株式会社NAVICUS|フルリモート、フルフレックスの中で制度拡充し、社員間の絆を深める組織づくりへ

更新:2023/11/02

作成:2023/10/27

株式会社NAVICUSさま|いい会社づくりのヒント

交流・実践・学びの場を作り、SNSを通じて企業や自治体のコミュニケーション支援を行っているNAVICUS。Great Place to Work® Institute Japan「働きがいのある会社」ランキング小規模部門におけるベストカンパニーに選出されています。

 

フルリモート・フルフレックスの環境の中で、社員がいかにお互いを理解し、モチベーションや働きがいへと結びつけているか、独自の制度づくりや組織づくりに触れながら代表取締役の武内 一矢様に伺いました。

会社名:株式会社NAVICUS様
設立:2018年(平成30年)7月
社員数:52名(2023年8月現在)
SNSを通じて企業のコミュニケーション支援を行う。顧客の目的に合わせ、SNSを起点とした戦略コンサルティングや社内担当の育成、運用代行、アカウント分析、SNS広告運用などのほか、地方企業・自治体のプロモーション支援など幅広くサポートする。

<目次>

Q.SNSを使ったマーケティング事業を立ち上げた経緯など、これまでの沿革をお聞かせください

231026_武内写真1_NAVICUS

 

武内様:2018年7月、特に出資などもなく私が単独で会社設立しました。それ以前は3つの会社に勤め、いずれもウェブマーケティングに関するIT業界の会社でした。SNSを使ったマーケティングについては2009年ごろから着手し、Twitter(現:X)などは日本に進出した早期段階から活用開始していました。

 

東日本大震災が起きた2011年3月11日、TVやラジオでは原発やマグニチュードの話ばかりのところ、被災者の方への情報提供のため独自でSNSサービスを開始し、地震発生の翌12日には安否確認等ができるよう運営開始しました。おそらく日本最速だったのではないかと思います。

 

在籍した3社の一つではSNSマーケティングチームを立ち上げ、そこでの実績は現在の業務にも大きく役立っています。またもう一つの会社では、ふるさと納税の黎明期だったこともあり、自治体の支援とウェブマーケティングという、前例のないマーケティングプロモーションで貴重な経験を積むことができました。

 

元々私自身が被災地支援や地方創生へ関心が高かったので、それが現在の業務でも企業や自治体へのコミュニケーション支援へとつながっています。また人材育成も得意になったため、未経験者を採用し、一人前のSNSマーケターに育てていくことにもやりがいを感じますね。

Q.その後SNSでのコミュニケーションが一般化し、どんな新しい価値が創出されたのでしょう?

武内様:特に東日本大震災での取り組みに意義があったと思います。

 

前述の通り、メディアでは同じような情報が流れている中、被災者の方々が本当に必要としているのは、炊き出しがどこで行われるか、ガソリンをどこで入手できるか、避難所の場所や、危険な道はどこか、などの情報でした。それらをSNSで発信して情報提供できたことが大きかったですね。

 

一例として、私たちのSNSに宮城県の主婦から、震災発生1週間後に「子供の誕生日なのでケーキを買いたい。こんなときだけれども買えるところはないか」と質問がありました。するとたくさんの回答があり、結果買うことができたのです。こうした昨日まで他人だった者同士がつながることができるのもSNSならではであり、そこに価値を見出せました。

 

また企業がプロモーションを行う際、自社商品の魅力をどう伝えるかがテーマになりますが、ただ伝えるだけではなく、そこでお客様の声をフィードバックできるのもSNSの利点でしょう。

 

もはや当たり前のように行われていますが、例えばコンビニエンスストアのSNS支援でも、消費者からの商品評価がSNSで明確になったからこそ、適格に次の商品開発につなぐことができるのです。それまでコンビニでは主たるフィードバック方法もありませんでしたから、全く新しい仕組みがSNSコミュニケーションによって創出されたことになります。

Q.貴社の行動指針で掲げる「エンドユーザーファースト」について教えてください

武内様:「エンドユーザーファースト」についてお話させていただく際に、私はまず「クライアントファースト」ではないことを説明しています。

 

