ピラミッド型組織は、「階層型組織」とも呼ばれ、多くの企業が採用している代表的な組織形態です。
ピラミッド型組織を簡易な組織図で書くと、一番上に最も大きな権限を持った者(経営者)を置き、その下に権限が大きい順に役員、部長、課長・・・そして一番下に役職を持たない従業員が置かれる形となります。
図にするとピラミッドのような三角形となることから、「ピラミッド型組織」と呼ばれます。
組織が成長してある程度の大きさになると、組織図を作成して、役割や機能、責任所在の明確化などをしていくことが一般的です。
上述した「ピラミッド型」に加えて、「フラット型」「マトリックス型」や「ホモクラシー型」といった組織構成も聞かれます。
本記事では、組織図や組織構成の目的を確認したうえで、多くの企業で導入されているピラミッド型組織、また、ピラミッド型組織と比較されるフラット型組織について、それぞれのメリット・デメリット、また、ピラミッド型以外の主な組織構成を紹介します。
<目次>
組織図、組織構成の概要と目的
記事では最初に、組織図、組織構成の概要と作る目的を確認しておきましょう。
組織図とは?
組織図とは、主に企業をはじめとする組織の内部構造(組織構成)を可視化した図を指します。組織図は組織の部門や機能が一目でわかるように作成されます。
組織図は、組織の「外部向け」と「内部向け」に大別されます。
前者は、主に会社の関係者(株主や取引先・投資先)に会社の骨組みを示すために用いられ、後者は組織のメンバーに、組織理解や立ち位置の把握、組織構成の見直しなどいくつかの目的で作成されます。
基本的に外部向けのものは簡易に、内部向けのものはより詳細に作られます。内部向けの場合には、所属するメンバーの氏名や役割などが記載されることもあるでしょう。
組織が小さなうちは、組織内の全員とコミュニケーションを取れますし、阿吽の呼吸で役割分担を調整していくようなことも可能でしょう。
しかし、組織が大きくなれば、組織内の全員と密に、またリアルタイムにコミュニケーションを取ることは困難になります。
その中で、組織内の業務をスムーズに動かすために、機能や事業などに応じて役割分担することになります。
これが組織構成であり、役割分担(組織構成)の状況を図に落とし込んだものが、組織図です。
組織図を作る目的
組織図を作る目的を、簡単に確認します。
①社内の指揮・命令系統を明確にする
組織の指揮命令系統が曖昧だと、判断や決済が求められる場合に「誰に指示を仰げばよいのかが把握できない」「1人の社員に対して複数の上司が異なる指示を出す」など、責任の所在がわからずトラブルや混乱につながってしまいます。
組織図を作る大きな目的のひとつは、組織の指揮・命令系統を誰もが分かるようにすることです。
②メンバーの組織理解、立ち位置を確認する
組織図は、組織内で働くメンバーに、組織への理解や立ち位置を把握してもらうことにも役立ちます。
メンバーが会社全体の組織構成が分からなければ、必要な連携やコミュニケーションができず、業務に支障をきたす場合もあるでしょう。
特に、新卒や中途で入社した新人にとって、組織内での自分の立ち位置や企業全体の仕組みを理解する上では、組織図は非常に有効です。
③業務や権限を俯瞰し、適切な分配を図る
現実世界に“完璧な組織”はありません。組織の中に、人員の配置が実態に即していなかったり、複数の部門で重複する機能が存在したり、といった問題が生じることもあるでしょう。
こうした問題を捉えて、対処していくうえで、組織全体を俯瞰し、現状を把握できる組織図が役立ちます。
④社外に向けて健全性を周知するため
組織図は社外に向けて、企業の概要や運営体制を示すという目的もあります。
社外向けの組織図として、たとえば、監査役会やコンプライアンス部門などがきちんと位置付けられていることで、株主や投資家など外部のステークホルダーに企業の健全性を伝えられます。
また、新卒学生や求職者に対しても、一目で分かる組織図があれば、描けるキャリアを考えてエントリーを検討したりする上での材料にもなるでしょう。
