株式会社関屋リゾート|徹底した理念共有を通じて、全社員が同じ未来を描き、成長する

更新:2024/03/05

作成:2023/01/07

関屋リゾート

明治時代に別府市で開業した「関屋旅館」を前身に、現在「別邸はる樹」「テラス御堂原」「ガレリア御堂原」という3つの個性的な旅館・ホテルを展開する関屋リゾート。

Great Place to Work® Institute Japan「働きがいのある会社」ランキング小規模部門において、2年連続でベストカンパニーに選出されています。

「他にないもの」「本物であること」を軸に、リゾート事業に新しい価値を生み出すための人材育成について、専務取締役の林晃彦様にお話を伺いました。

会社名:株式会社関屋リゾート
設立:1965年(昭和40年)6月1日 (有)旅館関屋 設立
社員数:正社員40名/パート社員26名・計66名
事業概要:「別府温泉テラス御堂原」「別邸はる樹」「ガレリア御堂原」3施設の運営のほか、2020年に他旅館・ホテルへの経営サポート事業開始。2022年にはコンドミニアム事業に向けてプロジェクトを始動している。

<目次>

Q.貴社の沿革と事業内容について教えてください

1900年初頭からある関屋旅館が当社の創業となります。そのときは法人登録していませんでした。

当時は同じ建物の中に、関屋旅館と林旅館という2つの旅館があって、その後、関屋旅館が廃業する折に“ゴロが良い”という理由で関屋旅館の名を残す形で1つになりました。

その後、1965年に法人化されて今に至ります。以前は団体客が主な顧客で、売上的にはよかった半面、規模も大きくなく、露天風呂もなく、特別な売りとなる部分もありませんでした。

関屋旅館で育った私たち林家の兄弟4人は、学校を卒業しても別府に帰らず、時間がたっていたのですが、ある時、母が体調を崩しました。

そこで兄の林太一郎(以下、社長)が大分に戻ったのですが、そこから当社の変化が始まりました。

社長は大分の建材会社で営業トップの成績を収め、実績を積んで当社に入りました。

そこで1泊2食付き8000円の低価格設定をしたり、食事も近隣の市場で安価に高品質な素材を確保したり、大きな設備投資をせずに営業展開していったところ、評判が評判を生み、当時残っていた負債を早期に全額完済することができたのです。

Q.負債の完済後、これまでにない旅館ホテル事業を展開されてきたのですね?

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そうですね。さらに社長はテレビで「情熱大陸」に和空間プロデューサーの松葉啓氏が出演していたのを見て、「ぜひ新しく旅館を作ってもらいたい」とその場で松葉氏に連絡。

とんとん拍子に話は進んでデザイナーズ旅館「別邸はる樹」が2005年に完成しました。

当時、東京や京都でデザイナーズ旅館が出はじめてはいましたが、まだまだ認知度は低く、ましてや九州でデザイナーズ旅館を開業している所は皆無でした。

周囲からも「聞いたことがない」「止めたほうが良い」など反対の声も多かったですが、社長には当初から成功する確信があったと聞いています。

周囲から色々言われながらの展開でしたが、開業から3年も経つと、当社しかデザイナーズ旅館の事例がないのでマスコミの取材件数も増え、認知度は上がっていきました。

そうした中で社長はバリのリゾートホテルを参考にもう1店舗を作りたいと、「テラス御堂原」を2015年にオープン。

2020年10月には老朽化していた関屋旅館を閉業し、同年12月に現代アート作品が館内に点在する「ガレリア御堂原」を開業しました。

このように、これまで当社は社長の思い切りのよい決断の下、着実に事業を拡大させてきました。

“挑戦”の歴史は、今の事業でも大切にしている2つの価値「他にないもの」「本物であること」に通ずるものがあり、軸をぶらさずに歩んできたことが今日の事業展開につながっていると思っています。

Q.挑戦と変革の中で、壁にぶつかることも多かったのではないかと思います。

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正直、壁しかありませんでした(笑)誰もやったことのないことばかりでしたので…。

最初は「自分たちができるかどうか?」に向き合うことになるので、すでに価値を認められている人やモノを準備して、自分自身を説得する材料を集めることに尽力しました。

既に価値を認められている人やモノということは、当社が掲げる「本物であることに価値を見出す」ことに通じており、たとえば「別邸はる樹」の建築デザインを和空間プロデューサーの松葉啓氏に手掛けてもらったことにもつながっています。

連続した変革の中では正解がなく、先人もいないので、常に模索状態でした。

当時の幹部は、社長と私にもう1人が加わった3人のみでしたので、社長の想いを取引先などへ伝えるために、いかに経営陣が「結束力」をもって進んでいくべきかを考えていました。

もちろん模索しているのは私たちだけではなく、「ガレリア御堂原」の建設時はその前例のない造りのため、建築士もどう建てるか模索しながら作業を進めており、完成が予定より半年延びてしまうといったこともありました。

Q.変革の中で、組織づくり、理念づくりをどのように進めてこられたのでしょうか?

