承認欲求とは?|特徴や充たし方、マネジメント上の注意点を紹介

更新:2023/07/28

作成:2023/05/22

古庄 拓

古庄 拓

株式会社ジェイック執行役員

承認欲求とは?|特徴や充たし方、マネジメント上の注意点を紹介

承認欲求は、「周囲から評価されたい」「特別な存在だと認められたい」といった欲求の総称です。

 

マネジメントするうえでメンバーの承認欲求を満たすことはとても大切です。特に、Z世代などの若手をマネジメントする場合、過去とは異なる承認欲求の傾向を知り、適切な対応をすることも大切になってきます。

 

本記事では、承認欲求の概要と2つのタイプ、現代における承認欲求の傾向などを紹介します。紹介したうえで、後半では、マネジメント研修を提供する研修会社としての知見も踏まえて、メンバーの承認欲求を満たすコツとマネジメント上のポイント、注意点を解説します。

<目次>

承認欲求とは?

考え込むビジネスマン

 

承認欲求は、「周りから認められたい」「特別視されたい」といった欲求の総称です。

承認欲求は誰もが持っている?

承認欲求は、誰もが持っている欲求です。たとえば、子どもが頑張って描いた絵を持って、「見て!見て!」とアピールするのは、親や先生などの大人から「頑張ったね!すごいね!」と褒められたいからとなります。また、新入社員が「早く一人前になって、先輩に認められたい!」と思うのも、承認欲求があるからです。

 

そして、子供や新人に限らず社会的な生き物である人間は、「周囲から評価されたい」「ここに居ていいと認められたい」「特別な存在だと承認されたい」といった欲求を心の中で持っているものです。

承認欲求をマズローの「欲求5段階説」で理解する

承認欲求は、マズローの「欲求5段解説」のひとつ、第4階層にある欲求です。マズローの「欲求5段解説」とは、人間の欲求を5段階に分け、ピラミッド化したものです。

 

マズローの欲求5段階説の図

 

欲求5段解説では、上図のとおり、下から生理的欲求・安全欲求・親和欲求・承認欲求・自己実現欲求があります。そして、マズローは、「人間の欲求は、低層の欲求がみたされるとより高層の欲求に向かっていく」としています。

 

そのため、たとえば、マネジメントを考えるうえでは、下層の欲求が満たされているかを順番に考えていくことが大切です。

 

たとえば、人材育成や組織開発で承認欲求にフォーカスした施策などを実施する際には、承認欲求の下にある生理的欲求・安全欲求・親和欲求を満たせる環境や仕組みが構築されているかが大切です。

  • 【生理的欲求】 十分な睡眠、休息、食事など
  • 【安全欲求】 雇用の安定、暮らしなど
  • 【親和欲求】 人とのつながり、グループへの所属、仲間意識など

 

一般的な職場環境であれば、生理的欲求や安全欲求は満たされていることが多いでしょう。そのため、基本的には、親和欲求から満たしていくことになります。満たしたうえで、承認欲求を満たして、はじめて「ミッションへの共感」や「他者貢献」などの自己実現欲求を発揮してもらうところに入ります。

 

組織全体だけでなく、メンバー個々をマネジメントするうえでも、相手のどこの欲求が満たされていないかを考えることが大切です。

 

承認欲求における2つの種類

承認欲求には、他者承認欲求と自己承認欲求があります。

  • 他者承認欲求:他者から認めてもらいたい欲求
  • 自己承認欲求:自分で自分を認めたい欲求

 

承認欲求の上位にある第5階層の自己実現欲求(内発的動機)には、他者承認欲求と自己承認欲求がどちらも満たされることで、たどり着けます。仕事における他者承認欲求と自己承認欲求を満たすには、以下のような要素が必要になります。

他者承認欲求

  • 顧客からの感謝
  • 上司との良好なコミュニケーション
  • メンバー(部下・後輩)、他部署からの声掛け
  • 社内表彰 など

 

自己承認欲求

  • 目標達成
  • 自己効力感(自分への自信)
  • 自己肯定感 など

 

現在における承認欲求の傾向は?

