仕事のパフォーマンスが低く、支払っている給与に見合っていない社員のことを“ローパフォーマー”と言います。ローパフォーマーを放置してしまうと生産性が低下するだけでなく、他社員の負担が増す、モチベーションを落としてしまいますので、対処すべきです。ローパフォーマーへの対策は明確な目標をすり合わせ、研修を行うことが大切です。
「部下がミスを繰り返すせいで他の同僚の負担になっている」「モチベーションの低い部下にどう接すればいいのかわからない…」など、仕事のパフォーマンスが低い社員にお悩みの上司や経営者は多いのではないでしょうか。
会社が支払っている給料とパフォーマンスが見合わない、いわゆる「ローパフォーマー」は放置しておくと、大きなトラブルになりかねません。ローパフォーマーの問題を改善するためには、相手の特徴を理解した上で接する必要があります。
本記事ではローパフォーマーの特徴と対策について解説します。ローパフォーマーが生まれる原因も紹介していますので、今後の採用基準や教育制度の参考にもしてみてください。
<目次>
- ローパフォーマーとは?5つの特徴を解説
- ローパフォーマーを放置するリスクとデメリット4選
- ローパフォーマーが生まれる原因とは?それぞれの問題点を解説
- ローパフォーマーを抱えている企業が取るべき対策5選
- ローパフォーマーへの対応で注意すべき2つのこと
- まとめ
ローパフォーマーとは?5つの特徴を解説
ローパフォーマーには、以下5つの特徴があります。
- 仕事の生産性が低い
- 受け身で仕事に取り組んでいる
- 繰り返し同じミスをする
- 勤務態度に問題がある
- 能力不足を自覚していない
順番に見ていきましょう。
仕事の生産性が低い
これは、ローパフォーマーの定義ともいえますが、ローパフォーマーは仕事の生産性が低く、給与に対するパフォーマンスが低い人です。会社を維持・成長させるためには、当然ながらメンバーには支給している給料以上の仕事ができるようにしてもらう必要があります。
仕事の生産性が低く、受け取っている給料分のパフォーマンスをこなせない社員は、会社にとってマイナスな存在です。生産性を上げられるように改善してもらわないと、会社の足を引っ張る存在となります。
受け身で仕事に取り組んでいる
ローパフォーマーは、主体性が低く、言われたことしか取り組まない傾向もあります。成長意欲が低いためスキルアップもせず、生産性が向上していきません。指示を送らないと動かないのでマネジメント側の負担が大きくなり、部署全体の生産性が低下してしまうことも考えられます。
繰り返し同じミスをする
仕事への意欲が低いローパフォーマーは自ら改善しようとしないので、同じミスを繰り返してしまいます。
ミスは誰にでもあるものですが、意欲のある人は同じことを繰り返さないように、原因を突き詰め改善するものです。しかし、ローパフォーマーはミスをしたときに原因の確認や対策を取らないため、繰り返し同じミスを犯してしまいます。
勤務態度に問題がある
ローパフォーマーには、勤務態度に問題があるケースも多いでしょう。「遅刻・無断欠勤を繰り返す」「上司や同僚に反発する」「指示に従わない」といった人が組織内にいれば、他の社員がカバーやフォローをしなければならなくなり、生産性やモチベーションの低下につながります。
能力不足を自覚していない
業務を遂行する上で必要な能力が不足しているために、ローパフォーマーになっていることもあります。能力不足はローパフォーマーに限らず、新人や職種間異動をしてきた人が該当することもあるでしょう。
ただ、自らの能力不足を自覚し、改善の努力をしているのであれば問題ありません。一番の問題は、能力不足の自覚がないことです。
伸びしろのある人は、自身が能力不足であることを自覚し、改善するために努力します。しかし、能力不足を自覚していない人は自らの能力開発に向けたアクションを起こさないため、成長する見込みがありません。
ローパフォーマーが能力不足の自覚がない場合、きちんと気づいてもらうきっかけを組織側で与える必要があります。
ローパフォーマーを放置するリスクとデメリット4選
ローパフォーマーへの対応は手間もかかりますし、非常に大変です。しかし、放置してしまえば事態は悪化していきます。ローパフォーマーを放置してしまうことで発生しうるリスクは、以下の通りです。
<ローパフォーマーを放置するリスク>
- 組織の生産性が低下する
- 他社員の負担が大きくなる
- 他社員のモチベーションが低下する
- 優秀な社員が退職する
順番に見ていきましょう。
組織の生産性が低下する
ローパフォーマーは支払われている給料に対して見合う仕事ができていませんので、組織の生産性、とくに労働生産性が低下していくことになります。
労働生産性、たとえば、社員1人当たり粗利が低下すれば、社員の昇給原資や事業への投資なども出来なくなっていきます。更なる生産性の低下、また、後述する他社員のモチベーション低下や優秀な社員の退職にもつながります。
他社員の負担が大きくなる
ローパフォーマーの存在によって他社員の負担が大きくなってしまうことも、ローパフォーマーを放置することで生じる問題です。他社員の負担が大きくなる具体例を、以下のようなものです。
・ローパフォーマーのミスを他社員が尻ぬぐいしなければならず、余計な工数が生じる