組織づくりこそ、最も大きな壁でした。実は当社ではこれまで2度大きな集団離職があり、朝出勤したらパート以外全員辞めていた、といったこともあります。

原因は社員を“手駒”のようにとらえていた経営陣のワンマンな側面でしたが、それも教訓として今の組織づくりに生かすようにしています。

先ほど役員3人の結束力こそが肝要と述べましたが、大小さまざまな壁を乗り越えるために3人でとことん話し合い、すり合わせ、共通言語を話せるようになるまでに約2年かかりました。

時には朝から晩まで外部のセミナー等に参加し、夜はセミナーの内容を踏まえて議論し、また、翌朝にセミナーに向かうといったサイクルを都合2カ月やったこともあります。

その中でたどり着いた答えが、「働きたい人と働ける環境づくりを、自分たちの手で作り上げていこう」ということでした。こんな人たちと働きたいと、未来を描いたのです。そのために掲げた当社の経営理念は以下の通りです。

  • 一、非日常の体験を通してお客様の満足を追求します。
  • 一、常に挑戦します。
  • 一、仲間を信頼し、共に学び成長します。

考え抜いて理念を定めたで、組織づくりは根底から変わっていきました。「姿勢」を明確にすることで、ぶれずに人員確保できるようになったのです。

業界的に人員不足な背景もあり、当社もきちんと人を選ぶことができていませんでした。また、きちんとした採用活動が出来なかった結果、すぐに入社前後のギャップが生じ、早期離職も発生しました。

ある日突然「今日から行きません」と言われたり、出勤したらドアノブに保険証の入ったコンビニ袋を掛けられており、ひと言もなく社員が辞めてしまったりするようなこともありました。

当時、私も売り上げを伸ばすことばかりを考えており、売上アップの見込める企画書を社長に提出したことがあります。

しかし、社長から言われたのは、「この中に理念にある“お客様の非日常体験”はどこにある?」ということです。私が提出したのは、確かに売上は見込めそうな企画だったと思いますが、理念にかなった内容ではなかったのです。

社長は「であれば、当社ではしなくてもいいことだよね」と言われ、私も改めて納得したようなこともありました。このように理念を掲げて、一貫性をもった経営、組織づくりを進めていったなかで、離職者は激減し、最終的にはゼロになりました。

Q.新卒採用を始めた経緯、新卒採用をしてみて、組織づくりに与える影響を教えて下さい。

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新卒採用は「いい仲間と働きたい」という思いのもとに始まりました。

ある経営者のセミナーに参加し、そこで「いい会社とは?」の投げかけに「高収益で社員が幸せな会社」という答えを見出したことによります。

いい会社にするためには、能力のある人が入ってくる会社にしなければなりません。話が前後してしまいますが、それを踏まえて理念も作りあげられていったのです。

当時の役員は3人でしたので、施設を増やしていけば管理する人が当然必要になります。そこで、必要なポストに就いてもらうため、既存社員の人材育成にも取り組んでいきました。

新しい施設をつくることで人が育ち、既存社員が出世して豊かになることで、それに希望を見出した優秀な仲間が集まってきます。その新人が育成され、次につながっていく。そんなサイクルを目指しています。

事実、新卒が入ってきたことで現場はとても整備されていきました。とにかく先輩社員の“ウエルカム感”はすごかったですね(笑。いまや全40人の社員のうち、18人が新卒です。新卒は若くパワフルです。

既存社員も「負けてられない」とポジティブな気持ちになり、社内が明るくなりました。

また、社員全員が次の新卒社員について考え、優秀な人が入りたいと思うような組織になりたいという意識が高まり、「感謝の文化をつくろう」「敬語で呼び合おう」「挨拶はマスト」といったように、これまでなかった文化をつくろうと皆で考えています。

こうした取り組みも、最初に社長が“学ぶことを率先した”ことから始まりました。たとえば、社長は自らのメッセージを定期的に社員に発信しています。

そこできちんと笑顔で話すようなメッセージトレーニングや使う言葉の管理にも取り組んできました。社長自身が努力する姿を見せたことが、社員の向上心アップに少なからず繋がったかと思います。

Q.「理念共有型採用」では、どんなことを意識・注意されていますか?