スマホを持って悩む女性

マネジメントにおける承認欲求の重要性を考えるうえで、「新卒などで入ってくるZ世代などの承認欲求にどのような傾向があるか?」を知っておくことは大切です。本章では、現代における承認欲求の傾向や時代背景を解説します。

少子化の影響

まず、新卒で企業に入ってくるZ世代などの若者は、少子化によって絶対数が減っています。結果として、1人の子供をケアする大人や教育機関、サービスなどは自ずと多くなっています。

 

たとえば、数年前に話題になった「6ポケット」という言葉があります。6ポケットとは、1人の子どもに対して、両親と父方・母方それぞれの祖父母、合計6人分の財布があるという意味で、少子化によって1人の子供に対して手厚いケアがされる象徴ともいえる言葉です。

 

また、近年では、プロモーション技術の発達にともなって、子どものライフステージに応じて、以下のような広告・勧誘がたくさん来ることも多いでしょう。

  • 小学校に入った途端、さまざまな学習塾から勧誘がくる
  • 地方都市にも、大学の出張オープンキャンパスがやってくる
  • 成人式に向けた振り袖レンタルのDMがたくさん届く
  • 大学の2年次から参加できるインターンなどが多い など

 

もちろん個人差はありますが、若者の希少価値が高まるなかで、過去と比べると「自分は注目・ケアされて当然」と感じる傾向は強くなっているかもしれません。

SNSの普及

総務省の資料「令和3年通信利用動向調査の結果」によると、SNSを利用する個人の割合は、79.9%に達したことがわかっています。Z世代などに限定すれば、SNSの利用率はもっと高まるでしょう。

 

多くのSNSは、自分の投稿に対してフォローや友達などから「いいね!」を押してもらえます。SNSの「いいね!」機能は、承認欲求を満たしてくれるものであると同時に、承認欲求を煽り、強めている側面もあります。

 

このようにSNSとともに育ってきた若手は、「アクションがすぐ承認されて欲しい」「承認されないと不満」という感覚を持っている場合もあるでしょう。

 

出典:令和3年通信利用動向調査の結果(総務省)

 

教育価値観の変化

近年では、教育現場においても「褒めて伸ばすことが当たり前」となっています。褒めて伸ばすこと自体が良い悪いということではありません。ただ、褒める際に注意したいのは、いまの若手は、子供の頃から「褒められるのが当たり前」の環境で育ってきたという点です。

 

「褒められるのが当たり前」の環境で育ってくれば、当然、社会人となったあとも上司や先輩社員から褒められることを期待するのが自然です。

 

子供や学生の頃は、教育を受けたり、お金を払って学校に通っていたりした立場であり、社会人はお金をもらって価値創出する立場だということを教えられ、頭では理解したとしても、感覚がすぐに切り替わるわけではありません。したがって、そうした人にとっては、褒められないことが、企業や仕事への不満要因にもなります。

時代背景を踏まえた承認欲求の傾向

人の価値観は、もちろん個人差はありますが、生まれ育った時代背景や教育方針によってつくられる部分もあります。

 

上記まで、少子化、SNS、教育方針という3つの時代背景で紹介したとおり、現在は過去と比べて、承認されるのが当たり前であり、承認されないことが不満要因になり得る時代となっています。

 

そのため、マネジメントするうえでも、「若手世代における承認欲求は強まっている」という認識は持っておく必要があるでしょう。

 

 

承認欲求が強い人の傾向

前章では時代背景のなかで強まる承認欲求の話をしましたが、もちろんあくまで全体的な傾向です。承認欲求の強弱には、個人差があります。では、「承認欲求が強い」人というのはどのような人でしょうか。

 

