記事では、リーダーシップを発揮するうえでどんなコミュニケーション能力が必要か、また、リーダーに求められるコミュニケーションスキルの高め方について分かりやすく解説します。
リーダーに求められるスキルは多岐に渡りますが、中でもコミュニケーション能力はリーダーシップを効果的に発揮する上で欠かすことのできないスキルです。
どんな能力が必要で、どう高めればいいか、参考になれば幸いです。
<目次>
- リーダーとリーダーシップの定義、マネジメントとの違い
- リーダーシップを発揮するために求められるコミュニケーション
- リーダーシップに必要なコミュニケーションスキルを高める方法
- リーダーのコミュニケーション力を高める研修の紹介
- まとめ
リーダーとリーダーシップの定義、マネジメントとの違い
記事の最初では、前提となるリーダーとリーダーシップの定義、また、リーダーシップとマネジメントの違いを解説します。
リーダーとリーダーシップ
冒頭でも少し触れましたが、リーダーとは組織の先頭に立ってビジョンを示し、チームの仲間のモチベーションを高め、組織のゴールに向けてチームを導いていけるスキルと人間性を備えた人物を指します。
そんなリーダーについて誤解を持っている人もいます。以下では、リーダーに対するよくある誤解をあげます。
・リーダーは生まれつきのものである
→ リーダーシップは、生まれつきの能力ではありません。経験やトレーニング、学習によって開発することができます。
・リーダーは完璧な人物である
→ リーダーは完璧な人物だと考える人もいます。しかし、リーダーも人間であり、完璧ではありません。自分の弱点を認識し、改善したり他の人に任せたりすることが求められます。
・リーダーは孤独である
→ リーダーは、組織内で孤独な立場にあるというイメージを持つ人も少なくありませんが、これは誤解です。リーダーは、メンバーと協力し、意見を交換することで、目標達成に向けてチームを導いていける人物です。
リーダーシップとマネジメントの違い
リーダーシップとマネジメントは、いずれも組織の成果や目標達成に対して大きな影響があるという点では共通しています。
そのため、リーダーシップとマネジメントは同じような意味合いで使われるケースが多いのですが、両者は厳密な概念としてはまったく異なるものです。
「リーダーシップ」とは、「目標を決めて、そこに向けて自分や他者を鼓舞する力」というリーダーが備えておくべき資質やスキルの事を言います。
リーダーシップにはさまざまなもの含まれますが、一般的には以下のような要素が必要とされています。
- ビジョン:目指すべき方向性や理想像を明確に示すこと
- コミュニケーション:ビジョンを伝えるだけでなく、他者の意見や感情にも真摯に耳を傾けること
- インフルエンス:自分の考えや行動に説得力や影響力を持たせること
- モチベーション:自分や他者のやる気や情熱を高めること
- チームワーク:協力して目標に向かう関係性や雰囲気を作り出すこと
誤解されやすいのですが、リーダーシップは、権限や役職、部下・メンバーがいるかどうかで発揮されるものではありません。
役職や部下メンバーの有無に関わらず、自分自身を目的やビジョンに向かってけん引していく「セルフリーダーシップ」は全てのビジネスパーソンに求められるものです。
そして、セルフリーダーシップを十分に高め、自分自身をしっかりと導けるようになった人は、徐々に周囲の人=他人を動かすリーダーシップを発揮できるようになるのです。
続いて、リーダーシップに対してマネジメントは、「目標に到達するまでのプロセスを決めて実行していく力」の事を言います。
マネジメントには、企業や組織が目標を設定して人材や資金などの経営資源を有効活用し、リスク管理を行いながらミッションの達成を目指すという極めて重要な役割があります。
マネジメントの具体的な機能には、主に以下があります。
- 目標設定:組織やチームが達成したい具体的な成果や期限を明確にする
・プロセス設計:目標に到達するために必要なタスクや役割分担、進捗管理方法などを決める
・プロセス実行:プロセス設計に沿ってタスクを実施し、問題が発生した場合は対処する
・プロセス評価:プロセスの効率性や効果性、改善点や課題点などを検証し、フィードバックする
マネジメントもリーダーシップと同じく、まずは自分自身をマネジメントする=セルフマネジメントができて初めて、その次に自分以外の他の人のこともマネジメントしていけるようになる、というのが原則です。
ここまで概念としてのリーダーシップとマネジメントの違いを説明しました。
