「リソース」とは「資源」を表す単語です。ビジネス場面では、企業が持つ資源という意味で、「ヒト・モノ・カネ」などのことを指します。
企業経営やマネジメントをするうえでは、リソースを外部から調達する、そして、リソースを効率よく活用して価値提供を行なっていくことが大切になります。
本記事では、まず、リソースの定義や種類を確認します。確認したうえで、実践編として、ビジネスにおけるリソース活用の基本と、リソース管理の仕方を紹介します。
<目次>
リソースの定義
リソースは、英語「resource」からきている単語です。英単語「resource」には、以下のような意味があります。
- 資源
- 物資
- 財源
- 資力
- やりくり
- 方策 など
リソースは、ビジネスシーンにおいては「企業経営に必要な資源全般」を指す言葉として使われます。ビジネス場面におけるリソースは、日本語では「経営資源」と呼ばれることもあります。
リソースの種類
ビジネスに必要なリソースは、大きく分けると以下のようなものがあります。
人的資源(ヒト)
人的資源とは、人材のことです。
企業におけるヒト以外のリソース、モノ・カネ・情報などはすべて人材によって活用されます。そのため、人材は、経営資源のなかで最も重要性が高い位置づけです。
また、人材育成などを通じて成長する点も、人的資源の大きな特徴です。
最近では、「人的資本経営」が注目されていますが、人的資本経営も人材を重要な資本・リソースとして、状況を明らかにする、また、育成に取り組んでいくという考え方になります。
一方で、近年、日本では少子化の影響で労働人口は急激に減少しています。また、終身雇用が崩壊するなかで、優秀な人材の獲得や定着、エンゲージメント向上も難しくなっています。
こうした時代に人的資源を有効活用するには、優秀な人材が「入社したい」「働き続けたい」と思える環境や体制、仕組みづくりなどが大切になります。
金銭(カネ)
お金(資金)は、ほかの資源の調達や活用をするうえで必要不可欠なものです。
企業経営で、財務・会計・キャッシュフローなどが重視されるとおり、資金がきちんと維持され、循環しないと企業経営は成り立ちません。
ビジネスを進めるうえでは、調達した資金が事業のなかできちんと回り、利益を生み出し続ける仕組みや状態をつくることは必須となります。
物的資源(モノ)
モノは、企業が保有する“物理的な資産”の総称です。具体的には、製品・サービスを生み出すための原材料・設備・機械・工場・倉庫・オフィスなどになります。
以下のような業種では、たくさんのモノを使って利益を生み出すことから、物的資源への投資や管理、有効活用が特に大切になってきます。
- 製造業
- 建設業
- 運輸業
- インフラ産業
一方で、最近増えているITやWeb業界、サービス業などは、物理的なモノを多く持たない業態です。
なお、企業の生産性を向上させるには、所有しているモノのメンテナンスなどを行ない、適切な生産計画のなかで高い稼働率を維持することが大切になります。
また、製造装置や物流施設、機械などは、機材によって性能や生産性が変わってくる一方で、新規購入などは莫大なコストがかかります。
したがって、モノを扱う業態では、メンテナンスや稼働率に加えて、モノへの新規投資の判断なども経営上で非常に重要になってくるでしょう。
情報
昔からいわれてきたヒト・モノ・カネに次ぐ4つ目のリソースが「情報」です。
リソースとしての「情報」は、単語のままの意味として顧客情報や競合の動きなどに関する情報などに加えて、モノに対比する意味で無形資産すべてを指して使われることもあります。
たとえば、以下のようなものも、情報に分類されることもあるでしょう。
- 企業の独自ノウハウ
- 仕入れ先の情報
- システム など
上記のような要素の重要性は、仕事の中で日々感じているはずです。
また、最近では、情報の一つとしてデータもあります。経済産業省でも、いまの時代を第4次産業革命と位置づけており、データの利活用が付加価値の源泉になるとしています。
インターネット上で多くの情報が取得できるようになるなかで、顧客情報に加えて、顧客の購買履歴、行動データなど、いわゆるビッグデータの活用が大切になっています。
こうした時代変化を見ても、ビジネスにおける情報リソースの重要性は、今後も高まっていくと考えられます。
