人の人格形成には、幼少期の親との関係性や生活環境が大きく影響します。人格は幼少期のうちに大部分が確立されますが、大人になってからでも形成することが十分に可能です。
記事では人格形成に影響を与える要素を紹介したうえで、大人になってから人格形成する方法について解説します。
<目次>
- 人格形成はいつまで?
- 人格形成に大きな影響を与えるもの
- 人格を形成する7つの要因(遺伝要素と環境要素)
- 人格形成と人間形成の違い
- 人格形成が上手くいかなかった子どもが大人になったときに起こる問題点
- 大人の人格形成に役立つ7つの方法
- 従業員の人格形成に役立つ3つの研修
- まとめ
人格形成はいつまで?
人間の人格は3歳くらいから形成され始め、価値観や特性などの基礎的な部分は10歳までに確立すると言われています。そのため、基本的な人格は大人になってからだと変わりにくくなります。
しかし、大人になってから環境や経験・体験などがきっかけで人格が変わることはあります。
なお、一般的に“人格”という言葉を場合の人格は、『人格が出来ている』=人間性が優れている、器が大きいといった概念で使われることが多いでしょう。
しかし、人格形成でいう“人格”は特性や価値観に近い概念であり、一般的な意味で“人格”という場合のニュアンスとは少し異なります。
人間性を磨く、また、本来持っている特性がネガティブに発揮されないように理性的にコントロールするといったことは、大人になってからの習慣形成などを通じて十分に可能です。
人格形成に大きな影響を与えるもの
人格形成には、幼少期における親との関係や生活環境が大きな影響を与えます。
親との関係
子どもにとって最も身近な存在である親との関係が人格形成に与える影響は、非常に大きいとされます。
子どものころに自身の意思や行動が親から受け入れられる経験をするほど人格が育まれ、精神的に安定した大人へと育ちます。逆に、幼少期に親との関係が良好ではなかった人は、情緒不安定な傾向が見られます。
生活環境
兄弟の有無や家族内の事情などの生活環境も、人格に影響を与える要素のひとつです。
兄弟関係が与える要素としては、たとえば「長男(長女)だからしっかりしなければいけない」といった役割意識が挙げられます。幼少期に刷り込まれた役割意識と行動様式は、大人になってからも一定の影響を与えるということです。
家族内の事情も人格形成に影響を与える要素です。「両親間のケンカが絶えない」「親が転勤族でさまざまな場所で過ごした」など、家庭の事情によって子どもを取り巻く環境は大きく変わり、人格形成に影響を及ぼします。
人格を形成する7つの要因(遺伝要素と環境要素)
アメリカの精神科医であるクロニンジャーは、人格を形成する因子を7つ提唱しました。7つの因子を大きく分けると、生まれ持った性質が強い「遺伝要素」と、生活環境の中で形成されるウェイトが大きい「環境要素」に分けられます。人格を形成する遺伝要素と環境要素7つを紹介します。
遺伝要素①新規性探求
「新規性探求」とは、新しいものを追求する性質です。
新規性探求が低い人は計画的な行動を得意とする一方で、新しいことへのチャレンジや柔軟な対応が苦手な傾向にあります。
逆に、新規性探求が高い人は、未知のことに取り組む、状況に合わせた行動を取ることが得意である一方で、計画を立てるのが苦手で行き当たりばったりの行動を取りがちです。
遺伝要素②損害回避
「損害回避」とは、損害を避けようとする性質のことです。
損害回避のスコアが高い人は、将来起こり得る損失を懸念するため、意思決定などで悩みやすい傾向が見られます。
逆に損害回避が低い人は楽天的な性格であり、失敗を恐れずに大胆な行動を起こせるという特徴があります。
遺伝要素③報酬依存
「報酬依存」とは、人から認められたい気持ちの強さを表す性質のことです。
報酬依存のスコアが低い人は、冷静で客観的な行動を取れますが、他人から冷たい印象を持たれることも多いでしょう。
反対に報酬依存が高い人は相手に寄り添う能力が高いですが、いき過ぎると依存的になる傾向も見られます。
遺伝要素④固執
「固執」とは辛抱強さを示す性質のことで、低い人は諦めが早く、反対に高い人は継続力が高いです。
諦めが早いと聞くと「物事をすぐに投げ出す」など、悪い印象を持たれる方も多いでしょう。しかし、裏返すと物事の見切りをつけるのが早く、気持ちを切り替えられるという長所でもあります。たとえば、営業でトップセールスの人などは固執が低いと言われます。
