GRITの意味とは?やり抜く力を発揮する方法と測定方法を解説!

GRITの意味とは?いま注目の「やり抜く力」で社員の力を伸ばすポイント

GRITがこの数年、ビジネス界で注目されています。人が大きな成果を上げるためには、生まれつきの才能や資質よりも、「やり抜く力」を意味する「GRIT」が必要であるという考え方です。
 

GRITが持つ大きな特徴の一つは「後天的に育てられる」ことです。記事では、GRITとはどんな力なのか、どう育てるのかを解説します。

<目次>

GRIT(グリット)とは?ビジネスにおける意味を徹底解説

GRITとは端的にいうと「やり抜く力」

GRITは、国内外を問わず、最近ビジネス界で非常に注目されている理論です。

 

 

GRITとは

GRITとは端的にいうと「やり抜く力」を意味します。アメリカのペンシルヴァニア大学教授で心理学者でもあるアンジェラ・リー・ダックワース氏が提唱している理論で、GRITを提唱した著書である『GRIT やり抜く力』は日本のビジネス書部門でもベストセラーとなりました。

 

アンジェラ・リー・ダックワースの研究によれば、優れた成績を残す人に共通しているのは、生まれ持った才能や資質ではなく、後天的に伸ばすことのできる情熱や粘り強さであるということです。そして、情熱や粘り強さを基にした「GRIT」「やり抜く力」こそが優れた成績に繋がっているというのです。

 

GRITは、努力や忍耐を美徳とする日本人の価値観と相性が良いとされており、日本のビジネス界でも非常に注目されています。ビジネス界でGRITが注目されることになったのは、大きな成功を収めている起業家にGRITの特徴が見出されたことも大きな要因です。たとえば、Facebookのマーク・ザッカーバーグ氏も自身の成功要因としてGRITを挙げています

 

 

GRITを構成する4つの要素

いまビジネス界で注目されるGRITは4つの英単語の頭文字を繋げて作られた造語です。

 

Guts:困難に立ち向かう力

「ガッツ」はそのまま日本語としても用いられるほど一般的な用語です。何事もやり抜くためにガッツが必要であることは、非常にイメージしやすいのではないでしょうか。

 

Resilience:失敗しても諦めずに続ける力

レジリエンスは、失敗しても諦めない「粘り強さ」を意味します。最後までやり抜くためには、逆境に負けない粘り強さが必要です。レジリエンス自体も、「失敗を乗り越えて前に進むしなやかさ」として、日本のビジネス界で注目されています。

 

Initiative:自分で目標を見据える力

イニシアチブは、自発的に目標をとらえる力です。自ら見出したり、設定したりした目標だからこそ粘り強く頑張れます。GRITが、我慢して耐え忍ぶというだけではなく、自ら目標を見出し意味付けする主体的な力なのです。

 

Tenacity:最後までやり遂げる力

テナシティは日本語に訳すと「執念」と翻訳されることもあります。目標達成に向けて、執念深く、追いかけ続けるしつこさといえるかもしれません。確かに、ザッカーバーグ氏のような革新的な経営者には共通して、自らが掲げた壮大な目標に対する「執念」のようなものを感じることがあります。

 

「GRIT」は「やり抜く力」と紹介されますが、語源を調べてみると、「自分自身で目標を見出し、目標達成に向けて何があってもがむしゃらにしがみつく強さ」といった要素を感じます。

社員のGRIT「やり抜く力」を引き出す方法

GRITが注目されている理由の一つに、後発的に伸ばすことができるという点があります。ザッカーバーグ氏のような革新的な経営者や業界を代表するようなトップ営業マンになるには、生まれ持った才能や能力が必要であるように感じる部分もありますが、少なくともGRITは一部の人だけが持つ特殊な才能ではありません。

 

では、社員のGRITを引き出すためにはどのようにすれば良いのでしょうか?社員のGRITが伸びるとどうなるかという点も踏まえて解説します。

 

 

社員のGRITが伸びるとどうなるか?

