不完全の美学【人を残すvol.64】

経営者向けメールマガジン「人を残す」fromJAIC

不完全の美学

皆 様

 

お世話になっております。

株式会社ジェイックの高橋滉智と申します。

 

「不完全の美学」

という概念があります。

 

この価値観は日本独自で

培われてきたものらしく

世界と比べてみると

非常に珍しい価値観・考え方

なのだそうです。

 

“全て完璧に整っている状態は美しい”

という価値観は分かりやすいかと思います。

 

ホコリ一つなく綺麗に掃除された部屋。

左右対称に作られた庭園や建物。

傷一つない綺麗な宝石。

などなど、

それらを「美しい」と感じるのは

難しいことではないでしょう。

 

ですが、

不完全の美学は、それらとは正反対の概念です。

落ち葉が散っている並木道。

凸凹とした陶器の茶碗。

苔の生えた石。

 

どれも完璧に整っているわけではありません。

ですが確かに、これらを目の前にして

「美しい」「趣がある」「わびさびを感じる」

といった感覚が生まれるのも確かです。

 

それでは、この「不完全の美学」

という価値観はどこから来たのでしょうか。

 

調べてみると、どうやらルーツは

禅の思想から来ているようでした。

説明をすると長くなってしまうので

ここでは割愛しますが

調べている中で特に印象的だった文章があります。

それが、以下の文章です。

 

『人間、誰しも不完全であることを理解する。

そうすると、慎み深さや謙虚さを持つことができ

人を思いやることもできるし

自然への感謝の気持ちも持てるようになる』

 

私たちが提供している研修の中でも

よくお伝えするのですが

綺麗な円を描き、その一部分を欠けさせると

人はどうしてもその欠けた部分に

目が行きがちです。

それと同じように、人と相対する際にも

その人が出来ている部分があるにもかかわらず

出来ていない部分を目にしてしまうと

「〇〇さんは、〇〇が出来ていない」

といったように見てしまうことがあります。

 

特に、今のようなイレギュラーな時代は

社会全体が不安で覆われています。

そうすると、普段は気にも留めないような

他人のちょっとした行動・言動が気になりだし

取り巻く空気がピリピリとしだしてしまいます。

 

ですが、人間は誰しも完璧ではなく

出来ている部分と、そうではない部分を

持ち合わせています。

だからこそ、慎み深い心や謙虚さを忘れずに、

相手の良い部分に目を向けられる人間になりたいなと

改めて感じました。

 

『本当の美しさは、

不完全を心の中で完成させた人だけが

見出すことができる』

 

明治時代、開国をしたことで、

外国から様々な芸術や文化が

一気に流れ込んできた中、

日本の文化や芸術の素晴らしさが

埋もれてしまわないよう、

反対にそれらを海外へ発信し続けた

日本の思想家、岡倉天心という方の言葉です。

 

不完全ということは、それだけ伸びしろや

無限の可能性が広がっているとも言えます。

そして、そこに対して

無限の想像力を働かせることもできます。

 

今の時代、物や情報はいくらでも手に入り

むしろ溢れかえっているほどになりました。

大量のデータや物的資源を処理すべく

AIが台頭してきて、人間の仕事は奪われる

と言われてはいますが、

 

不完全な世界の中に想像力を働かせ

無限の可能性を生み出すのは

まだまだ人間の仕事であり続けるでしょう。

 

 

 

今週は以上となります。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

今後ともよろしくお願いいたします

 

 

著者情報

高橋 滉智

(退職済)株式会社ジェイック マーケティング開発部 教育事業管轄 リーダー

高橋 滉智

元日本マイクロソフト執行役員の越川慎司氏やソフトバンク元社長室室長 嶋聡氏の講演を主催。教材事業・セミナー事業の責任者を経て、現在は、教育・研修事業のマーケティング責任者として企画やプロモーションまでを担当。

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