OODAループとは?PDCAサイクルとの違い、導入時や活用のポイントを解説

更新:2024/10/19

作成:2023/09/12

古庄 拓

古庄 拓

株式会社ジェイック執行役員

OODAループとは?|PDCAサイクルとの違いや活用のポイントを解説

OODA(ウーダ)ループは、スピーディーな意思決定と実行を可能にするためのフレームワークで、Observe(観察)⇔Orient(状況判断)⇔Decide(意思決定)⇔Act(行動)という4つの要素の頭文字をつなげた言葉です。

 

記事では、OODAループの概要と、比較されることの多いPDCAサイクルとの違い、OODAループが注目されている背景、概要とメリット・デメリット、導入時のポイントやOODAループが有効なシチュエーションなどを紹介します。

 

<目次>

OODAループとは?

OODA(ウーダ)ループは、スピーディーな意思決定と実行を可能にするためのフレームワークで、Observe(観察)⇔Orient(状況判断)⇔Decide(意思決定)⇔Act(行動)という4つの要素をループさせながら意思決定を行っていく考え方です。

 

元々は1970年代のアメリカ空軍で開発された思考フレームワークであり、効果と汎用性の高さからビジネス界でも注目されるようになり、今日では急激な環境変化に耐えうる有用なツールとして多くの企業で活用されています。

 

PDCAサイクルとの違い

OODAループとよく比較されるフレームワークがPDCAサイクルです。PDCAサイクルはPlan(計画)⇒Do(実行)⇒Check(評価)⇒Action(改善)の4つのフェーズを繰り返すフレームワークです。品質管理の分野で開発され、現在では、人事評価における目標管理などを含めて、ビジネス場面で汎用的に用いられています。

 

PDCAサイクルとOODAループは、意思決定と実行のサイクルという意味では似ていますが、PDCAサイクルは、PDCAサイクルは「計画 ⇒ 実行 ⇒ 検証 ⇒ 改善」を一方向で動かすのに対して、OODAループでは、「観察 ⇔ 状況判断 ⇔ 意思決定 ⇔ 行動」の中を双方向で動きながら意思決定と実行を繰り返していく形です。

 

また、PDCAサイクルとOODAループは重きが置かれている役割と目的が異なると言うこともできるでしょう。PDCAサイクルは「改善」に重点を置き、PDCAを繰り返すなかで課題を特定し改善を積み重ねていくフレームワークです。

 

これに対してOODAは競争環境下での「意思決定」に重点を置き、素早く判断を下し迅速な行動を取るために用いるフレームワークです。

 

それぞれの開発沿革である「PDCAサイクル⇒製造業の工場において、組織単位で品質改善を進めていく」と「OODAループ⇒空軍パイロットが、コンマ秒の意思決定を繰り返していく」という場面と対比してイメージすると分かりやすいでしょう。

 

PDCAサイクルとOODAループはどちらが優れている/劣っているというものではなく、後述しますが、特徴に合わせて使い分ける、また、組み合わせて使っていくことが大切です。

 

 

OODAループが注目される背景

OODAループが注目され始めた背景には、AIなどの先端技術の発展が関係しています。情報技術の発展が加速するにつれて、市場や消費者のニーズも激しく変化するようになりました。また、インターネットを通じて世界中がつながることで、ひとつの技術開発や新サービスが一気に世界中に影響するようにもなっています。

 

そうした中で事業を進める上では迅速な意思決定が不可欠となっています。時代の波に取り残されず生き残るには、すばやく適切な判断をして行動に移すかが重要です。そこで短時間で実行に移していくOODAループに注目が集まるようになってきたのです。

 

 

OODAループを構成する4つの要素

OODAループは4つのフェーズに分かれており、円を描くように各フェーズを行きつ戻りつしながら運用します。

 

Observe:観察

Observe(観察)では、まず市場や環境、状況などを観察して現状を把握します。観察で大事なのは、外部環境や内部環境、競合他社の動向などを把握することです。情報の収集方法としては、市場調査や顧客のフィードバック、社内のデータ分析など多様な手段があります。変化の速い昨今のビジネスシーンでは、Observeによっていち早く変化に気付くことが重要です。

