部長の役割とは?課長との違いと5つの役割を解説

更新:2023/07/28

作成:2022/09/06

古庄 拓

古庄 拓

株式会社ジェイック執行役員

部長の役割とは?課長との違いと5つの役割を解説

組織における“部長”は、課長とは異なる責任や立場、スキルが求められます。では、部長と課長で役割や責任、求められる能力は、どのように違うでしょうか。どんなスキルを鍛えればいいでしょうか。

 

記事では、部長と課長との違い、求められる5つの役割などを解説します。

<目次>

部長の役割とは?

面談をするビジネスマン

 

部長は多くの場合、部門や部署の責任者です。企業の規模等にもよりますが、特定職種の責任者や商材の責任者レベルであることも多いでしょう。

 

事業計画に基づく業務遂行はもちろんのこと、経営層・準経営層として生産性向上や新規事業の展開など、部門や企業の成長を俯瞰するスキル、視野、立ち振る舞いが求められる立場です。

部長と課長の違い

部長と課長の違いはおもに3つあります。

  • 立ち位置
  • 責任のレベル
  • 求められるスキル

 

立ち位置

部長は部門や部署の責任者であり、最終的な意思決定を担うことも多い役職です。職種や商材責任者として中長期視点や経営視点が求められます。それに対して課長は、現場の責任者として戦術の実行に責任を担う役職です。

 

部長は社長や取締役などの経営陣とも非常に近く、中小企業の場合には経営陣の一角を担います。中堅大手企業の場合には経営陣とメンバーの橋渡し的な存在となる重要な役割を果たしています。

 

課長はプレイングマネージャーであることも少なくありません。一方で部長は、マネジメントの専任として部署に関する計画と資源に責任を担い、仕事と人員を管理して組織を成功に導くことがミッションとなります。

 

部長になると判断にあたって上司に相談できる機会が少なくなり、意思決定を自ら判断しなければならない場面が増えます。意思決定の結果がもたらす影響は広範囲におよび、考慮すべき変数も複雑、かつ不確実性も増えるなかで、さまざまな意思決定を求められることも多いでしょう。

 

責任のレベル

部長は課長よりも高い責任を担います。

 

リクルートマネジメントが2009年に行なった調査によると、課長昇格時に管轄する組織規模は6割が10名以下でしたが、部長の場合は44%が11~50名、27%が51~100名、13%が101~300名という調査結果でした。

 

組織規模だけで責任の重さが決まるものではなく、担当する部門や職種の性格によってもマネジメントする組織規模は変わります。
しかし、課長と比較すると、規模の大きな組織を管轄する立場であり、当然求められる責任のレベルも高くなることが調査結果の数字から見て取れます。

 

求められるスキル

課長は現場の一人ひとりと直接コミュニケーションをとってマネジメントできる機会が多いです。一方で、部長は部下である課長層を通じて組織全体を動かすことが求められます。

 

遠隔的なマネジメントになるため、本質を掴むコンセプチュアルスキルが求められますし、クリティカルシンキングやロジカルシンキング、そして人を動かすコミュニケーション力などもより高いレベルで必要となります。詳細は後述します。

部長に求められる7つの役割

ここでは部長に求められる主な役割7つを紹介します。

  • 管理
  • リスクマネジメント
  • 他部署、社外との交渉・調整
  • 経営戦略の浸透
  • 事業やプロセス変革
  • 職場の環境づくり
  • 中長期的な人材育成

 

管理

部長は部署全体の管理とリスクマネジメントを行ないます。メンバーをいくつかのグループ(課やチーム)に分けて、課長やマネージャーとの連携を図りながら部署全体を管理するのが部長の役割です。

 

管理には部署の目標設定と基本計画の立案、KPIの設定と進捗確認などに加えて、適材適所の人材配置、人材の抜擢、中長期方針の検討なども含まれています。

 

リスクマネジメント

コンプライアンス遵守を周知させたりトラブル発生時に的確な指示を出したりするのも部長の役割です。

 

