ユニクロ、キリン、カネボウ化粧品、野村證券などの大手企業も導入している目標設定シートとは何か、再現性のある目標達成を実現する目標設定シートの使い方やおすすめの書き方を紹介します。
目標設定シートは「原田メソッド」と呼ばれる目標達成手法で使用されるツールです。原田メソッドでは、「オープンウィンドウ64」「日誌」「ルーティンチェック表」といったツールを実践しながら目標達成に取り組んでいきます。
なかでも「原田式目標設定シート」は、原田メソッド提唱者の原田隆史氏が成功者たちの行動や習慣から知見を得て生み出した、原田メソッドの中核となるツールです。記事では、『原田式目標設定シート』の仕組みや構成をお伝えします。
原田メソッドについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
また、目標達成シート、マンダラチャートについて知りたい方は、こちらをご覧ください。
<目次>
目標設定シートとは?
最初に目標設定シートの特徴と大まかな概要を紹介します。
目標達成を後押しするツール
「目標設定シート」は、原田氏がハイパフォーマーたちを研究した結果明らかになった、成功者たちの成功プロセスを落とし込んだものであり、原田メソッドのコアとなるツールです。
「目標達成の技術」である原田メソッドでは、ツールを活用して目標達成を支援します。「ツールの活用」と聞くと、「ツールだけでそんな成果が上がるの?」「目標達成できるの?」と思うかもしれません。
しかし実際に原田氏は、一連のツールを用いて、これまで5万社10万人のビジネスパーソンの目標達成に貢献してきました。
本記事で取り上げるツールの正式名称は「長期目的・目標設定用紙」ですが、目標設定シートと呼ばれることもあるので、本記事内では「目標設定シート」と記載します。
目標設定シートを作る目的
原田メソッドで目標設定シートを作る目的は、もちろん目標を達成するためです。
原田氏は「成功は技術である」と話しています。成功の技術は、適切な考え方ややり方を知り、練習を繰り返すことで、誰もが身に付けられる。つまり、成功は運や偶然によるものではなく、誰もが実現できるということです。
目標設定シートには、成功者やハイパフォーマーたちが高い目標に取り組んだプロセスが落とし込まれています。目標設定シートを作成し、実践する中で、私たちも成功者たちのように目標達成に近づくことができるのです。
目標設定シートの効果
目標設定シートを作ることで、どのようなメリット・効果があるのでしょうか?
目標達成に必要なことがわかる
目標設定シートを作ることで、文字通り目標達成に必要なことが明確になります。目標達成シートでは、目標を立て、目標達成のための行動を洗い出します。
さらに、自己分析をし、自分に合った成功・失敗パターン、取り組み方などを明確にすることができます。
漠然と目標を作るだけでは行動すべきことがわかりませんが、シートを活用することで目標達成に必要なことが明確になり、アクションを起こしやすくなるのです。また、「絵に描いた餅」にならないような対策も盛り込まれています。
人材育成に役立つ
目標達成シートは人材育成に役立てることもできます。人材育成においては、目標を立て、それを達成していくことが重要です。
さらに、目標達成シートでは個人の成長だけでなく、組織内で共通認識を作ることができます。部署のメンバーで一緒に目標達成シートを考えることで、お互いの認識をすり合わせることができます。
目標設定シートの書き方
本章では、目標設定シートの書き方を解説します。
原田式目標設定シートの構成
原田メソッドは目標設定シートを作成することで、目標達成の意味付け、目標達成までの道筋づくり、実行のシミュレーション等を実施して、達成精度を高めていきます。
目標達成シート・目標設定シートは以下の図のように、「目的・目標の設定」「行動計画」「自己分析」の3つの要素で構成されています。
それぞれの要素を解説していきます。
目的・目標の設定
まず一番はじめに行うのが、「目的・目標の設定」です。
目的・目標設定のポイント
目的・目標の設定を行わなくては、そのために必要なこともわかりません。まずは以下のポイントを抑えながら目的・目標を設定しましょう。
1つめのポイントは、「心の底から価値を感じる・達成したいと思える目標にする」ことです。
自分が価値を感じる目標であれば、目標を見ただけでワクワクし、やる気が高まり使命感も生まれます。その結果、目標達成の取り組みにも主体的に臨むことができるようになります。
2つめは、「目標達成までの期日を明確にする」ことです。目標達成の期日が明確になることで、「この日までに、これとこれとこれを行う」というように、モチベーションを高めながら取り組むことができるようになります。