承認欲求が強い人にみられる特徴・傾向を紹介します。

周囲からの評価を気にする

承認欲求が強すぎる人は、「周囲からどう見えているか?」「どう評価されているか?」を気にしすぎるあまり、仕事をするなかで、以下のようなことが起こりやすくなります。

  • 失敗を恐れるあまり、リスクの高い挑戦を避ける
  • 評価が得られないと不満になる、モチベーションが下がる

 

特にリーダーや管理職が社内での見られ方や評価などを気にしていると正しい意思決定にならないことも多いでしょう。

 

自己主張や手柄話が強い

承認欲求が強すぎると、周囲から認められたい、褒められたいと思うあまり、必要以上の手柄や実績のアピール、見栄を張ることが多くなります。そういう自己主張が多すぎる場合、ほかのメンバーから嫌悪感を抱かれることもあるでしょう。

 

こちらも新人や若手のうちはいいかもしれませんが、ベテランや管理職になって過剰に“自分の手柄”を気にしていると、メンバーや周囲とうまくいかないことも増えるものです。

自分の話が多い

先述の自己主張に関係することですが、承認欲求が強すぎる人は、「すごいね!」「いいね!」といわれたいがために、自分の話ばかりしてしまう傾向があります。

 

そして、自分の話が多いというのは、他人の話に耳を傾けないことを意味します。相手が他のメンバーやお客様などであれば、信頼関係の構築に支障をきたすこともあるでしょう。

 

承認欲求をセルフコントロールするコツ

ハートのオブジェクトを持った女性の手元

承認欲求は、自分でコントロールすることも可能です。本章では、セルフコントロールのコツとポイントを解説しましょう。

自己承認を意識する

承認欲求には、先述のとおり「他者承認欲求」と「自己承認欲求」の2つがあります。

 

自分で自分を認められていれば、承認欲求全体が満たされていくため、他者承認欲求が過剰になりづらいでしょう。一方で、自分に自信がなかったり、自分のことが好きではなかったり、自分で認められない状態だと、不安感や不満を他人に埋めてもらうために他者承認欲求が高くなってしまう傾向があります。

 

そのため、承認欲求をうまくコントロールするには、自分で自分を承認するという自己承認が大切になってきます。

 

約束を守る

自己承認をするうえでおすすめなのは、自分との約束を守ることです。

 

自分との約束を守ると、「やりきった!」「諦めなかった!」と自分を褒めたり承認したりできるようになります。簡単なことからでいいので、自分と約束する⇒約束を守る、ということを意識しましょう。

 

なお、自己承認ができていない状態で、自分との約束を破ってしまうと、「こんなこともできない自分」とセルフイメージを逆に下げてしまうことになります。たとえば、運動していない人が、いきなり「毎日30分運動する」といった難易度の高い約束をする(目標を設定する)ことは避けたほうがいいでしょう。

良い習慣を身に付ける

自己承認できる人になるには、先述の「テレアポを一日10件やる」などの良い行動を習慣化するのがおすすめです。たとえば、オフィスで一日10件のテレアポを習慣化すると、1ヵ月で200件前後のテレアポができるようになり、「自分だってできるじゃん!」という自信が生まれます。

 

上記のような自分の能力やスキルに対する自信のことを、“自己効力感”や“セルフ・エフィカシー”と呼びます。

 

自己効力感を高めるには、「今日の良かったことや気付いたこと」という項目を入れた日報・日誌を毎日書く習慣もおすすめです。日報・日誌で振り返る習慣をつくることで、1日のなかで“良くやったこと”を見つけ、自分で自分を認められるようになります。

成果を残す

自己効力感を高めるには、成果や成功体験を積み上げることも大切です。成果や成功体験を積み重ねると、「根拠のある自信」が生まれます

 

そのために重要となるのは、成果の指標となる目標を少し低めや小さな単位で設定することになります。

 

たとえば、営業チームに配属されたばかりの新人が「6ヵ月で60個の商品を売ってきて!」といわれた場合、売る数字の大きさに不安が増大してしまう可能性があります。一方で、60個を6ヵ月で割ると1ヵ月あたり10個、3日で1個…と小さな単位に分けると、1個売れる度に「目標達成できた!」という成功体験を積むことができます。

