主体性研修で社員が本来の力を発揮する|組織を強くする研修のやり方

主体性研修で社員が本来の力を発揮する|組織を強くする研修のやり方

組織内で、「責任転嫁」や「他人任せ」「言い訳」が蔓延していないでしょうか。例えば、指示待ちで受け身の社員が多かったり、仕事でミスやトラブルが生じた際に「上司の指示が悪かった」と他責にしたりするような状況です。

 

「ミスをしないように、言われたことだけを黙々とこなす」、このような主体性のない社員が多い組織では、生産性も上がりませんし、人間関係も良好にはならないでしょう。

 

また、コロナ禍を筆頭に将来の予測が難しく、その分、変化への対応力やスピードが問われる時代の中で、主体性のない組織は生き残り自体が困難になると予想されます。記事では、社員の主体性を引き出すための研修実施ポイントを解説します。

<目次>

主体性とは何か?

主体性が組織にどのような影響を与えるのかを理解するために、そもそも主体性とは何かということを確認しておきましょう。

 

 

主体性とは

主体性を辞書で調べると、次のように記載されています。

 

【主体性】
自分の意志・判断によって、自ら責任を持って行動する態度や性質。 「 -を持って行動する」
*出典:Weblio辞書

 

主体性を欠いてしまうと、相手の意見の言いなりになってしまったり、その場の雰囲気に合わせて考えや行動をコロコロと変えてしまったりするようになります。あるいは、「周りから指示・指摘されなければ何もしない」といった行動や考え方が見られるようにもなります。

 

主体性と自主性との違い

主体性とよく似た意味を持つ言葉として「自主性」という言葉があります。主体性と自主性は、「自ら行動する」という点では共通していますが、決定的に異なる部分は、主体性は「自らの意志や判断に基づいて行動するものである」という点です。

 

これに対して、自主性は「決められた枠組みの中で、発揮される行動力」のことを指します。

 

身近な例として、営業のテレアポに関する主体性と自主性を比較してみましょう。

 

新規顧客獲得のためには、テレアポが不可欠と判断し、1日あたりの架電数を設定して、トークスクリプトの作成をすることが主体的な行動です。

 

一方、「1日30件のテレアポをする!」というルールに沿って、1件でも多くテレアポをするようにしたり、隙間時間にテレアポをする行動は、自主性に当たります。

 

どちらの行動も素晴らしいものですが、「自ら考え自ら行動する」という特徴がより強いのが、主体性だと言えるでしょう。

 

主体性の重要度が増している時代背景

主体性のない社員

 

主体性は、自らの仕事を自分事として捉えて、率先して行動することです。では、主体性がない社員が増えると、組織はどのようになってしまうでしょうか。

 

責任を取らない文化の蔓延

主体性がない社員が多い組織では、トラブルや損失が発生した際に「自分は関係ない」「自分のせいではない」という責任転嫁の文化が蔓延してしまいます。なぜなら、主体性と責任は常にセットだからです。

 

“マネジメントの父”とも呼ばれる経営学者のドラッカー博士は、「成功の鍵は責任であり、すべてはそこから始まる」とも述べています。ドラッカー博士が言う責任(responsibility)とは、「責任の所在を明らかにする」といった日本語としての責任ではなく、「物事に対応して影響を与える力」(response+ability)という意味合いです。

 

主体性を持った社員は、自らの仕事に関連する、組織の成果に貢献することであれば、上司から指示を受けていなくても「自分が影響を及ぼせることは自分の責任(responsibility)の範疇である」と捉えます。

 

従って、何か悪いことが起こりそうなときには未然に対処をしようと試みますし、実際にトラブルに発展してしまったときには被害を最小限にしようとします。あるいは、自分自身だけで対応が困難なときには上司や他部署のメンバーの力を借りて、問題の解決にあたるでしょう。

 

しかし、主体性のない社員は、「自分の仕事として明確に決まっているものだけ自分の責任範囲だ」と考えます。従って、直接上司から指示されていない限りは自分の責任だとは捉えませんし、指示を受けていた場合であっても、「上司の指示が的確ではなかった」「自分はやろうとしたけど同僚が協力してくれなかった」と自らの責任だとは捉えません

 