 

Orient:判断

Orient(状況判断)は、Observeで収集したデータをもとに状況判断を行うフェーズです。今までの経験則や傾向なども踏まえて、今後の戦略や方向性を定め、ゴールに向かうための方向付けを行います。まだ具体的な行動プランには落とし込まず、望む結果を得るための仮説や選択肢が複数ある状況です。

 

Decide:決定

Decide(意思決定)は、Orientで明確にした方向性をもとに、「実際に効果が高い施策はなにか?」を判断し具体的なアクションプランを決定するフェーズです。意思決定に際しては、コストや労力、リスクや不確実性の考慮も忘れてはいけません。より現実的で適切な対策を講じることが大切です。

 

Act:実行

最終フェーズであるAct(行動)では、Decideで決定したアクションプランを実行に移します。実行に当たっては適宜調整を加え、臨機応変に対応することも必要です。実行を終えたら再び「Observe」に戻り、必要に応じてActの結果検証とデータの再収集を行います。

 

 

OODAループのメリット

OODAループを取り入れることで、次のようなメリットが期待できます。

 

すばやく結果が出せる

OODAループは、観察から意思決定、実行までを素早く行うためのフレームワークです。空軍パイロットが空中戦などの中で、コンマ秒で意思決定する際の思考をフレームワークにしたものですから、「いかに短時間で判断・意思決定ができるか」という思考が根本にあります。

 

臨機応変な行動が可能になる

OODAループは現場の状況に応じて柔軟かつ迅速に行動できるフレームワークになっており、従業員一人ひとりに臨機応変な行動を促す意識を定着させることにも役立ちます。「観察」をもとに何をすべきかを判断する思考パターンが組織に浸透すれば、顧客のニーズや作業上の不備なども個々の社員がすばやく把握できるようになるでしょう。

 

個人の裁量を大きくすることができる

OODAループは個人や小集団など小規模単位での行動が基本となっており、上述の通り、個々人の情報収集や判断に重きが置かれるため、個人の裁量で動ける範囲が広がります。一人ひとりの裁量が大きくなれば、生産性の底上げにもつながり、イレギュラーな事態への対応などもスムーズに進むようになるでしょう。

 

試行錯誤する習慣が身に付く

OODAループは、「短期間で様々な事柄を試行錯誤して実行に移す」ことを繰り返します。そのためOODAループを実行していくことで、自然と「繰り返し試行錯誤する」習慣を身に付けさせる効果もあるでしょう。

 

 

OODAループのデメリットと留意点

OODAループを取り入れる場合、気をつけておきたいポイントもいくつかあります。以下、OODAループの活用を検討する際に留意すべきデメリットをご紹介していきます。

 

中長期的な計画には向かない

OODAループは即応性に重点を置いたフレームワークで、検証や修正など効果測定のフェーズがないため、中長期的な計画には向いていません。中長期的な計画が必要な場合は、PDCAサイクルなど別の手法が適しているでしょう。

 

定型業務の改善には使いづらい

「このような結果が欲しい」ではなく「こんなことが起きている」という状況を受け、迅速に解決できるように動き出すのがOODAループの考え方です。そのため「作業を効率化したい」「品質を向上させたい」といった改善を繰り返していく作業には向いていません。

 

意思決定がバラバラになる

PDCAサイクルと異なり、OODAループには「計画」や「目標設定」がありません。これは空中戦のように明確なゴールがあり、かつ、高度なトレーニングを受けたパイロットが意思決定していくという前提があるからです。

 

しかし、実際のビジネスなどでは、経営層~現場、ベテランと経験が浅い新人・若手では意思決定の基準や事業計画の理解度が大きく異なります。従って、OODAループで無差別に個人や小組織に意思決定を任せてしまうと、異なる基準や考え方の下で意思決定が行われ、動きがバラバラになってしまうリスクがあります。

 

失敗するリスクがある

OODAループは状況に応じてスピーディーに意思決定するためのフレームワークであり、計画や検証といったプロセスがありません。リスクよりもスピード重視でループさせるのがOODAループであると捉えて、リスクを低減したい場合は綿密な計画を立てるPDCAサイクルを活用する方がいいでしょう。

