人間力とは? ビジネスの成果にもつながる人間力の要素や高めるコツを解説

ビジネスでの成果に繋がる人間力とは?人間力の要素や高めるコツを解説

人間力とは、内閣府「人間力戦略研究会報告書」では、「社会を構成し運営するとともに、自立した一人の人間として力強く生きていくための総合的な力」であり、知的能力的要素、社会・対人関係力的要素、自己制御的要素の3つで構成されると定義しています。

 

分かるような分からないよう定義です。一方で、「仕事で成果をあげるうえで、能力やスキルに加えて、人間力や人間性も大事」と言われると、頷く人も多いのではないでしょうか。

 

ビジネス場面で使われる人間力は、スキルや能力と対になる概念であり、信頼され、長期的・継続的に望む成果を得続けるためのあり方や考え方を指します。記事では、ビジネスの場における人間力の要素や重要性、高めるコツを解説します。

<目次>

人間力とは?

人間力とは非常に曖昧な印象ですが、ビジネスの場では必要不可欠な能力です。ここでは、ビジネスにおける人間力という言葉を、内閣府の定義も交えながら解説していきます。

 

内閣府が定める、人間力を構成する3つの要素

内閣府「人間力戦略研究会報告書」では、人間力を「社会を構成し運営するとともに、自立した一人の人間として力強く生きていくための総合的な力」であり、知的能力的要素、社会・対人関係力的要素、自己制御的要素の3つで構成されると定義しています。

 

知的能力的要素
知的能力的要素には4つの項目があり、仕事に関する知識やスキル、考え方に関する能力になります。

  • 基礎能力ものごとの見方や本質、仕事の基礎的知識、数量的思考力、情報リテラシー(情報コミュニケーション技術など)について正しく理解し、活用できる。
  • 専門知識・ノウハウ :業務に必要な専門的な知識と技能が身に付いているとともに、その背景や応用を理解し、有効に活用できる。
  • 論理的思考力 :適切に収集した情報をいろいろな視点から、論理的に分析し、それを的確に表現することができる。
  • 創造力 :異なる知識を組み合わせたり、従来のやり方や考え方にとらわれない新たな発想をしたり、ものごとをいろいろな立場・視点から柔軟に考えたりすることで、新しい価値や行動を生み出すことができる。

対人関係力的要素
対人関係力的要素には5つの項目があり、おもに仕事場でのあり方や心構え、人との接し方に関する能力になります。

  • コミュニケーション力自分と気が合う人たちだけでなく、世代や立場、文化の異なる人たちに対しても興味を持つことができる。また、相手の気持ちや意思を尊重したうえで、自分の気持ちや意思を適切に伝え、お互いに理解し合うことができる。
  • リーダーシップ :目標やビジョンをチームで共有したうえで各メンバーの役割を明確にし、一丸となって取り組むことができる。また、メンバーの気持ちに配慮しながら能力の向上を支援するとともに、目標を妨げるメンバーの行動に対しては注意・指導を行ない、目標達成に導くことができる。
  • 公徳心 :社会の一員であることを自覚し、会社や業務の問題を自分事として考えることができる。また、社会全体の利益を考え、利益のために積極的に行動できる。
  • 規範意識 :自分の判断・行動基準を深く理解したうえで、自主的に秩序ある行動ができる。
  • 相互啓発力 :自分の考えや意見を伝えるだけでなく、他者の考えや意見にもしっかりと耳を傾けることができる。また、お互いの良い点を見習い、視野を広げ、啓発し合うことができる。

自己制御的要素
自己制御的要素には3つの項目があり、おもに仕事に対するモチベーションや取り組み方に関する能力になります。

  • 意欲新しい知識やスキルを学び続けたいという「学修意欲」、自分に合った会社で働き、充実した社会生活を送りたいという「就業意欲」、ボランティア活動や地域活動をはじめとする、さまざまな形で社会に貢献したいという「社会参加意欲」、自分の理想像や目標を成し遂げたいという「目的意欲」を持っている。
  • 忍耐力 :目標達成のために自分の考えや行動をコントロールし、信念を持って粘り強く取り組むことができる。また、モチベーションを維持することができる。
  • 自己受容・自己実現力 :自分をありのまま受け入れ、肯定することができる。また、自分の理想像や将来に向けて新しいことにチャレンジしたり、自分の可能性を広げたりと、自己実現に向けて努力できる。

ビジネスにおける人間力

内閣府の人間力はかなり幅広い印象で、人間性や意欲などに加えて、能力的な要素も含んでいる印象です。一方、ビジネスの場面に限っていえば、人間力とは仕事で成果をあげるためのスキルや技術・知識以外の姿勢、考え方、あり方を総合的に指します。

 

「スキルを誰が使うか?どう使うか?」という視点が人間力であると考えることもできるでしょう。人格や誠実さ、真摯さ、セルフマネジメント、リーダーシップ、視野の広さ、視座の高さ、などが人間力の重要な要素となります。

 

究極的には「この人を信頼していいのか?」が人間力だといえるでしょう。人間力は可視化することが難しいですが、1本の樹で考えた場合、地面の上に見える幹や枝がスキルや能力、地面の下で支える根っこの部分が人間力に例えられます。

 

樹は地面の下にしっかりとした根が張り巡らされていてこそ、地面の下から水分や養分を吸い上げ、幹や枝に送り、実(成果)を付けることが可能です。根が張り巡らされていなければ水分や養分を吸い上げることはできませんし、地中深くまで根差していなければ大雨や嵐にも耐えられず、樹は倒れてしまいます。

 