新卒採用に取り組み、経営陣をはじめとした既存社員が新卒社員を迎えるために備える一方で、採用方法についても明確な方針を打ち出す必要がありました。

当社に必要な人材は、これまで築き上げてきた「挑戦の文化」を理解できる人に他なりません。先ほどお話した通り、挑戦することは、壁にぶつかる連続であり、決して容易なことではありません。

そこで「理念共有型採用」を打ち出し、理念にある「常に挑戦すること」ができない人が入ってこないように気を付けました。そこで齟齬があれば、会社と本人の双方に不幸な結果を招いてしまいます。

「関屋リゾートでなければ」という確信を持った方を迎え入れたいですね。そうした方にとって当社はおそらく最高の職場になり得るかと思います。

若いうちから何でもさせるようにしていますし、行動を起こしたい人には積極的に場を提供できるようにしています。

働くうえでも「ジョハリの窓」を採用しており、社員がお互いに自分の情報提供をしながら相手が気付いてないポイントを指摘・フィードバックして、相手の可能性を広げられるようにしています。

なにか一つの仕事を終えた後でも、「本当にこれでいいの?」と問いかけをして、理念をベースにもっと上を目指せるような意識づけをしています。

当社に入社すると、社長は当たり前のように新卒社員を様々な現場に連れまわし、早期から経験を積ませるようにしています。どんどん挑戦しては欲しいと思っていますが、同時に、当社では“失敗でよし”とはしていません。

せっかく自分の時間を投資しているのですから、そこで何かを学び、失敗で終わらせないことが大切。失敗の中に何かを得て、次に生かせるものがあれば、どんどん失敗してほしい。

会社も、本人の挑戦を出来る限りの体制で支援するようにしています。たとえば、最初はマネージャーが同行しながら行動させ、次に本人中心に行動させていきます。そして、ホウレンソウを行いながら最終的には自分でやってもらいます。

こうして段階を踏みながら彼らの挑戦が成功するよう、本人に行動させながらフォローしています。

Q.変革を続けられる中で、人材育成はどのように行ってこられたのでしょうか?

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人材育成の一環としてフィードバックの取り組みはコロナ前から行っていました。

言う側は「相手をけなすためにしない」「こらしめでなく本人のためになることを前提」にして、聞く側は「言ってくれたことに感謝」しつつ、「最終的に受け入れるかは自分次第」です。

また社内にはメンター制度があり、メンター社員がメンティー社員に関するフィードバック(経緯や所見)を社長へ報告するようにもしています。

無記名による役員への360度フィードバックも行いました。社長は社員がどのように役員を見ているか非常に気にしていましたが、忖度なしで思ったより評価がよかったのでホッとしています。

また「関屋アカデミー」という独自の育成プログラムも実施しています。これは新卒採用開始時に、それまでOJTで進めてきたノウハウを言語化・体系化したものです。

社会人としての基本のマナーから、マーケティングや接客スキル、地域情報の収集など、関屋アカデミーの内容は多岐にわたります。

新卒社員は関屋アカデミーでの学びを通じて、現場で早期に自信を持って仕事に取り組められるようになりました。

さらに毎週、社長が全社員にオンラインで20分間のメッセージを送っています。ここでは経営陣の考え方、会社としてありたい働き方などを話し、社員が共通認識を持てるようにしています。

ただ、毎週話しても、現場やポジションによって受け止め方は異なってくるので、私が社員に向けて、社長のメッセージへの捉え方を通訳のようにフィードバックするようにもしています。

Q.コロナ禍と今後の新たな挑戦について教えてください。

当社がGPTWにはじめて応募したのは、新卒社員採用を開始した2020年になります。

新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るい始めたころであり、そんな緊急事態の社会情勢の中は、当社は新卒採用に取り組むという大きな変革を行っていました。

その中で、社員が会社に対して何を思い感じているか、社長が純粋に知りたいと思い応募したのがきっかけです。社員の状況を知り、社員満足度を上げることが、コロナ禍を乗り越えるカギだと考えたのです。

コロナ禍でも、当社は休業の決断はしませんでした。それはせっかく挑戦意欲の高い第1期の新卒社員を採用したのにも関わらず、彼らを自宅に閉じ込めてはいられないという思いがあったからです。

お客様は来ませんでしたが、現場で日々トレーニングを重ね、さらに社長が社員にオンラインメッセージを送り、社員の「命を守る」「雇用を守る」「育成を止めない」と宣言しました。そうした会社の発信を受け止め、ますます皆で新卒社員を育てていこうという気風は高まっていったと思います。

当社はまだまだ成長過程の中にあります。2028年までにグループ売上15億円、社員100人の達成を企業ミッションとして掲げ、世界展開も視野に入れています。

大きな目標ですが、社長自らがビジョンを明確に描けていることがポイントになっています。

そうした目標案が出た際、私は時に反対することもありました。しかし、社長と話を重ねていくうちに、自分もその未来が描けるようになり、「やりたい」と思えるようになりました。

「惚れたほうの負け」ではないですが、会社の目標が自分事になった以上は、社員とさらに関係性を深め、理念共有していくことで共に未来を描いていこうと思います。

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