最近、10年前、20年前に比べて、管理職になりたがらない若手が増えていることを感じている経営層や人事の方が多くなっています。
一昔前のビジネスパーソンは、出世することが絶対的なキャリア目標のひとつだったと思います。しかし今の若者は、出世することのデメリットばかりに目を向けて、管理職になりたいと思わない人が増えています。
こうなると次世代のリーダーがなかなか育たず、育成に悩まれる企業様も多いことでしょう。
本レポートではジェイック常務取締役の近藤より、今の若手たちはなぜ管理職になりたがらないのか。若手たちの責任感はどうすれば醸成されるのかを、データや事例をもとに解説します。
*本レポートは2023年6月13日に開催したセミナーを基に作成したものです。予めご了承ください。
本記事は、全2部構成でお送りします。Vol.2は下記よりどうぞ。
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最近、10年前、20年前に比べて、管理職になりたがらない若手が増えていることを感じている経営層や人事の方が多くなっています。 一昔前のビジネスパーソンは、出世することが絶対的なキャリア目標のひとつだったと思います。...
<目次>
- 管理職になりたがらない若手社員たち
- 若手社員が管理職になりたがらない理由
- 専門スキルを磨く=市場価値が上がるという勘違い
- 会社をレベルアップさせるのは中堅社員
- 育成すべき中堅社員とは
- 意識を改革させるための研修
管理職になりたがらない若手社員たち
最近、管理職になりたがらない若手社員や中堅社員がすごく増えているという話をお客様からよくお伺いします。
今は管理職になることや出世に対する価値観やイメージが10年前20年前とは大きく違います。
一昔前はビジネスパーソンにとって「出世」は絶対的なキャリア目標の1つだったと思います。
しかし、今は「出世する=責任が増えるだけ」というマイナスイメージを持ってる若手が増えてきています。
管理職になりたくない若手がやる気がなく、仕事を全然しないというわけではありません。仕事としても、年数を重ねれば、処理は早くなってくるし、徐々にミスもなくなってきます。
従って、出世したがらない若手がいても、今すぐ大きな問題が生じるわけではありません。
しかし、彼らは「言われたこと以上のことをやらない」という側面があります。後輩や同僚が困っているときに「大変そうだな」と傍観して助けにいかない傾向にあるということです。
また、目標達成意欲が低い人も多いです。「やるべきことはやっているし、目標まで届かなくても仕方ない」と考える人です。
こういう人たちが、言われたこと以上をやろうとしてくれたり、自分の後輩や同僚に良い影響を及ぼして目標達成に意欲的に取り組んでくれるように変わってもらわないと、長期的・継続的に組織として成長していくことは難しいでしょう。
若手社員が管理職になりたがらない理由
では改めて、いまの管理職になりたがらない理由を確認しておきたいと思います。上記は厚生労働省の調査結果ですが、管理職になりたくない理由は「責任が重くなる」が一番多くて71%。続いて「業務量・労働時間が増える」となっています。
「責任が重くなる」から管理職になりたくないとはどういうことでしょうか?
