ビジネス現場は、発生したトラブルや目標達成に向けたギャップの解消、想定していた計画や結果とのズレへの対応など、「課題解決」の連続です。だからこそ、「課題解決力」を高めることで、ビジネスのさまざまな局面で成果をあげられるようになるでしょう。
記事では、課題解決力とは何か、課題解決力向上のメリットや方法、課題解決力の高い人の特徴や能力、課題解決の具体的な実行ステップまで紹介します。課題解決力アップの参考にしてください。
<目次>
- 課題解決力と、その重要性
- 課題解決力を高めるメリット
- 課題解決力が高い人の特徴5つ
- 課題解決力が低い人の特徴3つ
- 問題・課題の3分類
- 課題解決プロセスのステップ
- 課題解決力を高めるトレーニング方法~組織的課題解決力アップへの応用①
- 部下の課題解決力を鍛える指導のコツ~組織的課題解決力アップへの応用②
- 課題解決力の向上に役立つ能力・スキル~組織的課題解決力アップへの応用③
- まとめ:社員の課題解決力を高め、生産性の高い組織に
課題解決力と、その重要性
はじめに、課題解決力とは何かを確認しておきます。問題解決との違いを確認し、定義と重要性を整理しておきます。
課題解決の定義――問題解決と課題解決の違い
問題解決と課題解決は何が違うでしょうか。ビジネスにおける「問題」と「課題」の違いを確認しておきます。
問題解決:「現状もたらされている不利益・不都合・悪影響などのネガティブな事象に対応すること」
課題解決:「目標と現状のギャップを明確にして、解決すること」
「問題」はそれ自体がネガティブな事象を指しますが、「課題」は目標と現状とのギャップであり、必ずしもネガティブなものではありません。目標に到達するための、前向きな「課題」もあります。
また、問題解決と課題解決の違いは、ネガティブな事象への対処的な対応か、客観的なプロセスによる解決か、と考えることもできます。
問題「製造段階での原材料のメーカー変更を了承していたはずの納品先から、従来の水準に到達していないものが混入しているとクレームがきた」
解決方法「おわびして、再検査で対応した」
上記は「クレーム」という問題に対処した、問題の解決です。課題の解決はできていないので、再発の可能性があります。
課題「原材料のメーカーを変更し、納品先の了承を得て、製造。しかし、メーカー変更で遅れが発生し、製品の検査工程で一部方法を簡略化したため、従来の水準に達しないものが一部混入。納品後にクレームが発生した」
解決方法「おわびして今回の納品分は再検査を実施。今後の原材料の変更と検査工程については、今回の現状をふまえて改善し、従来どおりの品質基準で納品する」
問題となった事象の発生への対応だけでなく、客観的に工程をとらえ直して、どこで想定との違いが生じたのか、課題が発見できています。いずれにせよ、課題解決力の定義は「発生した課題の原因を分析、解決策を考え実行して課題を解決する能力」といえるでしょう。
課題解決力の重要性
仕事をしていれば、日々数多くの課題に直面します。仕事で成果をあげるためには、直面した課題と向き合い、試行錯誤し、課題を乗り越えていくことが重要です。
定型業務をITツール等によって自動化し、一人あたりがカバーする業務の範囲や量が多くなっている現在は、過去よりも多忙な業務の中で多種多様な課題に突き当たる機会が増えています。
こうした状況をふまえると、課題解決力は現代のビジネスパーソンにとって必要不可欠な能力といえます。
課題解決に必要な課題発見力とは?