3つめは「達成できた/できなかった」を明確に判断できる表現にすることです。
達成の可否が曖昧だと、人はつい「頑張ること」「努力すること」などが目標だと錯覚しがちです。これでは目標達成よりも前に、努力したことで満足してしまうかもしれません。
だからこそ、「3月の売上を増やす」を「3月の売り上げを前年比110%にする」のように、数値化・指標化された目標にしましょう。達成できたか/できなかったのかをひと目で判断できる表現にすることで、目標達成にブレずに突き進む準備が自ずと整います。
■達成目標に意味付けする
目標達成シート・目標設定シートの効果を最大限に発揮するためには、「何のためにその目標を達成したいのか?」を明確にして、腹落ちさせることが重要です。
「心の底から価値を感じる・達成したいと思える」目標であればこそ、目標達成に本気で取り組むことができますし、計画を実行する途中でぶつかる壁や困難を乗り越えることができるでしょう。
考えるうえでポイントとなるのは、目標を達成すると、誰にどのような利益や価値がもたらされるのかを掘り下げることです。そのために原田氏が考案したのが、「目的・目標の4観点の考え方」です。
■目的・目標の4観点
「目的・目標の4観点」は、「自分/社会・他者」「有形/無形」という2つの軸を組み合わせた4つの視点で、「目標を達成することで得られるメリット」を考える方法です。
例えば、「私は2022年8月31日までに新規契約を20社獲得する」という仕事上の目標があったとします。これを目的・目標の4観点で考えるとどうなるでしょうか。以下のようになるでしょう。
「自分-無形」⇒みんなの前で表彰されて揺るぎない自信が生まれる
「社会・他者-有形」⇒彼女(彼氏、友人、家族)が行きたがっていた北海道へ一緒に旅行に行ける
「社会・他者-無形」⇒20社のお客様がサービスを利用して採用に成功する
このように達成目標を4観点と結びつけて捉えなおすことで、自分にとっての達成する価値が明確になります。たとえ会社から落ちてきた目標であっても、4観点を通じて自分にとってのやりがいや価値を見出すことで、目標達成力が2倍、3倍、4倍にも高まります。
実際に目的・目標の4観点で考える際には、「目標達成で得られるもの、得られそうなもの」をなるべく多く書き出すのがよいです。その上で、自分にとって特に価値が大きいと思うものをピックアップして達成目標の表現に反映します。
■目的・目標の記載例
4観点を踏まえて目標の記載例は以下のようになります。
「私は2022年8月31日までに新規契約を20社獲得して、新人章を獲得して自分に自信を持ち、インセンティブで彼女と旅行に行く」
達成目標を文章にできたら、口に出してみて、自分自身がしっくりくるかを確認すると良いでしょう。
目的目標の4観点を考えることで、「私は2022年8月31日までに新規契約を20社獲得する」という目標が、自分にとって価値がある、本気で達成したいと思う目標になるはずです。
行動計画の作成
目的・目標が設定できたら、次に目標を達成するための行動計画を作成します。
目標設定シートの「行動計画」の部分に、目的・目標達成に必要な具体的な行動を記述します。原田メソッドでは、「ルーティン行動」と「期日行動」の2つに分けて行動計画に設定します。
■目標達成に近づくための「期日行動」
期日行動は、達成目標からブレークダウンして「いつまでに何をやるか/何を実現するか」を決めたものです。
例えば「2022年8月31日までに、有料サービス利用顧客を新規で20社増やす」という目標であれば、「2月1日までに販促部門に見込みリストの共有を依頼する」などが期日行動に当たります。
このように、目標に至るまでのステップを期日行動に設定し、期日通りにやりきることが目標達成を後押しします。
■成功の習慣を作る「ルーティン行動」
「ルーティン行動」とは、目標達成のために重要な「毎日繰り返す行動」をいいます。「2022年8月31日までに、有料サービス利用顧客を新規で20社増やす」という目標に対して、「見込みリストの顧客20社に毎日電話掛けをする」などがルーティン行動です。
ルーティン行動を設定するうえで重要なのは、その行動によってどんな効果が期待できるかを明確にすることです。もしルーティン行動を継続しても期待する効果が出ないようであれば、再検討することが必要になります。成果につながるルーティン行動を継続することが大事です。
■行動計画の記載例
行動計画の記載例は以下です。
参照:株式会社原田教育研究所(https://harada-educate.jp/pdf/gro-with.pdf)
このように、重要度が高い順にルーティンで行うべきことを書くとともに、何日までに何を行うかという期日行動を記載します。
目標達成に重要な自己分析
