EQは、感情を扱う力のことで、「心の知能指数」とも呼ばれます。近年では、知識労働や感情労働が増えるなかで、EQを高める重要性も増しています。
本記事では、EQ研修講師としての知見も踏まえて、EQの概要とEQに含まれる4つの能力、EQが高い人の特徴を確認します。また、後半ではEQを高める方法も紹介しますので、参考になれば幸いです。
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<目次>
- EQ(心の知能指数)とは?
- EQに含まれる4つの能力
- EQを構成する4つの要素
- EQが必要とされる時代背景
- EQが高まることによる個人のメリット
- 従業員のEQが高まることによる組織のメリット
- EQが高い人の特徴
- EQを高める人材育成のステップ
- 日常生活の中でEQを高める方法
- ジェイックが提供するEQを高めるサービス
- まとめ
EQ(心の知能指数)とは?
記事では最初に、EQの定義、およびEQとIQの違いについて解説します。
EQの定義
EQ(Emotional Intelligence Quotient=心の知能指数)は、感情をうまくマネジメントする能力です。EQは、エール大学のピーター・サロベイ博士(現学長)とニューハンプシャー大学のジョン・メイヤー博士が、 1990年に論文“Emotional Intelligence”で発表したのが始まりです。
EQは、私たちが日常生活で普通に使っている能力でもあります。たとえば、自分や相手の気持ちを感じる力も、EQの一つです。また、ほかにも気持ちを切り替える、他の人の感情に配慮する、感情を載せたコミュニケーションをする、相手の感情を動かすといった力も、EQにつながるものです。特にリーダーシップやチームワーク、対人関係において重要であり、ビジネスの成功に不可欠な要素と言えます。
IQとEQの違い
EQとよく対比されるIQ(Intelligence Quotient)は、知能指数のことです。知能とは、問題解決や記憶、情報処理、見たり聞いたりする力などの集合体で、IQは、いわゆる“頭の良さ”を測る指標です。IQは、知能レベルを数値化したもので、知能検査の結果で判定されるものです。
IQとEQは、「知能」と「感情」という測っている対象の違いに加えて、IQ(知能指数)がある程度は先天的であるのに対して、EQ(心の知能指数)には、先天的要素が少なく、教育・学習・訓練を通じて高められる特徴があります。
EQに含まれる4つの能力
ビジネスで高い成果を出すために必要なEQですが、大きくは4つの能力に分類して考えることができます(EQPI®検査における分類です)。
自分理解
自分理解とは、自分の感情や動機づけの傾向、長所・短所などの理解度です。自分理解には、3つの要素が含まれます。
- 自分認識 :自分の感情を認識する
- 癖認識 :自分の感情が動くパターンを知る
- 原因分析 :感情が動いた理由を考える
自分を理解するには、自分自身を客観的にとらえる“メタ認知能力”が必要です。自分理解は、感情のコントロールや良好な人間関係の構築に不可欠なスキルになります。
たとえば、“自分はいま怒っている”ということを自覚できなければ、「なぜ怒っているのか?」「悪影響が出ないようにするためにどうするか?」を考えて行動を選択するような理性的な対応はできません。
また、自分の感情マネジメントにおける強みや弱みなどを知ることも、理性的な対処力を高めることにつながります。
他者理解
他者理解とは、他者の感情(気持ち)を理解して共感したり、自分と異なる価値観・意見などを理解したりする力です。他者理解に含まれる要素は、以下の3つになります。
- 状況把握 :相手や関係する人の感情を理解する
- 共感 :相手の感情に共感する
- 対人分析 :相手の感情が動く癖や感情が動いた原因を考える
チームで協働して成果を出すためには、メンバーの相互理解や信頼関係が欠かせません。また、営業や販売などであれば顧客、管理職であればメンバーの感情がどうなっているかを踏まえてアプローチやコミュニケーションをとらなければ、良い成果は生み出せないでしょう。
ただ、多くの人は、自分の経験からくる視点や価値観(パラダイム)で、相手や世界を見てしまう傾向があります。そのため、他者理解をするには、「まず、相手の理解に徹し、それから理解される」というコミュニケーションが必要です。
