ホラクラシー型組織とは?メリットやデメリット・導入検討のポイントを解説

ホラクラシー型組織とは?メリットやデメリット・導入検討のポイントを解説

ホラクラシー型組織は、情報の流動性や社会変化が激しい現代に注目されている組織形態です。ITベンチャー等を中心に注目されていますが、導入にはいくつかの条件も必要です。

記事では、ホラクラシー型組織の概要やメリット・デメリット、導入検討時のポイントを詳しく解説します。

<目次>

ホラクラシー型組織とは?

ホラクラシーとは、「組織内に役職や階級などを設定しない、フラットな組織」概念です。

 

ホラクシー型組織では、社員全員が対等な立場となり、管理職やマネージャーは不在です。従来の組織において管理職やマネージャーが持っていた「権限」は、ロール(役割)とガバナンスプロセス(合議制)に分散されます。

 

ホラクシー型組織の提唱者はブライアン・J・ロバートソンはという人物です。彼はホラクラシー(holacracy)の語源を、「ホロン(holon)という、それ自体が全体としての性質を持ち、なおかつ大きな組織全体の一部でもある要素がある、ホロン同士が結びついてホラーキー(hola-)という構造を作る。ホラクラシー型組織とは、ホラーキー構造を持つ組織によるガバナンスだ」と説明しています。

 

ホラクラシーの具体的なイメージは、人体と各臓器の関係を考えると少し分かりやすいでしょう。体内の各臓器は、それぞれに独立した機能と役割があるとともに、人体の一部です。

 

ホラクラシー型の組織では、「臓器」に例えられる各社員がチーム内で自分の役割を果たしつつ、同時に「人体」に位置付けられる企業組織の一員として全体目標のために主体的に貢献するということになります。

 

 

ホラクラシー型組織とヒエラルキー型組織の違い

ヒエラルキー型組織は、ホラクラシー型組織と反対の概念であり、現代における一般的な組織概念です。ヒエラルキー型組織では、役職や階級が明確に決められ、チームのリーダーや管理職に意思決定権があります。

 

ヒエラルキー型組織は、いわば中央集権型の組織であり、リーダーに情報が集まり、それを基に意思決定し、メンバーが実行していくというスタイルです。役割分担することで、効率的な組織運営をすることが可能です。

 

一方で、

 

  • 新技術が次々と生まれる
  • 外部環境の変動が早い
  • 役割分担と専門特化が進む
  • 社員の考え方が多様化する
  • 上下関係を好まない世代が増える

 

といった中で、「リーダー」に権限を集中させるヒエラルキー型組織の限界も見えてきたのです。とくに「リーダーの情報処理や力量が組織成長のボトルネックとなる」ことはヒエラルキー型組織の限界です。

 

これに対して、ヒエラルキー型組織の限界を超えられるモデルとして、水平分散型のホモクラシー型組織が注目を集めています。

 

ホラクラシー型組織のメリットとデメリット

ホラクラシー型組織で行われているコミュニケーション

ホラクラシー型組織には以下のようなメリットやデメリットが生まれます。

 

 

ホラクラシー型組織のメリット

 

・意思決定、実行のスピード感が高まる

ホラクラシー型組織では、管理職やリーダーの確認・承認は不要です。チーム内での意思決定後、各自が自分の役割を実行する流れになりますので、意思決定と実行のスピード感は高まります。

 

素早い意思決定や実行が可能になると、競合の多い業界におけるスピーディーな新製品開発や、トラブルへの迅速な対応なども行ないやすくなります。

 

・メンバーの主体性が向上する

ヒエラルキー型組織では、権限や情報はリーダー・管理職に集中します。従って、個人の主体性を発揮しにくい側面もあります。一方で、ホラクラシー型組織では、チーム内の話し合いに基づく個人の自己決定権が増えます。

 

結果、各メンバーが自身の決定や行動に責任を持ち、主体的に行動しやすくなります。そして、各自が責任感を持つ風土が生まれることによって、トラブルや問題への積極的な対処も可能になります。

 

・メンバーのモチベーションが向上する

ホラクラシー型の組織では、ルールや規則が明文化され、ルールや規則の範囲内で各社員に意思決定権が付与されます。「自己決定権」は人の内発的動機(内発的モチベーション)を高める効果があります。

 

・生産性が向上する

ホラクラシー型組織では、メンバーの主体性・モチベーションが向上するとともに、マネジメント業務は不要となる分、生産性が向上します。

 

 

ホラクラシー型組織のデメリット

 

・リスク管理が難しくなる

ヒエラルキー型組織は、意思決定が現場には委ねられず、管理職や経営層のチェックを経る形になるため、意思決定やコストの妥当性が確認され、リスク回避をしやすい特徴があります。

 

一方で、ホラクラシー型組織の場合、管理職による承認がないフラットな組織です。従って、場合によっては意思決定やコストの妥当性、リスク回避等において、抜け漏れや管理レベルが落ちるリスクがあります。

 