これらをひっくり返すようですが、ビジネス場面や組織で使われる実務的な意味での「マネジメント」、また、組織を引っ張る幹部や管理職を指す「リーダー」という言葉は、2つの概念がごっちゃになった言葉です。
どちらも、「マネジメント=目標を設定して成果をあげるプロセスすべて」、「リーダー=マネジメントをする人」という意味で使われることが大半であり、本記事でもそういう意味合いで使っていきます。
リーダーシップとコミュニケーション
コミュニケーションは、リーダーシップを発揮するために欠かせない機能であり、優れたリーダーとなるための必須スキルです。
セルフリーダーシップの段階では、リーダーシップは自分の中で働く割合が多いでしょう。
自分で意思決定して、自分自身を鼓舞する。自分自身の中で対話したり、コミュニケーションしたりする形です。
しかし、そこから他人に対するリーダーシップを発揮しようと思うと、そこには「言葉」が必要です。
もちろん信頼関係の根底となる人格や決断力が必要であることは変わりませんが、他人に伝えたり、他人を動かしたりするたうえでは、「言葉」が必要になります。
リーダーがコミュニケーションスキルを磨けば、より円滑な人間関係が築ける、部下から信頼されやすくなる、メンバーのモチベーションが上がる、といった様々な恩恵が生まれます。
リーダーが効果的なコミュニケーションの技術を身につけて活用することは、チームのパフォーマンスを高めることにつながります。
では、リーダーシップを発揮するためには、具体的にどんなコミュニケーション能力を求められるでしょうか。次章で詳しくお伝えします。
リーダーシップを発揮するために求められるコミュニケーション
本章では、リーダーシップを発揮する上で求められるコミュニケーションについて解説します。
なお、ここでいう「リーダーシップ」はビジネスにおける実務的な意味合いであり、リーダーシップの要素とマネジメントの要素、双方で求められるコミュニケーションを含んだものです。
明確な目標と方向性を示す
アメリカの経営学者チェスター・バーナードは、組織が成立するためには、「共通目的」「貢献意欲」「コミュニケーション」という3つの条件(組織の三要素)が不可欠であるとしています。
リーダーのコミュニケーション能力は、組織の三要素を実現するために大きく影響します。具体的には、以下のような役割があります。
- 共通目的:リーダーが組織の目指すべきビジョンやミッションを明確に示し、浸透させることで、チーム全体が一致団結して行動できるようにします。
- 貢献意欲:リーダーは、チームメンバーの成果や努力を承認し、適切なフィードバックや支援を行うことで、自己実現感やモチベーションを高めます。
- コミュニケーション:リーダーは、自分の考えや情報を明確に伝えるだけでなく、フィードバックや意見にも耳を傾けることで、組織内の信頼関係や協調性を築きます。
上記の通り、リーダーのコミュニケーションは、組織を成立させる中核となります。そのなかでも、「共通目的」を指し示すことは、リーダーが初めになすべき重要事項です。
チームの方向性やゴールがはっきりしていない状態では、疲労感や閉塞感がチームに蔓延し、モチベーションも上がりません。
自分たちがどこに向かっているのか。リーダーがビジョンと方向性を示すことで、チーム・組織全体が、目的意識を持って行動できるようになります。
相手を信頼して仕事を任せる
自ら先頭に立って行動することは大切ですが、先回りするあまり自分ですべての仕事をやってしまうことは問題です。
周囲の仲間に仕事を任せることができなければ、相手の成長は望めず、さらに相手は「自分が信頼されていない」と感じて、リーダーに不信感を持ってしまうことにもつながります。
思い切って仕事を任せる勇気がリーダーには求められ、そのために必要なのが仲間を信頼するということです。
リーダーから信頼されていると思えるからこそ周囲は目標達成のために努力できますし、迷ったときはリーダーに相談できるという安心感を得られるのです。
フィードバックの提供
周囲の仲間に率直なフィードバックを行うことも、リーダーに必要なコミュニケーションです。
組織の3要素の中でも紹介した通り、フィードバックは、組織に信頼関係を生み出すものであり、また、相手の成長を促し、目標に向けて改善を行うために必要不可欠なものです。
傾聴と共感
リーダーには、仲間と相対するときに、傾聴し共感することも求められます。自分を理解されていると感じることで、相手はより高いモチベーションを維持することができるようになるでしょう。
問題解決のための議論
