傾聴とは、相手の話を深く聴くときに用いるコミュニケーション技法です。
仕事で成果をあげるうえでは、コミュニケーションを通じて相手(お客さま・メンバー・上司など)と信頼関係を築くことが重要です。そして、信頼関係を築くうえで役立つのが「傾聴」です。傾聴と普通の「聞く」はどう違うのでしょうか。また、傾聴力は、どうすれば高められるでしょうか。
本記事では、まず、傾聴の概要と3つの種類、傾聴力がビジネスで大切な理由を解説します。傾聴力を高める研修を提供する研修会社としての知見も踏まえて、傾聴力を身につけるために実践しできるトレーニング方法も紹介しますので、参考にしてください。
<目次>
傾聴とは?
傾聴力は、相手の話を深く聴くときに用いるコミュニケーション技法のことです。傾聴という場合、私たちが日常的によく使う「聞く」ではなく、「聴く」の漢字を用います。傾聴の具体的な特徴は、「聞く」との違いを知ることでイメージしやすくなります。
普通の「聞く」と「傾聴」の違い
まず、小学館の「日本国語大辞典」では、「聞く」を以下のように解説しています。
- 音を耳で感じる取る
- 自然に耳に入ってくる
- 聞いて知る
上記の解説を読むと「聞く」は、自分のまわりに生じている音や話が「耳に入ってくる」状態と解釈できます。一方で、「傾聴(聴く)」は、受動的に聞くのではなく、能動的に聴く姿勢を指し、相手と深いコミュニケーションを取るための聴き方です。
たとえば、あるメンバーが「資格試験に不合格だったこと」と上司に報告したと仮定します。不合格を報告した場合、上司のスタンスが「聞く」と「聴く」のどちらかで、そのあとの反応やコミュニケーションの取り方が以下のように大きく変わってくるかもしれません。
- ・「聞く」:
- ⇒不合格だったという「事実(情報)」を知った状態
- ⇒「報告ありがとう、次も頑張ってね!」でサラッと会話が終わることも……
- ・「聴く」:
- ⇒不合格にともなう相手の「悔しさ・悲しみ」などの気持ちにも共感する状態
- ⇒「あんなに頑張ったのにそれは悔しいね。私はこれからも応援しているよ……。」と、次につながるフィードバックなどを行える
傾聴の目的
傾聴の目的は、相手の話に耳と心を傾け深く理解することで、相手との良好なコミュニケーションを実現することです。
傾聴は、単に相手の話を聞くだけでなく、言葉の裏にある本当の気持ちや意図を読み取ろうとします。これにより、相手との信頼関係が生まれ、Win-Winを実現するための基盤となる人間関係が構築できます。また、傾聴を通じて、相手の立場に立った適切な対応が可能になったり、部下のモチベーションが高まったりするといった効果も期待できるでしょう。
傾聴は、相互理解と信頼関係の構築を通じて組織内外との好ましいコミュニケーションを実現する、ビジネスで成果をあげるための大切な能力です。傾聴の具体的なメリットは、後ほどの章でも詳しくお伝えします。
傾聴が有効な場面
傾聴はもともと、看護やカウンセリングでおもに使われてきた技法です。具体的には、患者や相談者の悩みに寄り添い、安心して話ができる環境を整える場合に使われてきました。
また、傾聴は、ビジネスシーンにおいて、相手の話に耳を傾けて信頼関係を築きながら、相手の本音を引き出すことに役立つものです。ビジネスでは、以下のような場面で傾聴が有効です。
- 初回商談(ヒアリング)
- 部下との1on1
- パートナーや顧客との調整、交渉
- 謝罪やお詫び
- 感情的な対立の解決
傾聴は、相手の感情などまで含めて深い理解をする、信頼関係を構築する・深めることが必要な場面で特に有効なものです。
ロジャーズの三原則
積極的傾聴を提唱したカール・ロジャーズは、傾聴において、以下の3つが重要であるとしています。
共感的理解
共感的理解とは、相手の話を「相手の立場に立って共感しながら理解する姿勢」です。