確かに管理職になると様々な責任が出てきます。成果に対する責任も、個人からチームの成果の責任対象になります。また、部下の失敗に対する責任、部下の育成に関する責任も出てきます。
このように責任が重くなります。そして、若手から見て「給与も上がるけど、責任の増え方とのバランスが悪い」ということです。
労働量と賃金のバランスが悪いから管理職を目指したくないという人は多いです。先ほどのスライドでいえば、34%の人が労働量と賃金のバランスに不満を抱えています。
また、この10数年で大きく変わったのはワークライフバランスの意識です。
上司を見ると「プライベートよりも仕事を優先してるように見える」「あんなに仕事しなきゃいけないのかと思われている」ということです。
ワークライフバランスの意識が当たり前になった中で、管理職になると自分の大事にしているものよりも仕事を優先しないといけないというマイナスイメージは強く、「それであれば、管理職にはなりたくない」ということです。
専門スキルを磨く=市場価値が上がるという勘違い
また、いまの若手が「管理職になりたくない」と思う裏側に「管理職にならなくても大丈夫」という感覚があるケースも少なくありません。
「管理職にならなくても大丈夫」と思っている理由として意外と多いのが「専門スキルを磨いていれば市場価値が上がる」という勘違いです。
確かに、昔と比べると多くの会社でキャリアパスも「マネジメント」と「プロフェッショナル」と分かれ、プロフェッショナルとしてキャリアを作る選択肢が出てきます。また、20代のころは専門性を磨けば市場価値も高まります。
しかし、数十年単位で考えてみるとどうでしょう。
本当に専門性だけでキャリアを作っていける人はかなり希少です。
たとえば、ご存じの通り、AIの発達スピードはすさまじいものがあります。すると、専門スキルだと思ってたことが専門スキルじゃなくなってくるかもしれません。また、大手中心に「役割に合わせた仕事をやる人を雇用して、見合った賃金を支払う」というジョブ型雇用の導入も進んでいます。
この2つを掛け合わせると、必要なうちは優遇されるけど、例えば、今の専門性が通じない部門に異動することは難しいし、あるプロジェクトが終了になると雇用が打ち切りになるということもあり得ます。また、今までよりも組織におけるジョブの価値が下がれば、収入減になるかもしれません。
このようにAIやジョブ型雇用が進む中では、本当のプロフェッショナル、AIなどに代替されない高い専門性を持っていなければ仕事がなくなるかもしれないということです。
そして、多少の専門性を持った個人よりも、そうした専門性を持った個人をまとめてチームや組織の成果を生み出せる人材、つまり、マネジメントできる人間の評価や待遇が高くなることも自然なことです。
このように若手が「管理職にならなくても大丈夫」と思っている裏側にある「専門スキルを磨いていれば市場価値が上がる」という理由は間違っているわけではありませんが、それが多くの人の適用される普遍的な原則かというと、決してそうではないということです。
この事実を若手中堅社員にきちんと伝えておく必要があります。
そして、誤解されがちですが、マネジメント能力というのも実はある種の専門性です。そして、多様な人を取りまとめながらモチベーションを高めていく、組織の成果を生み出すという専門性はすぐにAIに置き換えられる可能性は低く、じつは市場価値の高い仕事になっていくでしょう。
いまは正規雇用労働者の2人に1人は転職経験があるという時代になっています。その中で、若手社員は「専門スキルを学んで市場価値が高まったら転職しよう」と考えている社員も多くいます。
これ自体は責められる考えではありませんし、20代のうちは十分通用する考えである部分もあります。しかし、同時に、もしかすると間違った考え方かもしれないということを我々はしっかり伝えていく必要もあるでしょう。
それは「組織から求められてること、期待されていることをやりきってこそ市場価値が上がっていく」ということです。
繰り返しになりますが、確かにゼロからある程度の専門性が身に付いていくと市場価値はあがっていくしょう。
しかし、「ある程度の専門性」を持った人よりも、そうした人をマネジメントして組織の成果を作れる人の方がぐっと市場価値は高くなるわけです。
タスクを設計して、人と人の調整をして、人材育成をして、組織の成果にコミットする仕事の経験というのは、すごく希少性が高いということを知ってもらうことが重要です。
今後、人事制度や給与制度が変わっていく会社も多いと思います。
その中で、マネジメント業務ができる社員の給料は伸び率が高くなるということは伝えてあげた方がいいでしょう。責任と給与が見合わないから管理職になりたくないという人も多いので、しっかりと給与が上がっていく可能性はあるということを伝えてあげることは大切です。
- 責任が増えるだけでなく権限が広がる
- こなし業務ではなく挑戦できる仕事が増える
管理職になることのメリットを理解してもらう
