株式会社プロロジス|外資系ながら日本ならではの視点を持ち独自の取り組みで挑戦型の人材を育成

更新:2024/12/17

作成:2024/12/05

米国カリフォルニア州に本社を置き、日本では賃貸用物流施設開発において草分け的企業であるプロロジス。2024年版Great Place to Work® Institute Japan「働きがいのある会社」ランキング中規模部門において、8年連続でベストカンパニーに選出されています。

 

女性活躍推進行動計画をはじめ、社員が働くうえで仕事と家庭を両立しやすい環境づくりをし、長く勤めてもらうための取り組みについて、マネージングディレクター 上席執行役員 谷住 亜紀様、人事・総務室 エグゼクティブ ディレクター 鎌田 幸枝様に伺いました。

会社情報

会社名:株式会社プロロジス様
設立:1999年
従業員:144名(2024年6月現在)
物流不動産業界の世界的なリーダーとして、持続可能性のある高品質な物流施設を全世界で開発するとともに、効率的な物流ソリューションを提供。賃貸用の先進的物流施設開発のパイオニアとして培った専門性やノウハウを活かし、用地の選定・取得から施設開発、竣工後の管理・運営まで一貫したワンストップ・サービスを行っている。BTS型やマルチテナント型、都市型と次々と新機軸を打ち出すほか、コンサルティングサービスを提供するなどソフト面からも顧客課題の解決をサポートしている。

<目次>

Q.谷住様・鎌田様のご担当される業務内容についてそれぞれ教えてください

谷住様:私は2003年に入社し、IR・広報の立ち上げに参画しました。現在は管理本部で、人事・広報・IR・ITなどの各部署を管掌しています。

 

当社の日本法人は1999年の設立で、前社長の山田 御酒(現・代表取締役会長兼CEO)が入社したのが、私が入社する前年の2002年ですので、私は設立間もないタイミングでプロロジスに入社しました。

 

当時は賃貸用物流不動産というビジネスモデルは日本に存在しませんでしたが、その後徐々に物流不動産の事業を日本でリードすることで業界の拡張に寄与しました。今や物流不動産業界に参入している会社は約70社まで膨らみ、自分たちの努力が報われて1つの業界として確立されるようになったと感じています。

 

鎌田様:私は人事総務室に勤務し、採用・研修・能力開発の分野を担当しています。2007年に入社し、広報室での勤務などを経て現職に至っています。

 

今、改めて谷住から当社の歴史を聞くと、当社が率先して情報やノウハウを開示することで、業界規模が大きく成長することに寄与し、徐々に大手が参入してきたことが思い出され感慨深いです。

Q.当時、国内では例のなかった「物流不動産」事業を開始した経緯を教えてください

谷住様:今でこそ賃貸用物流施設は当たり前ですが、設立当時の約25年前は、物流施設は企業が自社所有することが主流でした。しかし、90年代からの規制緩和で、外資の物流会社であるDHL、FedEx、UPSなどが日本に参入してきたことで、物流業界も変化していきました。

 

同じころ、当社は米国で事業を開始して、96年にメキシコ、97年にヨーロッパに進出し、日本進出のタイミングを計っていました。日本では不動産のオフバランス化へのニーズが高まっており、時代の流れに乗る形でビジネスチャンスを掴むことができました。

 

日本でのお客様第1号はDHLであり、先方の具体的な要望に応える形で、これまで国内にはなかった賃貸による物流不動産のビジネスモデルを築き上げました。

 

さらに日本進出の前にはヨーロッパ進出を実現させましたが、それはEU設立のタイミングを見計らったものでした。

 

EU設立以前は、例えばイタリアなら「イタリア国内各地での最適拠点」を考えていましたが、EU設立によって国境の壁がなくなることで、最適拠点を検討する際にも、「南ヨーロッパの拠点の在り方」といったように、視点が広範囲に変化したのです。

 

広範囲で事業を検討する場合、これまでのように各地で土地を買って拠点を作り上げるよりも、賃貸型のほうが利便性は高く、提供ニーズも高まっていました。

 

このように時代の流れを鑑み、タイミングを見計らって新しいマーケットへと進出してきました。また、グローバルカスタマーベースを持ったうえでの展開なので、やみくもに進出するのではなく、信頼の下で実績を積みながら開拓していくことができました。

Q.日本進出当時のことをお聞かせください。

谷住様:設立当初は外国人スタッフも勤務しており、米国コロラド州・デンバーのアジア担当者が社長に着任していました。その後山田が社長に就任し、建設会社と協力して土地を取得し、2002年に日本におけるプロロジスの第1号案件である「プロロジスパーク新木場」が竣工されました。

 

新木場

 

もし山田が社長に就任していなければ、当社は今日のような会社にはなっていなかったかもしれません。当社は外資系には珍しく、社内で英語は使わず従業員もほぼ全員が日本人です。オフィスは一見、国内における他のディベロッパーと同じ様子であり、日本と親和性の高い会社となりました。

Q.日本人スタッフ中心の構成で、会社としても一つの挑戦だったのですね?

