PDCAサイクルはPlan(計画)Do(実行)Check(評価)Action(改善)の頭文字をとったもので、運用することで継続的な改善や成長が可能になるフレームワークです。
PDCAサイクルは非常に有名なフレームワークですが、意外とうまく活用できていない人もいます。本記事ではPDCAサイクルの概要、メリット・デメリット、類似のフレームワークを紹介します。
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<目次>
- PDCAサイクルとは?
- PDCAサイクルに含まれる4工程の詳細
- PDCAサイクルを取り入れることで得られるメリット3つ
- PDCAサイクルのデメリットや注意点
- PDCAサイクルが失敗する要因をステップごとに解説
- PDCAサイクルは古い?他フレームワークとの違いを紹介
- まとめ
PDCAサイクルとは?
PDCAサイクルとは、1950年代にW・エドワーズ・デミングが製造現場の改善に向けて提唱したフレームワークで、以下4つの工程の頭文字を取ったものです。
- Plan(計画)
- Do(実行)
- Check(評価)
- Action(改善)
PDCAサイクルは、ビジネス現場で使われているフレームワークの中でもよく知られ、幅広く使われています。
もともと製造現場における品質や生産性改善のために使われていたこともあり、PDCAサイクルは継続的な改善や成長には最適なフレームワークです。
また、週・月・四半期・半期・通期などを単位として、目標達成に向けたPDCAサイクルを回すことで目標達成に近づいたり、目標達成力を高めたりすることもできます。
PDCAサイクルに含まれる4工程の詳細
PDCAサイクルは以下4つの工程により成り立ちます。
- 1.Plan(計画)
- 2.Do(実行)
- 3.Check(評価)
- 4.Action(改善)
各工程で行うべきことについて説明します。
Plan(計画)
Planのフェーズでは目標を設定し、また目標達成するための計画を立案します。計画を立案するにあたって決めるべき内容には、主に以下のようなものが含まれます。
- 具体的な活動内容・方法
- 準備する物
- 人員・予算などのリソース配分
- 実施のスケジュール
- プロセス目標
事前にしっかりと計画を立てることが、PDCAサイクルでプロジェクトを成功させるためのポイントです。計画の品質が次のDo(実行)フェーズの成功を左右します。
大切なのは誰が見てもわかりやすいように、具体的な数字・日時・固有名詞などを使って計画を詰めていくことです。
Do(実行)
Plan(計画)で立てた計画に沿って、行動に移します。計画を忠実に実行するだけでなく、状況や実際の結果に応じて計画を修正しながら、遂行することも求められます。
イメージとしては、大きな「D(実行)」の中で細かなPDCAを回していく感じです。
なお、実行する際には、計画で決めたことをやり切ることが非常に大切です。
決めたプロセスをやり切らないと、上手くいかなかった際にも「計画が悪かったのか」「やり切れなかったから上手くいかなかったのか」、評価が出来なくなります。
Check(評価)
Check(評価)の工程では、行動によって得られた結果をまとめて評価をします。定量的な数値を用いることはもちろん、顧客の声などの定性的な情報も踏まえて分析します。
初期の計画とズレがあった箇所や、代わりに何が得られたかなどを検証することで、次の計画を立案するうえで参考になる情報が得られます。
しっかりと計画に照らし合わせ、客観的な評価をすることで、PDCAサイクルの質を向上させられます。
なお、日本人は評価が「上手くいかなかった部分」の振り返りに偏りがちですが、「上手くいったこと」の振り返りも大切です。
上手くいったことの要因などを分析することで、成功に再現性を持たせましょう。
Action(改善)
Check(評価)の内容を元に、次のPDCAサイクルに生かすための改善点を洗い出します。不足していた部分や新たな課題に対する対策を考え、継続的に改善を図ることが大切です。
同時に成功した部分を拡大・再生産することも大事です。
改善点を上げる際は柔軟に対応できるように、時には中止・延期するといった選択肢を持つことも大切です。
