クリティカルシンキングとは?注目される理由や3つのメリットを紹介

クリティカルシンキングとは?注目される理由や3つのメリットを紹介

ロジカルシンキングと並んで、ビジネスで求められる思考スキルがクリティカルシンキングです。ロジカルシンキングとクリティカルシンキングはどのように違うのでしょうか。

 

本記事では、ビジネスでクリティカルシンキングが必要な理由と3つのメリット、鍛えるポイントなどを紹介します。

<目次>

クリティカルシンキングとは?

顎に指を当て思案するビジネスマン

 

クリティカルシンキング(critical thinking)は、日本語では”批判的思考”と翻訳される思考法です。批判という言葉が入っていますが、一般的な日本語の文脈で使われる意味とはすこし異なります。
ここでの批判は、”前提条件を適切に疑う思考法”という意味合いです。

 

クリティカルシンキングが求められる理由

現在は、私たちの多くが知識労働に携わる時代となっており、またIT技術の進化やAI活用など、知識労働を取り巻く環境は急激に変わっています。

 

このような“未来が不安定で予測不能になっている”時代のことをVUCAの時代とも言います。VUCAとは以下4つの英単語の頭文字を取った造語です。

  • VUCA
  • └Volatility:変動性
  • └Uncertainty:不確実性
  • └Complexity:複雑性
  • └Ambiguity:曖昧性

VUCA、そして、技術進化なども急激に進んでいく時代、過去の前例に則って粛々と業務を進めるだけでは、成長できないどころか淘汰されてしまいかねません。

 

このようななかで、今までの前例や常識に縛られず、ゼロベースで思考する力=クリティカルシンキングが求められています。

 

クリティカルシンキングとロジカルシンキングの違い

ロジカルシンキング(logical thinking)は、ロジカル(論理的な・理にかなった)とシンキング(思考・意見)を組み合わせた言葉で、日本語に翻訳すると“論理的思考”です。

 

ロジカルシンキングは、原因と結果、結論と根拠などの因果関係をベースにし、ロジックツリーやMECEなどのフレームワークを使って状況を整理して、筋道立てて結論を出したり問題解決したりする思考法です。

 

ロジカルシンキングでは、課題や問題に対し筋道を立て、要素を細分化・積み上げて考えていきます。
たとえば、「この問題を引き起こしている要因はどんなものがあるだろうか?」「今までどんな解決方法を取ってきただろうか?」「要因の中で一番大きく影響を与えているものは何だろうか?」といったことを考えます。

 

一方でクリティカルシンキングは、ゼロベースの視点で前提を疑うような思考法です。
クリティカルシンキングでは「そもそも考えるべき問題はこれでいいのか?」「課題のとらえ方は合っているか?」「今までのやり方に従う必要はあるか?前提を変えられないか?」といった視点で考えていきます。

 

ロジカルシンキングとクリティカルシンキングは、優劣があったり対立したりするものではありません。それぞれの長所と短所を理解して、状況に合わせて使い分け・組み合わせることが有効です。

クリティカルシンキングのメリット

クリティカルシンキングを身に付けると、3つのメリットがあります。

  • 的確な判断ができるようになる
  • 新たな視点や発想を生み出せる
  • 物事や意見の矛盾・漏れを見つけ出せる

 

的確な判断ができるようになる

課題や前提に疑問を持つことで、本質的な課題解決や解決策にたどり着ける可能性が増えます。また、疑問を持つプロセスで主観的な意見や価値観等に飲み込まれず、客観的な視点を持ちやすくなります。

 

新たな視点や発想を生み出せる

クリティカルシンキングを使うことで現状では「1つの対応策しかない」「解決策がない」と思える問題に、新しい解決法を示せる可能性があります。前提条件や表面的な問いに囚われないことで、革新的な答えを考えられるかもしれません。

 

革新的な選択肢が最良の答えとは限りませんが、前提を疑って多様な選択肢を出して比較することでより適切な選択肢を選び、望ましい結果を導くことができるでしょう。

 

物事や意見の矛盾・漏れを見つけ出せる

さまざまな疑問を持って洗い出された問題点を一つひとつ解決することで、矛盾や漏れの発見につながります。

 

検討しつくした内容は適正なものである可能性も高くなりますし、そこから正しい情報に基づいた結論を導き出すこともできるでしょう。

クリティカルシンキングによる課題解決の実践ステップ

クリティカルシンキングとロジカルシンキングを組み合わせて問題解決のステップを紹介します。より具体的にクリティカルシンキングを利用するイメージが湧くと思います。

 

 □ゴールを明確にする
 □現状(前提条件)を分析する
 □課題解決を考える
 □アクションに落とし込む

 

ステップ①ゴールを明確にする

まず、達成したい目的を明らかにしましょう。
目の前の問題を解決して、どのような状態にしたいのか・なぜそれを実現したいのかを明確化するのが大事です。

 

与えられたテーマを鵜呑みにするのではなく、「本当に実現したいことはこれでいいのか?」と立ち止まって考えることが大切です。

 

ステップ②現状(前提条件)を分析する

次に、現状を整理しましょう。
ここではロジカルシンキングを用いながら、状況や前提条件を整理するとわかりやすくなります。

 