 

また、たとえば「60個の商品を売る」というプロセスを、「6ヵ月で90件の商談をする」⇒「1日1商談やる」「商談づくりのために毎日1本は営業メールを送る」といった形でプロセス分解することも有効です。

 

大きな目標だけを見ていると、なかなか「成功体験」を得られにくくなります。自己効力感を高めるには、目標を小さな単位に分解したり、自分が影響できる行動(プロセス)にフォーカスしたりすることで成功体験を積み重ねていくことが有効です。

 

承認欲求を踏まえたマネジメントのコツや注意点

最後に、リーダーや管理職がマネジメントするうえで知っておきたい承認欲求のポイントを紹介します。

 

人は承認に向かって行動する

「人は承認に向かって行動する」と言われるぐらい、承認欲求は強いものです。したがって、承認欲求を意識したマネジメントをうまく行なえば、メンバーのモチベーションやパフォーマンスを最大化しやすくなります。

 

ただし、承認欲求の扱い方を間違えると、認めてもらいたいがために頑張りすぎたメンバーが疲弊したり、「なぜもっと認めてくれないのか?」などの怒りにつながったりすることもあるでしょう。

 

こうした問題を防ぐには、適切かつ適度な承認をする必要があります。また、“何を承認して何を承認しないか”をはっきりさせることも大切です。

承認や褒め方のスキルを身に付ける

承認や褒めることは人を動かしたり、動機づけたり、勇気付けたりするうえで強力な力があります。そのため、チームメンバーを率いる管理職やリーダーは、承認や褒め方のスキルをうまく使いこなすことが大切です。

 

褒め方の具体的な方法やポイントは、以下資料をダウンロードして確認しましょう。

 

自己承認できるように促す

承認欲求は、自己承認と他者承認の2つに分けられ、他者承認は、外部から与える外的な動機づけとなります。他者承認は、メンバーを動かす強力なツールとなる一方で、相手を依存的にする側面もあるので注意が必要です。

 

メンバーの自立を促すためには、メンバーが自己承認できるように導くことが大切です。自己承認を促すポイントは前の章で紹介した通りですので、解説したポイントをメンバーが実践できるように促していくとよいでしょう。

 

なお、外的な動機づけ(外発的動機付け)と内発的動機づけの違いやポイントは、以下の記事を参考にしてください。

 

まとめ

承認欲求は誰もが持つ欲求ですが、現代では、以下のような社会環境の影響で、承認欲求が高まりやすくなっている傾向にあります。

  • 少子化の影響
  • SNSの普及
  • 教育価値観の変化

 

また、承認欲求は誰もが持っているわけですが、承認欲求が強すぎる人は、以下のような行動傾向が出がちです。

  • 周囲からの評価を気にする
  • 自己主張や手柄話が強い
  • 自分の話が多い

 

したがって、承認欲求をきちんとセルフコントロールしていくことが大切です。セルフコントロールするうえでは、以下のポイントを押さえることがおすすめです。

  • 自己承認を意識する
  • 良い習慣を身に付ける
  • 成果を残す

 

また、承認欲求を踏まえて、メンバーをマネジメントするには、以下のコツや注意点を大切にするとよいでしょう。

  • 人は承認に向かって行動する
  • 承認や褒め方のスキルを身に付ける
  • 自己承認できるように促す

 

なお、リーダーが褒め方のスキルを向上させると、メンバーの承認欲求のほかにも、良い行動の習慣化ができるようになるなどの効果・メリットが得られやすくなります。褒め方のスキルを向上させたい人は、以下の資料をダウンロードしてみてください。

 

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック執行役員

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。専門は新卒および中途採用、マーケティング、学習理論

著書、登壇セミナー

・Inside Sales Conference「オンライン時代に売上を伸ばす。新規開拓を加速する体制づくり」など

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