クライアントは当然ながらビジネスにおいて予算を確保し、当社に業務を発注いただく企業様を指します。しかしそんな大切なクライアントのことを考えてるからこそ、我々こそ“エンドユーザーのためのプロ”として彼らに異論を出すべきなのです。

 

クライアントがコンビニチェーンであれば来店するお客様のため、TV局であれば番組視聴者のために、もっとこうするべきと提案していきます。

 

そうして仕事を進めていくうちに、多くの場合でクライアントは徐々にプロの見解を必要としてきます。お客様はどのようなことに喜び、あるいは商品開発をポジティブに思ってもらえるかのような、定性的な議論に集約されてきます。

 

その“ポジティブ”とはどのようなことなのか? 「面白い」「笑える」「泣ける」「感動的」など、そこでは様々な表現ができるでしょう。エンドユーザーにどう感じてほしいのかを、さらに突き詰めていき、例えばSNSでこういう口コミが欲しいと依頼があれば文章まで具体的に作り上げ、ねらった話題に行きついているか、検証を定性的に行います。

 

通常のSNSマーケティング会社であれば、リツイート(リポスト)やフォロワー数、いいねなどから定量的な指標を掲げていきますが、当社は定量だけでなく定性的な部分も求め、数字では見えないところを提示することにより本当の価値を見出していきます。

 

ギフト券などをちらつかせていけば、誰でも分かりやすく数字が出せると思いますが、それは結局、「お金をくれてありがとう」に留まってしまいます。

 

例えばゲームなら、「キャラクターがかっこいい」「やっぱりこのゲームが好きだ」のような声は、数字的には1/5ほどにしか満たない場合でも、その方がより価値があると考えます。そして今日はそんな定性的な反響を求める企業が増えています。

 

一方で定量を捨てられない企業があるのも事実で、そうしたときにはエンドユーザーファーストのため、まずは数を増やしていく努力をするケースもあります。定量KPIを満たせたところで「本当の価値はここから」と、定性へ移行することで、少し遠回りですが本質的な取り組みに発展させることができます。

Q.フルリモート・フルフレックス制度を導入したきっかけは何でしょうか?

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武内様:個別リモート向けの体制や、その他の制度作りは私一人で考案しました。というのも設立当初は人数も少なく、本社もなかったのでリモートにならざるを得ません(笑)。そうした経緯でコロナ禍前よりフルリモート・フルフレックスからスタートしています。

 

会社設立して最初の社員は、前々職の同僚で大阪在住でした。最初は距離的な問題から社員になるのは難しいとしていましたが、「そもそも通勤しなくてもいいのでは?」という話になり、そうした物理的課題をクリアすれば、雇用していけるのだと気づきました。まだZOOMなど普及する以前でしたが、画期的な発想の転換でしたね。

 

必然的にフルリモートとなりましたが、メリットはいくつかあります。例えば会社勤めで子供のいるご家庭で、「熱が出た」などで社員が出社できず、場合によっては育児に専念するため会社を辞めざるを得ない話もよく聞きますが、リモートであればある程度の折り合いがつきます。

 

また地方にUターン、Iターンしたい人材もいます。当社にも山形出身のスタッフがいますが、Uターンせざるを得なくなり、地元企業に就職するか、当社でフルリモートの中でスキルをそのまま地元で活かす2択があり、後者を選ぶこととなりました。

 

そのほかに面白い例としては、当社には大阪出身で宮古島在住のスタッフがいますが、宮古島にいる理由はただ「住みたい」だけ。ほかにも都内からマレーシア・クアラルンプールに「気分で」移住している社員もいますが、これもリモートのメリットを最大限活かしている事例になるでしょう。

 

彼らから宮古島やマレーシアの状況が伝わってきて、私の視野も広がっています。違う価値観が入ることでダイバーシティ的な良い影響も生まれてきており、会社としてもメリットがあるものになっています。

 

ただリモートならではのデメリットもあります。1人で仕事をしていると、ミドル・シニアクラスの社員は業務を理解しており、モチベーションコントロールもできていますが、ジュニアクラスになると思わぬ落とし穴があります。