挙げた改善点は新たなPDCAサイクルのPlan(計画)に組み込むことで、次につなげましょう。
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PDCAサイクルを取り入れることで得られるメリット3つ
PDCAサイクルを取り入れることで、以下3つのメリットを得られます。
- 1.目標を明確に設定できる
- 2.行動に集中しやすくなる
- 3.課題や改善点が見えやすくなる
ひとつずつ見ていきましょう。
1. 目標を明確に設定できる
PDCAサイクルの第一段階である「Plan(計画)」には、単に行動計画を立てるだけでなく、プロジェクトの背後にある目的や目標を明確にすることも含まれます。
明確な目標を設定することでチームが進むべき方向性がはっきりし、無駄な労力や判断に迷う時間を削減できるでしょう。
目標を明確にできればモチベーションの向上や成果の可視化にもつながります。
2. 行動に集中しやすくなる
最初のPlan(計画)を明確にすることで、次のDo(実行)において具体的なアクションやタスクに集中できるようになります。
明確な計画を立てることで散漫とした取り組みや無駄な労力の削減につながり、目的達成への道のりを短縮できます。
さらに、計画に基づく行動は全体の流れや方向性を失わずに進められるため、チーム内での認識のズレやミスコミュニケーションのリスク低減も期待できるでしょう。
3. 課題や改善点が見えやすくなる
PDCAサイクルのCheck(評価)のフェーズでプロジェクトや業務の現状を冷静に評価することで、問題点や課題が明確になります。
具体的な実績やデータに基づく評価を行うことで、感覚的な判断だけでなく客観的な視点での課題を抽出できます。
さらに、次のAction(改善)の段階において、先に特定された課題や問題点に対する改善策を策定および実施が可能です。
PDCAサイクルのデメリットや注意点
PDCAサイクルは幅広く使われているワークフローですが、決して万能ではありません。取り入れる際は、以下のデメリットがあることは把握しておきましょう。
- 1.サイクルを回すこと自体が目的になる
- 2.計画に固執してしまう
- 3.新しいアイデアを生み出すのが難しい
一つずつ詳しく解説します。
1. サイクルを回すこと自体が目的になる
PDCAサイクルは人事評価制度などと連携させることも多くあります。そうした際、回すこと自体が目的化してしまう恐れがあります。
そうなれば、本来の目的である「業務やプロジェクトの質の向上」が二の次になりかねません。
例えば、計画の精度を過剰に高めたり、評価を繰り返したりすることに忙しくなり、実際の行動や改善が後回しにされたり形骸化してしまったりするケースです。
PDCAサイクルを回すことが目的化すると、改善が実現しないまま惰性的にPDCAサイクルを繰り返すことになってしまい、労力に見合う成果も得られなくなるでしょう。
2. 計画に固執してしまう
PDCAサイクルはあらかじめ立てた計画に基づいて行動し、評価・改善を繰り返すサイクルです。
しかし、実際のビジネスシーンでは環境や状況は変動しますし、計画通りに物事が進むことは殆どありません。
PDCAサイクルをきちんと回している人や組織であれば、新たな状況に直面したとしても、当初のPlan(計画)を廃棄するといった選択肢を取れます。
しかし、PDCAサイクルを回すことが目的化していたり判断を誤ったりすると、「予期せぬ状況が起こったにも関わらず当初のPlan(計画)に拘ってしまい、そのまま実行する」といった過ちを犯すことがあります。
PDCAサイクルで計画を立てることは大切ですが、状況によって変更もしくは放棄するといった大胆な選択肢を取ることも大切です。
3. 新しいアイデアを生み出すのが難しい
PDCAサイクルは繰り返すことで継続的な実現を実施できる一方で、従来の枠組みや既存のアイデアから大きく逸脱する新しい視点や発想が難しい側面もあります。
イメージとしては、「改善が得意な一方で、イノベーションは苦手」といった感覚です。
現代のビジネスでは、新しいアイデアやイノベーションは業界の変化や競争の中での生存を保つために必要不可欠です。
従って、PDCAサイクルを運用しながら、同時に新しい発想を生み出すための別の施策も、併せて取り入れるとよいでしょう。
