。情意評価は、感覚的で、評価項目の設定が少ししにくい部分もあります。しかし、うまく設定・運用すれば組織のバリュー浸透や人材育成などに大きな効果があります。

人事評価制度の手法3選

  • 目標管理(MBO)制度
  • コンピテンシー評価制度
  • 360度評価制度

本章では人事評価制度で代表的な3つの手法について簡単に解説します。

 

目標管理(MBO)制度

目標管理(MBO)制度は、個人目標を設定して、目標の達成度によって評価する評価制度です。もともとは経営学の父と称されるピーター・ドラッカーが提唱したマネジメント体系です。組織目標と紐づいて個人目標を設定することで、個人の主体性を引き出し、自立を促す効果があります。日本では、評価制度と紐づく形で導入されていることが一般的です。

 

メリットは、個人目標を設定することで、個々人が果たすべき貢献と責任が明確化されることです。目標を合意するからこそ権限委譲してメンバーの主体性を引き出せます。また、目標の達成率に応じて、客観的な評価ができることも強みです。

 

一方で、適切に運用するには注意と努力が必要です。運用を失敗すると目標が形骸化したり、「MBOを運用するために目標を設定する」といった手段の目的化が起こったりする可能性があります。

 

社内で難易度を揃える、目標設定が妥当だったかを振り返る、人材育成に繋がっているかを確認する、能力評価や情意目標を部門別の具体的な事項に落とし込むなど、きちんと運用していきましょう。

 

コンピテンシー評価

コンピテンシー評価とは、社内の優秀な社員の行動様式をものさしとして定め、社員の人事評価や採用活動に用いる評価制度です。

 

メリットは、行動ベースのものさしを作ることによって、社員自身が理想とされる基準と自身とのギャップを把握しやすくなる、そして、どのような行動をすべきかが明示されるため、人材育成を促進できることです。

 

一方で、現実的には、コンピテンシーを1つのものさしで定めて客観的に評価することは困難といえます。そのため、前述の目的管理(MBO)制度に、結果評価だけでなくプロセス評価や情意評価を組み込み、人材育成方針やバリューなどに紐づいて自社に好ましい行動様式を設定するなどの運用がおすすめです。

 

360度評価制度

360度評価制度とは、上司だけではなく、同僚やメンバーなど複数名からの評価も取り入れた評価制度です。

 

メリットは、多方面から評価できるため、上司だけでは把握しきれない社員の側面を評価に反映して、評価の精度を高められることです。複数の関係者が評価に関わるため、評価される側の納得感も高くなります。

 

一方で、あくまで主観的な評価の集合体であり、運用がかなり困難です。運用がゆがむと、“忖度”や“私情”が混ざり、組織内コミュニケーションにも悪影響をおよぼすため、慎重な運用が必要になります。

 

そのため、全社的な人事評価制度への反映よりも、管理職を対象としたフィードバックの仕組みとして運用したり、人材育成に向けた研修などで取り入れたりするといったケースが多いでしょう。

人事評価制度を適切に運用するためのチェックポイント

  • 評価基準を明確にする
  • 客観的かつ具体的な評価ができる状態にする
  • 絶対評価を主軸とする
  • 評価結果が賞与、昇給や昇格に結びつくようにする
  • 適切なフィードバックを実施する

人事評価制度を導入する際には、どのような点に注意すればよいのでしょうか。人事評価制度を適切に運用するために押さえておくべきチェックポイントを解説します。

 

評価基準を明確にする

人事評価制度を適切に運用するための大前提として、評価する項目や方法、基準、時期などが社員に明示されている必要があります。公正で納得感の高い評価制度にするためには、基本的に職種や部門を越えて、一律の制度を運用することが望ましいでしょう。

 

客観的かつ具体的な評価ができる状態にする

評価制度は客観的でかつ具体的な目標を設定することで、評価しやすく、また社員の納得も得やすくなります。一方で、部門や職種が変われば、目標設定も変える必要があります。そのため、人事評価制度を運用するうえでは、適切な目標設定の設定が非常に重要になります。

 

目標設定では、目標設定の基本となる「SMARTの原則」を守ることが必須です。

SMARTの原則に基づく目標設定
  • Specific:具体的な表現
  • Measurable:測定可能な設定
  • Achievable:達成可能なレベル
  • Relevant:上位目標の達成に貢献する目標
  • Time-bound:明確な達成期日

特に職種や部門を越えて運用する際には、難易度の設定(Achievableのレベル)が大切です。達成率/達成度で評価するためには、難易度が同等でなければなりません。

 

適切に設定するには会社全体で難易度を揃え、同時に目標設定に関わる上司の力量も重要です。そのため、人事評価制度の導入から運用に際しては、上司向けの目標設定研修、評価者研修などが大切になります。

 

絶対評価を主軸とする

絶対評価では、他の社員と比較するのではなく、個々の社員を一定の基準にしたがってランク付けします。給与や賞与などの総額コントロールを考えた場合、最終的な評価は相対で付与するなどの運用が有効ですが、個人の達成状況に対する評価などは絶対評価で実施することが望ましいでしょう。

 

評価結果を賞与、昇給や昇格に結びつける

評価結果が賞与や昇給や昇格に結びつくことで、社員の意欲につながります。組織づくりの金言として「功ある者には禄を与えよ、徳ある者には地位を与えよ」という言葉もあるとおり、業績だけで昇給や昇格を決めることは適切とはいえません。ただし、評価制度の結果が何らかの形で待遇などに反映されていることは非常に大切です。

 

適切なフィードバックを実施する

人事評価制度の運用においては、適切なフィードバック、評価面談を実施することが重要です。評価面談でのすり合わせやフィードバックが評価への納得感を生むためです。

 

適切な目標設定と目標への納得度、そして、フィードバックの実施という3つが人事評価制度を適切に運用する肝です。とくにフィードバックは、人事評価制度を人材育成につなげるうえでも大切です。

納得感のある人事評価制度を導入することで、社員のパフォーマンスを向上させましょう!

人事評価制度は適切に運用することで、社員のモチベーション向上や人材育成の促進、人材配置の最適化など、さまざまなメリットが組織にもたらされます。一方で、評価の内容によっては、組織への不満や不信感につながる可能性もあるため、公平性、透明性に担保できるよう注意が必要です。

 

人事評価制度の評価基準や評価方法は組織の社風や体制などによって異なります。自社に合った納得感のある人事評価制度になるように導入・運用することで、社員のパフォーマンスを向上させましょう。

著者情報

知見寺 直樹

株式会社ジェイック 執行役員|上海杰意可邁伊茲企業管理咨詢有限公司 副董事長

知見寺 直樹

東北大学を卒業後、大手コンサルティング会社へ入社。その後、株式会社エフアンドエム副本部長、チャレンジャー・グレイ・クリスマス常務取締役等を経て、2009年ジェイック常務取締役に就任。総経理として上海法人(上海杰意可邁伊茲企業管理咨詢有限公司 )の立ち上げ等を経て、現在はHumanResourceおよび事業開発を担当する。

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