自社の社員のGRITが伸びると、当然ですがさまざまなメリットが得られます。得られるメリットは、以下のようなものがあるでしょう。

 

メリット1. 生産性が上がる

GRITが高い社員が多ければ、自発的に目標を設定して、達成に向けて粘り強く取り組めるようになります。結果的に、目標の達成率も高まり、一人ひとりの労働生産性が向上します。当然、企業全体の生産性や収益性も向上するでしょう。

 

メリット2. 社員の心身の健康が保たれる

GRITが高い社員は、心身ともに健康であることが分かっています。GRITが高い社員は、目標達成に向けて「何がなんでも達成する」という強い執念を持っていますので、小さなことにめげたり、へこたれることはありません。病的な執念深さではなく、レジリエンスという健全な受け止め方、受け流し方であることがポイントです。メンタルの状態を常に良好な状態で保っていられることで、身体の面でも健康を維持しやすくなります。

 

 

社員のGRITを育てる方法

社員のGRITを育てるためには、いくつかの方法があります。ぜひ組織として取り組み、社員のGRITを意識的に伸ばしていきましょう。ここでは、会社や部門等の組織において、社員のGRITを伸ばす5つの方法をご案内します。

 

ポイントとしては、社員の自己決定権を尊重すること、社員の自己肯定感を高めること、失敗を恐れない環境を構築することが重要です。

 

方法1:社員の自己決定権を尊重する

目標への主体性や責任感を発揮するうえで、非常に重要なものが「自己決定感」です。人は生まれながらにして、「自分のことは自分で決めたい」という欲求を持っています。従って、他人から目標を押し付けられると、その時点で反発心が生じます。これを心理学では、心理的リアクタンスと呼びます。

 

もちろん、組織において、社員の自己決定にすべてを委ねることは難しいかもしれません。ただ、適切な情報公開、方向性のすり合わせをすることで、目標設定に関して、社員の自己決定・提案を受け入れる余地は増えていくでしょう。また、仕事の中での小さなステップ目標や方法等について、社員の自己決定権を尊重できることはたくさんあるでしょう。

 

方法2:社員が興味を持つ事柄に取り組める環境を作る

社員が仕事に興味を示したときに、「出る杭を打つ」のではなく企業や上司が積極的に後押しする姿勢を示すことも重要です。失敗を恐れてチャレンジさせないことは、GRITを伸ばすこととは真逆の姿勢です。一つひとつの細かな失敗、許容できるレベルの失敗には目をつぶり、どんどん挑戦させましょう。

 

方法3:長期的な目標を立てる

GRITは「諦めない執念」や「粘り強さ」等、継続的かつ長期的なチャレンジが重要な要素となっています。短期的な目標ばかりを重視してしまうと、「達成できない」ことに直面しがちです。もちろん短期目標は重要ですが、1年~3年程度の時間軸で長期的な目標を設定させ、目標に向けて、(短期的・瞬間的には)何度失敗してもチャレンジできる環境を作ることが有効です。

 

方法4:成功体験を積ませる

GRITを発揮するうえでは、自分自身に対する自信や自分が成し遂げてきたという自信が重要です。適切な目標設定も重要ですし、強力に支援して仕事における実際の目標を達成させることも必要です。また、社員が自分の存在や能力、可能性に対して自信を持てるように、強みや成長、未来の可能性について、ポジティブなフィードバックや承認を与えることも大切です。経営陣や上司の未来志向な姿勢、ポジティブな声掛けも、社員のGRITを伸ばすことに繋がります。

 

方法5:GRITの高い社員と共に行動させる

GRITの高い人が身近にいると、その影響を受けてGRITが高まりやすくなります。特に、身近な上司や優秀な社員のGRITが高ければ、その影響力は非常に大きくなります。

 

まずは、経営陣や上司が模範となって「GRIT」を高めるように意識をしましょう。また、人材配置の際には、GRITの高い社員を指導担当やメンターとして設定して、社員に影響を強く与えられるポジションに置くことも重要です。

GRITの発揮状態を測定する方法

GRITの発揮状態を測定

GRITは目に見えませんが、「グリット・スケール」を使って測定することができます。GRITを高める際には、実施の前後でスコアがどのように変化したのかを調べることも効果的です。GRITの測定は、以下の手順でおこないます。

 

 

手順1:「グリット・スケール」を準備する

GRITを測定するには、以下のようなグリット・スケールの表を作成します。

 