ビジネスでは表面的なスキルや能力ばかりに目がいき、能力やスキルを伸ばす教育に傾きがちですが、人材育成では目には見えにくい人間力も同時に伸ばすことが大事です。スキルや能力はやり方によっては短期間で伸ばせますが、人間力は短期間で伸ばせるものではありません。

 

早い段階から人間力を高める習慣を取り入れ、中長期的に継続して伸ばしていくことが大切です。

人間力は後天的に鍛えられるのか?人間力を高めるコツ

人間力を構成するすべての要素において完璧であることは現実的に不可能であり、性格や価値観による偏りも少なからず存在します。また、人間力はスキルではなく、人間性であり、人としての考え方やあり方です。その場しのぎのテクニックとして簡単に鍛えられるものではありません。

 

人間力を高めるには、ものの見方や考え方、他者への理解・尊重、利他の精神など、自分自身の根本的な部分を見つめ直すことが不可欠です。

 

人間力を鍛えるうえでは、心理学や自己啓発、偉人の伝記などさまざまなものから学ぶことができますが、そのなかでも『7つの習慣』は非常に参考になる書籍です。

『7つの習慣』では、社交的なイメージやテクニックに偏る考え方を「個人主義」、誠意や謙虚・誠実・勇気・忍耐など、人間の内面にある人格的なものをしっかりと鍛える考え方を「人格主義」と呼び、成功にはスキルやテクニックだけでなく、土台となる優れた人格が必要不可欠だと説明しています。

 

人間力は一朝一夕で身に付くものではないからこそ、人間力を高めるためには良い習慣を身に付けることが大切です。どのような習慣を身に付ければよいか、参考になるのが『7つの習慣』です。

人間力は胡散臭いという意見について

人間力という概念はビジネスの場で不可欠となりますが、なかには「胡散臭い」という意見もあります。

 

人間力は資格と違って認定できるものではありませんし、数字やレベルで表せるものでもありません。さらに、能力や技術のようにわかりやすくもないため、胡散臭いと感じてしまう人も少なくありません。

 

また、「人間」という単語がつくことから、人としての価値や優劣を想像しがちで、「人間力が高い = 価値ある人間」「人間力が低い = 価値のない人間」という連想につながってしまう側面もあります。

 

しかし、人間関係においては人の考え方や姿勢、器の大きさといった要素を総合的にかけ合わせた「この人は信頼できるだろうか?」という判断は間違いなく存在します。人間力は、能力やスキルと対になる概念であって、長期的・継続的に望む成果を得続けるためのあり方や考え方を意味します。

 

人としての本質的な魅力や価値を直接的に判断するものではないので、人間力の意味をしっかりと理解し、人としての本質と区別してとらえるとよいでしょう。

まとめ

ビジネスにおける人間力とは樹の「根」のようなものです。対比されるスキルや能力は「幹」や「枝」にあたります。地面の下に根が張り巡らされて、養分や水分を吸い上げて幹や枝へと届けるからこそ、樹はたくさんの「実(成果)」をつけることができます。

 

また、地下深く張り巡らされた根があるからこそ、台風や大風にも負けず樹はしっかりとそびえたって成長を続けることができます。能力やスキルがあれば短期的な成功はできるかもしれませんが、長期的な成功には人間力が不可欠です。

 

人間力という言葉は非常に曖昧で、胡散臭いと感じる人もいるかもしれませんが、「人間力が高い = 人としての価値が高い」ということではなく、長期的・継続的に望む成果を得続けるためのあり方や考え方を指しているものです。人としての価値や優劣とは関係のない概念なので、割り切って考えるとよいでしょう。

 

人間力は人間の内面部分の要素からなるものです。人間力を高めるためには、スキルやテクニック、表面的な振る舞いを重視するのではなく、土台となる人格を磨くという視点を持つ必要があります。

 

人間力を高めるうえでは、『7つの習慣』を学ぶのがとても効果的です。良い習慣を身に付けることで人生が変わります。また、組織メンバー一人ひとりの人間力が高まれば、組織全体の風土やチームワークが変わります。

著者情報

近藤 浩充

株式会社ジェイック|取締役 兼 常務執行役員

近藤 浩充

大学卒業後、情報システム系の会社を経て入社。
IT戦略事業、全社経営戦略、教育事業、採用・就職支援事業の責任者を経て現職。企業の採用・育成課題を知る立場から、当社の企業向け教育研修を監修するほか、一般企業、金融機関、経営者クラブなどで、若手から管理職層までの社員育成の手法やキャリア形成等についての講演を行っている。
昨今では管理職のリーダーシップやコミュニケーションスキルをテーマに、雑誌『プレジデント』(2023年)、J-CASTニュース(2024年)、ほか人事メディアからの取材も多数実績あり。

著書、登壇セミナー

・社長の右腕 ~上場企業 現役ナンバー2の告白~
・今だからできる!若手採用と組織活性化のヒント
・withコロナ時代における新しい採用力・定着率向上の秘訣
・オンライン研修の「今と未来」、社員育成への上手な取り入れ方
・社長が知っておくべき、業績達成する目標管理と人事評価
・社長の右腕 ~ナンバー2の上司マネジメント / 部下マネジメント~
・オーナー経営者が知っておきたい!業績があがる人事評価制度と組織づくりのポイント
・社長の右腕 10の職掌 など

関連記事

  • HRドクターについて

    HRドクターについて 採用×教育チャンネル 【採用】と【社員教育】のお役立ち情報と情報を発信します。
  • 運営企業

  • 採用と社員教育のお役立ち資料

  • ジェイックの提供サービス

pagetop