また、他者理解をするには、相手への誠実な関心や誠実な姿勢、積極的傾聴力なども必要になってくるでしょう。
自分活用
仕事やビジネスで成功するには、自分の感情をうまくマネジメントして、行動に反映していくことが大切です。自分活用に含まれる要素は、以下の3つになります。
- 平静 :いわゆるマインドフルネスなどの平静状態をつくる
- 創出 :目的に見合った感情をつくりだす
- 実行 :気持ちを行動に反映する
私たちのパフォーマンスは、能力やスキルだけでなく、「どのような気持ちで取り組むか?」にも左右されます。
まず基本として、落ち着いた平静な状態を作れることが大切です。いわゆるマインドフルネスの状態です。
マインドフルネスの平静な状態を基礎として、目的に見合った感情を作り出して、行動に反映することも大切です。
行動するうえでは、“明るく浮き浮きした気持ち”が常に一番良いわけではありません。たとえば、経理のデータにミスがないかをチェックするときに、浮き浮きした気持ちでやったらミスが生じやくなるでしょう。一方で、新しいビジョンを発表してメンバーを巻き込みたいときには、やはり明るさや前向きさ、熱意などの感情が大切になってくるでしょう。
高いパフォーマンスを発揮するには、上記のように目的に合った感情を生み出し、行動に反映する力が必要です。
関係構築
関係構築とは、ほかのメンバーやお客様、取引先などとの信頼関係を構築するスキルです。関係構築に含まれる要素は、以下の3つになります。
- 心開 :オープンマインドで人に接する
- 気配り :相手の感情を踏まえて行動を選択する
- 動機づけ :相手の気持ちを動かす
たとえ、優秀なメンバーが集まっても、お互いの信頼関係がなければ、相乗効果は生まれません。また、いまの時代は、AIが知識労働の多くを代替してくれるようになりつつありますが、メンバーと信頼関係を構築したり感情を動かしたりすることは、まだAIにはできない仕事になります。
そのため、EQのなかでも信頼関係を構築するスキルの重要性は、特に増していると考えてよいでしょう。ただし、他者との関係構築は、自分理解や他者理解、自分活用のスキルがあってこそ効果的に実現できるものとなってきますので、まずは3つの分野をしっかりと高めることが大切です。
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EQを構成する4つの要素
前章でお伝えしたように、EQは4つの能力で構成されています。違う視点でみると、EQは以下に示した4つの要素がもとになっているともいえます。4つの要素の複合的なメカニズムで、EQの能力は自他に向けて発揮されることになります。
感情の識別
感情の識別とは、自分自身の感情や周囲の人々の感情を認識する能力です。これには相手の表情や言動から、相手の感情を察知することも含まれます。また、自分の気持ちを把握し、「今、私はどのような感情を感じているか」を正確に把握することがEQの活用する上でまず大切になります。
感情の識別ができて、はじめて自分の感情を適切に表現したり、相手の気持ちを理解して共感したりすることができます。感情の識別は、EQの基礎となる重要な要素であり、簡単なようで常に実践することは意外とむずかしいものです。
感情の理解
感情の理解とは、自分や他者の感情の背景にある要因を理解し、その感情の意味や影響を把握することです。感情の識別から、もう1歩踏み込んだものが感情の理解と言えるでしょう。たとえば、相手の怒りの感情の背景にある要因を理解し、相手が感じている怒りの意味や影響を考えることが感情の理解です。感情の理解が出来ると、自他の感情変化を適切に解釈したり、相手の気持ちに共感したりすることが適切にできるようになります。
大まかには「感情の識別」と「感情の理解」を併せて、対自分と対他人という軸で分類したものが4つの能力の「自分理解」「他人理解」になります。
感情の利用
感情の利用とは、自分の感情を状況に応じて適切に活用する能力です。
自分の感情を理解して、感情を建設的に活用することで、物事に前向きに取り組むことができます。例えば、ストレスを感じた時に、ストレスを壁を乗り越えるための前向きなエネルギーに変えたり、喜びの感情を仕事のモチベーションにつなげたりするなど、自分の感情を状況に合わせて活用する能力です。
