自己啓発とは?|種類と方法、主なテーマを一覧で紹介

更新:2023/07/28

作成:2023/05/12

古庄 拓

古庄 拓

株式会社ジェイック執行役員

自己啓発とは?|種類と方法、主なテーマを一覧で紹介

自己啓発とは、自分自身の成長を目指し、成長の実現に向けて自らの意思で行なうトレーニングの総称です。自己啓発は、ビジネスパーソンとしての成長、また、組織開発や人材育成のなかで、よく登場する言葉です。

 

個人にとっては、スキルアップや成長の手段であり、また、組織開発や人材育成のなかでも、自己啓発の支援をうまく取り入れることは有効です。

 

本記事では、自己啓発の概要と種類、主なジャンル、具体的な方法を確認します。また、後半では、研修会社としての知見を踏まえて、自己啓発の利点と注意点、企業が自己啓発支援をする際の注意点やポイントを紹介します。

<目次>

自己啓発とは?

セミナーを受講している女性
自己啓発とは、自分自身の成長を目指し、成長の実現に向けて自らの意思で行なうトレーニングの総称です。具体的な種類は後述しますが、以下のようなものが自己啓発にあたります。

  • 自分の描くキャリアを実現するために、参考になる書籍を読む
  • 仕事に役立ちそうな資格の勉強をする
  • 業務時間外で新人プログラマー向けのオンライン勉強会に参加する
  • 自己効力感を高めるために、プロからコーチングを受ける など

自己啓発は大きく2種類に分かれる

自己啓発は、目的・内容で大きく分ければ「能力の向上」「精神の成長」の2つに分かれます。本章では、それぞれの特徴を見ていきましょう。

 

能力の向上

まず、わかりやすいのが、能力や知識を向上させるものです。

 

たとえば、IT部門に配属された新人が「プログラミング技術を向上させたい!」と思っても、日々の仕事だけでスペシャリストレベルの技術を身につけるには、不足しているかもしれません。

 

そこで自己啓発として勉強や講習、トレーニングを行なうことで、現場では使わない技術に触れられたり、効率よくプログラムを組むコツなども習得できたりするかもしれません。

 

自己啓発で身につけられる能力には、プログラミング技術のような明確な業務スキルのほかに、コミュニケーションやコーチングの技術、時間管理など汎用的なスキルなど様々あります。

精神の成長

仕事はもちろん、人生の目標や夢を叶えるうえでは、精神的成長も必要です。

 

たとえば、日常生活のなかで忙殺されている状態では、以下のことを考えたくても考え抜く余裕がなかったり、考えたことを共有できる適切な相談相手がいなかったりすることなどから、精神的に成長できない可能性もあるでしょう。

  • 自分はこの先、どのようなキャリアを描きたいだろうか?
  • メンバーとの関係をもっと改善できないだろうか?

自己啓発は能力やスキルの取得だけでなく、講座やコーチング、セッションなどを通じて、精神面の成長、ビジョンの明確化、人間性の向上などをすることも含まれます。

自己啓発の主なジャンル一覧

自己啓発を実施する際には、自分の成長や自己実現に必要なスキルやカテゴリを選ぶことが大切です。本章では、ビジネスパーソンの自己啓発で選ばれやすい主なジャンルを紹介します。

 

言語

英語を中心とする外国語は、スキルとしてもわかりやすいため、取り組む人も多い分野です。

 

株式会社オンラインスクールの調査では、57%が収入UPに「英会話力が必要」とする一方で、4割以上のビジネスパーソンが業務上、英語が使えず困った経験があるとしています。

 

海外赴任・出張、外国人担当者とのコミュニケーションなどがある、また、そういった仕事に付きたいのであれば、言語スキルを高めることも有効でしょう。

 

出典:ビジネス英語に関する意識調査

資格

ビジネスパーソンが実践する自己啓発ジャンルで最も多いのが、資格取得のための勉強です。エン転職による調査結果では、全体の44%もの人が資格取得の勉強をしていることがわかっています。