ピラミッド型組織の概要とメリット・デメリット
本章では、多くの組織が採用している「ピラミッド型組織」の概要とメリット・デメリットを解説します。
ピラミッド型組織とは
ピラミッド型組織は、最も多くの企業が採用している組織形態です。
ピラミッド型組織では、組織図の一番上に最も大きな権限を持った者(経営者)を置き、その下に権限が大きい順に役員、部長、課長・・・そして一番下に役職を持たない従業員が置かれます。
図にすると、まさにピラミッドのような三角形となることから「ピラミッド型組織」と呼ばれます。
また、上述したような階層をミルフィーユ上に積み重ねていくような形となりますので「階層型組織」とも呼ばれます。
ピラミッド型組織では縦の軸は基本的に権限の階層となりますが、横の軸は会社によって異なります。いくつかのパターンがありますが、主なものを以下に示します。
1)機能別(営業・マーケティング・製造・開発・間接部門など…)
⇒最も基本的な分類であり、機能による分類と階層と掛け合わせた形の組織構成は基本形となります。
2)エリア別(東日本・西日本、日本・中国・アメリカなど…)
⇒営業拠点を展開していたり、店舗展開していたりする場合、さらにグローバル展開した場合などは、該当部門内をエリア別の組織にするケースもよく見られます。
営業本部があり、その中で東日本、西日本といった形の組織構成になっている形です。
3)事業別(○○事業部・△△カンパニーなど…)
⇒組織で複数の事業を展開している場合、事業別に組織を構成することも良くあります。事業別の場合、各事業の中で、さらに機能別やエリア別に組織が構成されます。
各事業単位にどれぐらい権限を委譲しているか等に応じて、事業部制、事業本部制、カンパニー制などと呼ばれます。
ピラミッド型組織とマトリックス型組織
組織構成でピラミッド型組織並んで耳にするのが「マトリックス型組織」です。
マトリックス型組織とは、ピラミッド型組織における横の軸(機能、エリア、事業…など)を2つ組み合わせた形の組織構成をいいます。
たとえば、軸が1つの事業別組織であれば、A事業に所属する人は、営業も開発も製造もマーケティング、すべてA事業部のみに所属するわけです。
しかし、この形ですと、事業単位での縦割り(タコつぼ化)が進んでしまい、例えば、A事業のマーケティングとB事業のマーケティングで連携して出来ることがあるのに実行されない、A事業の開発とB事業の開発でノウハウ共有できるのに敵対視している…といった非効率が生じてしまいます。
こうした問題を解消するために、例えば、マーケティング職であれば、「A事業」という事業別の組織に所属すると同時に、「マーケティング本部」という形で機能別の連携組織にも所属するといった形で、複数(基本的には2つ)の軸を持たせることで、通常業務はA事業の仕事を専門にするが、同時にマーケティング職同士で事業を超えて連携を取る、といったことを目指すのがマトリックス型組織です。
マトリックス型組織で、最も多いのが上述した「事業別×機能別」という2軸構成です。
マトリックス型組織は、上手くいけば大きな効果を得られる一方、それぞれのメンバーが2人の上司を持つ形(事業のレポートラインと機能のレポートライン)になるため、組織やマネジメントが複雑化して、弊害が生じる恐れもあります。
マトリックス型組織については、以下の記事で詳しく解説していますので、ご興味あればご覧ください。
ピラミッド型組織の役職例
ピラミッド型組織では、組織図のトップに最も権限が大きい者を設置し、その下に権限が大きい順に部長、課長、係長、主任、そして一番下に役職を持たない一般の従業員が置かれる組織形態となっています。
日本企業のピラミッド型組織における各階層の役職は以下のようなものが一般的です。
- ①経営層:社長、副社長、取締役(常務・専務)、執行役員など
- ②部門責任者:本部長、事業部長、部長、支社長、支店長、次長など
- ③組織責任者:課長、室長、店長、マネージャー、スーパーバイザー、チームリーダー、係長など
- ④一般社員:主任、社員、スタッフなど
ピラミッド型組織のメリット