 

 

OODAループ導入時にやるべきこと

実際にOODAループを自社の業務に導入する際には、以下の点に留意すると効果的に活用できるでしょう。

 

組織全体の目標やビジョンを共有する

OODAループは前述の通り、個々の裁量が大きくなる傾向にあるため、「組織全体が同じ方向を向いていること、判断基準を共有していること」が活用において大切です。

 

リーダーが組織全体に目標やビジョンを浸透させ、人ひとりの責任を明確にすることによって、実行の際の判断基準は何かをメンバーに示すことが大切になります。

 

対話の機会を作る

OODAループを運用する際は、社内でできるだけ多く対話の機会を作ることも大切です。

 

打ち出されるビジョンや目標に対してメンバー間で対話をする機会を増やすことで、メンバーの理解が深まります。そして、メンバーも十分な理解や納得感を持った状態でOODAループを運用することができるでしょう。

 

短時間で何度もループさせる

ループを何度も回転させることでデータや仮説、意思決定の精度が高まるのがOODAループのメリットです。

 

1回の判断を間違えないよう慎重になりすぎると、判断までに長い時間を要してしまいます。リスクを許容できる範囲に留めることは大切ですが、失敗を恐れすぎて、観察や状況判断に時間をかけるのではなく、短時間でより多くのループを回転させることが大切です。

 

 

OODAループが有効なシチュエーションとは

OODAループは、変化の激しい環境や先の見通しが立てにくい状況で特に強みを発揮します。OODAループが有効なシチュエーションとしては、以下のような例があります。

 

変化と競争が激しい業界や局面

ITなど変化や競争が激しい業界では、日々の状況をすばやく把握する必要があります。PDCAサイクルではサイクルを回している間に、計画を立てた時と状況が大きく変わってしまう場合もあるため、迅速な意思決定と実行を可能にするOODAループが適しています。

 

またどのような業界であれ、自社が置かれている局面が急変している際、置かれた状況を分析し「何をすべきか」を打ち出すのが急務の際にはOODAループは有効でしょう。

 

起業や新規事業の立ち上げ時

起業や新規事業の立ち上げなど、先の見通しを立てにくい状況にもOODAループは有効です。

 

新規事業などでは、計画を立てようにも根拠となる情報や知見が足りないことばかりです。計画を立てるにも時間がかかりますし、立てた計画通りに物事が進むことは殆どありません。

 

新しいビジネスモデルを構築する過程で生じる課題や問題点を解決するには、迅速な状況の把握と対応策の決定が求められます。OODAループを活用して、4つのフェーズを繰り返すなかで、ビジネスモデルの改善や成功につながる戦略を策定するのにも役立つでしょう。

 

中長期的なPDCAが回っているとき

中長期的なスケールでPDCAが回っているとき、Do(実行)のフェーズ内をOODAループの考え方で動かしいくこともとても有効です。

 

中長期での方向性や計画が決まっていることで、OODAループのデメリットである判断のブレや検証の不足などが起こりにくく、同時にPDCAサイクルの弱みとなる改善スピードの遅さや計画倒れとなるリスクを補えます。

 

 

まとめ

OODA(ウーダ)ループは、Observe(観察)⇔Orient(状況判断)⇔Decide(意思決定)⇔Act(行動)という4要素の頭文字をつなげた言葉で、先の見通しがつかない状況での柔軟な対処法として適したフレームワークです。

 

OODAループを上手く活用すれば、現場の裁量ですばやく意思決定できる場面が増えるため、従業員のモチベーションが上がり、組織へのエンゲージメントが高まることも期待できます。

 

ただし、ビジネス上の課題によってはOODAループの適用があまり向いていないケースもあります。類似した意思決定と実行のフレームワークであるPDCAサイクルとの違いや特徴を理解して、うまく使い分ける、また組み合わせることが大切です。

 

 

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック執行役員

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。専門は新卒および中途採用、マーケティング、学習理論

著書、登壇セミナー

・Inside Sales Conference「オンライン時代に売上を伸ばす。新規開拓を加速する体制づくり」など

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