谷住様:確かに日本人スタッフ中心で事業を進める面も挑戦ではありましたが、それ以上に「賃貸」を扱うという壁の方が大きかったです。当時、日本の企業にとって「本社ビルが賃貸」というのは、どこか後ろめたい感覚があったようでした。

 

また、今であればダブルランプウェイを備えた多層階のマルチテナント型施設(注:複数企業が入居可能な物流施設のこと)などは当たり前ですが、当時は、それは他に例のないビジネスモデルでした。

 

そのため、はじめは米国本社ですら多層階に関しては懐疑的でした。そこを、山田が自ら営業し、「多層階の構造では運転手が車酔いしてしまうのではないか」「荷崩れしてしまうのではないか」などのお客様の声に真摯に対応し、不安を払しょくして実績を築き上げ、本社にも説得力を高めていったのです。

 

結果的にランプウェイは、運転手がハンドルを切らず、荷崩れもしないように精密に角度が計算され、運転手にストレスのかからない形が追求されたものになりました。

 

座間2_030_20130626

 

さらに、当社は免震装置付きの物流施設も他社に先駆けて供給しました。当初、阪神・淡路大震災を経験した一部のお客様以外には大きな反響はありませんでしたが、他社にないものを先駆けて実践し、導入していくのが当社の姿勢です。

 

こうした挑戦の連続が実を結び、今では多くのお客様にとって免震装置の価値が認識され、「これ(免震装置)がないと入居できない」と言われることもあるほど、お客様からの評価に結び付いています。

Q.御社の挑戦への原動力はどこにあるのでしょうか?

谷住様:従業員が常に進化し、お客様の課題を念頭に置き、常に新しいことを立案・実行することが当社の企業文化です。企業文化を浸透させることで、先述の免震装置も然り、政府による太陽光の買い取り制度開始前の太陽光パネル設置など、他社に先駆けて常にチャレンジできる土壌が作り上げられました。

 

挑戦にはコストはかかりますが、そのぶん様々なアイデアが浮上してきます。浮上したアイデアをアウトプットできる文化、受け入れる文化があることが大切です。例えば、共同輸送に関心のあるお客様を集めて開催している「共同輸送コミュニティ」なども、経営層によるアイデアではなく、従業員からの色々なアイデアを検討して実現に至っています。

 

また当社には、他の外資系企業にはないスピード感もあります。通常の外資系企業では、意思決定の際に、本社の承諾を得る必要があり、手続に時間がかかることが多いですが、当社の場合は、日本法人にある程度、権限移譲されており、裁量を持たされています。

 

これまでも共同輸送コミュニティをはじめ、コンサルティングサービス、エネルギー事業などを日本法人の判断で進めてきました。

 

もちろん挑戦には失敗もつきものです。しかし、それらは経験値として還元され、失敗しても、早期に次の挑戦へと移行します。挑戦を掲げたら必ず成功しなければいけない、というわけではありません。

 

例えば、以前風力発電に着手しましたが、費用対効果が合わず撤退の判断をしました。このように、失敗を乗り越えて常に事業は進化しており、これからもどんどんアイデアを出し、皆で実行していきたいと思います。

Q.日本法人におけるコアバリューは、どのように設定されましたか?

谷住様:コアバリューは当初、米国版を翻訳したものでした。しかし、外資系企業特有の言い回しのせいか、日本の従業員へそのまま伝えても腑に落ちにくい傾向がありました。そこで有志による委員会を立ち上げ、日本独自のものを作り上げていきました。

 

またコアバリューに基づいて「ビジョン2030」も設定しています。それらは草の根的に、全従業員を巻き込みながら作り上げました。こうした活動は、社員のエンゲージメントに結び付き、さらによい企業文化を築き上げていくうえでも重要な活動になっています。

 

鎌田様:コアバリューは9年前、2015年に私を含む30人の若手従業員でワーキンググループを作り1年間かけて策定しました。作成過程ではワーキンググループに参加していない従業員にも広く意見を聞き、2016年に完成しました。自分たちの企業文化をうまく言語化されたものになったと思っています。

 

コアバリューについては採用面接時にもその説明の時間を設け、自分たちの企業文化をより明確にして会社の理解を深めていただいています。応募者がコアバリューにフィットするかどうかは、採用基準の1つとなっており、いかにスキルが優秀でも、コアバリューにフィットしないと採用には至りません。

 

当社は徐々に成長しているとはいえ、まだ従業員約150名の会社です。一人ひとりのパワーが最大限発揮されることが必要であり、職場に馴染めない社員がいるとお互いにマイナスとなってしまうため、コアバリューを軸に、採用は人事と部門長で慎重に判断しています。なお当社には新卒の新入社員はおらず、全員中途で採用しています。

Q.働きがいに結びつく組織風土の仕掛けづくりはありますか?