ピラミッド型組織の最大のメリットは、指揮命令系統や権限・責任の所在が明確になることです。
ピラミッド型組織では、基本的にトップからその下の階層へと、トップダウンで指揮・命令が流れていきます。
組織内の序列や立ち位置も明確なため、各階層の社員が、それぞれの役割や責任をしっかり認識したうえで業務を遂行でき、分業も行い易くなります。
また、ピラミッド型組織では、指揮命令が基本的に一系統であるため、トップダウンで組織を動かしやすいという点もメリットといえます。
ピラミッド型組織のデメリット
ピラミッド型組織には、大きく以下に挙げる2つのデメリットがあります。
デメリットの1つ目は、情報の伝達です。基本的に、ピラミッド型組織では組織が大きくなるほど階層が増大します。
組織の成長に伴って、必然的に情報の伝達が遅くなり、意思決定のスピードに支障が出てきます。
とくに上から下に指示命令が流れる部分は問題なくても、下から上にボトムアップで何かを伝える場合、ピラミッド型組織では情報が滞りやすくなりがちです。
デメリットの2つ目は、組織の硬直化です。ピラミッド型組織では、階層と機能・事業などで明確に役割や責任が明確に定められています。
権限や責任があまりにもガチガチになると、従業員は自分の権限や責任の範囲の中でしか考えないようになってしまうでしょう。
「組織の硬直化」は、従業員の視野や思考を狭めるだけでなく、最終的に部門や機能の“縦割り”(タコつぼ化)につながり、組織全体の最適化を妨げます。
フラット型組織の特徴とメリット・デメリット
ピラミッド型組織と対象的な組織図として取り上げられるのが「フラット型組織」です。
本書では、フラット型組織の特徴や組織図、メリット・デメリット、また、フラット型組織のひとつとして注目されるホロクラシー型組織について解説します。
フラット型組織の特徴
フラット型組織とは、組織の階層を減らして、メンバーに権限委譲することで、主体性を引き出すと共に、意思決定や変化対応のスピード感を高めることなどを目的とした組織形態です。
フラット型組織の組織図はシンプルで、究極的には、経営責任者と権限委譲された従業員だけで構成されるようなイメージです(現実的には、もう少し階層が作って運用することが多くなります)。
フラット型組織の主な特徴は以下の2点です。
1.管理機能が希薄である:
フラット型組織は、ピラミッド型組織に比べて、レポーティングやチェック機能が圧倒的に少なくなっています。その代わりに、全メンバーに裁量権が与えられる形となります。
2.高い柔軟性:
フラット型組織では、チームワークやコラボレーションが重視されます。
メンバー同士が活発にコミュニケーションを取り、プロジェクトにおいて自分たちで知恵を出し合い、ある程度の柔軟性を持って業務を進めることが期待されます。
フラット型組織のメリット
ピラミッド型組織と比べたときの、フラット型組織のメリットを3つ挙げます。
1.社員の責任感やエンゲージメントが育ちやすい:
フラット型組織では、 組織の下層に権限を委譲することで、メンバーそれぞれが自律的に意思決定し行動する形です。
これにより、メンバーは自分の仕事に対して責任感を持ち、モチベーションやエンゲージメントが高まります。
2.コミュニケーションが活発になる:
フラット型組織は、組織の階層が少ないため、トップとメンバーの距離が近くなります。また、メンバー同士も役職や上下関係にとらわれずに意見交換をしやすくなります。
これにより、組織内のコミュニケーション活性化が期待されます。
3.意思決定がスムーズになる:
フラット型組織では、ピラミッド型組織で特有の「現場の状態や要望が組織階層を登っていき、意思決定されて、再び下におろされる」というプロセスが省かれ、現場に権限が委譲されていますので、意思決定はスムーズです。
社員から経営トップや上層部に上がってくるフィードバックも早くなり、市場や顧客のニーズに素早く対応できるようになります。
フラット型組織のデメリット