固執が高い人は、継続力が高いといえますが、裏返すと成果が出ない状況であっても見切りをつけることが苦手だったりします。このように各要素が高い=優れている、低い=劣っているというわけではありません。
環境要素①自己志向
「自己志向」とは、個人としてのアイデンティティが確立できているかどうかを表す性質です。
自己志向が高い人は自分に対して自信を持っており、ぶれることなく責任感のある行動を取れる傾向にあります。
一方、自己志向が低い人は自己肯定感が低く、自信のない行動をとりがちです。
環境要素②協調
「協調」は他者への思いやりを表す性質のことです。
協調が高い人ほど他者の気持ちに配慮した行動を取ることができ、集団行動が得意な傾向が見られます。
反対に、協調が低い人は周囲の人と協調して取り組むことが苦手です。ただ、裏返せば周囲に流されずに行動できるという長所にもなります。
環境要素③自己超越
「自己超越」とは、“すべてのものは全体の一部である”という感覚のことで、自然や宇宙など、規模の大きなものへの関心度を表します。「時間が経つのを忘れて物事に打ち込んでいた」という経験も自己超越のひとつです。
自己超越を感じられると集中力が高まり、普段以上のパフォーマンスを発揮できるようになります。
人格形成と人間形成の違い
人格形成に似た用語として「人間形成」が挙げられます。人間形成とは、人間力の醸成と教育の関係性などを取り扱う学問分野です。
人間形成論で提唱されている人間形成に必要な要素は、以下の通りです。人格は人間形成の中に包括される概念のひとつと捉えます。
- 性格
- 知性
- 能力
- 人格
人格形成が上手くいかなかった子どもが大人になったときに起こる問題点
人格形成は10歳までの時点で概ね確立され、上手くいかないと以下のような問題点が起こると考えられます。
- 対人関係でトラブルを起こす
- 情緒面が不安定になりやすい
- アイデンティティが確立できない
- 精神的な病気を引き起こすリスクがある
順番に見ていきましょう。
対人関係でトラブルを起こす
人格形成が上手くいかなかった人は、周囲の人とうまくコミュニケーションを取れず、対人関係でトラブルを起こす傾向があります。仕事の場では、意思疎通のすれ違いや相手への配慮ができないことにより、言い争いにまで発展してしまうでしょう。
また、プライベートにおいては結婚したとしても自分の子どもへの接し方がわからず、虐待の加害者となってしまうこともあります。
情緒面が不安定になりやすい
傷つきやすかったり怒りやすくなったりして情緒面が不安定になりやすいことも、人格形成が上手くいかなかった人に見られる特徴です。情緒面が不安定であると周囲の人と意思疎通が取れなくなり、トラブルを引き起こす恐れがあります。
実際に情緒不安定な人が同じチームにいる場合、自分と異なる意見に対して感情的に反発してしまい、議論が成り立たなくなります。また、感情的になってしまうと周囲の人に伝染してしまい、チーム全体の雰囲気の悪化にも繋がるでしょう。
アイデンティティが確立できない
人格形成が上手くいかなかった人はアイデンティティが確立できておらず、「自分は自分」という自己認識が曖昧な傾向が見られます。
アイデンティティが確立されていないと自分が進むべき方向性がわからず、判断や意思決定に時間を要してしまう傾向があります。大人になった後でいうと、キャリア形成に大きな支障をきたし、いわゆる“キャリア迷子”になりやすいとされます。
また、アイデンティティが確立されていない人は、自分の中での“使命感”が曖昧であることも特徴のひとつです。アイデンティティが確立されている人は、仕事の場などでも「これが私のやるべき仕事だ」と明確な目的意識を持っています。
一方でアイデンティティが確立されていない人は使命感が欠けているので、仕事に対するモチベーションが低く、パフォーマンスも悪くなりがちです。
精神的な病気を引き起こすリスクがある
人格形成が上手くいかなかった人はストレスにさらされやすい精神状態になり、精神的な病気を引き起こすリスクが高いです。具体的には、うつ病や心身症、不安障害などの精神疾患が挙げられます。
実際に人格形成が上手くいかなかった人に見られる傾向である「情緒不安定さ」と「アイデンティティの不確立」は、ストレスにさらされやすい状態です。特徴に当てはまるような人がチーム内にいる場合は、定期的にケアしてあげることが大切です。