チームビルディング活動

 

鎌田様:そもそも会社の文化にフィットした方に入社いただいており、最初から調和している環境の中で働きがいを見出しやすくなっているかと思います。

 

しかし従業員数が多くなるにつれ、入社して間もない人の比率は増加の一途を辿り、従業員の年齢層も幅広くなっています。そうした中でも調和を維持し、働きがいのある組織を実現できるよう、研修などを通してさらなる社内コミュニケーションの強化に取り組んでいます。

 

コミュニケーションの一環として、毎年5月には「IMPACT Day」を実施しています。これは全世界の社員が1日ボランティアを行うもので、日本では東京と大阪に分かれて実施しています。

 

ボランティアを通して従業員同士のコミュニケーションを図ることを目的の1つにしており、部門などをミックスさせた数名のグループに分かれ、普段の業務では関わらない者同士で農作業や食事準備などを協力して行います。この活動を通して、チームビルディングの側面でも効果を上げています。

Q.ほかにキャリア形成支援のために行っていることがあれば教えて下さい

谷住様:先に話した通り、当社の採用はすべて中途採用であり、従業員は全員キャリアのある経験者として入社しているので、そのまま得意分野を生かして専門家として活躍していただいています。

 

それでも途中でほかの部署・分野に挑戦したい人のための2つの機会を設けています。1つは社内フリーエージェント制度であり、年に1回、自分が希望する仕事を申し出ることができます。この制度はすでに10数年実施しており、うまくマッチングして別ポジションへと異動した従業員が、今も新天地で活躍しています。

 

もう1つは、募集ポジションを社内公募で募ることです。従業員が自ら手を挙げ、新しい仕事に挑戦するチャンスがあります。

 

鎌田様:さらに入社3カ月後に直属ではない先輩社員にメンターになってもらう「メンタープログラム」もあります。そこで新入社員とメンター社員が2人1組で、3カ月に1回程度ミーティングを実施します。

 

このミーティングは会議室ではなく、ランチや夜にお酒を飲みながらでも問題ありません。カジュアルにリラックスできる環境の中で、仕事の進め方や社内情報について、または人生プランや子育てについてなど、プライベートなことも含めて幅広く話をします。

 

谷住様:その他、スキル系のリーダーシップ研修、プレゼンテーション研修なども希望に応じて受けることができ、年間の研修受講時間も多く取っているのもキャリア形成に一役買っています。

 

補助制度も充実しており、仕事に必要な研修があれば参加してもらっています。また仕事に直結しない資格取得を希望した場合でも会社が負担する場合があります。これはキャリア形成の一環で違う業務にチャレンジしたいとき、会社を辞める選択肢をとるよりも、フリーエージェント制度などを活用してもらえたらという考えに基づいてのことです。

 

また、2年に1回、キャリアシートを出す機会があります。中長期的に今後どんな仕事をしてみたいかを人事に提出してもらい、その内容に応じたジョブローテーションを実施することもあります。

Q.女性のキャリア支援制度も多くあるようですね?

鎌田様:当社における女性従業員の割合は約43%です。フレックスタイム制度や短時間勤務制度などの導入により、仕事と家庭を両立しやすい環境を整備しました。

 

また、女性管理職と一般女性従業員の交流の場を設け、意見交換やアドバイスがもらえる環境を提供するなど、女性従業員がスキルアップできる継続的な教育・研修機会の提供をしています。ただ、こうした制度があるからキャリアを築きやすくなっているというよりも、自然に社内理解を得られている感覚があります。

 

谷住様:おそらく、すでに社内に複数のロールモデルがいるからでしょう。育児や出産などから復帰して、アドバイスをいただける先輩がいるのは心強いです。私には山田がロールモデルですが(笑)、女性には女性の先輩がいるのは頼もしいのではないでしょうか。

Q.今後の人材育成について教えてください

職場の様子1

 

鎌田様:新たな取り組みを探るというより、理念を基にして今までと変わらず人材育成に取り組んでいきたいと思います。ただ、時代の流れを見ながら研修テーマなどは変えていく必要があるでしょう。アメリカ本社とも連携し、アメリカと同じテーマでの研修を日本語で行うことも考えられます。

 

山田も年初に従業員へ「自己啓発に励んでほしい」と発信しています。会社提供のスキルトレーニングへの参加はもちろん、他社のものでもよいと考えています。先ほどの通り、費用補助もあるので自分でやりたいことを見つけて励むように伝えています。

 

リスキリングが注目されている今、ただ仕事をするだけではなく、キャリアアップも考えて一段高いところを目指してほしいですね。

 

谷住様:オンラインでの研修プラットフォームもあります。ほとんどが英語版ですが日本語版もあり、スキル系のものなど自由なタイミングで受講できます。

 

また、数名ですがアメリカ現地で英語での研修も受けられます。そこで米国や中国などのグローバルの従業員と接する機会もあるので、グローバルカンパニーで勤めている実感も湧いてくるでしょう。

Q.最後にGPTWでの取り組みについて、目標をお聞かせください

谷住様:やはりエンゲージメントは大事だと感じています。今後もより良い環境を作って、従業員が自分のため、会社のために能力を発揮し、心理的安全性がある環境で自由に発言し、仕事にまい進できるような会社を目指していきたいですね。

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