札幌学院大学大学院臨床心理研究科・安岡警氏は、共感的理解とは「相手の話を傾聴・理解をおしすすめる過程で生じる『内部にジーンとくる体験』」としています。共感的理解は、「耳」で聞くよりも「心」で聴き、相手の感情を味わう感覚でもあります。
相手の感情に同調する必要はありませんが、相手の感情を受け止める、想像することが大切になります。
無条件の肯定的関心
傾聴では、相手の話に好き嫌いや善悪の評価を入れずに受け入れることが必要です。
相手の話を否定することなく、どうしてそのような考えに至ったのかなどの背景に関心を持ちましょう。肯定的関心を示すことで、話し手は「自分の話が受け入れられている」と安心できます。
なお、共感的理解と同様に、相手の話を受け入れることと、相手の意見や考えに賛同することは異なります。相手に賛同しなくても、「あなたはこう思っているんですね。なぜですか?もっと詳しく聞かせてください」と受け入れることが肯定的関心です。
自己一致
自己一致は、心理学では「実感と認識の一致」や「純粋性」といわれます。話し手の深い考えや感情をくみ取るには、聴き手自身も自分の感情をごまかそうとしない姿勢が必要だとされます。
自己一致とは、聴き手の心が安定していて、ありのままの自分を受け入れ、虚勢的や防衛的にならずに率直な気持ちで相手と向き合えている状態を示します。
傾聴を行なう際には、話し手の気持ちを傷つけたり、相手の話の展開を阻害したりしない範囲で、質問などをすることも必要です。たとえば、相手の話がわかりにくければ「◯◯の部分が少しつかめないのですが、それは◯◯ということですか?」といった質問で真意を確認することも大切になります。
フラットな状態で相手の話を受け入れ、ときには深掘りをするうえでは、聴き手が自己一致の状態であることが大切だということです。
3種類の傾聴とは?
傾聴には、3種類の段階があります。それぞれの状態を詳しく見ていきましょう。
受動的傾聴
受動的傾聴とは、相手の話に耳を傾け、真摯に受け止める状態です。具体的には、相手が自分の考えや内面を話しやすいように、「相手のために聴くこと」に意識を置きます。
そのうえで、目を合わせたり、話の流れに合わせて相づちをうったりすることで、相手が話しやすい環境が整っていくでしょう。
反射的傾聴
受動的傾聴より一歩踏み込んだものです。具体的には、以下のような方法で「自分が相手の話を聴いていること」を伝える傾聴の状態です。
- オウム返し
- 別な言葉での言い換え
- 相手の話の要約 など
聴き手が話し手の内容・表現を繰り返すと、相手に共感理解を示せます。こうした反応を見た話し手は、「自分の言いたいことをちゃんと理解してくれている」と実感できます。
結果として、受動的傾聴よりも信頼関係の構築が可能になるのが反射的傾聴です。
積極的傾聴
受動的傾聴・反射的傾聴より、さらに一歩踏み込んだものが積極的傾聴です。積極的傾聴は、聴き手が主体的に働きかけて、話し手を深く理解する方法になります。
積極的傾聴が目指すところは、話し手の本音や思考を促す深いコミュニケーションです。真摯な姿勢とともに高度なテクニックや経験が求められますが、積極的傾聴を実践することで、相手との信頼関係を構築しやすくなります。
そのため、積極的傾聴は、メンバーとの対立解消や1on1、商談内プロセスなどで特に効果的なものとなります。
具体的には、受動的傾聴・反射的傾聴を実践した状態で、以下のように必要に応じて質問を行なったり、話し手の想いに言葉を添えたりします。
- 上司A:「企業K様の回線トラブルは解決したのかな?」
- 部下B:「はい、一昨日にようやく解決しました。ただ、回線の復旧までに15時間もかかったので、少しお客様に怒られてしまいました……。(上司Aは頷きながら話を聴く(受動的傾聴))」