 

資格取得は、ゴールが明確で、一定の知識やスキルが形として保証される側面があることから、比較的取り組みやすい分野になります。ただし、すべての資格がビジネス成果、企業などからの評価に直結するわけではありませんので、どのような資格を取るか、どれが実務の成果などにつながるのかには注意が必要です。

 

出典:「自己研鑽」意識調査(エン転職)

専門スキル

各職種・業務で高い成果を出すために必要となる、技術・知識の総称です。具体的には、以下のようなものがあります。

  • プログラミング技術
  • デザインソフトの使い方
  • 経理知識 など

テキスト専門スキルは資格取得と重なる部分も多い一方で、認定資格などがない仕事も多いです。たとえば、「採用業務」の専門スキルは、著名な資格はないですが、立派な専門スキルの一つです。

ポータブルスキル

業界・部署・職種問わず、汎用的に活用できるスキルの総称です。株式会社リンクアンドモチベーションでは、ポータブルスキルを「3テーマ24種類」に分類しています。具体的には、以下のようなスキルです。

  • 対人力(傾聴力、受容力、協調力……)
  • 対課題力(試行力、変革力、発想力……)
  • 対自分力(決断力、忍耐力、持続力……)

ポータブルスキルの詳細に興味がある人は、以下の記事をチェックしましょう。ポータブルスキルは精神面の成長につながる要素もあります。スキルを活かして成果をあげるうえで基盤となるのがポータブルスキルですので、鍛えておいて損はありません。

 

コミュニケーションスキル

ポータブルスキルと重なる部分もありますが、仕事で成果をあげるうえで、コミュニケーション力を高めることは非常に大切です。ビジネスで使うコミュニケーションスキルは、おもに以下4つの能力から成り立ちます。

  • 信頼関係を構築する力
  • 聴く力
  • 伝える力
  • 交渉する力

思考法・思考力

ビジネスシーンでは、コミュニケーションする、打ち合わせる、計画を考える、課題を解決するなど、さまざまな場面で思考力が求められます。ビジネスで使われることが多い思考法には、以下のような種類があります。

  • ロジカルシンキング
  • クリティカルシンキング
  • コンセプチュアルシンキング
  • ラテラルシンキング
  • デザイン思考
  • アート思考 など

セルフマネジメント・人格

たとえば、経営層や管理職は、高い人格がありセルフマネジメントができてこそ、メンバーとの深い信頼関係をつくれますし、メンバーへの影響力を高められるようになります。

 

そのため、仕事を通じてより良い成果を出し続けるには、セルフマネジメント力や人格を磨く自己啓発も大切です。

自己啓発の具体的な方法

自己啓発本を読む意識の高い向上心のある人物、ミニチュア模型

自己啓発の方法は、たくさんあります。本章では、ビジネスパーソンに選択されることの多い7つの方法を紹介しましょう。効果性の高さやコスト、継続性などの観点から、自分に合う方法を選んでみてください。

 

読書

読書は、最も手軽に実践できる自己啓発の方法です。読書は、自分のペースで進めやすい特徴があります。また、通勤時間を有効活用したり、電子書籍リーダーを使ったりするなどの工夫をすれば、継続や習慣化もしやすいでしょう。

 

さらにほぼあらゆる分野に関して参考になる書籍はありますし、書評などをみれば良質な書籍を選ぶことも簡単です。

ただ、読書には、費用対効果が非常に高い一方で、どうしても知識のインプットになってしまう側面があります。そのため、読書による自己啓発で効果性を高めるには、自分の仕事に落とし込む、実践する、習慣化して身に付ける、といったところで努力が必要でしょう。

 

なお、セルフマネジメント力を向上させるなら、以下の資料で紹介されている10冊がおすすめです。

セミナー、勉強会

プロの講師や参加者と同じ時間を共有することで、学びに集中しやすくなるのが、セミナーや勉強会です。不明点なども現場で解決しやすいため、書籍などを使った独学より効果的な部分があります。