参考:IT施策の動向について(平成28年7月)経済産業省 情報処理振興課
その他
リソースの代表的なものには「ヒト・モノ・カネ+情報」がありますが、ほかに以下のようなものも経営資源、リソース一種になります。
以下のリソースは、情報のなかに含めて表現されることもあります。
- 組織風土、組織文化
- スキル
- ブランド
- ビジネスモデル
- 知的財産(IP)
- 時間 など
上記のリソースには、明瞭な定量化や知覚が難しいものがあります。しかし、それでも、いまの時代における重要性は増していると考えてよいでしょう。
たとえば、各メンバーが主体的に課題解決や目標達成に取り組む“組織風土”があれば、先行き不透明な状況など臆することなく、能動的に新しいイノベーションの創出や新製品・サービスのリリースなどに挑戦していけるでしょう。
また、たとえば、ルイヴィトンやグッチ、また、ジブリやディズニーなどの事例を見れば、ブランドや知的財産(IP)の重要性なども、いうまでもないでしょう。
ビジネスにおけるリソース活用と基本
ビジネスにおけるリソース活用では、以下のようなことが基本ポイントになるでしょう。
必要なリソースを見積もる
まず、何かをするうえでは「どういうリソースが、どのくらい必要なのか?」を見積もる必要があります。
現実として所有している、また、調達できるリソースには、限りがあります。そのため、プロジェクトの目標から、必要なリソースを洗い出し、優先順位をつけることが大切です。
リソースを見積もるうえでは、「自社には、どのリソースが、どのくらいあるのか?」の現状分析も大切になります。
普段からシステムなどで一元管理をしていれば、現状分析も進めやすくなるでしょう。
必要なリソースを調達する
リソースの調達方法には、“社内”と“社外”があります。たとえば、「A事業部のBさんをCプロジェクトに参加させよう」というのは社内でのリソース調整です。
一方で、「新規で3名採用しよう」というのは社外からの調達になります。
管理職からすれば、上層部に提案・交渉して必要なリソースを確保するというのがリソース調達です。
また、経営層の視点では、社内のリソースをどういう優先順でどう配分するかの意思決定、また、社外から調達することが非常に重要な役割となります。
リソースを調達するうえでは、“コスト”のほかに“調達スピード”も大切になってきます。
たとえば、企業がDX推進プロジェクトを始めるうえで、IT人材が必要だと仮定します。そこで、「いまから1年かけて既存社員にIT教育をする……」では対応スピードが遅くなってしまうでしょう。
近年では、働き方改革などの影響で、フリーランスや副業で活躍する高度IT人材も増えるようになりました。こうした優秀な人材には、市場に出にくく報酬相場も高い傾向があります。
しかし、それでも、優秀層が早く欲しいのであれば、“社外から調達する”という判断も必要となるでしょう。
ほかには、“お金で時間を買う”という判断をして社外からリソースを調達する判断をすることもあるでしょう。
以前はモノであれば購入、ヒトであれば採用が主な選択肢でしたが、最近では、リソース調達においてリースやサブスクリプションサービス、アウトソーシング、業務委託や副業人材など、さまざまな選択肢が増えています。
既存のリソースを活用する
企業のなかには、うまく活用できていない設備や機械、人材が眠っていることも多いです。
そのため、リソース管理を進めるうえでは、「既存のリソースを有効活用できているか?」も必ず持っておきたい視点です。
既存リソースをうまく活用するには、先述のとおり各リソースの特徴・量・個数などを一元管理したうえで、リソースの情報を迅速に取り出せる仕組みづくりが必要となります。
ただ、リソースを維持するうえでは、メンテナンスや人件費などの費用が生じます。そのため、活用できていないリソースがあれば廃棄するという選択肢も考える必要があるでしょう。
リソース管理の仕方
リソース管理の方法やポイントは、対象リソースによって大きく異なります。本章では、対象リソース別に管理のやり方・ポイントを紹介しましょう。
ヒューマンリソースマネジメント
HRMや人的資源管理と呼ばれるもので、おもに人事部門が担当します。