・上司が細かく指示出しをしなければならず、マネジメント業務の負担が増加する
・重要な仕事は依頼できないため、他社員の負担が大きくなる
他社員の負担が大きくなると社内の不満が募り、社内の雰囲気が悪くなることも考えられます。また、次のモチベーション低下などにもつながります。
他社員のモチベーションが低下する
ローパフォーマーのせいで他社員の負担が増えてしまうことは、部署全体のモチベーション低下にもつながります。部門内の雰囲気やコミュニケーションも悪くなっていきますし、モチベーションが下がれば生産性もさらに落ち込んでいくでしょう。
優秀な社員が退職する
ローパフォーマーによってモチベーションが低下した社員の中には、退職してしまう人が出てくるでしょう。
とくに優秀な社員ほど、ローパフォーマーの尻ぬぐいに駆り出されたり、ローパフォーマーのせいで組織の生産性が下がったりしている状況に嫌気がさして退職してしまうものです。
優秀な社員が退職してしまうと、さらに生産性が低下し、事業全体の計画の見直しを余儀なくされることもあるでしょう。
ローパフォーマーが生まれる原因とは?それぞれの問題点を解説
ここまで紹介した通り、ローパフォーマーの存在は会社の足を引っ張ってしまうものであり、非常に大きな問題です。ただし、必ずしも本人だけの問題といえない場合もあります。会社や上司が原因でローパフォーマーになってしまっているケースもあります。
ここからはローパフォーマーが生まれる原因について本人・会社・上司それぞれの観点から解説します。ローパフォーマーの生まれる原因を知ることは、対策を見つけるヒントにもなるでしょう。
会社起点でローパフォーマーが生まれる原因
会社が起点でローパフォーマーを生んでしまう原因は、大きく以下の3つです。
① 採用時点でミスマッチを起こしている
どれだけ優秀な人でも得手不得手がありますし、会社の価値観や組織風土と合わなければ十分に力を発揮することはできません。従って、採用時のミスマッチや採用基準の妥協がローパフォーマーを生み出してしまうこともあります。
② 評価基準があいまい
社員の評価基準が曖昧だと仕事で目指すべき方向性や基準が分からず、それがローパフォーマーを生み出したり、また、能力不足の自覚がなかったりすることにつながっているケースもあります。
③ 新人の受け入れ態勢や教育体制が悪い
さらに新人の受け入れ態勢や教育体制に不備があり、会社に馴染みにくい、業務を覚えるのが大変といった状況になっているケースもあるでしょう。早期離職が多い、受け入れがOJTのみになっているといった場合は要注意です。
環境次第では、本来普通にパフォーマンスできる人が、ローパフォーマーになってしまうこともあり得ます。次のローパフォーマーを生み出さないために、会社の採用や教育、評価体制に問題がないことを改めて確認しておきましょう。
上司が原因でローパフォーマーが生まれるケース
ローパフォーマーを生み出している原因として、上司のマネジメントやコミュニケーションに問題があることも考えられます。やはり、上司の接し方次第で、部下のパフォーマンスは大きく左右されます。
たとえば、上司がハラスメントをしてしまうと部下は委縮してしまい、本来のパフォーマンスを発揮できません。また、上司が適材適所に仕事を割り振っていないために、ローパフォーマーになってしまっていることも考えられます。
ローパフォーマーを改善するうえでは、上司のマネジメントに問題がないかを確認したうえで、上司と連携して取り組むことが必須です。
ローパフォーマーの原因が本人にある場合
会社や上司が原因でローパフォーマーは生まれてしまうケースはありますが、もちろん本人に原因があることも多いですし、本人が自覚しないことにはなかなか改善はされません。
本人に改善を促す場合の注意点は、意欲や向上心で解決しようとしないことです。「意欲が低い」「やる気がない」などと指摘したところで、ローパフォーマー本人がやるべきことがわからないので、解決に繋がりません。
また、意欲ややる気が低い原因を聞いていくと、「周囲から評価されていない」「機会をもらえない」といったローパフォーマーである結果が、意欲ややる気が低い原因になっているという悪循環に陥っているケースもあります。
本人の話を聞くと共に、スケジューリング、ひとつひとつの作業にかかっている工数などの具体的な行動面も確認しながら、ローパフォーマーになっている原因を探っていきましょう。
ローパフォーマーを抱えている企業が取るべき対策5選
ローパフォーマーを改善する対策としてはどのようなものがあるでしょうか。本章では、ローパフォーマーへの対策として、大きく5つをを紹介します。
1. 明確な目標を設定する
2. 定期的にコミュニケーションを取る
3. 研修・能力開発の機会を設ける
4. 退職勧奨を行う
5. 採用基準を見直す
ローパフォーマーを放置しないように、順番に取り組んでいきましょう。
明確な目標を設定する
ローパフォーマー本人と面談の時間を取り、明確な目標を設定しましょう。意欲が低いローパフォーマーの多くは、業務目標が明確になっていない傾向にあります。そのため、ローパフォーマーと面談の時間を設け、業務目標のすり合わせを行いましょう。
