おしよせる人的資本経営の波【人を残すvol.156】

経営者向けメールマガジン「人を残す」fromJAIC

いつも大変お世話になっております。
株式会社ジェイックの梶田です。

 

2023年3月期に決算を迎えるにあたり、有価証券報告書義務のある企業から順次、
「提出者的資本企業情報」の開示が義務付けられました。

 

この「人的資本情報」開示の動きは、欧米から始まっています。
 

なお海外では、「ESG投資」は無視されています。
 

「ESG」とは
環境(Environment)社会(Social)ガバナンス(Governance)
の頭文字を取ったもので、ESG投資は環境への配慮や社会との関係といった「非指標」を加味して企業の成長性を判断する投資手法です。

 

従来の投資評価とは異なるものですが、
ダイバーシティの広がり、労働力の流動性、環境の劇的な変化に伴い、
企業価値は、結果としての指標ではなく、上記3つの観点での対策の度合いであり、
それが投資対象となっているようです。

 

アメリカ株式市場の約80%の時価総額を上回るS&P500種指数での市場価値の構成は、
「人材を中心とした無形資産」の割合が、1975年には17%だったのに対し、
2020年には90%を占めているそうです。

 

つまり「人材という無形資産が企業価値である」とみている投資家がどんどん増えているということです。

そのような流れの中で、2018年、国際標準化機構(ISO)にて「ISO 30414」規格が誕生し、「個人資本情報のガイドライン」が国際規格として策定されました。

 

「人材=資源であり企業経営に必要なコスト」
ではなく
「人材=資本であり企業の価値を高める投資対象」
 

という見方はこれから変化してきていると言えます。

 
その企業の将来に価値を渡すのは重要な資本なのです。
「人的資本経営」の波が押し寄せているのです。

 
この人的資本経営のトレンドは、上記のESG投資だけでなく、
大きく4つの視点がその移行を後押ししていると言われています。

 
1. 社会の視点
持続可能な社会の為に従来の株主資本主義からステークホルダー資本主義へ
2. 経済的視点
投資判断基準の変化、指標指標よりも「みえざる資産」へ(ESG投資の例)
3. 戦略的視点
産業構造の変革期における革新の起点は「人の対話方」である
4. 世代価値観の視点
社会経済の主人公がZ世代やアルファ世代となり社会貢献への関心が高まる

 
そして、今般の「個人資本情報の開示請求」では、
政府より以下の7分野19項目が示されていますので列挙します。

 
1. 人材育成
(1)リーダーシップ
(2)育成
(3)スキル・経験
2. エンゲージメント
(4) エンゲージメント
3. 流動性
(5)採用
(6)維持
(7)サクセッション(承継)
4.ダイバーシティ
(8)ダイバーシティ
(9)非差別
(10)育児休業
5. 健康・安全
(11)精神の健康
(12)肉体の健康
(13)安全
6.労働慣行
(14)労働慣行
(15)児童労働・強制労働
(16)賃金の公平性
(17)福利厚生
(18)組合との関係性
7.コンプライアンス
(19)コンプライアンス/倫理

 
中には、現代日本においては、あまり見ないテーマもありますが、これらが
企業経営における基準になる未来が問いかけています。

 
経営戦略に人財育成が直接紐づいていく未来は、
私共のような人材サービス業にとっては明るいニュースと言えますが、
逆に言えば、教育の質はますます問われるでしょう。

 
これまで教育の効果は定量的に証明される機会が解消なことがありました。

 
人材資本情報の開示は、人材育成の結果​​を常に定量的に評価されるので、
教育へ求める要求はより高いものとなります。

 
これは、ある意味では当然の流れですが、
上記の7分野19項目に沿った人の資本モデルを目指した教育手法を追求していくことが、
企業価値と人材の価値を高める
ことに近いと考えることができます。

 
理想とする人材のモデルは描かれています。

 
では、そこにある人材教育の具体的な方法をどうやって考えていくか?

私自身、多くのお客様とその点から一緒に考えていく機会を想像しながら、よりサービスの質を変えていきたいと思っています。

 
さて、人材教育モデルの大きな転換期に、そこまで聞こえてきました。

今回は、「人的資本経営」の潮流について簡単にまとめてみました。
 
皆様の、今後の人材教育、経営戦略の参考になれば幸いです。

 
 

今回の執筆者:「梶田貴俊」
(株式会社ジェイック西日本代表講師)

おしよせる人的資本経営の波

著者情報

梶田 貴俊

元株式会社ジェイック シニアマネージャー(現ジェイック契約パートナー)

梶田 貴俊

前職、通信機器ベンチャー商社勤務時代にリーマンショックを経験。代表取締役として、事業再生計画を推進し同社のV字回復を実現した。現在はジェイックの講師として研修事業を牽引している。

著書、登壇セミナー

『会社を潰さないためのSunday Management List ―中小企業のリーダーがやるべき日曜日のマネジメントリスト』

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