また、マネジメントの仕事に就くと、確かに責任も増えるけど、権限が増える。組織や世の中に大きな影響を与える仕事ができる。ということを若い人たちにも理解してもらうと、また状況は変わっていくでしょう。
会社をレベルアップさせるのは中堅社員
組織を強くしていくことを考えると、中堅社員の活躍は大きいです。ここからは、どのようにして中堅社員を伸ばすのかをお伝えしていきます。
会社を強くしていくには若手も大事ですが、短期的には中堅社員がどう成果を出すかにもかかっています。中堅社員は、上層部と現場の若手の大切な架け橋になってくれる存在です。ここでの中堅社員とはチームリーダーから課長ぐらいの階層です。
組織において、実際に現場の声を聞き、現場を動かすのは中堅社員の役割になってるケースが多いでしょう。
中堅社員を鍛え、次世代のリーダー:幹部候補に育てていけるかが、組織開発していく上で大きな鍵になってきます。
中堅社員と言っても幅があります。その中で誰を対象にして、優先的に育てていけばいいのかを確認してみたいと思います。
育成すべき中堅社員とは
中堅社員を意識の状態で3階層に分けると上記のようになります。いわゆる「2:6:2の法則」です。
意識が高い人たちは、仕事にやりがいを感じていて目標達成に意欲的で、周囲を巻き込むコミュニケーションをとっている人です。
真ん中の普通ぐらいの人は、仕事熱心だけど目標達成はもうちょいで、1人で仕事をすることを好みます。
そして意識が低い人は、仕事は生きていくために、という意識でやっています。
人材育成するときには、最初は「意識が高い」人の育成を進めるべきです。
ただし、この2割は育成対象にしなくても自分で成長してくれる存在でもあります。言われなくても自分自身で考えて成長します。従って、育てるというよりも、邪魔をしない、機会を提供する、促進するといった感覚かもしれません。
そして、次の残りの8割です。
中堅層の全体的な底上げを図ろうとする時、中途採用でどんどん人材を獲得できるなら意図的に新陳代謝を増やすという手もあります。
しかし今、採用はすごく大変です。転職してる人たちは多いですが、どちらかというと意識が高い人たちが転職しています。意識の高い人と出会うのはなかなか難しいです。フリーランスになったり、人脈で転職したり、より大手や条件の良い会社にステップアップしていきます。
従って、いま組織にいる中堅社員をどう底上げしていくか、引き上げていくかが大事です。
そして、まず最初に上位の2割の育成を実施する。次に手を付けるべき層は残った8割のうち、どこでしょうか?
ポイントは、残った8割、「意識が普通」の6割と「意識が低い」の2割をさらに分解して考えてみることです。
「意識が普通」「意識が低い」の階層も、再び2:6:2に分かれます。
そして、「意識が普通」「意識が低い」、それぞれの上の2割にテコ入れを図っていくと、伸びやすいでしょう。
「意識が普通」「意識が低い」のそれぞれの上2割が伸びていくと、全体的なボトムアップが図れます。
また、上の2割に対して意識改革、教育を施していくと、上の層に準ずる形で下の層も上がってきてくれる可能性があります。
そして、意識があまり高くなかった社員が覚醒してくると、元から意識が高かった社員の刺激にもなります。意識が高い社員は、同世代の成長を刺激を受けて、さらに意識が上がっていく効果が得られます。その結果、組織全体の成長意欲が高まって、組織全体が強くなっていくのです。
意識を改革させるための研修
「意識が普通」と「意識が低い」の上2割を伸ばすにはどうすればいいか、もう一段具体的に考えてみましょう。
例えば、1週間研修しようとした時、意識が高い層から低い層までを一緒にして研修をすると、やはり意識が高い層が研修内で中心人物になってきます。そうすると意識が普通・低い層は、意識が高い社員任せになってモチベーションが上がりません。意識高い社員が一緒に入ってると、ある種の「ゆとり」「さぼる余地」を与えてしまいます。
従って、上から下までをごちゃ混ぜにして刺激をあたえようとするよりも、それぞれの階層を分けて研修して、研修内でリーダーになれる機会を作っていくことがポイントです。
座学でみんな一緒に学ぶのではなくて、研修内でグループを作って、リーダー役としてグループを引っ張ってもらうような研修がおすすめです。
リーダーになる体験を得ると、自信につながります。その結果として、前述したように意識が普通、意識が低いの中の上2割が、ひとつ上のステージに上がってきてくれる可能性が高まります。
もちろん、元から意識が高い2割と放置していいわけではありません。意識が高い層の2割は、ある意味では転職予備軍です。「組織から大事にされてない」と思われたら転職していってしまいます。なので常にこの人たちには「君はこのまま成長すれば大丈夫」「そのための支援をする」「機会を提供する」とフォローをしていくことが大切です。
では、次に実際にプログラムはどういったことをやっていけば良いのかをお伝えします。
本記事は、全2部構成でお送りします。Vol.2は下記よりどうぞ。