- 上司A:「復旧までに15時間か……。(反射的傾聴)それは、けっこう早い復旧だったんじゃない? (積極的傾聴)」
- 部下B:「そうなんです!!15時間も回線が止まったので、企業K様にご迷惑をおかけしたのは確かなのですが……。15時間は、自分のなかでもかなり早い復旧だったと感じています。」
- 上司A:「そうだね、僕もかなり早いと思うよ。(反射的傾聴)Bくんは最近、自己啓発でネットワーク系資格や社内副業に挑戦してるよね?今回の対応は、日々の努力の賜物じゃないかな?(積極的傾聴)」
- 部下B:「はい!!実は、今回のトラブルは、社内副業でお世話になってるC先輩のチームで出た事例だったんです。その対処方法を覚えていたので、今回の15時間につながったと思っています。」
- 上司A:「そうか、Cくんのところでの学びが役に立ったのか。(反射的傾聴)回線トラブルはなるべく避けたいけど、Bくんにとっては、今回の件が成長を実感する良い機会になったのかもしれないね。これからも社内副業と試験勉強頑張ってね。僕は応援するよ。」
積極的傾聴では、聴き手が上司Aのように「それは、けっこう早い復旧だったんじゃない?」や「今回の対応は、日々の努力の賜物かな?」と主体的な働きかけをすることで、話し手(部下B)の背景にある以下のようなことを深く理解できるようになります。
- なぜ15時間で復旧できたのか?
- 15時間で復旧できた理由は何なのか?
- 自己啓発の成果は出ているのか? など
こうした働きかけは、さらなる共感的理解や肯定的関心につながり、聴き手と話し手の信頼関係へとつながっていきます。
傾聴を学ぶメリットと実践の効果
近年では、業務のIT化や自動化が進むなかで、ビジネスにおける傾聴力が特に重要となってきています。業務がIT化・自動化されているからこそ、人と人のコミュニケーションや信頼関係が大切になっているのです。
相手と信頼関係を築く
高い傾聴力をもってコミュニケーションすると、相手は以下のような感覚からこちらを信頼し、心を開いてくれるようになります。
- 自分の話をちゃんと聴いてくれている
- 自分に関心を持ってくれている
- 自分を否定しない人だ など
仕事で成果をあげるうえで、一緒に働くメンバーやお客様と信頼関係を築くことは欠かせません。
上述のとおり、知識労働や感情労働が増えているからこそ、仕事で関わる人(お客様・メンバー・取引先 など)と信頼関係を築くことの重要性は高まっています。
問題解決する
人と仕事するうえでは、立場の違いによる意見の対立が生じたり、感情的なぶつかり合いが生じたりすることがあります。
特に物事がうまくいかなかったりするときには、感情的な対立なども生じやすいですし、関わるメンバーの感情も高ぶったりネガティブに触れたりすることも多くなるでしょう。
こうした状況で問題解決するには、論理的なアプローチと同時に、感情の対立やストレスを解消していくことが必要です。
傾聴力は、人と対立したときに、相手の感情でつながるような深い信頼関係を築き、感情面の問題を解決するうえで欠かせないスキルとなります。
傾聴力は、問題解決の前面に立つビジネスリーダーにとって必要な不可欠なスキルです。
影響力を発揮する
たとえば、リーダーの傾聴力が著しく低い場合、リーダーはメンバーに対して、以下のような対応や姿勢をとってしまいがちになります。
- メンバーの話を聞かない
- メンバーの顔をつぶす
- 自分の主張や指示ばかりを押し付ける など
上記のような対応を続けていると、メンバーは「自分は大事にされていない」と感じるようになり、結果的に信頼関係が壊れ、次第にリーダーの話に耳を傾けなくなってしまいます。
ビジネスをするうえで周囲に影響力を与える人間になるには、「まず理解に徹し、そして理解される」のが大原則です。相手を理解するためには、高い傾聴を通じたコミュニケーションや、信頼関係の構築が大切になってきます。