責任転嫁をしたり、問題を他人事として捉えたりする姿勢は、1人の社員だけではなく、徐々に組織全体に蔓延し、入社してくる新人等にも拡がっていきます。そしてそれが「社風」「企業風土」になると、組織の行動力や対応力は非常に弱くなっていきます。

 

「アフターコロナ」でより必要性が増す主体性

「アフターコロナ」の時代を考えると、主体性のない組織が生き残っていくことは非常に厳しいものとなるでしょう。先行きが見えず、前例もない中で、社員一人ひとりが主体性を発揮して、新たな事業形態やサービス提供、働き方への挑戦をしていかなければなりません。

 

オンラインでのサービス提供や3密を避けてのサービス提供、また、それによる生産性低下にどう対応するのか。リモートワークや在宅勤務等、これまでとは異なる働き方への対応が求められる場面も増えつつあります。

 

すべての事態に対応していくことは、トップダウンの意思決定だけでは困難であり、社員の主体性が求められています。また、リモートワークや在宅勤務においては、従来のような密なマネジメントは困難であり、時間の使い方や意思決定、判断に関して社員のセルフマネジメントに任せる比重が増していきます。このセルフマネジメントの根幹となるのも、主体性です。

 

主体性を発揮させる鍵は価値観教育

価値観教育

 

「社員の主体性が足りない」と感じられる場合には、研修や教育を通じて社員の主体性を高めていくことが必要です。社員の主体性を高める研修を継続的に実施し、同時に社員の主体性を引き出すマネジメントをすることで、主体性の高さを「組織風土」へとすることもできるでしょう。この章では、主体性を根付かせるための価値観教育を解説します。

 

 

価値観の教育で社員の主体性を育てる

主体性は、社員一人ひとりの価値観や行動理念に基づくものです。従って、マナー研修や営業スキル研修のように、テクニックやノウハウを伝えようとしてもあまり効果がありません。また、社長講和のような形で一回想いを伝えたとしても浸透するものではありません。

 

価値観の教育とは、「自分は何を実現したいか?」「仕事における成果とは何か」「働くうえでは何が大事なのか」といった仕事に関する根本的な考え方を浸透させることです。ここで重要なことは、企業の価値観を社員個人の人生とも紐づけながら、共通言語として構築することです。

 

価値観が強い会社には必ず会社ごとの共通言語があり、社員に浸透し、行動規範となっています。説明すれば長くなる概念や価値観をバシッと言い表す共通言語が価値観教育では重要です。例えば、リクルートの「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」は今では公式な社訓ではなくなっていますが、リクルートのDNAを表す共通言語として非常に有名です。

 

 

主体性の根底となる「インサイドアウト」とは?

主体性を引き出す価値観教育の根底となるものは「インサイドアウト」です。「インサイドアウト」とは、「問題が自分の外にあると考えるのならば、その考えこそが問題である」という考え方のことです。

 

「上司の指示が的確ではない」「同僚が協力してくれない」「自分の仕事ではない」等、誰しも少なからず責任を外に向けてしまいがちなポイントは存在します。

 

しかし、インサイドアウトの考え方では、「これらの問題は自分の問題である」と自分事として捉えます。そして、先ほど紹介した責任(responsibility)の考え方と併せて、「自分が動くことで、この問題に良い影響を与えられる。だからこそ、自分は何をしたらいいか?」と考えるわけです。

 

インサイドアウトの反対の考え方がアウトサイドインです。つまり、「問題は外にあり、周りが、環境が、状況が、変わらなければ、問題は解決されない」という考え方です。指示待ちや責任転嫁、他人任せ等は、まさにアウトサイドインの考え方だと言えるでしょう。

 

社員一人ひとりがインサイドアウトを実践すれは、組織は主体性の文化へと変わります。社員がインサイドアウトを実践すれば、以下のような効果もあるでしょう。

  • 社員間で問題解決がおこなわれるようになる
  • 会議で積極的にアイデアが出てくる
  • 自らやりたい仕事を考えるようになる
  • 部門間のコミュニケーションが活発になる
  • 責任転嫁がなくなる

 

ミッションが仕事を「自分事」にする

社員の主体性を引き出すためには、ミッションも大きな役割を果たします。ここで言うミッションは2つの意味があり、一つは組織のミッションであり、もう一つは個人のミッションです。