感情の調整
感情の調整とは、自分の感情を状況に応じて適切にマネジメントすることをいいます。
ストレスを感じた時にそれを適切に処理したり、感じている怒りをストレートに表すのではなくTPOに合わせて建設的に表現したりするといった形です。感情の利用が「ストレートな感情のエネルギーを前向きに使う」ものだとすると、感情調整は「理性を交えて感情+行動をマネジメントする」という感覚でしょうか。
感情の調整能力があると、激情を抑えて冷静に対応する、上手く感情を表すことができるようになり、対人関係の維持や問題解決に役立ちます。4つの能力でいう「自分活用」や「関係構築」は、「感情の利用」+「感情の調整」を併せて、自他という軸で表現したものになる形です。
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EQが必要とされる時代背景
EQが世界的に注目されるきっかけとなったのは、2017年に開催された世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)のレポートです。
レポートでは、「2020年に必要なビジネススキル」の6位としてEQが取り上げられました。
【2020年に必要なビジネススキルTOP10】
1位:Complex Problem Solving(複雑な問題解決力)
2位:Critical Thinking(クリティカルシンキング力)
3位:Creativity(クリエイティビティ力)
4位:People Management(マネジメント力)
5位:Coordinating with Others(人間関係の調整力)
6位:Emotional Intelligence(EQ)
7位:Judgement and Decision Making(決断力)
8位:Service Orientation(サービス設計力)
9位:Negotiation(交渉力)
10位:Cognitive Flexibility(柔軟な認識力)
(参考:World Economic Forum “The 10 skills you need to thrive in the Fourth Industrial Revolution”2017)
従来は、“IQが高い人材が、ビジネスで成功する”という考えが一般的でした。しかし、近年では、IQが高くてもビジネス社会で成功しない人が大勢いることがわかってきています。また、学校やキャリアのなかで積んできた経験やスキルだけでも、ビジネス現場で成果をあげるには不十分です。
いまの時代は、AIの台頭によって、“人間の仕事が奪われる”ともいわれています。こうした時代にビジネスを通じた成果を出し続けるには、EQのように、AIの能力がおよばない人間だけが成し得るスキルが強みになってきます。
EQが注目を集めるようになった背景には、時代による意識の変化やテクノロジーの進歩が大きく関係しています。また、円滑なコミュニケーションのためだけでなく、ストレス管理の上でもEQを高めることは重要であるとされています。今の時代にEQが必要とされるようになった背景について、具体的に見ていきましょう。
価値観の多様化
組織が成果をあげるためには、いかにして組織全体を一つのチームとしてまとめられるのかが重要になってきます。
一方で、現在は価値観が多様化している時代です。
従来のように共通の価値観や基準のもとで仕事を進めることは難しくなっており、これまでのような「常識」や「暗黙の了解」を相手に求めることはできなくなってきています。そうした中では、EQを使って信頼関係を構築し、相手を動かしていくということが重要になってきます。
DXやAIによる仕事内容の変化
価値観の多様化の他にも、技術の進歩による仕事内容の変化も、EQの必要性が高まっている要因の一つです。
テクノロジーとAIの発達により、単純労働や簡単な事務作業、さらにはこれまでホワイトカラーの業務だったものも一部はAIへの代替が進んでいます。結果として、人間の側には、コミュニケーション力やEQを要求されるような機械にはできない仕事をすることが求められるようになってきているわけです。
DXやAIの時代においては、感情労働や他者とのコラボレーション、創造的なチームワークができるということが重要であり、そのためにはEQが必要不可欠になってきます。
