シナジーマーケティング株式会社|第三創業期を迎えた、新経営陣による組織づくりとは

更新:2025/03/21

作成:2025/02/18

シナジーマーケティング株式会社 サムネ

マーケティングSaaS「Synergy!(シナジー)」の提供をはじめ、幅広いデジタルマーケティング事業を展開するシナジーマーケティング。2025年版Great Place to Work® Institute Japan「働きがいのある会社」ランキング中規模部門において、2年連続でベスト100に選出されています。

 

2024年からの新しい経営体制のもと、社員と組織全体が協力し、新たなつながりを築きながらいかに働きがいを生み出しているか、伺いました。

 

会社情報

会社名:シナジーマーケティング株式会社
設立:2000年9月
従業員:265名(2025年1月1日現在)
「デジタルマーケティング領域における、クラウドシステム・コンサルティング・運用支援・人材育成サービスの提供、およびファンメディアの運営を行う。20年以上にわたり国内のCRM市場をリードしてきた豊富な知見を活かし、ニーズに合わせたプロダクトやサービスの提供だけでなく、お客様に寄り添いながら現状を理解し最適な次のステップを提案し続けることで、お客様の成長と成功を支援している。」

 

<目次>

Q.貴社の沿革と事業内容について教えてください

シナジーマーケティング株式会社 代表取締役社長 兼 CEO 奥平 博史様

 

奥平様:当社は2000年に大阪で創業しました。現在は、大阪本社と東京本社の両本社体制をとっています。2005年に主力サービスであるマーケティングSaaS「Synergy!」をリリースし、2007年に上場しました。

 

私は、上場の2年後の2009年に入社しました。その頃、システムだけでなく、導入時の設計やコンサルテーションなどの支援のほか、BPO(Business Process Outsourcing/ビジネス・プロセス・アウトソーシング)まで請け負うことで、企業様の顧客情報を戦略的に活用し、収益に結びつけるためのマーケティング戦略を支援してきました。

 

2014年に、当社は大きな転機を迎えました。上場廃止し、ヤフーグループに100%子会社として入ることになったのです。それに伴い本部制を敷き、私は本部を管理することになりました。その2年後に創業者が退任したので、COOを担っていた役員が新代表となり、私が副社長となって二人三脚で事業を進めていきました。

 

その後、2019年にヤフーグループを卒業し、現在は再び独立企業として第三創業期を迎え、チャレンジしているところです。

 

さらに2020年から新型コロナの蔓延もあり、新たな働き方を定め、新領域へのチャレンジも続ける中で、2024年から私が代表に就任しました。

 

Q.貴社の組織づくりに関する施策についてお聞かせください

奥平様:社員の成長を支援するために、研修やEラーニングはもちろん資格取得支援制度や、まったく別の職種を経験できるキャリアプラス制度など様々な施策を展開しています。また、出戻り社員も歓迎しています。社員の出戻りについては、積極的に声をかけて集めたという訳ではありません。

 

もともと当社は経営理念を重視しており、また、社員の成長支援に重きを置くカルチャーがありました。そのため、ヤフーグループから独立企業に戻ったあと、当社のカルチャーに魅力を感じてくれている複数の卒業生が出戻りを希望してくれました。

 

当社では、会社を辞めることを必ずしも「ネガティブ」と捉える文化はなく、むしろ退職後の活躍を応援しています。辞めた後もビジネスパートナーとしての関係を続けている人も多く、結果、もう一度当社で働きたいという人が増えてきています。

 

戻ってきた社員は、社内にポジティブな影響を与えています。他の社員の変化や成長を加速させ、特にここ数年は会社の発展にも貢献する存在になっています。

 

もちろん希望したからといって、容易に出戻りできるわけではありません。当社では採用において、カルチャーやキャリアのマッチングを重視しており、出戻りの場合でも本人の当該時点でのパフォーマンスやキャリア志向が今の当社の状況と合わなければ、採用を見送ることもあります。

 

Q.貴社の企業カルチャーについて教えてください

奥平様:当社では、日々業務を遂行する際に守るべき行動基準である「A Sense of Values」を定め、その中にある行動基準を「CHALLENGE」「INNOVATION」「HOSPITALITY」「PROFESSIONAL」「COMMUNICATION」「TRUST」「GROWTH」の7つの項目で示しています。

 

「A Sense of Values」は創業者が作ったものがベースにあり、シナジーマーケティングの一員としてとるべき行動を示した大切な規範です。この規範を守るための活動の1つに、代表と社員8~10名を集めた研修があります。20年以上続けているこの研修では、「A Sense of Values」を主題とした熱い議論が交わされます。

 

こうした活動が功を奏し、日々の会話の中でも「今の行動は『TRUST』に合致しているよね」というような言葉が出てくるようになっています。また、目標設定をするときに「この半期の間に、どのA Sense of Valuesを意識して、どんな行動をするか?」ということを掲げてもらうこともあります。

 

このように、ともすれば目の前の自分の仕事で手一杯になってしまう中で、常にカルチャーを意識してもらう機会を設けています。

 

Q.企業カルチャーをいかに浸透させ続けているのですか?