実務を管理している部長・課長層がリスクマネジメントで担う役割は非常に大きくなっています。また、部門の責任者として、自らの判断だけじゃなく部下のミスに対して責任を負う立場となります。

 

他部署・社外との交渉・調整

部長は他部署と交渉・調整する役割も担います。社外のパートナーや取引先との交渉・調整に登場することもあるでしょう。

 

現場の状況を踏まえて経営戦略などの全社レベルの方針を最適化するように経営陣へと提言すること、また部門に必要な資源(費用や工数など)を調達することも部長の重要な役割です。

 

経営戦略の浸透

現存の経営戦略や事業計画を課長や部署のメンバーに浸透させるのも部長の役目です。現場での実行が課長の責任だとすると、課長を通じて現場でしっかり実行してもらうために意図やゴールをきちんと浸透させるのが部長の役割です。

 

部署内に素早く、また正確に経営戦略を伝達し、現場で働く社員たちに実行させなければなりません。

 

事業やプロセス変革

「人の手によるものはすべて陳腐化する」というドラッカーの言葉があるように、最適な仕組みや商品をつくったとしても、時間が経過すれば陳腐化していきます。

 

だからこそ、部長は多・長・根(多角的、長期的、根本的)の視点から現状の組織や仕事の仕方を見直し、新しい価値を生み出す必要があります。

 

こういった事業やプロセスの変革は、短期的・具体的な業務に追われる課長職以下のメンバーにはなかなかできません。
もちろん部長単独で実行できるもの・できないものはありますが、前述のとおり部門の状況・現場の声を踏まえて全社や経営陣に影響を与えていくことも求められます。

 

職場の環境づくり

労働環境の改善は、メンバーのモチベーション向上や生産性向上など、組織にとって多くのメリットを生み出します。

 

物理的・制度的な要因はもちろんのこと、人間関係による軋轢やトラブルの解消にも部長は尽力する必要があります。

 

1927年から5年間にわたって行われたホーソン実験によると、労働生産性は外的要因や職場環境ではなく人間関係によって左右されるといわれているのです。

 

最近では部下の働き方、メンタルケアなどにも配慮することも必要となっており、部下の心身の健康を気遣いつつ継続的に成果が出せるようにサポートすることが重要です。

 

個別にケアすることもありますが、部長にとって大切なことは仕組みや組織風土の改善です。メンバーが長く働きやすい環境にすることで退職などの問題も低減できるでしょう。

 

中長期的な人材育成

部長の配下メンバーは、現場の管理職である課長とその他の一般社員で構成されています。
これらメンバーのスキルアップを支援することで個々のパフォーマンスを向上させることができます。結果としてそれがチーム全体のパフォーマンス向上につながり、部署の目標達成を効率的に進めることができるでしょう。

 

部長は短期的・個別的な人材育成はある程度課長に任せながら、全体的な施策、中長期的な人材育成(キャリア形成や人材配置)、課長層のレベルアップなどに関わる必要があります。

部長に求められる5つのスキル

部長に必要なのは以下5つのスキルです。

  • 意思決定力
  • コンセプチュアルスキル
  • ロジカルシンキング
  • コーチングスキル
  • 人間性

 

意思決定力

意思決定力とは、決断のスキルです。部長層になるとメンバーからの報告や相談に対して意思決定して指示することと同時に、自ら「答えるべき問いを考える」ことも求められます。

 

リーダーの意思決定力が不足していると組織のスピードは落ち、重大な機会損失に陥るリスクがあるでしょう。

 

適切な決断には、さまざまな角度から状況を見極め、意思決定に悪影響を与える可能性のある自らの先入観や偏見とも向き合う必要があります。

 

ただし、部長層の意思決定には正解がない、分からないことも多いのが事実です。そのなかで責任を負って意思決定する強いセルフリーダーシップが求められます。

 

コンセプチュアルスキル

部長になると、課長と異なり、複数階層のマネジメントをすることが多くなります。

 