VUCA時代における組織形態の変化
「正解」が分かりやすかった過去の時代は、トップダウン・ピラミッド型の管理統制マネジメントが中心でした。トップが方針を決め、それを動かすことで成果があがったのです。
しかし、正解が分かりづらく変化が激しく現代は、トップや管理職が必ずしも正解を知っているわけではありません。場合によっては、顧客に近い現場の方が変化を把握しています。また、ピラミッド型組織を支えていた権威や役職・待遇といったパワーも過去と比べると落ちています。
こうした中で、組織は素早く変化に対応できるボトムアップ・サークル型の価値共創マネジメントヘの変化が求められています。ボトムアップ・サークル型の組織は、シナジーやコラボレーションによって新たな価値を創出したり、リーダーはサークルの中心となって水平型のリーダーシップを発揮したりすることが求められています。
こうした対話型のマネジメントを実施する上では、EQが不可欠なものとなってきます。
「対話力」「チームビルディング」「強みを生かす」|~昭和型マネジメントvs令和型マネジメント~
メンタルヘルス対策やパワハラ防止義務化への対応
ストレス社会とも言われる現代、メンタルダウンを防ぐためにも、仕事でのストレスにうまく対処できるようにしておく必要があります。
EQを高めることで感情のコントロールができるようになり、怒りや不安でストレスが高まってしまうのを抑える効果が期待できます。従業員のEQを高めてストレス対策をすることは、健康管理の面でも重要になってきます。
また、メンタルヘルス対策と並んで重要なのが、パワハラ対策です。2020年6月に施行されたパワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)により、企業に対してパワハラを防止するための措置を取ることが求められるようになりました。2022年4月からは、中小企業に対してもパワハラ対策が義務化され、これによって全ての企業でパワハラ対策が必要になっています。
管理職層が「怒り」の感情をマネジメントできず、パワハラを起こしてしまうと、大きな問題に発展しかねません。パワハラによるリスクから組織を守るためにも、管理職層のEQを高めることが重要になってきます。
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EQが高まることによる個人のメリット
EQを高めると、セルフマネジメント力が増し、パフォーマンスが安定します。EQを高めるメリットを具体的に見ていきましょう。
感情に振り回されなくなる
EQを高めると自らの感情と行動をマネジメントできるようになり、情緒やパフォーマンスが安定します。怒りや不安に振り回されてしまうことも少なくなり、ストレスも抑えられるようになります。
仕事にストレスはつきものです。その中で、最近問題になることが多いものとして、「フキハラ(不機嫌ハラスメント)」があります。
フキハラとは、周囲に対して不機嫌な態度を取ることで威圧したり、過剰に気を遣わせたりすることを指します。その背景には、思うように成果があがらないことへのストレスや「自分はちゃんと評価してもらえていないのではないか」というネガティブな感情があるとされています。
EQを高めることは、ストレスやネガティブな感情への対応力を高め、こうしたハラスメントの防止にも役立ちます。フキハラはハラスメントでもありますが、同時に組織のパフォーマンスを明確に落としてしまうものです。
EQを高めることで、フキハラを防ぐとともに、異なる価値観や常識の相手とのコミュニケーション、意見の相違から来るストレスへの耐性も高まり、プレイヤー、また、マネージャーとしてのパフォーマンスが高まるでしょう。
柔軟性が身につく
EQを高めると、自分自身の状態を客観的に見つめる力が身につきます。結果的に、白黒思考や行き過ぎた完璧主義にも縛られることも少なくなります。ちょっとしたことで大きなストレスを受けてしまうのを防げるようになるだけでなく、身の回りの出来事にも柔軟に対処できるようになります。
今の時代には、価値観の違いや世代間の認識のずれによって、コミュニケーションの中での衝突や行き違いが生じやすいものです。EQを高めることで、自分と違った考えの人を受け入れられるようになり、人間関係の上でも摩擦を起こすことも減り、また、自分の感情や価値観に振り回されず、適切な意思決定を下せるようになるでしょう。