奥平様:社員が飽きないように、研修等の取り組みは常に変化させています。これまでも、代表の交代、ヤフーグループへの子会社化、そこからの卒業など、環境が変わるごとに研修のやり方を変化させてきました。

 

代表の私が一方的に話すだけでは、やはり飽きてきますし、社員も自分事として捉えることが難しくなります。研修の場を自分事化していくために、部署を越えた参加型コンテンツを盛り込むなど、工夫を取り入れています。

 

具体的には、事前に会社のカルチャーに対するアンケートを実施することで、自分たちの行動を見つめ直してもらうことや、研修時に全員に発言をしてもらうことなどです。さらに、受講後にもアンケートを取り、内省してもらうことも忘れません。これらの取り組みを通じて、研修の満足度は高い結果になっています。

 

なお、7つの行動基準のうち、社員に一番浸透しているのが「HOSPITALITY」です。当社のバリューで「101点のサービス」を掲げていることに起因し、「+1点の驚きや喜び」をお客様に提供し続けようとしていることの表れです。

 

私たちの仕事はシステムを提供して終わり、ではありません。創業から25年間、お客様のために伴走することで、やりがいを感じる従業員が多く、自然と「HOSPITALITY」意識が醸成されています。

 

デジタルマーケティングという競争の激しい業界で勝ち残るためには、独立企業に戻った今こそ「CHALLENGE」「INNOVATION」に最も注力すべきだと考えています。会社としては、失敗をポジティブに受け入れるスタンスを示し、失敗を恐れず積極的な「CHALLENGE」「INNOVATION」を推奨しています。

 

Q.「CHALLENGE」や「INNOVATION」を浸透させるための施策を教えてください

奥平様:7つの行動基準のうち、最も難易度が高いと考えているのは「INNOVATION」です。その手前に「CHALLENGE」があります。ここ数年、「CHALLENGE」を推奨する取り組みはいくつか行われています。

 

例えば、新規事業の提案を募ることや、当社グループ会社の代表を公募制で決定するようなことです。「生成AIの活用をいかに浸透させるか」をテーマに、賞金を懸けてコンテストもしました。社員の誰もが「CHALLENGE」できる機会を、様々な切り口で提供しています。

 

Q.「働きがい」や「働きやすさ」はどのように追求されていますか?

奥平様:2020年にハイブリッドワークを導入して以来、当社は「働きやすさ」以上に「働きがい」を重視しています。社員が意欲を持ち、やりがいを感じながら働くことが、お客様への貢献につながる重要な要素と考え、その実現に向けた環境づくりを進めています。

 

社員のライフステージに応じて、各自が最大限のパフォーマンスを発揮できるのであれば、働く場所はオフィスでも自宅でも構いません。例えば、チームビルディングが必要な場面では、自然とオフィスを選択することになるでしょう。

 

ハイブリッドワークの導入は、「働きやすさ」だけを目的としたものではなく、お客様への価値提供を最大化し、さらなる向上を目指すための「働きがい」を高める施策であることを、社員にも丁寧に伝えています。

 

当社の評価制度の1つとして、お客様に対する貢献度が高い人たちを評価する仕組みを取り入れています。お客様が私たちを評価してくれているかどうかがすべてであると、考えています。

 

例えばエンジニア職なら「自分たちの作ったものをお客様はうまく使っていただけているのか」「自社のサービスを使ったことでお客様の業務が改善されているのか、課題が解決されているのか」という視点を持っています。

 

職場環境は皆で共有し、作り上げるものであり、与えられるものではありません。理念、ビジョン、ミッション、バリューを軸にしたコミュニケーションから自主性が育まれ、成長スピードが上がり、イノベーションにつながっていきます。

 

同じ業務でも、上から「やれ」と言われるよりも、自分で「やりたい」と思えば、そこに「働きがい」が生まれてくるでしょう。

 

Q.お客様のため何をすべきかを考えるという、社員の自主性を重んじているのですね?

奥平様:「機会は公平にある」ということを示すことが会社の責務です。機会をつかむかどうかは社員自らの判断に委ねており、その上での評価であれば本人も納得できるはずです。

 

7つの行動基準の中には「TRUST」という項目もあります。「TRUST」は言葉通り「信頼していく」という意味でもありますが、「託していこう」と解釈することもできます。未来のリーダーを作り、自立自走型人材を増やしていくためにも、常に新しいことにチャレンジし、次の世代を信頼し、自分たちの仕事をどんどん託していくことを意識しています。

 

具体的には、新たな管理職の選任や、新サービスのプロジェクトリーダーを若手から抜擢するとき、彼らを信頼して託すようにしています。

 

Q.挑戦には失敗がつきものですが、評価への影響はありますか?