また、経営陣とのやり取りでも数値はもちろんですが、数字のような具体的・定量的な情報だけでなく、経営戦略、事業方針、技術や市場の変化、競合との差別化戦略など抽象度が高い情報を扱うことも多くなります。

 

そして、全社的な経営戦略や自ら策定して部門方針・計画を課長やメンバー層に伝える必要もあります。こうした時に必要となるのが、物事の本質をつかんだり抽象と具体の間を行き来したりするコンセプチュアルスキルです。

 

ロジカルシンキング

上記のように定量的な数字には落とせない抽象度の高い情報を扱うことが部長には求められます。

 

一方で、実務的には計画の立案、進捗管理、意思決定などは、定量的な情報や論理の積み重ねを実行していくものです。

 

上述の通り、コンセプチュアルスキルも必要となってきますが、同時に、課長とは異なり現場から少し遠くなるからこそ、情報や状況をしっかりと掴んで整理するロジカルシンキングがより高いレベルで求められます。

 

コーチングスキル

コーチングスキルとは会話や問いかけから相手の思考を刺激し、答えや意欲を引き出す能力です。

 

課長やメンバーのリーダーシップを育てるためには、部長から一方的に指示やアドバイスするのではなく、引き出す・聴くことが求められます。

 

コーチングスキルのなかで基本となるのは傾聴と質問です。部長層であれば、一般社員や課長を経験する間に、”伝える”ためのコミュニケーションスキルは一定レベルまで身に付けていることが多いでしょう。
だからこそ、部長層になると、“引き出す”コーチングスキルが求められることになります。

 

人間性

4つの主要なスキルを記載してきましたが、根底となる人間性や器量も不可欠です。

 

例えば前述した意思決定力を支えるのは、ビジネスパーソンとしての軸や仕事に向き合う姿勢です。自らの心身を適切な意思決定ができる良い状態に保つためには、セルフマネジメントが必要です。

 

また、メンバーや部門外・社外と良好な人間関係や信頼関係がなければ、スキルだけでマネジメントや調整はできません。部長層にはスキルを支える人格を磨くことが求められます。

課長から部長への育成ポイント

握手をするビジネスマン

 

課長層を部長層へと引き上げていく上では、大きくは3つの視点で人材育成することがポイントになります。

 

①準幹部としてのビジネスリテラシー

マーケティング、アカウンティングなどの学習を通じて部長として必要なコンセプチュアルスキルやロジカルシンキング、実務で生かせるフレームワーク等を学びます。
知識とスキル面から準幹部として視座を引き上げていく必要があります。

 

②コミュニケーションスキル

前述した通り、コーチングスキルなどの部下育成に活用できるスキルが必要となります。仕事内容などによってはプレゼンテーションスキルやストーリーテリングなど、メンバーに働きかけるコミュニケーションスキルを必要です。

 

③人間性

スキルを支える人間性も磨く必要があります。ビジネスにおけるマネジメント層としての人間性やドラッカーや「7つの習慣®」など、さまざまな古典的な書籍があるので、自社にフィットするいくつかを基本として学び実践することが大切です。

 

人間性の育成には360度評価などを絡めたフィードバックや職場から離れたリフレクションや内省研修等も有効です。

部長の役割を把握して職務を全うしよう

部長は課長以下の複数階層をマネジメントして、組織の成果を出すことが求められます。マネジメントする組織規模が大きくなり遠隔的にメンバーと関わることも増えるからこそ、コンセプチュアルスキルやコーチングスキルを身に付けたり、より高いレベルのロジカルシンキングが求められます。

 

さらに、こうしたスキルを活用するためには、土台となる人間関係を構築する人間性やリーダーシップが必要です。

 

HRドクターを運営する研修会社ジェイックでは、部長層に求められるリーダーシップやコミュニケーション力を磨くのに最適なデール・カーネギー・トレーニングを提供しています。
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著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック執行役員

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。専門は新卒および中途採用、マーケティング、学習理論

著書、登壇セミナー

・Inside Sales Conference「オンライン時代に売上を伸ばす。新規開拓を加速する体制づくり」など

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