・一定の条件がないと成立は難しい

もう一つのデメリットは、ホラクラシー型組織はすべての企業でスムーズに成立させられるとは限らない点です。「ホラクラシー型組織の考え方は理解できても、実際に自社で運用するイメージがつかない」という方は多いかと思います。

 

ホラクラシー型組織を成立させて、効果的に運営するためには、「主体的に動ける、かつ組織の方向性を理解したうえで適切な判断ができる社員」が必要になります。また、そうした社員が揃っていたとしても適切な移行プロセスを踏んでいかないと、成立は難しいでしょう。

 

ホラクラシー型組織は、現場に多くが委ねられる分、成立条件を押さえて移行ステップを踏まないと、単なる組織崩壊に繋がるリスクがあります。

ホラクラシー組織の導入を検討するうえでのポイント

ホラクラシー型組織の導入と、導入を検討する上でのポイント

ホラクラシー型組織の導入を検討するには、以下のポイントに注意する必要があります。ホラクラシー型組織を目指さないとしても、以下のポイントをヒエラルキー型組織で取り入れていくと、主体的な社員の創出や権限移譲に繋がりますので、ぜひご覧ください。

 

 

組織と社員の明確な目標を設定する

リーダー不在の環境でチームや個人が役割を果たすには、組織の明確な目的や目標が必要です。ミッションやビジョン、バリュー、そして事業計画等の策定を通じて、メンバーが以下のような質問に答えられる状態をつくり出しましょう。

 

  • 組織はどうあるべきか?
  • 組織の目標は何か?
  • チームはどのような目的と目標を達成したいか?
  • お客様に喜ばれるためにどう行動すべきか?
  • そのために何を為す必要があるか?

 

明確化した目的や目標が全社員で共有され、自分が達成すべき貢献を理解できている状態がホラクラシー型組織の成立条件です。

 

 

ホラクラシー憲法を定める

ホラクラシー憲法とは、一人ひとりの仕事の範囲や意思決定の基準などを定義したルールです。明文化されたルールがあることで、各自が管理されなくても自分の判断でミッション達成に向けた行動を起こせるようになります。

 

ホラクラシー憲法は、すべての社員が理解できるように細部まで明記する必要があります。また、ルールは作成して終わりではなく、状況に応じたアップデートによって常に最善の形を維持することが求められます。

 

 

小さなチーム単位で導入していく

ホラクラシー憲法の内容や運用方法は、組織形態や業務内容によって変わってきます。そのため、ホラクラシー型組織を導入するときには、憲法内容の変更や調整をしやすい小さなチーム単位で運用をはじめてみるのがおすすめです。

 

そして、ある程度の検証を進めた段階で全社的に導入可能かどうかを考えていくことが、ホラクラシー型組織のリスクが少ない取り入れ方です。この考え方は、ヒエラルキー型組織において権限移譲等を進めるうえでも参考になります。

 

 

セルフマネジメントができる社員で構成する

ホラクラシー型組織は「セルフマネジメントができる社員の集合体」です。従って、ホラクラシー型組織を成立させるには、各メンバーがセルフリーダーシップを発揮できるように、教育やフィードバック、フォローなどを続ける必要がありますし、採用基準においてもセルフマネジメント力を確認する必要があります。

まとめ

ホラクラシー型組織は、社員に上下関係のないフラットな組織形態であり、現在の組織における主流であるヒエラルキー型組織と比較されることが多い概念です。

 

ホラクラシー型組織では、管理職はおらず、明文化されたルールとプロセスの下に各社員が主体的に仕事を進めます。そのため、うまく運用できると社員の主体性が引き出され、生産性も向上します。

 

一方で、ホラクラシー型組織は「目的や目標を全メンバーが共有し、一人ひとりのメンバーが自分の為すべき貢献を理解してセルフマネジメントできる」ことが成立条件です。

 

いきなり実現することは難しいかもしれませんが、ホラクラシー型組織が成立できるようにする取り組み、ミッション・ビジョン・バリューや事業計画、為すべき貢献のすり合わせ、意思決定権の委譲等を進めるだけでも、組織に良い効果があります。

著者情報

近藤 浩充

株式会社ジェイック|取締役 兼 常務執行役員

近藤 浩充

大学卒業後、情報システム系の会社を経て入社。
IT戦略事業、全社経営戦略、教育事業、採用・就職支援事業の責任者を経て現職。企業の採用・育成課題を知る立場から、当社の企業向け教育研修を監修するほか、一般企業、金融機関、経営者クラブなどで、若手から管理職層までの社員育成の手法やキャリア形成等についての講演を行っている。
昨今では管理職のリーダーシップやコミュニケーションスキルをテーマに、雑誌『プレジデント』(2023年)、J-CASTニュース(2024年)、ほか人事メディアからの取材も多数実績あり。

著書、登壇セミナー

・社長の右腕 ~上場企業 現役ナンバー2の告白~
・今だからできる!若手採用と組織活性化のヒント
・withコロナ時代における新しい採用力・定着率向上の秘訣
・オンライン研修の「今と未来」、社員育成への上手な取り入れ方
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