 

「何のために我が社は存在するのか?」「事業を通じて私たちは何を成し遂げたいか?」という組織のミッションやビジョンが共有され、浸透している組織は、「向かう方向」が共有されている状態です。従って、判断基準や行動基準が明確になり、権限委譲も進み、主体性が発揮されやすい組織になります。

 

そして、組織のミッションやビジョンが、自分の価値観、自分のミッションとどう繋がっているのかが明らかにされていると、社員一人ひとりのエンゲージメントは高まります。個人のミッション(ミッションステートメント)とは、社員一人ひとりが自分の価値観や信条を言語化したものです。

 

ミッションステートメントには、以下のような内容が含まれます。

  • 人格 :どのような人間になりたいのか?
  • 功績 :何を成し遂げたいか?
  • 価値観:これらを達成するうえで価値観の原則は何なのか?

 

自分自身が人生をどう生きたいのか、そして、自分自身の生き方と会社のミッションやビジョンはどう紐づいているのか、それを理解している社員にとって、すべての仕事は自分事であり、主体性が非常に発揮されやすくなるでしょう。

 

 

 

社員の主体性を引き出す価値観教育「7つの習慣®」

社員の主体性を引き出すための研修や教育方法を記載しましたが、社員の主体性を引き出す価値観教育はいくつかあります。その中でも「7つの習慣®」は非常に効果的です。

 

「7つの習慣®」がどのようなものか、簡単に紹介します。『7つの習慣』はアメリカの経営コンサルタントであるスティーブン・R・コヴィーによって書かれた本であり、1989年に初版が発売されて以来、全世界で3,000万部を超えるベストセラーです。

 

能力やスキルの根っこにある人格の重要さを謳い、人間性を磨き、人間関係を作るための原理原則を分かりやすい言葉で伝えた内容です。人生の方程式「人生・仕事の成果=能力×熱意×考え方」で有名な稲盛和夫氏も、「7つの習慣®」の考え方を推薦されています。

 

HRドクターを運営する株式会社ジェイックでも、リーマンショックのさなか、業績が落ち込み、組織が苦しい中で、「7つの習慣®」の勉強会を通じて、組織変革に成功しました。この実績や経験に基づき、ジェイックでは「7つの習慣®」の考え方に基づいた研修プログラムも提供するようになりました。

 

社員の主体性を引き出す価値観教育に興味があれば、ジェイックでの「7つの習慣®」の導入ストーリーを生々しく紹介する以下の冊子を無料でご覧いただけます。

 

【研修事例】主体性を引き出す「7つの習慣®」研修を実施した企業

HRドクターを運営する株式会社ジェイックでは、主体性を向上させるための研修を実施しています。以下では、主体性を引き出す『7つの習慣®』研修の企業事例を、対談形式で紹介していますのでぜひご覧ください。
※なお、会社概要や役職はインタビュー当時のものです。

 

コーワ株式会社様

コーワ株式会社
従業員数 145名
業種 商社(食料品)

 

導入成果
ワンマン経営の先代から引き継いだ遺産「指示待ち社員」
「自ら考え自ら行動する」社員が増えた

 

実際に研修を実施した感想

(佐藤)
ありがとうございます。御社では、何人の方が受講されたのですか?

 
(高橋社長)
営業系と管理職中心で33~34人です。年齢的には、20代と50代が少しだけ受けて、あとは、 30代~40代が中心でしたね。

 
(佐藤)
実際に研修を受けられた皆さんの感想や、その後の変化はいかがでしょうか?