課題発見力とは、文字どおり「課題が何かを分析して、課題を発見する能力」です。経済産業省の定義では、社会人基礎力のひとつで、「現状を分析し目的や課題を明らかにする力」とされています。
課題を発見することは決して簡単ではありません。トヨタ式とも呼ばれる、「なぜ」を5回繰り返す、「なぜなぜ分析」は、表面的な事象にとらわれず、本質的な原因を探る課題発見力のアプローチです。
すべての課題解決において「なぜを5回繰り返す」ほどの深さが求められるわけではありませんが、課題解決力を高めるためには、課題発見力/課題設定力を高めることが不可欠です。
参照:経済産業省 社会人基礎力
課題解決力を高めるメリット
次に課題解決力を高めるメリットを3つ確認しておきます。
成果に繋がる[メリット①]
仕事は、課題の連続ですので、課題解決力を高めることで継続的に成果を挙げられるようになります。また、目標達成までの課題を分析して優先度を決めて実行することで、より大きな成果を出すこともできるでしょう。
業務の仕組みや問題点を解決できる[メリット②]
課題を理解して分析できると、業務フローなどの仕組みや別の課題点を見つけ出すこともできます。結果として、仕組みの改善や新たな業務フローの構築、生産性の向上を実現できるでしょう。
サービスの企画や改善が出来る[メリット③]
顧客側の視点に立って、顧客の課題を分析することで、顧客の潜在的なニーズをつかむこともできます。結果として、新規サービスの立ち上げや既存サービスの改善企画をつくることにつながるでしょう。
目指すのは「課題解決力がある組織」づくり
問題と課題の違いで記述した通り、事業や組織の存続にはネガティブな事象に対する問題解決だけでなく、中長期的にプラスの違いを生み出す方向課題解決が必要です。
顧客の価値を創出するためにも、自ら課題を設定して課題をクリアし続ける人材を育て、課題解決力がある組織にしていくことが大切でしょう。
課題解決力が高い人の特徴5つ
課題解決力を身につけるためには、課題解決の能力が高い人の特徴を認識しておくとよいでしょう。課題解決力が高い人が持つ主な特徴を確認しておきましょう。
ロジカルシンキングが身についている[特徴①]
課題解決力が高い人の特徴として、日ごろから「なぜ?」の思考を繰り返している人が多いです。普段から疑問を繰り返して深掘りすることで、物事の構造や構成要素を分解していくロジカルシンキングの能力、ロジックツリーを考える能力が身についていきます。
課題の優先度合いを見極められる[特徴②]
課題解決力の高い人は、課題が、「成果をあげるうえでどのくらい悪影響がありそうか?」など課題が成果に及ぼす影響の大きさを把握しています。日々沢山の課題に出会う中で、すべての課題を解決することは困難です。じつは課題解決の優先順位を適切に見極めることが、ビジネス実務においては非常に大切です。
課題を解決するために必要なリソースを確保できる[特徴③]
課題解決力の高い人は、課題解決に必要なリソースを把握・確保できます。一般的に経営資源と呼ばれる次の4つのリソースです。
- ヒト
- モノ
- お金
- 情報
課題解決するために何のリソースがどれくらい必要かを主体的に考え、リソースを確保していく特徴があります。
高速でPDCAを回す習慣がついている[特徴④]
ビジネス現場において、一回の施策で完璧に課題を解決できることは多くありません。課題解決力が高い人は、始めから正解を求めず、PDCAサイクルを素早く回しながら、課題解決に近づいていきます。
とくにPDCAを回す中でも、C(振り返り)をする能力(リフレクションスキル)が高い人は、失敗・成功要因を適切に分析することが上手く、一回一回の取り組みを再現性あるノウハウとして、どんどん課題解決力を高めていくでしょう。
課題について、メンバーや上司に報告や相談をするのが早い[特徴⑤]
発生した問題や課題を、すぐ報告・相談することも課題解決力が高い人の特徴です。課題発生時に、上司やメンバーとすぐに現状を共有して対応策をとることができれば、多くの知見や視点、ヒトや時間など、解決に必要なリソースを確保しやすいでしょう。
課題に対する社内の共通認識をつくることも課題解決力が高い人の特徴です。
課題解決力が低い人の特徴3つ
前章では、課題解決力の高い人の特徴を紹介しました。反対に、課題解決力の低い人の特徴も紹介していきます。
同じミスを繰り返してしまう[特徴①]