グリット・スケールまったく当てはまらないあまり当てはまらないいくらか当てはまる当てはまる非常に当てはまる
1新しいアイデアやプロジェクトが出てくると、ついそちらに気を取られてしまう54321
2挫折してもめげない、簡単には諦めない12345
3目標を設定しても、すぐに別の目標に切り替えることが多い54321
4努力家だ12345
5達成までに何か月もかかるようなことに、ずっと集中して取り組める54321
6一度始めたことは必ずやり遂げる12345
7興味の対象が毎年のように変わる54321
8私は勤勉だ。絶対に諦めない12345
9アイデアやプロジェクトに夢中になっても、すぐに興味を失ってしまったことがある54321
10重要な課題を克服するために、挫折を乗り越えた経験がある12345

 

 

 

手順2:回答・集計する

グリッド・スケールの10の質問に対して、「非常に当てはまる」「当てはまる」「いくらか当てはまる」「あまり当てはまらない」「まったく当てはまらない」の1~5で点数を付けます(表の数字にマルを付けていく)。グリット・スケールの回答は自己評価に基づいておこないます。

 

すべての質問に解答したら、「奇数の質問」「偶数の質問」「10個の質問全体」の3つの区分で平均スコアを計算します。

 

 

手順3:平均スコアを説明し、継続的にチェックする

「10個の質問全体」の平均スコアが高いと、GRITが高いことを意味します。また、「奇数の質問」の平均スコアは「情熱」、「偶数の質問」の平均スコアは「粘り強さ」を表します。組織や個人のスコア分布や、情熱と粘り強さの状況を確認しましょう。

 

GRITは、そのときの状態によってスコアが変化しますので、高くなることもあれば反対に低くなることもあります。常に高いGRITスコアが取れるよう、GRITの育成とセットにして継続的にチェックをおこないましょう。

 

 

採用時におけるGRITの測定

グリット・スケールは、「どちらのほうが良い印象を与えるか」がすぐ分かってしまうため、フラットな環境で答えられる(結果が評価等と結びつかない)ことが重要です。従って、採用時に使うことはできません。

 

採用時には、適性検査を用いてGRITを測定すると良いでしょう。性格検査で、「BIG5」と呼ばれる基本的な性格特性が分かるもの、また、マクレランドの欲求理論に基づく「動機」のスコアが分かるような適性検査を使うと、GRITに大きく紐付く「達成動機」の強さや、粘り強さに繋がる「責任感」「ストレス耐性」等が分かります。

 

既存社員でGRITが高い社員に実施してもらい、その結果をまとめることで、採用時にGRITの強さを採用基準に織り込むことができるでしょう。

 

なお、採用時に使える適性検査については、以下の資料をご覧ください(新卒採用と入っていますが、中途採用で使えるものも網羅しています)。

 

まとめ

GRITとは、自ら目標を見出し、達成に向けてやり抜く力です。Facebookのマーク・ザッカーバーグ氏をはじめとした優れた経営者でGRITの高さが認められたこと、GRITは後天的に伸ばすことができるといった特徴を持つことから、ビジネス界で非常に注目されています。

 

GRITの高い社員は、生産性が非常に高いことに加え、心身ともに非常に健康でいられることも分かっています。GRITに興味・関心を持った方は、ぜひこの記事を参考にGRITの育成に取り組んでください。

 

記事で紹介したグリット・スケールは以下でダウンロードできますので、ご自身や部下のGRITの発揮状態を知ることから始めてみてください。

著者情報

近藤 浩充

株式会社ジェイック|取締役 兼 常務執行役員

近藤 浩充

大学卒業後、情報システム系の会社を経て入社。
IT戦略事業、全社経営戦略、教育事業、採用・就職支援事業の責任者を経て現職。企業の採用・育成課題を知る立場から、当社の企業向け教育研修を監修するほか、一般企業、金融機関、経営者クラブなどで、若手から管理職層までの社員育成の手法やキャリア形成等についての講演を行っている。
昨今では管理職のリーダーシップやコミュニケーションスキルをテーマに、雑誌『プレジデント』(2023年)、J-CASTニュース(2024年)、ほか人事メディアからの取材も多数実績あり。

著書、登壇セミナー

・社長の右腕 ~上場企業 現役ナンバー2の告白~
・今だからできる!若手採用と組織活性化のヒント
・withコロナ時代における新しい採用力・定着率向上の秘訣
・オンライン研修の「今と未来」、社員育成への上手な取り入れ方
・社長が知っておくべき、業績達成する目標管理と人事評価
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・社長の右腕 10の職掌 など

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