リーダーは、チームの仲間との意見交換を通じて、問題解決に向けた議論を行う必要があります。仲間のアイデアを尊重し、共同して問題解決策を発見することもリーダーにとって重要なことです。
情報を共有する
リーダーは対話を通じて、情報を引き出し、必要な内容をチームに共有することにも注意を払います。
チーム内で情報共有が促進されると、「だれがどんなことで困っているのか」「どんな支援が欲しいのか」などが一目瞭然となり、チームの生産性は大きく向上します。
オープンで透明なコミュニケーション
リーダーは、オープンで透明なコミュニケーションに注意を払う必要があります。チームの仲間がリーダーと自由に意見交換できる環境を作ることで、組織内のコミュニケーションがスムーズになります。
相手を承認する
人はみんな人から認められたいという、承認欲求があります。優れたリーダーは、承認欲求を満たすことに対しても敏感です。
相手が残した結果は勿論、その為の取り組んできたがんばりや、大切にしている価値観を承認しながら、仲間との信頼を積み上げていくことができます。
リーダーシップに必要なコミュニケーションスキルを高める方法
リーダーが優れたコミュニケーション能力を備えることで、チームは、プロジェクトの進行や目標達成で高いパフォーマンスを発揮できるようになります。
今時点で自分のコミュニケーション能力に自信がないリーダーも心配はありません。コミュニケーションスキルは、字の通り「スキル」であり、トレーニングによって向上させることができます。
本章では、効果的なリーダーシップを発揮するためのコミュニケーションスキルを高めるコツを紹介します。
1.人格を磨く
コミュニケーションを効果的にするために何より必要なのは信頼関係です。信頼関係がない状態でコミュニケーションのテクニックを駆使しても効果は知れています。
逆に、接する頻度が多い社内やパートーナーであれば、まずは信頼関係と実務能力があれば、多少の言葉選びがうまい/下手などを超えてしっかりとリーダーの言葉は伝わっていくでしょう。
リーダーが人格を磨くに当たっては、『7つの習慣🄬』の教えが大いに参考になります。『7つの習慣🄬』は、スティーブン・R・コヴィー氏が提唱した、人格主義に基づいた成功のための原則です。
人格主義とは、不変の原則に基づいた優れた人格の養成を目指す考え方で、「誠意」「謙虚」「勇気」「忍耐」「勤勉」「節制」などがその代表例です。
『7つの習慣🄬』では、自分自身に影響力を及ぼす「私的成功」から始まり、他者と関わる「公的成功」へと進み、最後に自己更新する「刃を研ぐ」で完成する全部で7つの習慣が紹介されています。
人格を磨くうえでは非常に参考になりますので、読まれことがなければぜひご一読ください。
2.周囲をよく観察する
普段から気を付けて周囲を観察する習慣を持つことも、コミュニケーション能力の向上につながります。
仲間の様子・振る舞いを注意深く観察すると、「リーダーである自分にどのような関わり方が求められているか?」少しずつ分かってくるでしょう。
相手を観察することで、「あの人は〇〇に関心があるんだ!」「いまこんなことを感じているのか?」といった発見もできます。
相手の関心や状況に合わせてコミュニケーションをする大切なヒントであり、より深い信頼関係や納得を生み出す会話にもつながります。
3.お手本を見つけて真似する
自分にとってしっくりくるようなコミュニケーションのお手本を見つけることも、リーダーのコミュニケーション能力向上に効果的です。
最近ではYouTubeやTEDで模範となるようなコミュニケーションのお手本もたくさん見つけることもできます。
関心をもってお手本をチェックし、プレゼンや演技のコツなどを自分のコミュニケーションに応用すると良いでしょう。
4.フィードバックの練習
フィードバックは、仲間の成長やチームの生産性向上にとっても必要不可欠なものです。質の高いフィードバックをするスキルを磨くためには、練習が必要です。
自分の意見やフィードバックをメモに書き出し、機会を見つけて実際に伝える練習をすることが有効です。
5.議論のファシリテート
リーダーは、問題解決に向けた議論などを主導する必要があります。率直な意見交換、また、参加者の納得を得られる意思決定をするためには、いくつかのポイントがあります。
たとえば、話し合う前に議論のルールを決める、話し合いの目的やアジェンダを明確にする、参加者に平等に発言の機会を提供するなど、ファシリテーションと呼ばれるコミュニケーションの技術が参考になるでしょう。
6.リーダーシップ研修を受講する
外部の研修会社などで実施しているリーダーシップ研修やセミナーを受講することも効果的です。