業務目標がないためにローパフォーマーになっている人の場合、ゴールを明確にすることで改善される可能性があります。また、後述するコミュニケーション、研修・能力開発、退職勧告などを考えても、まずはきちんと妥当な目標を設定する・評価するプロセスが大切です。
目標設定について詳しくは「目標設定の目的と基本を解説!設定のポイントや注意点、達成のコツとは」の記事で解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
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定期的にコミュニケーションを取る
目標設定したら、まずは定期的にコミュニケーションを取っていきましょう。ローパフォーマーの中には、会社が自分に対して期待していないと思い込んでいるために、意欲が低くなっている人もいます。
そのため、目標に対する進捗確認も含めて定期的にコミュニケーションを取り、会社・上司が気に掛けていることをアピールすると効果的です。なお、目標に対する進捗確認だけでなく雑談なども入れると、距離感を縮めるきっかけになり、業務中のコミュニケーションが円滑になる場合もあるのでおすすめです。
研修・能力開発の機会を設ける
能力不足によりローパフォーマーになっている場合は、研修や能力開発の機会を設けましょう。業務目標に必要な能力の習得を支援することで、改善が期待できます。研修や能力開発を受けさせる場合は、事前に面談をして本人と明確な目標を設定しておくと、効果が高まるでしょう。
退職勧奨を行う
目標設定、コミュニケーション、能力開発などをきちんと実施して、手を打ってきたうえで、どうしても改善の見込みがない場合は、退職勧奨を行うことも選択肢に上がってくるでしょう。
ローパフォーマーになる原因は外的な要素もあるとはいえ、改善されない場合は会社や業務内容とのミスマッチが起きている可能性があります。ローパフォーマー状態のまま、在籍していることは本人のためにもなりません。退職勧奨を行うことも視野に入れたほうがよいでしょう。
なお、退職勧奨を行う際は、きちんと本人に向き合って、また、本人の今後のキャリアを考えなら伝えていきましょう。間違っても人格否定するような退職勧奨にならないように気を付けましょう。
採用基準を見直す
今後ローパフォーマーを生み出さないためにも、改めて採用基準を見直しておくことも大切です。今いるローパフォーマーを改善できた、会社から去ってもらったとしても、採用がうまくいっていない場合、次のローパフォーマーが生み出されてしまいます。
「ローパフォーマーの原因が採用にないか?」「あるとしたら、採用時にどこで判断を誤ったか?」「再発しないためには採用基準をどうすればいいか?」をきちんと振り返りましょう。
たとえば、
・スキル面でミスマッチだった
・カルチャーフィットしていなかった
・特性や価値観で見極めを誤った
などを確認して、採用基準に反映しましょう。採用基準の決め方について詳しくは「採用基準の作成と運用方法は? 注意点や例も紹介」の記事で解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
ローパフォーマーへの対応で注意すべき2つのこと
ローパフォーマーを改善するためには、本人とコミュニケーションを取ることが必須となります。しかし、対応の仕方を間違えてしまうとトラブルになってしまうリスクがあるので注意が必要です。
ローパフォーマーに対応する際は、以下の2点に気を付けましょう。
1. 指導の際に強く当たり過ぎない
2. 退職勧告は最終手段
1つずつ解説します。
指導の際に強く当たり過ぎない
指導する際は強く当たり過ぎないように、気を付けてください。ローパフォーマーを指導する場合、どうしても口調が厳しくなってしまうことがあります。
相手のパフォーマンスに対するきちんとしたフィードバックが必要です。ただし、度が過ぎれば相手が委縮してしまい、ますますパフォーマンスを発揮できなくなります。また、行き過ぎればハラスメントになってしまうこともあります。
退職勧奨は最終手段
改善の見込みがないローパフォーマーへの対策の1つに「退職勧奨」をあげましたが、退職勧奨はあくまで最終手段です。安易に退職勧告に踏み切ってしまうとトラブルにもつながりかねません。
日本の法律は労働者の解雇規制が非常に強く、強引な退職勧奨をすると不当解雇として訴えられるような事態も考えられます。退職勧奨を使うべきタイミングは、会社全体であの手この手を尽くしてみても、一向に改善しない場合です。
また、そこまでのプロセスをきちんと記録しておくことも大切です。指導や育成プロセスをきちんと記録した上で退職勧奨を行えば、万が一トラブルになったとしても会社側の正当性が認められる可能性が高まります。
まとめ
会社への貢献度が給与に見合わないローパフォーマーを放置してしまうと、生産性が下がるだけでなく、他社員への負担増加、また、モチベーション低下、さらには優秀な社員の退職などにもつながるリスクがあります。
ローパフォーマーは本人の問題であることも多いですが、会社や上司など環境的な要因から生まれている場合もあります。従って、いきなりすべてを本人の責任にするのではなく、会社や上司のマネジメントに問題がないかという側面もきちんと振り返ったうえで対策を取ることが必要です。