次に、自己分析を行います。目標を達成するのも、達成できずに終わるのも、自分次第です。だからこそ、自己分析が重要なのです。原田氏も、目標達成の最大の敵は「自分自身」だと言っています。
目標設定シートの「自己分析」の項目では、自分の強みや弱み、活用できる資源を把握することで、万全の備えを講じたうえで目標達成に臨める状態を作ることができます。自己分析の具体的なステップを以下で解説します。
■支援者と支援内容の設定
「支援者」とは、目標達成のために協力や助言が欲しい相手を指し、「支援内容」とは支援者に支援して欲しい具体的な事柄を示します。
自分の支援者になって欲しい人の名前と支援内容を書き出して、その人と普段から良い関係を築いておくなど、普段からの準備が大切です。
必要であれば、ルーティン行動や期日行動に反映することもポイントです。たとえば、「上司」が支援者で、「施策のアドバイスをもらう」ことが支援を受けたい内容であれば、「週1回(〇月〇日)、上司に進捗状況、計画対比で上手くいっている点、アドバイスが欲しい点を報告する」といった形です。
支援を求める上では、自分が目標達成するうえで相手にどんな良いことがあるかも整理しておくとよいです。4観点の項目に戻って、自分の目標達成によって相手にどんなメリットが生じるのかを考えてみましょう。
■成功・失敗のパターンの分析
いつもハイパフォーマンスを出す人はセルフマネジメントが得意で、自分自身の「良いコンディション」を意図的に作り出していますし、自分の勝ちパターンを知っています。だからこそ自分の成功・失敗のパターンを分析しておくことがとても大切です。
良いコンディションを意図的に作り出すためのステップは以下の通りです。
1)これまでの人生を振り返り、最高の結果になった経験を5つ書き出します。
2)最高の結果につながった原因を、以下の4つの観点で分析します。
- 心:モチベーションや精神状態
- 技:専門知識や仕事のスキルなどの習得状況
- 体:体力や健康面の状態
- 生活:私生活など仕事以外の時間の過ごし方
3)分析した結果をシートの「成功・強みの分析」に書き出します。これが自分にとっての成功のコツ・強みとなります。
■予想される問題点の洗い出しと事前対策
自分にとっての成功と失敗のパターンがわかってくると、目標達成に向けたアクションの実行精度が大きく向上します。さらに、事前に備えておくことで、不安や心配が取り除かれ、行動にも集中できるようになります。
上記と同様のステップで、今度は上手くいかなかった経験で置き換えて考えてみましょう。自分がうまく行かない時のパターンを心・技・体・生活、4つの観点で分析し、「失敗・弱みの分析」として書き出します。
自分が失敗しやすいパターン・弱みを整理すると、目標達成が失敗するパターンが分かってきます。心・技・体・生活の4観点で予想される問題点、失敗パターンに対して、それぞれの問題点に対する解決策、予防策も考えて書き出します。1つの問題点に対する解決策は、1つとは限りません。考えられるだけの解決策を挙げるようにしましょう。
失敗の時、どう切り抜けたのか?失敗からどう立ち直ったのか?なども、解決策のヒントになります。
■自己分析の記載例
ここまで見てきた自己分析の記載例は以下です。
参照:株式会社原田教育研究所(https://harada-educate.jp/pdf/gro-with.pdf)
このように、心・技・体・生活においてそれぞれ強みや弱み、問題点、解決策について書き出します。さらに、目標達成のための支援者や支援内容も優先度順にまとめます。
■期日行動とルーティン行動への落とし込み
成功パターンと失敗パターンが見えてきたら、支援者と支援内容のブロックでやった際と同じように、期日行動やルーティング行動に落とし込みます。
たとえば、以下のようなイメージです。
〇月〇日 骨休みにサウナへ行ってリフレッシュする
〇月〇日 上司の〇〇さんに中間報告する
毎日24時には就寝して、睡眠時間を6時間以上確保する
毎日、朝・昼・夜の3回、達成目標と目的・目標の4観点を見て、達成に向けた意欲を高める
まとめ
原田メソッドの目標設定シートは、成功者やハイパフォーマーたちの成功のプロセスが具体的に落とし込まれたツールです。目標達成シートを活用することで、私たちは、必要な手順をブレークダウンしながら道筋を立てて目標達成に近づいていくことができます。
目標設定シートを実践するうえでは、シートに書き込む内容や項目の意味の理解を深めることが大切です。そして、繰り返し実践することで、目標達成に必要な知識やスキルが磨かれ、「成功の習慣」を身に付けていきましょう。
HRドクターを運営する研修会社ジェイックでは、目標設定シートの作り方だけでなく、実践の仕方、考え方をお教えする、そして、原田メソッドを身に付ける研修を行っています。お気軽にご相談ください。