コロナ禍を契機として、日本企業に一気にテレワークが浸透しました。そして、テレワーク下において新たな対応や模索が必要となっているのが研修や人材育成のやり方です。
テレワーク下における研修はさまざまなメリットがある一方で、学習効果を高めるための注意点などもあります。
記事ではテレワークでの研修に関するメリット・デメリットを確認したうえで、テレワーク研修の実施や効果性を高めるポイントなどを解説します。
<目次>
- テレワーク下での研修実施とは?
- なぜいまテレワーク下での研修検討が重要なのか?
- テレワーク研修・オンライン研修のメリット
- テレワーク研修のデメリット
- テレワーク研修を実施する流れ
- テレワーク研修で学習効果を高める5つのコツ
- テレワーク研修の導入を検討しよう
テレワーク下での研修実施とは?
テレワーク研修・オンライン研修とは、Web会議システムや配信プラットフォームなどを用いてオンライン上で実施する人材育成を指します。
日本ではコロナ禍を契機に一気にテレワークが浸透して、人材育成・研修に関してもテレワーク研修・オンライン研修が増加しました。
テレワーク研修では、遠隔地や自宅にいる社員がわざわざ研修会場に移動せずに研修を受講することができます。
また、動画を使ったオンデマンド型の研修であれば、社員が自分の都合が良い時間に受講できる、一度作成した動画コンテンツを蓄積・流用できるというメリットもあります。
なぜいまテレワーク下での研修検討が重要なのか?
テレワーク下での研修は、コロナ禍に伴って集合研修が実施できなくなった中で急激に普及しました。
いままで一種の“食わず嫌い”的な雰囲気もあって導入が進まなかったテレワーク研修・オンライン研修ですが、コロナ禍で強制的に導入が進んだことで改めて注目を集めています。
まずコロナ禍を契機として、企業によっては完全テレワークに移行した企業も少なくありません。
テレワークは、経営視点で見るとオフィス賃料や社員の通勤交通費などの費用が大きく抑えられる、人材採用に有利となる等のメリットがあります。
また従業員にとってもワークライフバランスを取りやすい働き方です。
従って、アフターコロナも全面テレワークに決めているスタートアップ企業もありますし、大手企業や上場企業でもリモートワークとオフィス勤務を混合したハイブリッド勤務が一般的になっています。
これに伴って研修や人材育成についても、今までの集合研修ではなく、テレワーク研修・オンライン研修を前提に考える必要が出ています。
また、実際にコロナ禍でテレワーク研修・オンライン研修を実際にやったことが後述するメリットを理解する企業も増えてきました。
結果として、最近は改めて、今後の恒久的な人材育成にテレワーク研修をどう組み込むのか、テレワーク研修の学習効果をどう高められるか、テレワーク研修と対面型の集合研修をどう組みわせるのかといった観点に興味を持つ企業が増えています。
テレワーク研修・オンライン研修のメリット
テレワーク、また、テレワーク下でのオンライン研修は、コロナ禍における感染症対策を目的として導入が進みましたが、実際に実践されたなかで、感染対策以外にもさまざまなメリットが実感されています。
テレワーク研修・オンライン研修の主なメリットは以下の4つです。
- 時間の有効活用
- 旅費交通費の削減
- どこにいても研修できる
- 研修内容を動画で保存できる
時間の有効活用
テレワーク研修・オンライン研修は時間を有効活用できます。
参加者は会場に移動する時間が必要ないということは、広いエリアに展開する企業、店舗展開型の企業などにとっては特に大きなメリットといえるでしょう。
企業側は研修実施場所の調査や確保に使っていた工数をカットできますし、参加者の移動時間がなくなることで研修の日程調整も容易になります。
参加者の移動時間が無くなることで、総合的な拘束時間も減りますので、その点でも研修を実施しやすくなります。
旅費交通費の削減
移動時間に加えて交通費等も削減できます。全国展開しているような企業にとっては、対面研修を実施すると、研修費用よりも旅費交通費が高くなるようなことも珍しくありません。