奥平様:評価制度に則り評価していますが、最終的なアウトカムだけを評価することはなく、プロセスも踏まえた上で総合的に評価するようにしています。失敗という結果だけが低評価の原因となり、「チャレンジすると評価で損をする」となると本末転倒です。

 

与えられた課題、自ら設定した課題に対して、仮説や計画を練り、どれだけ確実に実行し、検証できているか、一つひとつの取り組みを着実に進められているかを重視します。

 

やり切った上での失敗というのは、むしろ評価としてはポジティブなものになり得ます。なぜならば、失敗事例という貴重な情報が残るからです。

 

日々のコミュニケーションでも、朝礼などで失敗事例を公開し、どういうことを行い、なぜ失敗したかを伝えるようにしています。今後のチャレンジのために赤裸々に共有されますが、周囲がチャレンジしたことを賞賛することで心理的ハードルを下げています。

 

誰しも挑戦するときに結果は分からないものなので、まずはプロセスを重視し、安心して挑戦できる環境を整えています。

 

Q.奥平様が社長就任時、「チーム経営」をテーマにした理由をお聞かせください

奥平様:数年前に人材戦略をアップデートし、当社の目指す経営スタンスを議論し、他社の事例も参考にしながら、複数リーダー経営にしていく方針が定まりました。

 

会社設立直後は、1人の創業者がけん引するトップリーダー経営が主流ですが、成長するにつれ、複数人による経営が求められるようになります。まずは経営チームで経営を行い、その後ミドル層も巻き込み、多くのリーダーが生まれる形にしていきたいと考えました。

 

当社は株式上場をしたり、そこからヤフーグループの一員になったり、いま改めて独立経営に戻ったりと、様々な経験をしています。

 

私は代表となりましたが、起業家でも創業者でもないので、これからの厳しい時代を乗り越える強い組織にするため、多くのリーダーを育成し、それぞれの現場で的確な判断を早期にできるようにしないと、市場のスピード感にも追いついていけません。

 

新たなリーダーに託して徐々に現場を離れていくようになると、新技術の採用などに対して段々と感覚が鈍くなっていくことも考えられるでしょう。しかし、現場にリーダーが育ち、常にお客様と接している肌感を活かした経営スタイルこそが、今後会社が強くなるための一つの要素になるだろうと見込んでいます。

 

代表が私に代わったときも、自分の強さや弱さを見直し、最も強い部分を生かそうとしました。全てのことを1人で抱え込むよりも、経営責任は持ちつつ、事業と技術の面は私より長けている人間に権限を移譲し、判断してもらいます。こうしたことを積み重ね、会社全体におよぶ複数リーダー経営につながっていくように、動かしていこうと判断しました。

 

Q.社長就任した昨年を振り返りつつ、今後のビジョンについてお聞かせください

奥平 博史様2

 

奥平様:就任1年目は、できることから全力で取り組み、役員・社員一人ひとりがオーナーシップを持ち、お客様への価値提供に全力を注いでくれたおかげで、多くの過去最高を超える成果を生み出すことができました。

 

一方で、経営としては多くの課題も残りました。そこで今年になって毎週、定例で経営陣のコミュニケーションを増やしています。経営戦略、人材戦略、財務戦略、細かな仕組みづくりのほか、AIなども大きなテーマをどうすべきかなど、様々なテーマで役割分担して進めています。

 

また昨年は、代表が変わったことを契機に、既存のお客様を半年かけて訪れました。担当社員も同行し、私の姿が社員にも気づきの場になったようで、結果、経営陣が変わることを自分事として捉え、「自分たちもこの転機に貢献しなければ」と思ってくれた社員が増えたようです。

 

数々のアワードも頂き、「働きがいのある会社ランキング」のほか、新規事業のビジネスモデルでは「グッドデザイン賞」を頂けたり、またAIを活用したSaaSサービスの「DAYS GRAPHY(デイズグラフィ)」が、受賞したりと、大きな励みになっています。

 

こうした結果を踏まえて、今年は当社のビジョン「人と企業が、惹かれ合う世の中へ。」と、ミッションである「Create Synergy with FAN」を実現すべく、2030年のあるべき姿を見据えたプランを全社に掲げました。具体的な中身はまだ策定中ですが、越えるべき高い山は既に設定しました。

 

今年、当社は創業25周年を迎えるとともに、主力商品である、マーケティングSaaS「Synergy!」が20周年を迎え、節目の重要な年になっています。これまで培ってきた基盤を活かし、レバレッジを利かせた成長を使命とし、これまでのやり方をいい意味で否定しつつ、全く違う方法を取り入れチャレンジしていく必要があります。

 

デジタルマーケティング市場は今後も伸びていくことが予想されており、中小企業のデジタル化も加速していくでしょう。中小企業のデジタル担当者の悩みにしっかり寄り添っていくことで、多くの支援の機会をいただけるはずだと信じています。

 

そのためにも、ビジョン「人と企業が、惹かれ合う世の中へ。」という世界観を浸透させ、会社の価値向上に努めてまいります。

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