 
(高橋社長)
感想としては、「自分のことや家族のことを考えるきっかけになった」というものが多いですね。 変化は人それぞれですが、「変わったな」と感じる人も多いですよ。

 
例えば、ある30代の社員は、 週に2回、会社の周りのゴミ拾いを行うようになりました。どこかの会社がそれをやっているのを 見て、自分から、「見ていて感じが良かったから、自分もやりたい」と私に言ってきたんです。

 
私は「やっていいよ。ただし、他の人間に強制はしないように。自分の姿を見て同調する人がい ればそれでいいし、いなければ一人でやりなさ い」と言ったんですけどね。

 
(佐藤)
社員の方々が自発的に何かを始めてくれるっていうのは嬉しいものですよね。仕事のことでも家庭 のことでも。自ら動いて何かを始めるっていうのは大事なことですもんね。

 
(高橋社長)
自分の意思で始めないと、やらされ感が強いじゃないですか。ある社長は「自分で決めてやること は疲労感3分の1で効率3倍、上から言われてやるのは、疲労感3倍で効率3分の1」と言ってま した。

 
(佐藤)
御社の場合、先代が強いリーダーシップでマネジメントしてこられたから、そういう意味では、ま さに今、現場から「自発的」な社員が出始めている、ということなんでしょうね。倉持様はいかが ですか?

 
(倉持取締役)
そうですね。自分の部下も研修を受けたんですけど、提出物を自発的に出してくるとか、積極的に納期を守るとか、今までは何度か部下に伝えないと動かなかったような仕事を、言わなくてもできるようになったとは思います、「この資料できてますよ、見ておいてくださ い」とか部下が言ってくるのが増えると、「研修の効果があったのかな」と思いますね。

 
(高橋社長)
上司・部下とのコミュニケーションのとり方を考え直した、という感想も多いですね。上司が「今の やり方だとダメだな」「部下が話をしやすくするにはどうすればいいだろう?」と少し考えるだけでも、だいぶコミュニケーションが変わってきますよね。実際、これまで無愛想だったリーダーが、自分から周囲に話しかけるようになったりしています。

 
(佐藤)
コミュニケーションのとり方1つ、聴き方1つで、人間関係って、すごく変わりますもんね。

 
(高橋社長) 全社的に、「自分のことを考えるよりも、まず相手を考える」と考 える人が、前に比べれば増えてきましたよね。

 
その効果か、実は、毎年出ていた退職者がゼロになったんですよ。研修を始めてから1年間、誰も退職していません。

 
(佐藤)
研修によって、退職者がゼロになったんですか。それは大きな変化ですね。

 

タカヤマ金属工業株式会社様

タカヤマ金属工業株式会社
従業員数 300名
業種 金属製品、機械、商社(鉄鋼・金属)、建設、鉄鋼

 

導入成果
社員からの改善・提案の数が、年間20件から、700件に増えた!

 

実際に研修を実施した感想

(谷中)
「7つの習慣®」は、どうして取り入れようと思ったのですか?

 
(高山社長)
「7つの習慣®」の本を読んで、本当に理にかなっているなと思ったからです。コンサルタントの指導で、ある程度の土台はできていたものの、私はまだ、社員の“自主性や主体性”にもの足りなさを感じていました。

 
私から言ったことはきちんとやってくれるのですが、自分から「これがやりたい」というアイデアや提案は出してこない。「7つの習慣 ®」を学ぶことで、そうした主体性を身につけてほしいと思いました。それで「どんなふうに社内に取り入れようか?」と考えている時にジェイックのセミナーを知り、専務と一緒に受けたんです。それで、「これならウチの社員にもできるのでは」と思いました。

 
(谷中)
「7つの習慣®」を社内に取り入れた結果、何か変化したことはありますか?

 
(高山社長)
これまで年間20件程度だった社員からの改善提案が、毎月60件出るようになりました。毎月60件ですから、年間だと700件です。もちろん、提案が出やすいよう、我々が環境を整えた部分はありますが、これは大きな変化だと感じています。

 
(谷中)
社員の方からの改善提案数が、年間20件から700件ですか。すごい変化ですね。

 

いかがでしょうか。主体性を引き出す『7つの習慣®』研修の事例を対談形式で紹介しました。『7つの習慣®』研修は、以下のページに詳細を記載しています。

 

社員の主体性を高める方法をお探しの方は、ぜひ無料冊子と併せて、先ほどご紹介した「7つの習慣®研修」の詳細をご覧ください。

 

 

著者情報

宮本 靖之

株式会社ジェイック シニアマネージャー

宮本 靖之

大手生命保険会社にて、営業スタッフの採用・教育担当、営業拠点長職に従事。ジェイック入社後、研修講師として、新入社員から管理職層に至るまで幅広い階層の研修に登壇している。また、大学での就活生の就職対策講座も担当。

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