 

あるとき、彼らと本社などで対面する機会があったのですが、パソコンをみると画面いっぱいにアイコンが並んでおり、「PCの調子が悪い」というので見てみると、ブラウザが50ほど重なっていました。それらはリモートしたままでは気づかない、「そこで躓いていたんだ」という発見がありました。

 

そうしたことから新入社員に対しては入社後半年間、たとえ遠方でも本社に集まって仕事をする、対面ワークの期間を設けています。新入社員が集まっているということで、本社に顔を出しに来る社員も多く、そこでもコミュニケーションが生まれます。

 

そしてまずは対面で、先ほどの実務上における初歩的な課題をクリアにし、対面した期間で作り上げた関係性をオンラインでの業務に活かしていきます。

Q.ほかにも、他社には見られない制度もあるようですね?

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武内様:そうですね、なかでも設立当初からあるのは「ご当地会」という交流制度です。平たく言えば、少し前に流行ったZOOM飲みのようなものですが、一般的にそうしたオンライン飲み会のようなものは、得てしてスピーカーは一人で、参加者はそれを聞いているだけで、視覚・聴覚のみという画面越しの限られた交流でライブ感がありません。

 

また、画面の前に集まったもののテーマが特になく、楽しみ方がわからない・やることがないというような印象もありました。

 

そこでご当地会では毎回幹事を決めて開催。幹事の出身地から名産品を数品ピックアップし、それを会社負担で参加メンバーの自宅に発送します。例えば沖縄出身であれば、その回は沖縄が共通テーマとなり、届いた名産品の説明や沖縄の話題が生まれます。また同じものを食べていることで五感も共有され、一体感が生み出せるのです。

 

さらにそこで、幹事となったメンバーの生い立ちなどパーソナルな話もしてもらい、メンバーの背景を知ってもらい、相互理解を深めています。

 

ほかにワーケーション支援なども行っており、一定額を会社で負担しています。個人でも部署単位でも申請可能ですが、当社にはたまたま愛知出身者が多かったので、先日は愛知メンバーで合宿のようなこともしました。局所的に、自由に利用できる制度として人気があります。

 

また新卒者向け研修制度も充実させています。数えてみたところ、この半年間で26回もの研修を行っており、そのうち半分以上を私が担当していました。前述の通り人を育てることに喜びを感じているので、そこは「新卒育成マニア」として自負している部分でもあります(笑)。

 

ほかに入社1カ月の4月に新卒合宿を行っており、直近では2泊3日でグループメンバーのいる長崎に行きました。そこでメンバーのサポート受けながら現地会社を訪れ、3日間で会議を行って企画提案まで行うハードな内容を新卒社員がこなしています。

 

作業は大変ですが、そこでグループメンバーとの交流や、同期と助け合う機会などがあり、そうしたコミュニケーション体験がその後のリモート中心になっても協力体制を築きやすくし、つながりの面で役立っています。

Q.社員のための様々な制度があって、フルリモートが安定運用されているんですね?

武内様:確かに各制度については、円滑にかつ楽しく仕事をする上での仕掛けづくりとして欠かせないものですが、当社では社員同士の「仲を良くする」こと自体を重視しています。本来、どんなに良い制度や補助があっても、嫌いな上司との会話は避けたいものです。

 

そこで社員の関係を良好なものにするため、社員が相互理解し自己開示する目的で「75 Days Ago(セブンティファイブデイズアゴー)」という時間を、全社会議の中で15分間作りました。

 

ここで社員は入社の75日前に何をしていたか、何を考えていたかということを発表します。75日前というと入社が決まったころだったり、前職にいたころだったりと様々な時期です。

 

そうした中で何を思って会社に入ったかを振り返ってもらい、これから何を会社でしたいのかを述べてもらいます。するとそのメンバーの思いが伝わってきて、深い共感が生まれ、お互いを認め合う機会となって、これが社内の「仲の良さ」の源泉になっています。

Q.今年はさらに「POP-UP OFFICE」制度も開始されたそうですが、どのような内容ですか?