 

ただ、セミナー・勉強会の場合、参加費がかかったり、場所・時間に制約があったりすることも多くなるでしょう。

動画メディア

動画メディアには、YouTube上で配信されている無料のものから、企業やプロ講師の有料メディアまで、幅広い種類があります。動画メディアも、自分の好きな時間に学べる点や、安価に利用できるメディアが多いといったメリットは、読書などにも通じることです。

 

ただ、YouTubeなどの場合、自己流の情報を流す配信者もいるため、見極めスキルも必要となります。また、読書と同じように、学習内容をしっかり身に付けるためには、一定の努力が必要となるでしょう。

資格講座

資格取得を目指す人には、資格スクールの通信・通学講座を利用するのも一つです。資格講座を利用すれば、資格を取るというゴールに向けて効率よく学んでいくことができます。

 

資格講座を利用するメリットは、合格ノウハウの豊富さやサポート力、進捗管理がしやすいことです。ただ、講座の費用もかかります。仕事に関連した資格講座の場合、安いものでは数万円、高いものだと数十万円程度が相場です。

コンサルティングやコーチング

精神的成長につながる価値観や考え方は、本を読んだり動画メディアを視聴したりしても、「理解したつもり」になるだけで、行動変容につなげられないことも多いです。したがって、精神面の成長や成果創出を考えるうえでは、プロの指導者やコンサルタントにコーチングや助言・指導を仰ぐのも一つになります。

 

コンサルティングやコーチングも、資格講座と同様にお金がかかります。しかし、1対1での継続的な支援を受けられることで、行動変容などは生み出しやすいでしょう。

 

ただし、コンサルタントやコーチは、特に資格がなくても名乗ることができます。そのため、信頼できる人を見つけることが難しい部分があります。

 

たとえば、ビジネス系でのコンサルティングやコーチングであれば、ビジネスにおける実績の有無を確認したほうがよいでしょう。また、キャリア相談であれば国家資格キャリアコンサルタント、ビジネスコーチングであればいくつかの著名団体が発行している認定資格などがあります。こうした資格の有無や実績を確認することは必須です。

 

ただ、コンサルティングやコーチングで高い効果を出すには、本人と講師の相性も関係します。そのため、実際に利用するときには、トライアルしてみて相性が合う人を選ぶことがおすすめです。

自己啓発の利点と注意点

自己啓発の利点や注意点を確認しておきましょう。

 

自己啓発のメリット

大きなメリットは、自己啓発を通じて、能力や精神面で成長できることです。

 

いまの仕事に役立つスキルや知識であれば、仕事の質も向上し、成果も出しやすくなります。また、将来的にやりたい仕事の関連スキルや知識であれば、関連スキル・知識を身につけることでキャリア形成につながるかも知れません。

 

また、自己啓発は自分で選んだテーマを学習していくため、学びのモチベーションも維持しやすい利点もあります。職場での研修などにプラスして取り組めば、周囲にも差をつけるチャンスとなるでしょう。

自己啓発の注意点

自己啓発をするには、一定のお金や時間はかかります。そのため、経済的余裕がなかったり、毎日の残業で疲労が蓄積していたり時間を確保できない場合、当然のことながら自己啓発は進みません。

 

また、場合によっては、学ぶことが目的になってしまい、行動変容につながらないなどの失敗が起こることもあります。特に語学や資格などは、思っているほど企業からは評価されないこともあるので注意が必要です。

企業にとっての自己啓発支援の意味と注意点、やり方

企業の人材育成や組織開発という視点で自己啓発をとらえると、どのような位置づけや意味があるでしょうか。本章からは、企業側の視点で自己啓発支援の意味やポイントを紹介していきます。

 

