【アルハラの基礎知識】防止策や判例、巻き込まれやすい社員タイプ

更新:2023/07/28

作成:2023/04/04

【アルハラの基礎知識】防止策や判例、巻き込まれやすい社員タイプ

通称アルハラ=アルコールハラスメントが社会問題になっています。

 

上司や先輩から強要されるお酒や酔った状態での嫌がらせ行為、最悪のケースの場合アルコール中毒で命を落とすという被害も報告されています。

 

アルハラの特徴や対策、アルハラでの処分について紹介します。

<目次>

アルハラとは?

アルハラ=アルコールハラスメントとは、飲酒に関連した嫌がらせ行為や迷惑行為人権侵害の事をこう呼びます。日本で1980年代にアルハラ問題が急激に注目され始めました。

 

その理由は、強制的にアルコールを飲酒させられた学生が急性アルコール中毒にかかり死亡させたとする事件性に発展したことからでした。

 

以降、特定非営利活動法人アルコール薬物問題全国市民協会(ASK)がアルハラの定義を制定しました。

急性アルコール中毒による病院搬送者統計

アルハラによる急性アルコール中毒は統計上でも明らかに増加の一途をたどっています。過去5年間に病院に搬送された人員の統計が東京消防庁によってグラフに表されています。

 

急性アルコール中毒による病院搬送者統計

参考:東京消防庁

アルハラとみなされる5つの行為

アルハラはお酒に関連した迷惑行為を基本的に定義としています。ASKが制定しているアルハラの5つの行為を解説します。

①飲酒の強要

社会的上下関係において、集団や部活動の伝統によるなどの理由ではやし立てによる心理的な圧力のもとに、飲まざるを得ない状況に追い込んで飲酒を強要すること。

②イッキ飲ませ

「イッキ飲み」とはお酒を一息で飲み干すことで、場の雰囲気を盛り上げたり、罰ゲームなどと称してイッキ飲みや早飲みを競争させたりする行為。

③意図的な酔いつぶし

酔いつぶすことを目的として開催される飲み会で、悪質なケースは吐き袋やバケツ、つぶれ部屋というものが準備されていて、障害行為に匹敵します。

④飲めない人への配慮を欠くこと

アルコールを受け付けない体質の人に本人の意向を無視してお酒を強要、宴会にアルコール以外の飲料が用意されていない場合や、飲めないことを愚弄するような行為・言動を行うこと。

⑤酔ったうえでの迷惑行為

酔ったうえでからむ、常識を欠く暴言・暴動やセクシュアルハラスメント、ひんしゅくをかう行為を行うこと。

アルハラが発生する背景

アルハラが起こる背景にはどんな理由があるのでしょうか?いくつかの特徴を取り上げてみました。

飲酒は潤滑剤

古くから飲酒は人々の間で楽しい行為として愛好されてきました。お酒はコミュニケーションの道具として、人間関係を円滑にするために潤滑剤として用いられることが大きな目的でした。

 

軽度の飲酒は場の雰囲気を和ませて、人々との調和を高めるためのツールであったわけです。

 

飲酒に対しては友好や娯楽といった快楽のイメージがあるため、酌を交わすという行為はコミュニティでは友好を示す当然の常識となったのです。

 

そのため、杯を返す=相手の酌を受けない。つまり禁欲的や敵意の表明とうけとられ、歴史的にも関係を断つ行動として「杯を返す」ことで対立が起こったケースが多く見受けられます。

 

このような歴史的な飲酒に対する社会の常識が、お酒を拒むことを非常識な行為のように印象付けることが強要される飲酒をむげに断ることができない背景にあります。

日本人は遺伝的にお酒が弱い

日本人の遺伝的体質からアルコールの解読能力が弱く、45%の人はお酒が飲めない体質です。また5%の人はお酒でアレルギーや中毒を起こす体質という報告があります。

 

このような体質の人にアルコールを強制的に飲酒させることは、殺人行為にも匹敵する危険性をおおいに秘めています。個人の体質を考慮しない飲酒強要がアルハラの根本的な問題でもあるわけです。

会社社会の飲酒習慣

会社の中での上下関係を円滑にするために、上司や先輩にすすめられたお酒は非常に断りにくいものです。

 

宴会や飲み会に参加することは仕事の一部のようになり、酒の弱いものは意気地がない、やる気がないなどの汚名を着せられることがあります。

 