傾聴の実践に役立つテクニックとスキル
傾聴をする際には、相手の特徴やシーン、話題に合わせてテクニックやスキルを使うことが効果的です。
なお、テクニックやスキルはあくまで、相手の話を真剣に受け止める心構えがあってこそ有効であり、テクニックやスキルだけでラポールを形成しようとしてもうまくはいきません。
しかし、心構えがあったうえで、テクニックやスキルを使えば、ラポール形成がよりスムーズに行なえます。
傾聴で実践できるテクニックやスキルは、大きく分けて言語系と非言語系の2種類がありますので、それぞれのテクニックを紹介します。
言語系テクニック
言葉を使った言語系テクニックには、以下のようなものがあります。
・ペーシング(マッチング)
ペーシングとは、話す相手と言葉のペースを合わせることです。
相手と「話し方」を合わせることで、相手は無意識のうちに波長が合う感覚や親近感を抱くという「類似性の法則」を活用したテクニックになります。
ペーシングのなかでも、「マッチング」は相手の「声」の情報に合わせるやり方です。下記のような声の要素を相手に合わせることがポイントになります。
- 声の大きさ
- 声のトーン
- 声の音色
- 話すスピード
- 話すテンポ
- 口調 など
・バックトラッキング
バックトラッキングとは、いわゆる「オウム返し」であり、相手の言葉を繰り返すテクニックです。
バックトラッキングを行なうと、相手は「自分の話がよく理解されている」「受け入れられている」と感じ、満足感や好感、安心感などにつながります。
バックトラッキングするうえでは、相手が使った「感情を表す言葉」や「動詞」を中心にオウム返しするとよいでしょう。
・パラフレーズ
ラフレーズは、バックトラッキングの変形で、以下のように相手の話した内容を言い換えて繰り返すテクニックです。
バックトラッキング ⇒ 「遅くて大変なんですね」
パラフレーズ ⇒ 「いつも長時間働いているんですね」
パラフレーズは、バックトラッキングと同じように話し手に「聴いてもらえた」「理解してもらえた」という満足感や好感をもたらします。
パラフレーズのテクニックを上級レベルで活用すると「◯◯が動かず悩んでいる」を「◯◯ができたら課題解決する」と転換するようなことで、相手に意識の変化や気付きを生み出すことも可能になります。
・オープンエンドクエスチョン
オープンエンドクエスチョンとは、英語のとおり「回答の範囲を制限しない質問」を指し、省略してオープンクエスチョンとも呼ばれます。
具体的には「あなたはどう思いますか?」「どのような方法があると思いますか?」「どのようなご意見がありますか?」といった質問がオープンエンドクエスチョンです。
オープンエンドクエスチョンでは、豊富な回答の選択肢があるため、話し手に自由かつ主体的に思考してもらうことで内省を促せます。
なお、オープンエンドクエスチョンの反対は「はい」「いいえ」のように回答を限定する質問であり、クローズドクエスチョンと呼ばれます。
クローズドクエスチョンは回答を限定する分、相手が答えやすくなり、話のきっかけに使ったり、テストクロージングに使ったりすると有効です。
・沈黙
傾聴における沈黙は、「相手に考える時間を提供する」大切な時間です。まだ関係が浅い相手や日常会話では、話の間が空くと「間が持たない」と感じて新しい話題を投じがちです。
また、オンラインでも沈黙が続くと「通信障害かな……」と不安になり、沈黙は嫌われる傾向にあります。しかし、相手の深い本音を引き出すためには、意図的に沈黙を活用することも大切です。
非言語系テクニック
積極的傾聴の効果性を高めるには、言葉や声と併せて、以下のような非言語テクニックを使うのもおすすめです。
・ペーシング(マッチング)