自己啓発支援の意味

まず、自己啓発の取り組み方は、メンバーの自発性に委ねられます。そのため、普段の仕事のように、進捗や内容を企業側でコントロールできるものではありません。

 

一方で、自己啓発は、自発的に行なうものであるからこそ、高いモチベーションで学習が進みやすい特徴があります。自己啓発で技能向上や精神的成長が促されると、現場の仕事や組織開発での効果も期待できるでしょう。

 

さらには、メンバーの成長支援をすることは、組織へのエンゲージメント向上にもつながります。そのため、企業側としては、福利厚生やキャリア自律の一環、または“自ら学ぶ人を伸ばす”ための施策として自己啓発を支援していくことがおすすめとなります。

自己啓発支援の注意点

自己啓発は“自分で取り組むテーマを選ぶ”という特性上、「企業が学んで欲しいこと」と

「社員が学ぶこと」の間でズレが生じやすい側面もあります。

 

たとえば、顧客への提案力が低すぎることが原因で、成約がなかなかあがらない営業マンがいたと仮定します。不振の営業マンが自己啓発で、自分が個人的に関心を持った英語の勉強をしたところで、提案力は向上しませんし、成果にはつながらない可能性が高いでしょう。

 

もちろん、将来のキャリア形成などに向けて、メンバーが学びたいものを学ぶことには、一定の意味があります。ただ、企業として費用や時間などの側面から自己啓発を支援するなら、業務上の成果につながるものを選んでもらいたい側面もあるでしょう。

 

企業が自己啓発の支援をするうえでは、制度設計や日常の1on1などを通じて、ある程度学びの方向性を誘導することも大切です。

自己啓発支援のやり方

企業における自己啓発支援は、大きく以下3つのやり方があります。

  • 金銭的補助:指定資格や講座受講の金銭的な支援
  • 時間的補助:業務時間内での参加承認、副業や休業制度
  • 学習環境や機会の提供: LMSやカフェテリアプランへの組み込み

自己啓発支援の制度を導入するうえでは、どういった自己啓発であれば、企業として費用支援をするか、e‐learningなどの導入に際してどのようなものを選ぶかなどで、企業として一定の方向性を示すことが可能です。

 

各メンバーの自己啓発の効果を最大化するには、1on1などで「いまは何の勉強をしているの?」などの軽めの質問から、本人の頑張りに関心を持っている・応援している姿勢を見せることも大切です。

まとめ

自己啓発とは、自分自身の成長を目指し、成長の実現に向けて自らの意思で行なう訓練の総称です。自己啓発の内容は、「能力の向上」と「精神の成長」の大きく2つに分かれます。

 

自己啓発には、おもに以下のようなジャンルがあります。

  • 言語
  • 資格
  • 専門スキル
  • ポータブルスキル
  • コミュニケーションスキル
  • 思考法・思考力
  • セルフマネジメント・人格

また、自己啓発には、以下のような方法で実践されることが多いでしょう。

  • 読書
  • セミナー、勉強会
  • 動画メディア
  • 資格講座
  • コンサルやコーチング

各メンバーが自己啓発を行なうと、仕事に使うスキルが向上することで、本人のモチベーションや仕事の質なども向上しやすくなります。したがって、企業としても、学ぶもの方向性を誘導しながら、メンバーの自己啓発を支援することは、人材育成や組織開発における有効な手段の一つです。

 

記事で紹介した自己啓発支援の意味・注意点を理解したうえで、以下の内容を整備・実施していくとよいでしょう。

  • 金銭的補助:指定資格や講座受講の金銭的な支援
  • 時間的補助:業務時間内での参加承認、副業や休業制度
  • 学習環境や機会の提供:LMSやカフェテリアプランへの組み込み

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック執行役員

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。専門は新卒および中途採用、マーケティング、学習理論

著書、登壇セミナー

・Inside Sales Conference「オンライン時代に売上を伸ばす。新規開拓を加速する体制づくり」など

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