共感力が高まり関係構築がうまくなる
EQが高まれば他者の気持ちになって考えることができ、共感力が高まります。相手の立場になって考えることができるようになると、相手が何を欲しているのか、また相手の感情を理解できるようになり、適切なコミュニケーションを取ることで信頼関係を築きやすくなります。
営業や販売、管理職などの対人業務が多い仕事では、お客様やメンバーなどの他者の気持ちを汲んで信頼関係を築いたり、自分の感情をコントロールしたりすることが大切です。そのため、こうした仕事に関わる人は、高いパフォーマンスをあげるためにはEQが不可欠でしょう。
また、知識労働においては、自分一人で成果創出のプロセスの最初から最後までを担当することは、ほとんどありません。知識労働で成果をあげるためには、自分の仕事の前後(上流・下流)や関わる人と協同作業を進めていくことが大切です。
スムーズな関係構築や円滑なコミュニケーションにより成果を生み出していくためにも、EQは重要になってきます。
人を動かす能力が高まる
EQが身につけば、自分自身と他者の感情を理解し、感情に振り回されずに自分のパフォーマンスをコントロールできるようになります。結果として、相手の感情を動かす、また感情を踏まえたコミュニケーションができるようになり、説得力や人への影響力を高めることができます。
管理統制型の組織では、上からの指示・命令で人を動かすことが比較的容易でした。しかし、価値共創型の組織においては、いかに相手と良好な信頼関係を構築し、ポジティブな感情にすることで動かすかが重要になります。EQはこうしたコミュニケーションを実現する上で非常に役立ちます。
メンバーのEQが高い組織は、短期間で業績を上げることもわかっています。また、メンバーのEQを向上させると、心理的安全性が高まり、生産性の高いチームづくりも可能になるでしょう。
物事に粘り強く取り組める
EQを高めることは、コミュニケーション力やマネジメント力を向上させるだけでなく、個人のパフォーマンスの向上も期待できます。
自身の恐怖や不安といった感情を適切にコントロールできるようになることで、難しいことに着手する前にあきらめてしまったり、途中で「自分には無理だ」と投げ出してしまったりといったことが少なくなります。
難しいことにチャレンジできるようになり、前向きな気持ちで物事をやり遂げられるようになるでしょう。
従業員のEQが高まることによる組織のメリット
従業員のEQを向上させる取り組み、個人だけではなく組織にとってもメリットがあります。ここでは、従業員のEQが高まることによる組織のメリットを解説します。
組織全体のパフォーマンスが向上する
EQの高い従業員は、自分の感情を適切に管理し、状況に応じて建設的に活用することができます。他者の感情の理解力も高くなるので、周囲とのコミュニケーションも円滑に行えるでしょう。これにより、上司や同僚とのコラボレーションが活発になったり、顧客対応の質が上がったりして、組織全体の生産性が向上することが期待できます。
つまり、社員のEQが高まることで、自己管理能力や自発性、コミュニケーション力が向上し、組織全体のパフォーマンスが高まります。これは、企業にとって大きなメリットといえるでしょう。
ハラスメントの防止、定着率向上につながる
EQの高い社員は、他者の感情にも配慮しながら、自分の感情を適切に表現することができます。そのため、職場におけるコミュニケーションもスムーズになり、ハラスメントなどのトラブルを未然に防いだりすることができます。最近は、管理職に必須といわれるアンガーマネジメントもEQの能力発揮で実現できます。
とくに管理職やリーダー層のEQが高まれば、職場のコミュニケーションにおけるストレスは減少し、職場の定着率も高くなるでしょう。従業員、とくに管理職のEQが高まることで、職場のコミュニケーションが改善され、ハラスメントの防止や定着率の向上につながるのです。
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EQが高い人の特徴
EQが高い人には、以下の特徴があります。
自分の状態をよく理解している