非言語の領域にも、相手とペースを合わせるペーシングのテクニックがあります。ミラーリングと呼ばれる手法で、話し手の動作や身振りなど、下記のような要素を相手と合わせます。
- 話す姿勢
- 座り方
- 手振り
- 身振り
- 手足の位置
- 呼吸
- 表情 など
ミラーリングは、声を合わせるマッチングと同様の効果があり、話し手に「共通点がある」という錯覚を生み出し、信頼関係をスピーディーに築きます。
ただし、無理にミラーリングして相手に気付かれると逆に警戒心や不快感を抱かせてしまいます。自然にできる範囲で行なうことが大切です。
・表情や声の工夫
身体的なミラーリングが難しい状況では、無理に相手の動作を真似ず、聴き手の表情や声に対してミラーリング・マッチングを行なうことが有効です。
アメリカの心理学者アルバート・メラビアンは、自身の提唱する「メラビアンの法則」のなかで、人はコミュニケーションにおいて、言語からの情報を得ているとしています。
声と表情でペーシングすることで、聴覚・視覚に訴えかけることができるわけです。
傾聴力を身に付けるトレーニング5選
高い傾聴力によって深いコミュニケーションや信頼関係の構築につなげていくには、人と話をするうえでの「あり方(人格・人徳)」と「やり方(技術・テクニック)」の両方を磨いていくことが大切です。
ただ、「あり方」を磨くには、それなりの時間がかかってきます。そのため、本章では、「やり方」の部分から傾聴力を高められる5つのトレーニングを紹介していきます。
会話の割合を「3:7」にする
まず、自分ばかりが一方的に話してばかりいては、傾聴力は高まりません。そこで、最初に意識したいのが、会話の割合を「自分3:相手7」にすることです。
「自分3:相手7」の割合で話をすると、「話をしなさすぎかも?」という体感になることもあるでしょう。最初は難しいかもしれませんが、「自分3:相手7」の割合を意識しながら話す習慣を持つことが、傾聴力を高める第一歩になります。
相手の話に集中する
次は、聴き方のポイントです。傾聴力を高めるうえで大切になるのが、自分の経験や価値観などのフィルターを通さず、相手の話に耳を傾けることになります。そこで注意すべきなのが、「自叙伝的な聞き方をしていないか?」ということです。
たとえば、資格試験に不合格になった部下と上司の間で、以下の会話があったと仮定します。
- 部下A:「先週の資格試験、不合格でした。たくさん勉強したのに残念です。」
- 上司B:「そうなんだ。“たくさん”とは、何時間ぐらい勉強したの?」
- 部下A:「一日1時間ぐらいですかね。休日は2時間ぐらいです。」
- 上司B:「それじゃ足りないよ。僕なんて一日2時間、週末は3時間やってたよ。」
- 部下A:「それはすごいですね。」
- 上司B:「すごくないよ。Aくんはね、時間の使い方が下手なんだよ。○○業務でもそうでしょ……。」
上司Bには、傾聴力の高い人の特徴である「共感的理解」や「無条件の肯定的関心」がありません。上司Bの傾聴力が下がっている理由は、“自叙伝的な聞き方”をしてしまっているからとなります。
自叙伝的な聞き方とは、相手の話を真剣に聞いているのではなく、「次に何を質問しようか」「何をアドバイスしようか」「どうせこういうことだろ」と自分勝手に思考して、身を入れずに相手の話を聞いている状態です。
上記の部下Aは、もしかすると「試験に落ちて悔しい」という想いを受け入れて欲しかったかもしれません。一方で上司Bは「何が原因だったか」「どうすればいいか」など、自分本位で思考してアドバイスしています。
上司Bに悪気はないかもしれませんが、上記の対応では、部下は「自分を受け入れてくれている・肯定してもらえている」とは思えません。
傾聴で勘違いされやすいポイントは、自分の意見や想いを「伝えるために聴く」のではないということです。自分の経験や価値観によるフィルターを通さず、自分の価値観を押し付けようともせず、「ただ理解する・聴く」に徹することが大切になります。