PDCAサイクルが失敗する要因をステップごとに解説
PDCAサイクルは、運用の仕方次第では失敗に終わってしまう恐れがあります。本章ではPDCAサイクルが失敗する要因について、プロセスごとに解説します。
失敗要因を知っておくことで、うまく運用することができるでしょう。
Plan(計画)
Plan(計画)で失敗する要因の一例は、以下のとおりです。
- 目標が不明確である
- 目標が非現実的である
- 計画を立てるための情報が足りなすぎる
- 関係者とのコミュニケーションが不足している など
上記のような状況だと、現実的な計画を立てることができず、実行する際にもトラブルが生じがちです。
意図的にチャレンジングな目標を掲げる、情報収集も兼ねて大まかな計画だけで動いてみるといったことはありますが、基本的にはある程度の精度をもった計画を立てることがPDCAを成功させるための大前提です。
Do(実行)
Do(実行)段階で失敗する要因の一例は、以下のとおりです。
- 計画段階で予算や時間・人員の配分が適切ではなかった
- チーム内での役割分担やコミュニケーションが不足している
- 計画が全員に共有されていない
- きちんと進捗管理されていない など
実行段階で失敗する要因のひとつは計画精度が低いことです。先ほどの繰り返しになりますが、そもそも無理がある計画、実行しても目標達成できない計画に取り組んでもあまり意味はありません。
現実的、また具体的な計画がないと、上手くいかなかった時にもどこに問題があったのかを検証することが困難です。
また、実行体制も大切です。立てた計画をきちんとやりきらないと次の評価のクオリティも落ちてしまいます。
「計画を実行しきれなかった」という振り返りが多い場合、実行力・実行体制を見直したほうがよいでしょう。
Check(評価)
Check(評価)で失敗する要因の一例は、以下のとおりです。
- きちんとしたデータが収集されていない
- データに基づく振り返りができていない
- データでの検証と定性的な振り返りのバランスが悪い
- 計画を実行しきれていない など
評価がしっかりなされないと、次のフェーズのAction(改善)で、必要な改善点を見逃すリスクが高まります。
評価が上手くいかない要因は、まず、そもそも検証データがきちんと取れていない、計画を実行しきれていないといったケースが多くあります。
当たり前の話ですが、振り返る材料が足りなければ振り返りの精度は落ちてしまいます。
また、振り返りの際には、定量と定性、両方の側面で振り返ることが大切です。
データに基づかない感覚的な振り返りばかりでは精度に不安が生じますし、データだけを見ていても改善のヒントは得られません。
なお、評価を行う際は、第三者などに振り返りMTGを進行してもらったり、オブザーブして意見をもらったりすることもおすすめです。
たとえ明確な評価基準を決めたとしても、評価する側の人がチームメンバーだけだと無意識のうちに評価が甘くなったり、失敗を認められなかったりして、客観的な分析が行えなくなる恐れがあります。
Action(改善)
Action(改善)の段階で失敗する要因の一例は、以下のとおりです。
- 評価結果を適切に反映できていない
- 改善策の実施が遅れている
- 再評価のサイクルが不足している など
改善点を見つけるためには、さまざまな視点から考えてみることが大切です。当事者目線だけでなく顧客や取引先など、あらゆる立場に立って考えてみるとさまざまな改善点が見つかりやすくなります。
逆に、改善点を明確にできないまま次のサイクルへ進んでしまうと、同じ問題が繰り返されるリスクが増大してしまいます。
継続的に改善できることがPDCAサイクルのメリットですので、評価⇒改善にきちんと取り組むことが大切です。
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PDCAサイクルは古い?他フレームワークとの違いを紹介
PDCAサイクルは代表的なフレームワークのひとつですが、近年では「PDCAサイクルは古い」といった論調も少なくありません。
結論から言うと、PDCAサイクルは今でも現役で使える有効なフレームワークです。一方で、状況に応じて他のフレームワークを使い分けることも大切です。
本章ではPDCAサイクルと類似したフレームワークを4つ紹介します。