EQが高い人は、メタ認知能力が高いです。自分の気持ち(喜怒哀楽)、体調などの状態をよく理解しています。自分の内面を把握できているからこそ、自分の内面を整えるアプローチができる、また、内面の状況に応じた適切な手が打てます。
前述のとおり、怒りをマネジメントするアンガーマネジメントなども、「自分の感情が高ぶっている」ことを自覚できなければ、適切に取り組むことはできません。自分の怒りやモチベーション低下などの問題に対して、適切な対処方法を講じていくことが「自分活用」につながります。
相手への共感力が高い
共感力とは、相手の意思や感情を理解する、そして、相手の立場で同じように感じるスキルです。他者理解の能力が高ければ、自分と意見や価値観の異なる相手に遭遇しても、まずは相手の話に耳を傾け、共感することが可能になります。
なお、共感とは、「ともに感じる」ことであり、相手の感情に「同意」することではありません。英語では、共感はエンパシー、同意(同感)はシンパシーと呼ばれます。
相手と同じように感じる必要はありません。想像力や心を使い「相手はどのように感じたのか?」をイメージして相手の感情に理解を示すことが大切です。
関係構築がうまい
人は相手から共感されると「自分のことをわかってくれた!」などのポジティブな気持ちになり、心を開いていくものです。したがって、共感力が高い人は、関係構築も上手であることが多いでしょう。
また、相手に本心や本音の感情を吐き出してもらうためには、自分が心を開くことも大切です。自分がオープンマインドで心を開いていなければ、相手も心を開きづらいでしょう。
良好な関係の構築には、まず、お互いが心を開くことが大切です。EQが高い人は、自分の心を開いたうえで相手への共感などを通じて、相手との関係構築や場づくりを上手にやっていきます。
感情に振りまわされない
自分や相手の感情を理解したうえで、自他の感情に振り回されないことも、EQが高い人の特徴です。
たとえば、噴出する怒りに自分自身が振り回されれば、いままで築いてきた良好な関係も台無しになってしまいます。また、ビジネスで成果を出し続けるには、関係する人の気持ちに配慮しつつも理性的に判断をする、そして、相手の感情に配慮しつつうまく伝えるといったことが大切です。
EQを高める人材育成のステップ
従業員のEQを向上させる組織の取り組みについて、3つのステップに沿って解説します。
ステップ1:一人ひとりのEQレベルを測定・評価する
EQを向上させる上では、まずは現状を知ることが大切です。EQは誰もが日常の中で使っているものです。しかし、人によって得意不得意、発揮具合には違いがあります。だからこそ、現状を定量的に測定、可視化することが、EQを向上させる第一歩になるのです。EQの発揮度を測るEQPI診断などもありますので、対象となる従業員に受けてもらうと良いでしょう。
EQPI診断では、EQの発揮状況を「自分理解」「他社理解」「自分活用」「関係構築」という4つの分野、12のコアスキルに分類して可視化してくれます。さらに自分の性格特性やコミュニケーションパターンなども定量化してくれます。診断結果を読み解き、さらに日常をよく知る上司や同僚からフィードバックをもらうことで、自分のEQ活用の強み・弱みが明確になります。
ステップ2:EQ研修の実施
次に、EQ診断の結果を踏まえて、社員一人ひとりのEQスキルを向上させるための研修を実施します。
EQ研修はいきなりEQの高め方を学ぶより、まずはEQの概略や重要性を確認したうえで、前述したようにEQPI診断の結果などを使って、自分の状況を把握し、フィードバックをもらうところから始めることが効果的です。やはり自分の診断結果には誰しも興味を持つものですし、講師がリードした安全な場でフィードバックをもらうことで、弱み等に関しても受け入れやすくなります。
その上で、感情コントロール、対人関係スキルなど、EQの各要素に応じたトレーニングを行うことで、参加者それぞれが自分の成長テーマや強み活用を意識して、効果的にトレーニングを実施することができます。感情の識別や理解を高める方法、感情を活用するためのメソッド、感情調整のノウハウなどです。これらを実際にワークしたり、ロールプレイングしたりする中で身に付けていきます。
ステップ3:管理職層を中心としたフォローアップ