ミラーリングで相手に親近感を持たせる
ミラーリングは、以下のような非言語的な要素を相手に合わせることで、相手が話しやすくする手法です。
- 話す姿勢
- ボディランゲージ
- 座り方
- 手振り
- 身振り
- 手足の位置
- 呼吸
- 選考
- 表情 など
ただし、ミラーリングのやりすぎが相手に気付かれた場合、不快感・警戒感を与えることになりかねません。ミラーリングを実施するときには、やり過ぎないように注意しましょう。
バックトラッキングで安心感を与える
バックトラッキングとは、いわゆる“オウム返し”のことです。相手が「先日の試験、合格しました!」と報告してきたのに対して、「試験、合格したんだね!」と返すのがバックトラッキングです。
バックトラッキングすることで、相手は「自分の話が相手に届いている」と安心感を持つことができるようになります。
また、バックトラッキングによる安心感によって、たとえば、「前回はダメだったんで、今回は絶対に受かりたいと思っていたので……」など、続く話が引き出されることもあるでしょう。
バックトラッキングする内容には、以下の3種類があります。
- 相手が話した事実
- 相手の気持ち
- 相手が話した内容の要約
たとえば、前述した「先日の試験、合格しました!」と報告してきたのに対して、「試験、合格したんだね!」と返すのが事実のバックトラッキングです。
加えて、相手の様子なども踏まえて、「試験合格したんだ!うれしそうだね!」と返すのが事実+気持ちのバックトラッキングになります。気持ちをバックトラッキングすることで、相手はより深く話が届いている、わかってもらえている感覚が得られます。
ただし、すべての話をバックトラッキングしていると、話が前に進まない、話している側も鬱陶しくなってしまうことがあります。
そのため、相手のいくつかのセンテンスなどをまとめて、「こうでこうだったんだね」と要約して返すこともバックトラッキングの一つです。
相手に見えている世界や感情を確認する
たとえば、部下からの報告「試験に合格した」の事実だけにフォーカスすると、報告内容への反応は「それは良かったね!おめでとう!」などに限られてしまいます。一方で、以下のように背景にある世界や感情に視点を変えると、深い反応や質問ができるようになるでしょう。
- ・感情:「3回目の挑戦だもんね、かなりうれしいでしょう?すごく頑張っていたもんね!」
- ・世界:「A試験に合格したってことは、次はB試験を目指すのかな?」
上記のポイントは、「相手の」感情や見えている世界を想像することになります。
まとめ
傾聴力は、メンバーやお客様との信頼関係の構築や、チームに影響力をもたらすうえで大切なスキルです。傾聴には、以下3つの段階があり、下に行くほど相手との深いコミュニケーションにつながっていきます。
- レベル1:受動的傾聴
- レベル2:反射的傾聴
- レベル3:積極的傾聴
なお、傾聴力を高めるには以下3つの要素を押さえることがポイントです。
- 共感的理解(相手の感情に共感しながら聴く)
- 無条件の肯定的関心(賛否や是非を判断せずに聴く)
- 自己一致(自分自身が安定した精神状態で聴く)
傾聴力を身につけるには、以下5つのコツやトレーニングを実践するのがおすすめとなります。
- 会話の割合を「7:3」にする
- 相手の話に集中する
- ミラーリングで相手に親近感を持たせる
- バックトラッキングで安心感を与える
- 相手に見えている世界や感情を確認する
ただし、上記は一種のテクニックでもあるため、安定した精神状態で相手の話に共感するには、基礎となる人格を磨くことも大切です。
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