研修会社が提供しているリーダーシップ研修は様々ですが、リーダーのコミュニケーションに関するものとしては、聴く・褒める・叱る・質問する・伝える・指示を出す・報告を受ける・会議するといった基本となるコミュニケーション力の向上、また、ティーチング・コーチングといったプログラムが用意されている場合が多いです。
HRドクターでは、目的に応じたリーダーシップ研修の内容や代表的なリーダーシップ研修の提供企業を解説する記事を提供していますので、興味があればご覧ください。
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リーダーのコミュニケーション力を高める研修の紹介
記事の最後では、HRドクターを運営する研修会社ジェイックが提供するリーダーのコミュニケーション力を高める研修プログラムを紹介します。
「7つの習慣®」研修
前章でも触れた書籍『7つの習慣®』の原則に基づいて、リーダーシップの根底となるセルフリーダーシップを身に付ける、また、効果的なコミュニケーションの原則や周囲との相乗効果を生み出すポイントなどを具体的な事例や演習を交えて学ぶ研修プログラムです。
「7つの習慣®」研修では、例えば、第5の習慣「まず理解に徹し、そして理解される」という共感的コミュニケーションの習慣で相手の気持ちや立場を深く理解しようとする具体的な技術を身に付けることも可能です。
また、研修の最後には、「7つの習慣®」を日常生活や仕事にどう活かすかを自分で考えるアクションプランを作成し、これを実践することで人格が高まり、真のリーダーとして成功することを目指します。
セルフリーダーシップや周囲との人間関係構築など、リーダーに不可欠なヒューマンスキルを会得するためのジェイックオリジナル「7つの習慣®」研修を提供しています。
以下のURLより詳細を案内しているので是非ご覧ください。
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また、1名から参加できるオープン講座もありますので、ご興味あればご覧ください。
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デール・カーネギー『人を動かす』リーダーシップ&コミュニケーション研修
デール・カーネギー『人を動かす』リーダーシップ&コミュニケーション研修は、『人を動かす』などの著書で世界的に有名なデール・カーネギーの教えを基にしたビジネス研修プログラムです。
書籍名の通り、信頼関係の作り方、自分の意見や依頼を納得してもらうための原則、相手の行動や意見を変えるためのノウハウなどを、実践的なトレーニングを通じて身に付けることができます。
過去にはアメリカ大統領をはじめとする数々の著名人やビジネスリーダーが受講し、全世界で900万人以上の受講者を誇るトレーニングです。
「リーダーとしてのコミュニケーション技術を磨きたい」「管理職のマネジメント力を高めたい」と思われるようでしたら、ぜひ下記より資料をご覧ください。
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デール・カーネギー『人を動かす』プレゼンテーショントレーニング
デールカーネギー プレゼンテーショントレーニングは、スピーチの名手であったデール・カーネギーの体系に基づき、プレゼンテーションで人を動かすためのノウハウを体系立てて、また実践的に学べるトレーニングです。
プログラムでは、説得力ある言葉遣いと声の使い方や質疑応答や異論に対処する方法といった、リーダーが周囲に影響を与えるために重要となるプレゼンテーションのメソッドを学びます。
例えば、「マジック・フォーミュラ(魔法の公式)」と呼ばれる話し方のプロセスを使って、ストーリーを語る方法を練習します。
また、トレーニングの中では、自分のプレゼンテーションをビデオに撮り、映像を観ながらパーソナルコーチングを繰り返し受けることができ、研修が終わったときに、実際に自分のプレゼンテーション力が確実に向上します。
まとめ
記事では、リーダーシップとコミュニケーションをテーマにお伝えしました。
コミュニケーションは、リーダーシップを発揮するための中核的な機能であり、優れたリーダーとなるために欠かせないスキルです。
このように、リーダーがチームのパフォーマンスを高め目標を達成するために、不可欠なコミュニケーションですが、意識や行動を変えることで向上させることができます。
記事で紹介したやり方なども参考に、ぜひリーダーとしての影響力を磨いてください。