例えば、全国から50人を一泊二日で集めれば、簡単に100万円を超える費用がかかります。これらの費用がなくなることも、研修の実施ハードルを大きく下げてくれます。
どこにいても研修できる
全国どこからでも研修を開催・受講できることもテレワーク研修のメリットです。これによって、すべての参加者に平等に研修、教育の機会を与えられます。
前述した研修の実施ハードルが下がることとも併せて、すべての従業員に成長機会を平等に提供しやすくなります。
研修内容を動画で保存できる
テレワーク・オンライン研修であれば、研修内容を動画で保存し、サーバーにアップロードすることは非常に簡単です。
そして、動画にしてしまえばいつでもどこでも視聴できるようになります。
研修に参加できなかった人のフォローアップや再度試聴して復習したい人に動画で提供できますし、動画を蓄積することで、新たに入社してくる人に対する自社の教育体系(動画コンテンツ)を整備することも容易になります。
テレワーク研修のデメリット
一方で、テレワーク研修には次のようなデメリットがあります。
- 実習型の研修は不向き
- 集中を保ちにくい
- 参加者同士の交流が難しい
実習型の研修は不向き
参加者が別々の場所にいて画面とマイク・イヤフォンを通じて参加するテレワーク研修では、手や体を動かす実習型の研修を実施することは困難です。
ロールプレイング等であれば、ある程度はその場でしてもらうことも可能ですが、機械や身体を使った実践などは難しいのが実情です。
集中を保ちにくい
対面研修であれば会場で参加するため、講師と参加者で空間を共有し、五感すべてを巻き込んで研修に集中してもらうことが容易です。
一方で、テレワーク研修・オンライン研修は、受講者がいる場所はそれぞれの参加場所であり、パソコンの画面と音声だけが研修の世界となります。
必然的に研修に集中することにエネルギーが必要となり、集中力を保ちにくくなってしまいます。
参加者同士の交流が難しい
テレワーク研修・オンライン研修でも、グループワークなどは実施できます。
しかし、対面の研修と違って、休憩時に参加者同士で雑談したり、グループを越えて交流したりといったことは難しくなります。
また、研修会後に懇親会等を開催することも難しくなるでしょう。
テレワーク研修を実施する流れ
本章ではテレワーク研修を実施する流れを具体的に紹介します。
- 1.システムの導入
- 2.研修内容の計画
- 3.実施の段取り・告知
- 4.実施と改善
1.システムの導入
もしテレワーク研修に必要となるWeb会議システムや研修サービスがなければシステムの導入から始める必要があります。
ただし、Web会議システムが導入されていれば、基本的なテレワーク・オンライン研修は実施可能です。
テレワーク研修に利用するWeb会議システムはグループワークができるものを強く推奨します。
ZOOMでいえば、ブレイクアウトセッションと呼ばれる機能であり、現時点では、さまざまなWeb会議システムの中で、ZOOMのブレイクアウトセッション機能が一番テレワーク研修には使い勝手がよいように思います。
最近では、オンライン上に学習マニュアルや研修コースを作れるようなテレワーク研修に特化したオンラインサービスも増えています。
有名なサービスとしてはUMUがありますし、ほかにも店舗でのアルバイト育成などに特化したようなオンライン人材育成のサービスもあります。
2.研修内容の計画
システムの導入が終わっていれば、研修の日程や回数、どのような内容にするかなど、自社に合った研修計画を立てましょう。
研修を行なう目的や研修後のゴールを決めておくと、無駄のない研修計画を立てられます。
テレワーク研修・オンライン研修を企画する基本は通常の対面研修と同じですが、通常の対面研修とは異なるプログラム設計のポイントなどもあります。
以下の記事で詳しく説明していますので、ご興味あれば確認ください。
3.実施の段取り・告知
テレワーク研修の計画を立てたら、参加者に告知しましょう。このあたりの段取りはリアルでの実施と変わりません。
4.実施とアフターフォロー
作成したプランに基づいて研修を実施し、研修後は参加者にアンケートなどを行なって研修のフィードバックを集めましょう。