大人の人格形成に役立つ7つの方法
人格形成は幼少期から10歳くらいのうちに概ね確立されるものです。ただし、“人間力”や“人としての器”といった意味での人格に関しては、大人になってから形成する、磨く余地が大いにあります。大人の人格形成に有効な7つの方法を紹介します。
変えられることを理解する
大人が人格形成を行ううえで最も大切なのは、「自分を変えられる」と理解することです。変えられると考えることで、学ぶ余地が生まれますし、人格形成に向けて意欲的に取り組むこともできるでしょう。
部下や従業員を育成する立場にある方の場合、「人は変われる」と信じることが大切です。信じるからこそ、教育や研修の機会を提供することができます。
ただし、人格を変える・磨くことは時間がかかるものであり、長期的な視点で見ることを忘れてはなりません。
自分の人格を理解する
人の人格はそれぞれ異なり、「自分の人格はどのようなものなのか」を知ることも大切です。人にはそれぞれ人格の偏りがあり、先述したクロニンジャーのパーソナリティ理論で提唱されている7つの因子は、「TCI-Rテスト」によって測定できます。
また、さまざまな特性検査やEQを測定するEQPI®検査などでも、自分の人格=性格特性や価値観を理解することが出来ます。
自分の人格に“偏り”があることを理解して、自分の個性を受け入れる必要があります。また、自分の特徴を理解することで、人格形成のために意識すべきことが見えてくるでしょう。
自己効力感を高める
自己効力感を高めることで、ポジティブ・積極的に行動することが出来ますし、ストレスにも強くなります。自己効力感とは、自分が結果を出すために適切な行動を選び、遂行するための能力を持っているかどうかを認知する概念、つまり“自分はやれる”という感覚です。
自己効力感を高める効果的な方法は、成功体験を積み重ねることです。ただし、いきなり大きな成功体験を積むことは難しいでしょう。小さなゴールを設定して達成する、また、小さな約束を守ることを通じて、成功体験を積み重ねていきましょう。
一方で、ある程度上手くこなしているにもかかわらず、本人が「成功している」と自覚できないケースもあります。自己肯定感が低い人などは、自分の“成功”を認めることが苦手です。その場合は、褒めたりフィードバックしたりして、「成功体験である」と自覚させることが、自己効力感を高めることに繋がります。
自己肯定感を高める
自分の存在を肯定できる感覚である「自己肯定感」を高めると、情緒が安定し、冷静に行動できるようになります。自己肯定感があれば失敗したとしてもすぐに気持ちを切り替えられるようになり、安定したパフォーマンスを発揮できます。
自己肯定感を高めるには、自分の人間性を認めてあげることです。努力や倫理観、優しさや感受性など、そうした要素を発揮し、また、現れた行動を自分で承認していきましょう。
成果を出している組織のリーダーやマネジメント職の方は、メンバーの自己肯定感を高めることに長けている人が多いです。
部下をはじめとしたチームメンバーの自己肯定感を高めるためには、常に寄り添いながら接することが大切です。「自分は必要とされている」という安心感を持たせることが自己肯定感に繋がります。
強みを生かす
強みを生かせる環境を用意してあげれば成功体験を積み重ねられ、自己効力感を高めることに繋がります。人には得手不得手があり、苦手なことを任せても成果は出にくいものです。
実際に経営学で有名なドラッカーは自信の著書「マネジメント」で、「人が成果をあげるのは強みによってのみである」と提唱しています。強みを生かせる仕事内容へ配置すれば成果を出せるようになり、自己肯定感や自己効力感を高められます。そして、良好な人格形成へと繋がるでしょう。
メタ認知能力を磨く
「高い視点から認知する」ことを意味するメタ認知能力を磨くことで、自分自身を客観的に見られるようになり、理性的にふるまうことが可能になります。理性を働かせることで、自分の特性がネガティブに発揮されること(=弱み)を避け、意図的に強みを生かすことが可能になります。
安心感を持てる環境
安心感を持てる環境に身を置けば精神的に落ち着けるようになり、万全な状態で働くことができます。人は心理的安全性を感じられると、パフォーマンスが向上すると言われています。
職場の中で従業員が安心感を持てる環境を作るためには、以下の環境づくりを心がけましょう。