- OODAループ
- STPDサイクル
- DCAPサイクル
- PDRサイクル
各フレームワークとPDCAサイクルとの違いや使い分けのポイントも解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
OODAループ
OODAループは以下4つのフェーズから構成されるフレームワークです。
- Observe(観察)
- Orient(方向付け)
- Decide(意思決定)
- Action(行動)
OODAループは迅速な意思決定と対応が求められる状況に適しています。
もともと米国空軍のパイロットが生み出したフレームワークであり、数秒で状況が変動していく空中戦での思考対応プロセスをフレームワークしたものです。
少人数のチームでプロジェクトを進める、状況が掴めておらず多少動いてみてから計画を決める必要があるといった場面の場合は、OODAループを取り入れてみてください。
大きなPDCAサイクルの中の「Do(実行)」部分にOODAループを組み込むといった考え方をするのもよいでしょう。
STPDサイクル
STPDサイクルは、以下4つのフェーズから構成されるフレームワークのことです。
- See(見る)
- Think(考える)
- Plan(計画)
- Do(行動)
STPDサイクルは、Plan(計画)の前に、See(見る)、Think(考える)というプロセスを加え、より深い状況理解や情報分析を基に計画・行動するフレームワークです。
一方で、STPDにはPDCAサイクルで言うCheckやActionといったプロセスがなく、実行後のプロセスが省略されています。
大きな一手、または後から取り消せない意思決定をするときなどは、慎重に状況を見て思考するSTPDサイクルが向いているでしょう。
STPDサイクルはPDCAサイクルと組み合わせて、STPD⇒CAという流れで進めるのもおすすめです。
DCAPサイクル
「DCAPサイクル」は以下の順番で進めるフレームワークです。
- 1.Do(行動)
- 2.Check(評価)
- 3.Action(改善)
- 4.Plan(計画)
DCAPサイクルは、実行するフェーズ自体はPDCAサイクルと同じです。しかし、DCAPサイクルではまず行動してから、結果を評価し、改善策を考えて計画に反映させるという順番です。
DCAPサイクルは迅速な行動が重視される環境や、状況が頻繁に変わる場面、あまり事前情報がない中でとりあえず試してみてから本格的な計画を作成する、といった状況に向いています。
PDRサイクル
「PDRサイクル」は以下3つのフェーズから構成されるフレームワークです。
- Prep(準備)
- Do(実行)
- Review(見直し)
PDRサイクルのPrepは、PDCAサイクルのPlan(計画)に相当するものです。ただ、Plan(計画)を簡素化した行動に向けた最低限の準備に限るという感覚です。
従って、PDRサイクルは、PDCAサイクルよりも素早く実行に取りかかれることが特徴です。
また、PDCAサイクルは明確に評価と改善のプロセスが分かれているのに対し、PDRサイクルは評価と改善を合わせたReview(見直し)というステップになっています。
つまり、PDRサイクルはPDCAサイクルを簡略化、シンプルにしたものといえるでしょう。
実行するにあたって起こり得るリスクが少ない状況で、スピーディーに物事を進めるのに適したフレームワークがPDRサイクルです。
まとめ
PDCAサイクルはPlan(計画)Do(実行)Check(評価)Action(改善)という4つのステップを順番に繰り返すフレームワークです。
計画して実行して改善するというサイクルを回すことで、確実な改善や成長を実現できます。
一方で、新しいアイデアを生み出すのが難しかったり、変化の激しい環境には向いていなかったりするなどのデメリットもあります。
そのため、状況や環境に応じて他のフレームワークと併用したり使い分けたりすることが有効です。
本記事ではPDCAサイクル以外のフレームワークについていくつか紹介しましたが、覚えておくと有効に活用できるものは、他にも数多く存在します。
業務を円滑に進められるフレームワークについては、以下のページより無料で資料にて閲覧できますので、ぜひ参考にしてみてください。