研修サービスによってはシステム上で理解度テストや研修状況のチェックが行なえるサービスもあります。
特に動画や知識インプット型の研修などの場合には、集中力を保つうえでも研修後の理解度テスト実施などは有効です。
また、テレワーク研修は、研修が終わって接続を切った瞬間に、学び等を反芻したりする余韻がなく終了してしまいがちです。
従って、通常の対面研修以上に、職場実践へのブリッジングや課題設定をきちんとすることが大切です。
また、移動時間や会場確保がいらない利点を生かして、短時間のフォローセッションを何度か設けることも行動変容を実現する上で有効です。
テレワーク研修で学習効果を高める5つのコツ
テレワーク研修で学習効果を高めるためには対面研修とは少し違うポイントがあります。ここではテレワーク研修を効果的なものにするために押さえておくべき基本となる5つのコツを紹介します。
- 安定した通信環境を整える
- 参加者の集中力を保つ工夫をする
- フォローアップなどを丁寧に設計する
- グループワークを活用する
- アウトプット・フィードバックの機会をつくる
安定した通信環境を整える
ごく当たり前の話ですが、テレワーク研修において安定した通信環境の確保は不可欠です。
パソコンなどの画面越しだけでつながっていますので、映像や音声に乱れ等が生じると参加者の集中力が一気に阻害されます。
また、通信環境だけでなく、講師側はノイズキャンセラー付きのマイクや外付けカメラなどの周辺デバイスを用意することで音声と映像のクオリティを確保することが大切です。
なお、参加者側も音声などに乱れがあるとグループワークなどを実施しにくいですので注意が必要です。
参加者の集中力を保つ工夫をする
パソコンの前で長時間研修を受けることは、対面よりも集中力が必要です。
小休憩をこまめに挟んで無理のないスケジュールを作成したり、こまめに問いかけを投げたりチャットを投稿してもらったりするなど双方向性を盛り込む工夫が重要です。
対面研修であれば、60分に1回の休憩が必要と言われますが、オンライン研修であれば集中力を保つには45分程度に1回の休憩が必要です。
フォローアップなどを丁寧に設計する
対面研修であれば、休憩時間に講師に対して質問したり、参加者同士で質疑応答したりすることも良いです。
講師側も理解度や集中力に懸念がある人をサポートしたり、実践へのフォローアップをしやすかったりします。
一方でテレワーク研修になると、休憩時間に個別でケアすることは難しいですし、オンライン会場から退出した瞬間に接続が切れてしまい余韻が残りません。
従って、前述の通り、不明点を解消してもらったり、実践してもらったりするためのフォローアップが大切です。
移動時間や会場費が要らない利点を生かして、フォローアップをきちんと実施しましょう。
グループワークを活用する
テレワーク研修ではグループディスカッションなどをうまく盛り込むことが大切です。
グループワークは対面よりも少し少人数、具体的には4人以下のグループなどで行なうと、会話をスムーズに進められます。
アウトプットやコミュニケーションの機会をつくる
オンライン研修では講師から参加者に向けた一方通行のコミュニケーションで終わらないように、とくに注意が必要です。
従来の対面研修以上に、アウトプットやコミュニケーションの機会を多く設けることが大切です。
テレワーク研修の導入を検討しよう
コロナ禍を契機として一気に浸透したテレワーク研修ですが、実際にやってみてメリットを感じている企業も多いでしょう。
とくに移動に必要な時間やコストがなくなることは、研修機会を増やしたり、日程調整がしやすくなったり、研修費用が減少したりといった大きなメリットがあります。
ただし、テレワーク研修には対面研修と少し異なる実施のポイントもありますので、記事内でも紹介したテレワーク研修固有のポイントをきちんと押さえて実施することが大切です。
また、機械や身体を使った実践、人間関係の構築や雑談などはテレワーク研修で実現が難しい点です。
テレワーク研修の良さを生かしながら、対面研修と組み合わせたブレンディッド学習を検討していくことが、今後の人材育成のポイントになるでしょう。