- 相手のことを尊重する
- 相手が話しやすい雰囲気をつくる
- 相手への感謝を示す
安心感を持てる職場環境づくりに取り組みたい方は、心理的安全性について理解するとよいでしょう。以下の記事で心理的安全性を高めるためのポイントを解説していますので、ご興味あればご覧ください。
従業員の人格形成に役立つ3つの研修
従業員の人格形成に取り組むと、常に安定したパフォーマンスを発揮し、生産性を高めることができるでしょう。ここでは、HRドクターを運営する研修会社ジェイックが提供している人格形成に役立つ研修3つを紹介します。
7つの習慣®研修
「7つの習慣®研修」は、世界的ベストセラー「7つの習慣」に基づいた研修です。本研修では、一人ひとりがリーダーシップを発揮して、主体的に仕事に臨むことをゴールとしています。
ジェイックでは、「7つの習慣®」を権利者であるフランクリン・コヴィー・ジャパン株式会社と正式契約して提供しています。研修講師はフランクリン・コヴィー・ジャパン社の研修を修了し、認定資格を取得しているメンバーです。
「7つの習慣®」研修を受講していただくと、以下のような未来が実現できるでしょう。
- 従業員が主体性・リーダーシップを発揮できる
- 価値観や意見、立場の違いによる対立がなくなる
- メンバー同士のコミュニケーションが活発になり、業務が円滑に進む
- 離職率が下がり、「長く所属したい」という従業員が増える
- 従業員のプライベートも充実し、会社全体の“幸福度”が上がる
- 仕事へのモチベーションが上がり、売上が向上する
詳しい情報を知りたい方は、以下のページでご覧ください。
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7つの習慣の内容や効果については以下の記事で要約しています。
ストレングス・ファインダー®研修
「ストレングス・ファインダー研修」は自身の持つ資質(才能)を測定するストレングス・ファインダー®診断に基づいて、強みを生かせるようになる研修です。
ストレングス・ファインダー研修では、従業員それぞれの強みを生かせる組織づくりを実現するために、以下のような流れで実施されます。
- それぞれの「才能」を診断する
- 才能の活かし方(=強み)を身につける
- 強みを生かすマネジメントを実現する
従業員一人ひとりが自分の資質に向き合うようするためには、強みを生かすマネジメントを身につけることが大切です。強みを自覚してビジネスの場で活かせれば、最大限のパフォーマンスを発揮できるようになるでしょう。
ストレングス・ファインダー研修の資料は以下のページにてダウンロードできます。
また、ストレングス・ファインダー®検査については、以下の記事で詳しく解説していますので、気になる方はご覧ください。
原田メソッド®研修
従業員の目標達成力を高めたい企業におすすめの研修が、目標達成と人格形成を両立する「原田メソッド®」研修です。研修の中で用いる原田メソッド®は、公立中学校の陸上部の顧問として務めた原田隆史氏が「7年間で13回の日本一」という偉業を達成する中で生み出されたものです。
ジェイックが提供している原田メソッド®研修では3日間で、成果を生み出す思考法や周囲の力を引き出して成功へ導く技術について学べます。
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まとめ
人間の人格は幼少期から10歳までの間に大部分が形成されるものであり、幼少期における親との関係性や育った環境などが大きく影響します。
ただし、上記でいう「人格」は主に性格特性や価値観を示すものであり、いわゆる「人間性」や「器の大きさ」などは、大人になってからでも十分に形成することが可能です。
人材育成や組織開発の一環として、人格形成に取り組むのであれば、職場環境を整えることが大切です。職場の中で従業員が心理的安全性を感じられれば精神的に安定し、最大限のパフォーマンスを発揮できるようになるでしょう。
また、人格形成には研修を利用することも有効です。HRドクターを運営する研修会社ジェイックは、ヒューマンスキルや人間性向上につながる研修を得意としており、人格形成につながる3つの研修を提供しています。
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