ヒア アフター【人を残すvol.113】

経営者向けメールマガジン「人を残す」fromJAIC

ヒア アフター

いつも大変お世話になっております。
株式会社ジェイックの梶田です。

 

今回も映画の話からスタートです。すみません…。

 

11年前の2月に「ヒア アフター」という映画を観に行きました。
(2010年制作 配給:ワーナーブラザーズ映画)

 

クリント・イーストウッド監督の大ファンですので、
当時から彼の作品は、映画館に観に行っていたのです。

 

その約1カ月後、2011年3月11日に東日本大震災が発生しました。

 

同年2月19日に日本で公開されていた「ヒア アフター」は、
3月14日をもって公開が打ち切られました。

 

映画の冒頭で、2004年に発生したスマトラ沖地震による
大津波が町中を飲み込むシーンが描かれていたからです。

 

それから3年後の2014年、私は震災後はじめて仙台を訪れました。

 

とある企業様への社員研修をさせて頂く為です。

 

私は、自己紹介とともに、数時間前に降りた仙台空港周辺の
景色について、研修を受講される地元の方々に対して、

 

“痛ましい災害でしたが、空港周辺はじめ復興が進んでいますね”

などとアイスブレイクのつもりで研修を始めました。

 

研修初日、お昼の休憩に入ったところでした。

ご参加者のおひとりが、自販機で缶コーヒーを手にする私に、
話しかけてきてくださいました。

 

私は、研修冒頭で、息子の少年野球で審判をすることが
最近の自分の仕事外の役割だ、と話したのですが、

 

その方は、同じように息子さんが小さいころから野球をしていて、
気が付いたら自分も審判の資格を取ったのだと、
にこやかに話しかけてくださいました。

 

息子さんは東京の大学に進んで野球を続けたそうです。

 

就職の際、東京で就職するか、地元仙台に戻り就職するべきか、
悩んでおられたそうです。

 

その方は息子さんに、仙台に戻って就職をして、
一緒に子供たちに野球を教えてやらないか、と誘ったそうです。

 

息子さんは、地元仙台の金融機関に就職しました。

 

ところが仙台に戻り就職して3年後…

2011年3月11日14時46分に発生したマグニチュード9.0、
観測史上最大の地震によって発生した津波により、
同じ職場の仲間とともに行方不明となったそうです…。

 

私は、缶コーヒーを手にしたまま、その話にじっと耳を傾け、
アイスブレイクのつもりで震災復興について語ってしまった、
わが身の浅はかさ、馬鹿さ加減を呪いました…。

 

外から来た人間が“復興”などという言葉を容易く、
口にするべきではなかったのです。

 

同時に、そんな私を責める風でもなく、終始おだやかに、
そんな辛い記憶を、目を細めつつ話してくださる、
その方の人間の大きさに、心から敬服し胸が打たれたのです。

 

その出会いから7年が経過した昨年2021年7月に、
私は再び仙台を訪れました。

 

東北地方での仕事を機に、その方に会いに行くことにしたのです。
その時の御礼とともに、息子さんの御霊を弔うためです。

 

訪問の承諾を得るため連絡をすると、快く応じてくださり、
日本三景のひとつ“松島”から少しいったところの駅で、
車で迎えてくださいました。

 

田舎道を走り田園風景に囲まれた農家に案内されました。
夏の暑い時期でしたが、虫の鳴き声もなんとなく涼やかでした。

 

玄関、縁側をくぐり、ご案内頂いたお部屋に向かうと、
建物内側の壁に飾られた震災当時の被災地の写真とともに…

 

津波で行方不明になられた息子さんへの、同級生やお友達からの
たくさんの大きな寄せ書きが、壁いっぱいに飾られていたのです…

 

…私は、それを見つめ、その一言一言を目で追いながら、
涙をこらえることができませんでした。

 

その息子さんの父上、田村孝行さんは、そんな私を見て、

「よくござったね、ありがとう」

と言ってくださいました。

 

田村さんは、長いこと勤めた会社を早期退職し、
息子さんの命を無駄にせず、震災の教訓から学んだことを
少しでも多くの方に伝えることを使命として、

 

「一般社団法人 健太いのちの教室」を設立し、
地域や企業防災のあり方を探求し、様々な企業や団体、大学向けの
講演活動を通じてライフラインの大切さを訴えられておられます。
https://kenta-inochiclass.com/

 

3時間ほどお邪魔し、いろいろなお話をお聞かせくださり、
奥様が地元の地酒や銘菓などをお土産に持たせてくれました。

家に帰り、妻と娘にその話をしました。

 

田村さんの奥様から頂いた地酒をかたむけ、少し酔って、
関東で一人暮らしをしている大学生の息子に電話をしました。

息子は、めんどくさそうに電話にでましたが、

私は、それが、とても嬉しくて、とても幸せに感じたのです。

 

実は、研修で初めて研修で田村さんにお会いした、そのあとに、
お詫びとお礼のお手紙を書いていました。

 

田村さんは、とても綺麗な達筆でお返事を下さいました。
そのお手紙の末尾には、こう書かれていたのです。

“息子さんを大切に”

田村さんとは研修も含めて、これまで3度しかお会いしていません。

 

それでも、このように心にあり、また必ずお会いすると信じています。
また仙台に行きます。必ず。

 

「マネジメントとは“一期一会”」

人生で、

いったいどれだけの人と出会うでしょう?
いったいどれだけの人の人生に触れることができるでしょう?

 

田村さんとの出会いだけをとっても、
私は今のこの仕事に従事して、心から良かったと思うことができます。

 

田村さんには、このお話をこうして多くの人にご紹介することも
ご了承いただきました。

息子さんである田村健太さんのご冥福を謹んでお祈りいたします。

 

また、東日本大震災で被害にあわれた被災者の方々にお見舞いと
お悔やみを、心から、申し上げます。

 

 

追伸

このメルマガが配信される3月2日は、
実は、3年前に亡くなった私の父の命日でもあります。

冒頭、紹介した「ヒア アフター」という映画、
内容はもちろんおススメの名作ですが、

その映画タイトルの原題(英語)は「Hereafter」、

「来世」とか「死後の世界」という意味なのだそうですが、

この映画を観ていると「未来」という意味がしっくりきます。

父の3回忌、息子を連れて墓参りをして冥福を祈ります。

今回の執筆者:「梶田貴俊」
(株式会社ジェイック 西日本代表講師)

著者情報

梶田 貴俊

元株式会社ジェイック シニアマネージャー(現ジェイック契約パートナー)

梶田 貴俊

前職、通信機器ベンチャー商社勤務時代にリーマンショックを経験。代表取締役として、事業再生計画を推進し同社のV字回復を実現した。現在はジェイックの講師として研修事業を牽引している。

著書、登壇セミナー

『会社を潰さないためのSunday Management List ―中小企業のリーダーがやるべき日曜日のマネジメントリスト』

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