同じミスを繰り返してしまう人は、課題解決力が低い傾向があります。課題の本質や要因を考えずに場当たり的に対応、また振り返りをせずに学ばないために、結果として失敗を繰り返してしまう傾向があります。
課題が発生される仕組みを理解していない[特徴②]
課題発生の仕組みを理解できない人も課題解決力の低い人の特徴です。「なぜ課題が発生したのか?」という課題の根本や原因を掘り下げることができなければ、課題を解決することはできません。
原因を分析できない人の特徴として、課題をどうやって解決するか(how)に意識が向いてしまい、なぜ課題が発生したのか(why)を思考する習慣がない、深掘りしない傾向があります。
発生された課題から目を背け、実行に移せない[特徴③]
課題と向き合わず、考えることや行動をやめてしまう人もいます。課題に対して、挑戦し、失敗を恐れてしまい実行に移すことができない人は、課題解決力が低い傾向にあります。また、分析力や課題解決のアイデアはあるけれども、実行力がない人も課題解決力が低いといえるでしょう。
ビジネス現場における課題解決は“評論”や“正解探し”ではなく、“実行”なのです。
問題・課題の3分類
問題や課題には大きく3つに分類されると言われます。3分類のうち、設定型や潜在型の問題・課題を早期に見つけて対処できるようになると、課題発見力の向上につながります。
発生型
「発生型」とはすでに起きている問題・課題で、ネガティブな事象が明確に見えていることが特徴です。
・「売上が前年よりも落ちた」
・「業務でミスが発生した」
・「顧客からのクレーム」など
問題が表面化しているため、課題解決に取り組むこと自体は比較的容易です。ただし、起こっている問題に対して、根本的な課題がすぐに見えるものもあれば、なぜかをしっかりと深掘りする必要があるものもあります。
設定型
「設定型」とは、あるべき姿としての理想を掲げたり、目標を設定したりすることで、生まれる課題です。
・「目標売上を達成するためには、新規顧客を2倍にする必要がある」
・「経常利益の目標を達成するために、販管費を削減しなければいけない」など
自ら目標を設定することで、「理想と現状のギャップ」という課題が生まれます。設定型の課題を自ら作り出していけるようになると、ビジネスで持続的に成果を生み出せるようになるでしょう。
潜在型
「潜在型」とは、まだ表面化していないけれど、今後発生する可能性がある問題・課題です。
・「属人的な仕事の仕方で業務に従事している社員」⇒退職による問題発生のリスク
・「営業のDX化」⇒訪問数の減少による売上減少のリスクなど
潜在型はまだ問題や課題が表面化していないため、認識が難しいことが特徴です。課題発見が遅れて、気が付くと手をつけられないほど肥大化している場合もあります。
一方で、潜在型の課題、一種のリスクをすべて解決することは不可能ともいえます。従って、潜在型の方は「発見する」ことに加えて、「優先順位を見極める」ことが大切です。
課題解決プロセスのステップ
ここまで課題解決力そのものについての説明をしてきました。本章では、課題解決に向けた行動の具体的なステップを解説します。
ステップ①課題を認識する
まずは課題を認識することが重要です。理想と現実のギャップを事実ベースで確認しましょう。「どのような状態であれば、課題解決とするのか」を明確にしておくことで、解決フローや実施手順が立てやすくなります。
ステップ②原因を調査し分析する
次に、課題を解決するための原因を分析していきましょう。「体系的に原因を見つけ、掘り下げていく」ことが重要です。複数ある原因の中で、影響を及ぼす範囲が大きく、ほかの原因のトリガーともなる、クリティカルな重要課題が何かを見つけられるよう、注視して分析していきます。
ステップ③解決策のアイディアを出す
課題の原因分析を終了次第、まず、できるだけ多くの解決策をあげていきます。解決策を考える場合は、思いつく限りの案を書き出すこともおすすめです。
ステップ④解決策を絞り込み、実行のためのスケジューリングをする
ある程度、解決策のアイデアがでたら、アイデアを評価・絞り込んで実行に落とし込んでいきます。施策の絞り込み、優先順位づけを行う際には、以下の視点で考えるとよいでしょう。
- 効果が見込めるか?
- 課題解決に直結するか?
- 根本要因が解決できるか?
- 時間はかかりすぎないか?
- どんなリソースが必要か?
- 属人的にならないか?