武内様:はい。今まで3回実施しましたが、こちらは先ほどのワーケーションのように各地で人が集まるような積極的集合とは違い、もう少し緩く「ある期間、このオフィスに来られる人集合」くらいの感じですね。

 

これまで宮古島、京都、都内で行いましたが、宮古島では郷土料理作りの体験をしたり、京都ではお客様の運営する古民家オフィスで仕事体験したりと様々です。

 

ただ作業量の多いスタッフが参加してくれたとき、どうしてもTV会議ばかりあって体験に参加できないような様子もあり、もう少し参加しやすいタイミングや形態があるだろうと模索中です。

Q.GPTWで「働きがいのある会社」として認定され、高い評価を受けられましたがエントリーした理由は何だったのでしょうか?

武内様:端的に申し上げれば、採用に寄与したブランディングを考えてのエントリーでした。当社では「SNSでのナンバーワンカンパニーになりたい」という目標を掲げており、それはサービスの質やクライアント数はもちろん、体制規模、スタッフの給与まで、全ての面におよびます。

 

それらを備えてエンドユーザーに満足いただける価値提供ができるのであり、そのためには優秀な人が集まる仕組みを作らなければなりません。

 

私の持論ですが、社員のモチベーションを考えたとき「業務そのものが一番の福利厚生」ではないかと思っています。こんな仕事に関われて面白い、成長できると考えられるのが、働きがいの根幹になるのではないでしょうか? さらに誰かの力になれる、仲間のような存在になれると感じられれば、これほどやりがいにつながる理由はありません。

 

本当は嫌な仕事ながら、福利厚生がアメの役割で存在している例もあるかと思いますが、無理して仕事をしてもモチベーションは上がらず、エンドユーザーのための良い仕事は達成できないでしょう。

 

先ほど述べた様々な制度についても、決して会社が与えているのではなく、スタッフが制度を利用すべきか自主性をもって選択しています。私の座右の銘に「選択を正しくするのは自分だ」という言葉があります。自分の人生は会社や他人が決めるものではありません。

 

私が思う“平和な世の中”というのは、各自に選択の自由があり、自ら選んで皆が納得している状態をいいます。人それぞれ、様々な価値観があるので、それをしっかり持つことを自社カルチャーのベースにしたいと考えています。

Q.これまで短期間で急成長してきた理由と、今後の事業ビジョンについて教えてください

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武内様:やはり効果的な採用と教育が実践できたからこその成長だったかと思います。とくにホスピタリティの精神がコアになりますね。

 

社員の中には高級飲食店やアパレルショップでの接客経験をもつ人もいて、「目の前のエンドユーザーに喜んでいただいてうれしい」「周りのメンバーを助けたい」というような、利他の精神を持った人材が集まったからこその成果だと思います。

 

私も学生時代に一流デパートで働いたとき、商品はどれも正価でしたが、それは自分の言葉や笑顔、所作に値段がついているからだと自負しました。そこから現在の業務でも、エンドユーザーのためのホスピタリティの心と、仕事に対するプライドは大切に持ち続けています。

 

今後、そうした接客オペレーションの部分はどんどん自動化していくと思いますが、人間がやってこその部分は逆に重要視されていくでしょう。例えばスマホゲームで何かクリアしたときに、運営の担当者からSNS上で「すごい」とコメントが来た方が、AIに褒められるより嬉しいのではないでしょうか。

 

やはり人間からのフィードバックに人は喜びを感じると思います。これらはマニュアルにはしがたいところなので、今後の当社の強みとしてさらに「エンドユーザーのために頑張りたい組織づくり」をし、他社との差別化を図っていきたいですね。

 

事業としてはSNSマーケティングを軸に、その周辺でのソリューションサービスを広げていきたいです。当社はよく「SNSマーケティングの会社」と言われますが、実態は「ファンづくりの会社」「コミュニティマネジメントの会社」の位置づけにあります。

 

その面ではSNSに限定せず、例えばイベント事業も視野に入れるなど、ソリューションの幅を今後も広げていく予定です。

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