EQ向上の取り組みを継続的に支援するため、管理職層を中心としたフォローアップも大切です。EQ向上には日々の繰り返しが重要です。研修1回で終わるのではなく、eラーニングなどを活用して学びを振り返ったり、実践状況を相互にチェックしたり、取り組みを共有したりするような場があると良いでしょう。
とくに職場におけるコミュニケーションの要である管理職層は、日々目標達成と部下育成の間でストレスも溜まり、感情も揺れ動くものです。共感しやすい管理職層だけでのフォローアップや、個別でのコーチング的なセッション等を取り入れると、管理職のEQスキルも向上させ、部下の成長を後押しできる体制を目指していけるでしょう。
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日常生活の中でEQを高める方法
EQは、教育やトレーニングを通じて高められるものです。本章では、EQの向上に効果的な方法を紹介します。
診断を受ける
EQ診断を受けることで、自分の現状(特性、強み・弱み など)がわかります。現状を理解することで、効果的なトレーニングが可能になります。また、強みや弱みを自分で理解することで、意識的に弱みを補ったり、強みを活用したりすることも可能になります。
自分の感情を言語化する
自分の状態を客観的に把握するには、感情の言語化が有効です。たとえば、
- 自分の感情が動いた瞬間をノートに書き留める
- 毎朝感情を記録する
- 自分の感情の動きを言葉にする
などの方法がおすすめです。
最初のうちは、感情に対する語彙を増やす、感情を色でたとえるなどから始めてもよいでしょう。言語化を行なうことで、自分の状態を理解する力やメタ認知能力が向上しやすくなります。
相手の感情を探る
自分の感情が理解できるようになったら、相手の感情を考察します。
ただ、私たちは、それぞれの価値観や経験に基づいて物事を見ています。そのため、相手の感情を考察しても、たとえば、「どういう状態なのか?」や「なぜそう感じるのか?」などをイメージできないことも多いです。
相手の感情のイメージが難しい場合は、相手に直接訊いてみる、“理解しよう”とする姿勢を見せることも大切でしょう。
感情日記、メモをつける
EQを高めるには、前述のとおり、“自分の感情が動いた瞬間”の振り返りをすることがおすすめです。振り返り方法の一つが、感情日記です。感情日記の基本的な書き方は、以下の2ステップです。
- 感情が動いた出来事をメモする
- メモした感情や出来事で思ったことを素直に書く
また、上記の2ステップに加えて、自分の感情を数値化するのもよいでしょう(感情の振れ幅をMAX100として、感情の動きに点数を付ける形です)。
感情日記を通じて振り返りの習慣をつけると、たとえば、「自分の意見が通らないときに怒ってしまう」などの失敗パターンや成功パターンが見えてきます。成功パターン・失敗パターンがわかると、それらに対する適切な対処法の模索もしやすくなるでしょう。
EQ研修を受ける
EQ向上を相互理解や信頼関係の構築につなげていきたい人には、プロのEQ講師による診断や研修を受けることもおすすめです。
プロの講師に診断結果のフィードバックや研修をしてもらうと、自分だけでは気付かない特性や傾向も見えてきます。また、たとえば、「他者理解のスキルを向上させるには、どういうトレーニングをすればよいだろう?」というような疑問も解消しやすくなるでしょう。
傾聴を意識する
EQを高めるためには、自分の感情を理解するだけでなく、相手の感情にも注目を向ける必要があります。そのためには、相手の話を積極的に聞く「傾聴」の習慣を身につけることが効果的です。
傾聴とは、相手の話を注意深く聞き、言葉だけではなく「行間」や「背景」にある相手の気持ちを理解しようとする聞き方です。単に言葉を聞くだけではなく、相手の表情や仕草にも注意を払い、相手の感情を汲み取ろうとする姿勢が肝心です。
相手を理解して共感しようとする姿勢を持つことは、相手との相互理解を深め、信頼関係を築くことにつながります。そして、相手の気持ちを理解し、自分の感情に照らし合わせることはEQを高める上でも非常に有効なトレーニングとなるでしょう。
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ジェイックが提供するEQを高めるサービス