- 投資対効果が見合うか?など
ステップ⑤解決策を実行し、結果を検証する
スケジューリング完了後、実行したら、効果を検証します。
実行する前は、「どのくらいの改善/効果が期待できそうか?」という仮説をもち、効果検証のために実行前のデータを記録しておくことがおすすめです。検証して必要があれば、次の施策を実行しましょう。
課題解決力を高めるトレーニング方法~組織的課題解決力アップへの応用①
課題解決力を高めるには具体的にどのようにすればよいでしょうか。本章で紹介する「課題解決力を鍛えるトレーニング法」は、自分自身の課題解決力を高める上でも、メンバーを育成するうえで応用できます。ので、ぜひ参考にしてください。
日ごろから「なぜ?」を5回繰り返す
物事に対する疑問を深掘りしていく習慣がつくと、事象の構造を体系的に考えられる力が磨かれ、課題解決力の向上に役立ちます。
図解化や視覚化する
課題の発見や解決に際しては、事象を整理していく論理的思考力が必要不可欠です。論理的思考力を高めるには、「ロジックツリー」や「システム思考」がおすすめです。因果関係や繋がりを視覚化することができるので、思考力を高める練習になります。
フレームワークを覚えて利用する
フレームワークは、さまざまな事象を整理したり解決策を考えたりする際に役立ちます。いくつもフレームワークを身につけ、普段から活用することで課題発見力や課題解決力を高められるでしょう。
フレームワークの例として、前述のロジックツリーやシステム思考、MECE、3C分析、ECRSの原則、時間管理のマトリックス、SCAMPERの法則などが役立つでしょう。
部下の課題解決力を鍛える指導のコツ~組織的課題解決力アップへの応用②
組織の管理職には、自分自身の課題解決力を高めると共に、部下の課題解決力も高めていくことも求められます。本章では部下の課題解決力を鍛えるコツを紹介します。
フレームワークを教えながらやってみせる
実際にフレームワークを日常業務に取り入れるには、フレームワークの基本的な知識だけ教えるのではなく、どのような課題のとき、どのようなフレームワークを使ってみるか、という事例も必要です。
使ってみせながら、部下の課題解決力を高めるために、
- 使っているフレームワークの概要
- フレームワークを使う目的
- どういったシチュエーションで、どのフレームワークを使うか
などを指導しながら、やってみせることがポイントです。
コーチングしつつ部下に経験してもらう
部下の課題解決力を鍛えるためには、部下自身が課題に対して主体的に思考することが重要です。課題発見と解決に向けて、コーチングの技法を使って管理職がガイドしながら、部下に課題解決の実践を経験してもらいましょう。
課題解決力の向上に役立つ能力・スキル~組織的課題解決力アップへの応用③
最後に課題解決力の向上に役立つ能力を紹介しておきます。実行ステップやフレームワークの実践に取り組むなかで以下の力を意識して磨くと、課題解決力の向上に役立ちます。
情報収集能力
情報収集能力は、問題や課題の原因を特定し、根本課題を正確に把握するために必要な能力です。情報を集める方法には、上司やメンバーと意見を出し合う、ネット検索や講座、読書のインプットを通じて知識を増やす、現場にヒアリングするなどがあります。
決断力
ビジネス現場で課題解決する際、「パーフェクトな課題解決策」というものはそう見つかりません。メリットがあればデメリットもある、どれが正解か分からない、本当に課題解決に効果があるか分からないといった状況の中で、意思決定することが求められます。
分析力
分析力は、問題の構造や構成する要素、原因を考案する力です。また、分析力は課題を設定・発見するだけでなく、解決策の中から効果が見込めそうな施策を見出すうえでも役に立つでしょう。
やり抜く力
やり抜く力は、「GRIT:グリット」とも呼ばれ、課題解決に必要な能力の1つです。やり抜く力が高ければ、目標達成に対する課題を主体的に設定して、達成に向けて粘り強く取り組めるようになります。
「やり抜く力(GRIT)」に関しては、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
まとめ:社員の課題解決力を高め、生産性の高い組織に
記事では、課題解決力に関する基本的な内容、また、課題解決力を高めるためのポイントを解説してきました。
ステップ①課題を認識する
ステップ②原因を調査し分析する
ステップ③解決策のアイディアを出す
ステップ④解決策を絞り込み、実行のためのスケジューリングをする
ステップ⑤解決策を実行し、結果を検証する
社員が主体的に課題を設定し解決できるようになると、生産性の高い組織になり、会社全体の利益や成長につながります。課題解決力の高いメンバーを育て、顧客へ価値創出を拡大していける組織にしていきましょう。