人事部門の仕事というと、採用・教育・配置が注目されがちですが、自社の人材が組織に馴染み、活躍し、定着するための以下のような仕組みや環境づくりも大切になってきます。
- 公平かつ透明性の高い人事制度
- 多様な人材が活躍できる制度・環境
- 新人が早く組織に馴染み、即戦力になる仕組み(オンボーディング)
- 主体性や心理的安全性の高い組織風土づくり など
なお、人材資源を考える時間軸として、新卒であれば接触から入社まで2~3年かかることもあるし、さらに新人を一人前にして次世代リーダーまで育てるとなると5年~10年といった長い期間が必要となります。
近年では、少子化の影響が出始めたり、また、雇用形態の多様化なども企業の人的資源の確保に多くの影響を与えたりするようになりました。
こうしたなかで、適切なヒューマンリソースマネジメントを続けていくには、HRMが中長期的な取り組みであることを理解したうえで、自社の企業戦略に基づく必要な人材リソースを早く予測するなどの姿勢も必要になるでしょう。
物的資源のマネジメント
物的資源のマネジメントでポイントになるのは、「モノの量」と「モノの時間」を管理し、稼働率を上げて、利益を出していくことです。
たとえば、原材料・仕掛品・部品・工具などのモノが必要以上にありすぎれば、保管コストがかかってしまいます。
また、原材料が食品であれば賞味期限なども意識する必要がありますし、パソコンやサーバーなどのIT機器や工場で使う機械などを業者から借りていれば、リース期限も設定されているでしょう。
ほかには、工場で使う設備・機械の場合、メーカーによる定期メンテナンスがあれば、その間は仕事を休止せざるをえなくなります。
以上のように多種多様な物的資源を適切に管理するには、生産管理・在庫管理システムなどのIoT技術を活用し、一元管理していくことも大切です。
物的資源の管理としては、昔からERPソフトなどと呼ばれるソフトウェア領域があり、製造業などを中心に導入されてきました。
また、最近ではDX(デジタルトランスフォーメーション)によって、物的資源マネジメントにおけるIoT技術の導入事例やプラットフォームも増加傾向にあります。
自社に合う管理の仕組みを検討するうえでは、以下のような資料も参考になるかもしれません。
予算管理
予算管理とは、予算を作成し、また、実績とリンクさせて、管理を続けていくことです。予実管理や予実統制と呼ばれることもあります。
予算管理では、まず、予算策定で、自社の経営戦略に基づく以下のような数値目標を設定していきます。
- 売上予算
- 原価予算
- 経費予算
- 利益予算
そして、以下のようにPDCAを回しながら、お金の管理をしていくのが、基本的な流れです。
- 予算策定(Plan)
- 予算に基づき事業を実行(Do)
- 予算実績の分析(Check)
- 予算管理の改善(Action)
策定した予算を下方修正することなく達成できたかどうかは、監査や株主への説明でも重視されるポイントになります。予算管理は、企業の安定性・信頼性を高めるうえでも重要となるでしょう。
プロジェクトマネジメント
プロジェクトマネジメントとは、プロジェクトの目的・目標達成に向けて、各種リソースをやりくりし、成果を出すことです。
プロジェクトマネジメントでは、上記までで紹介した3要素のほかに、プロジェクトのタイムマネジメント(スケジュール管理)やタスク管理(進捗管理)、リスクマネジメントなども求められます。
プロジェクトマネジメントでは、たとえば、他部署のリーダーや取引先、業務委託フリーランス、お客様……と、さまざまな人との調整・交渉も必要となってきます。
そのため、日頃から信頼関係の構築につながるコミュニケーションを図ったり、バランス感覚を磨いたりすることなども大切です。
プロジェクトマネジメントを詳しく知りたい人は、以下の記事をご覧ください。
まとめ
リソースとは、企業経営に必要となる以下のような資源の総称です。
- 人的資源(ヒト)
- 物的資源(モノ)
- 資金(カネ)
- 情報
- その他(ブランド、組織風土、知的財産、業務ノウハウ……など)
ビジネスにおけるリソース活用の基本は、必要なリソースを見積もり、社内外から調達し、活用することです。
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