EQを高めることは、時代の変化の中で成果を出していくために必要なだけでなく、不安やストレス、さらにはパワハラのリスクから個人や組織を守っていくために重要となってきます。HRドクターを運営する研修会社ジェイックでは、EQを高めることに役立つ以下のようなサービスを提供しています。
感情マネジメント力を身につけるEQ研修
まずご紹介するのが、ジェイックが提供するEQ研修・EQPI研修である「EQPI®セルフリーダーシッププログラム」です。
研修では、EQPIトレーナー資格を有する講師が研修を担当し、感情マネジメント力であるEQについて、EQの生まれた背景や歴史も踏まえ、基本的な部分から学べます。
またEQPI診断の結果をもとに自分に合ったトレーニングを考え、行動計画を策定し実践していくことで、確実にEQを伸ばしていけます。
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感情のマネジメントをサポートする「Kakedas(カケダス)」
組織の中では、上司や会社に言いづらいモヤモヤがたまることもよくあります。こうしたストレスが溜まると、EQも発揮されづらくなります。そこでお勧めなのが、キャリアコンサルタントとの面談を提供する「Kakedas(カケダス)」です。
Kakedasは、AIが選び出した相性の良いキャリアコンサルタント10名の中から相談者自身が1名を選んでキャリア面談をすることができるサービスです。
守秘義務を持った外部のキャリアコンサルタントが面談を担当することで、相談者は安心して抱え込んだモヤモヤを吐き出すことができます。また、キャリアコンサルタントの側も、たまった感情や思考の言語化をサポートしてくれ、EQの発揮を助けてくれます。
面談を受けた従業員の本音は、本人を特定されない形でレポートとしてフィードバックされます。これにより、組織のどこで感情的なコンフリクト(衝突)が起こっているのかを把握することができ、改善につなげていくことができます。
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EQの発揮を助ける「7つの習慣®」研修
価値共創型の組織をつくり、成果を出すためのスキルを身につけるのにお勧めなのが、「7つの習慣®」研修です。
研修では、外部からの刺激に対してどう理性的に反応するのかということを学ぶことで、感情に振り回されることなく主体的に行動できるようになります。また、セルフマネジメントの技術、Win-Winの関係を築く、シナジーを創出するといった、他者との信頼関係を構築するためのコミュニケーションの技術や考え方を身につけることができます。
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まとめ
EQ(心の知能指数)とは、自分や相手の気持ちを感じ取ったり、感情をうまくマネジメントしたりする能力です。EQ(心の知能指数)は、教育やトレーニングを通じて高められる能力となります。
今後、AIが台頭したり、知識労働・感情労働が増えたりしてくるなかで、人間の強みであるEQの重要性が高まっていきます。EQに含まれるのは以下のような4つのスキルです。
<EQを構成する4つの要素>
- 自分理解
- 他者理解
- 自分活用
- 関係構築
なお、EQが高い人は、以下4つの特徴があります。
- 自分の状態をよく理解している
- 相手への共感力が高い
- 関係構築がうまい
- 感情に振りまわされない
そして、EQを高めるには、以下5つの方法を実践するのがおすすめです。
- 診断を受ける
- 自分の感情を言語化する
- 相手の感情を探る
- 感情日記、メモをつける
- EQ研修を受ける
なお、HRドクターを運営する株式会社ジェイックでもEQ研修を提供しています。EQ研修は、人材育成用に開発されたEQPI®検査の診断結果を通じて自分を知り、高めたいEQ要素を決める、そして、トレーニング方法を理解するといったものです。研修に興味がある人は、以下のページから資料をダウンロードしてみてください。
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ジェイックは、ヒューマンスキルやリーダーシップ領域の研修を得意としていますので、ご興味あれば、ぜひ研修の総合案内をご覧ください。
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