ここまで、フラット型組織が目指すものを紹介してきましたが、フラット型組織はメンバーに権限移譲するからこそ、運用の難しさや一定のデメリットもあります。
以下では、フラット型組織の難しさやデメリットを3つ紹介します。
1.メンバーの能力が求められる:
フラット型組織では、メンバーに権限移譲することでピラミッド型組織の階層を省きます。その分、各メンバーが適切な意思決定をする能力や基準を持ち合わせていることが必要となります。
また、管理統制がなくなる分、各メンバーにセルフマネジメント能力や仕事へのエンゲージメントと求められることになります。
2.責任範囲が不明瞭:
フラット型組織は、階層を省いて「課」や「チーム」といった小集団をなくします。結果として、各メンバーの責任範囲が明確でなくなったり、時には業務が重複したりするケースもあるでしょう。
メンバー間で業務の優先順位や責任を調整するため、コミュニケーション能力が必要になります。
3.ガバナンスの難易度があがる:
フラット型組織はピラミッド型組織に比べ非常に柔軟な組織構造を持っています。柔軟性は、マネジメントがブレたり俗人化したりする危険もはらんでいます。
また、メンバーに権限移譲する分、コンプライアンスやガバナンスの維持が難しくなる側面もあります。
フラット型組織の発展形としてのホロクラシー組織
近年では急速なDX化やリモートワークの普及が進み、社会や市場の変化はますます加速しています。
また、社員の中にも多様性や個性を重視し、自主性や創造性を発揮できる環境を志向するといった人も多くなりました。
こうした社会動向や働き方の変化によって、従来の中央集権的な階層型組織では、対応できない課題が増えています。
このような背景から、近年「ホロクラシー型組織」の考え方が話題に上ることが増えてきました。
ホロクラシー型組織は、階層や役職を廃止し、社員の自由度や主体性を高めるという意味で、フラット型組織と重なる部分が多いです。
しかし、ホロクラシー型組織では、さらに以下の点が加わります。
- 組織のパーパス(存在意義や目的)を実現することを目的とする。
- 社員の多様性や個性を尊重し、自主性や創造性を発揮できる働き方を実現する。
- 社員同士が「競争」ではなく、お互いの意見やアイデアを尊重し協働して成果を目指す。
いわばホロクラシー型組織は、フラット型組織をさらに進化・発展させた考え方と言えるでしょう。
ホロクラシー型組織は日本ではまだ多くはありませんが、リモートワークやオンラインコミュニケーションの普及によって、従来の管理職や上司の役割が見直される動きも出始めています。
今後も、デジタルテクノロジーの進歩や世界情勢の変化が加速される中、ホロクラシー型組織を部分的に取り入れる企業は増えていくことが予想されます。
まとめ
記事では、組織図の概要や目的を踏まえて、多くの企業で導入されているピラミッド型組織のメリット・デメリットについて紹介しました。
ピラミッド型組織は、上下関係や指揮命令系統が明確であり、効率的な管理をしやすい一方で、柔軟性や創造性に弱みを持っています。
また、現場から上層部に情報が上がりにくい、意思決定が遅れるといったデメリットもあります。
そうした中で、ピラミッド型組織に対比されて取り上げられるのがフラット型組織です。
フラット型組織は現場のメンバーに権限移譲することで、組織の階層を減らし、柔軟でスピーディーな意思決定や変化対応を目指す組織構成です。
フラット型組織は、権限移譲を通じて、個々のメンバーに自己決定感をもたらし、主体性を引き出すことが出来る一方で、メンバーの判断能力や仕事への姿勢、自主的なコミュニケーションなどが求められることになり、組織運営の難しさが増します。
どんな組織が最適かは、業種や事業の状況、組織のステージ、構成メンバーに応じて変わるものです。
ただし、組織が硬直化してしまい、時代や市場の変化に対応できない状況になってしまうと、会社経営を揺るがすことにもなるでしょう。
必要に応じて組織構成、組織図を見直す機会を持つことが大切です。
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