ロジックツリーやMECEなどのフレームワークを使って、漏れなくダブりなく現状を正確に把握するのが大事です。

 

ステップ③課題解決を考える

整理した情報を踏まえて、課題の解決策、ゴールへの到達方法を考えましょう。

 

考えるなかで、前ステップで整理した前提条件、また思考のなかで無意識に前提条件にしてしまっている要素に関して「本当に変えられないか?」「本当に正しいか?」という視点でチェックすることが重要です。

 

ステップ③アクションに落とし込む

5W1Hを明らかにして、具体的なアクションプランに落とし込みましょう。

 

このフェーズでは、再びロジカルシンキングを用いることで状況の整理や抜け漏れの防止をして進めていくことが有効です。

クリティカルシンキングを鍛えるポイント

下を向き思案するビジネスマン

 

クリティカルシンキングを鍛えることは、すべてのビジネスパーソンにとって有効です。本章ではクリティカルシンキングの鍛え方を4つ紹介します。

  • 前提条件に疑問を持つ
  • さまざまな視点から物事を見る
  • 自分の思考を俯瞰的にとらえる
  • 事実と意見を切り離す

 

前提条件に疑問を持つ

前提条件に疑問を持つ習慣を身に付けましょう。私たちはさまざまなものを前提条件にして生活しており、ビジネスの意思決定や施策立案などに関しても同様です。

 

例えば、社内で何十年も同じルールを適用していると、それが当たり前になってそもそも「なぜこのルールが必要なのか?」を考えなくなってしまい、自動的に「ルールだから従う」となってしまいがちです。ルールだけでなく習慣なども同様です。

 

日常生活やビジネスでは「考えないほうが効率よく進められる」のも事実です。ただ、考えないほうが効率的であるという一方で、本当は変えられたり誤っていたりしているのに思考停止して受け入れてしまっていることも多々あります。

 

「これって、どんな前提条件に基づいてこうしているのだろう?」「この前提条件って変えられないんだろうか?」と日常で考えることが大切です。

 

さまざまな視点から物事を見る

クリティカルシンキングを実践するうえでは、1つのテーマに関してさまざまな視点から見る習慣も有効です。

 

一方からは正しく見えても、違う方向からだと矛盾点が見つかる可能性があります。さまざまな方向から見ることで、物事の矛盾点や間違いなどに気付きやすくなります。

 

自分の思考を俯瞰的にとらえる

人には過去の体験、価値観、思い込み、偏見など、無意識に思考に影響を与えている要素が無数にあります。こうした要素に完全にとらわれないということは不可能です。

 

ただ、こうした自分自身の偏りに意識的になることで、より客観的に、また、さまざまな角度で物事を見られるようになるでしょう。

 

事実と意見を切り離す

事実とは「実際に起こった事柄」、意見とは「事実の捉え方や解釈、仮説や考察」です。

 

例えば「Aという商品が100万個売れた」ということは事実で、「Aという商品が売れた理由は○○だからだ」というのは意見です。

 

相手が話していること、また自分が考えていることなどに対して「これは事実なのか?それとも意見なのか?」と区別する習慣を身に付けましょう。

クリティカルシンキングを身に付けよう

クリティカルシンキングは、ロジカルシンキングと組み合わせることで、問題解決などに非常に有効な思考方法です。

 

クリティカルシンキングを身に付けると、過去の前例や不要な前提条件などに囚われることなく思考して、本質的であったりイノベーティブであったりする解決策を導きだすことも可能になります。

 

記事で紹介した鍛え方をぜひ日常生活で実践して、クリティカルシンキングを身に付けて下さい。

著者情報

近藤 浩充

株式会社ジェイック|取締役 兼 常務執行役員

近藤 浩充

大学卒業後、情報システム系の会社を経て入社。
IT戦略事業、全社経営戦略、教育事業、採用・就職支援事業の責任者を経て現職。企業の採用・育成課題を知る立場から、当社の企業向け教育研修を監修するほか、一般企業、金融機関、経営者クラブなどで、若手から管理職層までの社員育成の手法やキャリア形成等についての講演を行っている。
昨今では管理職のリーダーシップやコミュニケーションスキルをテーマに、雑誌『プレジデント』(2023年)、J-CASTニュース(2024年)、ほか人事メディアからの取材も多数実績あり。

著書、登壇セミナー

・社長の右腕 ~上場企業 現役ナンバー2の告白~
・今だからできる!若手採用と組織活性化のヒント
・withコロナ時代における新しい採用力・定着率向上の秘訣
・オンライン研修の「今と未来」、社員育成への上手な取り入れ方
・社長が知っておくべき、業績達成する目標管理と人事評価
・社長の右腕 ~ナンバー2の上司マネジメント / 部下マネジメント~
・オーナー経営者が知っておきたい!業績があがる人事評価制度と組織づくりのポイント
・社長の右腕 10の職掌 など

関連記事

  • HRドクターについて

    HRドクターについて 採用×教育チャンネル 【採用】と【社員教育】のお役立ち情報と情報を発信します。
  • 運営企業

  • 採用と社員教育のお役立ち資料

  • ジェイックの提供サービス

pagetop