会社の中での地位を確立するために、日本の文化では断ることはどんな理由であれ失礼にあたると認識されてしまいます。

 

この行為は地位が上のものからの強要であればパワハラ=パワーハラスメント(職場の地位を利用した嫌がらせ)としての問題も含む側面から、これに派生して起こるアルハラを防ぐのも非常に難しいのが現状なのです。

アルハラ被害を受けやすい社員の特徴

アルハラを引き起こす原因となる社会や歴史の背景にふれたところで、具体的にアルハラの被害を受けやすい社員の特徴をご紹介します。

上下関係を重んじるタイプ

上司から言われることを素直にうけとり、実行して功績をあげようとする生真面目なタイプがこのケースです。

明るくて誠実な目立つタイプ

お酒がつよくて最初の新人歓迎会などで、飲めると認識されると、強制的に宴会に参加させられ、つぶれるまで飲まされるアルハラを受けることがあります。

聞き役に徹してしまう

特に上司や先輩からの誘いで出かけた宴会では、それだけで遠慮や謙遜して言いたいことがうまく言えないものです。

 

断るタイミングや雰囲気をうまく持ち出せず、お酒のついでにだらだらと愚痴や文句などを聞かされてしまうケースです。

アルハラを防止するための対策

アルハラを防止するための対策

 

アルハラは事前にいくつかの対策を講じておくことで防ぐことができます。周りの状況に流されずに、アルハラへの対処方法を身につけておきましょう

①宴会や飲み会を強制しない

もともと、伝統や風習といった理由で開催する飲み会に社員の参加義務はありません。労働時間外に有志で開催する飲み会に強制することは、アルハラであり、パワハラにもなります。断りやすい雰囲気を作ると同時に、参加しないことで嫌味や小言は発するのは控えましょう。

②社員それぞれの許容範囲を把握する
お酒の席であれば、「すすめるのが礼儀」と解釈されている方も少なくないと思います。しかし、いくら成人し、飲酒ができるといっても、アルコールが体に合わない社員もいます。

 

アルコールが苦手な社員は事前に把握しましょう。

③思い切ってお酒を交えない宴会を開催する

アルハラの発覚だけではなく、公共機関などで酔った勢いのまま迷惑行為を社員が行った場合、企業としてのイメージも下がります。

 

近年、鉄道各社が酒気をおびた乗客の暴力行為や妨害行為を問題視しています。他にもタクシー業界では車内での嘔吐により、その後の営業が難しくなるトラブルも発生しています。

 

迷惑行為を行う社員がいる企業というレッテルを貼られないためにも、思いきって、ノンアルコールの食事会を検討してみてはいかがでしょうか?

アルハラ犯罪に関連する処分

アルハラ犯罪に関連する処分

 

アルハラは、その過剰度により刑事や民事事件として罰せられ、処分が確定するれっきとした犯罪です。アルハラによって考えられる処分をご紹介します。

強要罪(刑法223条)
脅迫して無理やりお酒を飲酒させる行為(3年以下の懲役)

 

傷害罪(刑法204条)
酔いつぶすことを目的にお酒を強要した行為(15年以下の懲役・50万以下の罰金)

 

過失傷害(刑法209条)
飲酒を強要されたことで急性アルコール中毒に陥る(30万以下の罰金または科料)

 

傷害致死(刑法205条)
飲酒を強要し死亡させた(3年以上の有期懲役)

 

現場助勢(刑法206条)
アルハラをあおる行為(1年以下の懲役、10万以下の罰金または科料)

 

保護責任廃棄(刑法218条)
泥酔者を放置する行為(3年以上5年以下の懲役)

 

遺棄等致死傷(刑法219条)
泥酔者放置による死亡(保護責任者廃棄等の罪と傷害罪と比較して重い刑)

 

あくまでも過去の判例などに基づいた一例です。全ての事例が上記に当てあまるわけではありません。いずれにせよ、アルハラによる罰則は民事、刑事問わず行われる可能性は十分にあります。

おわりに

アルハラは社会生活の中で容易に起こりうる現代人の深刻な問題です。

 

アルハラの特性と発生状況や環境を把握して、自分の身にアルハラ問題が降りかからないように予防する対策を講じておきましょう。

 

また自治体が持つ公共機関への相談やASKなどの活動団体を利用して、相談してみることで、具体的な対策や方針も明確になることでしょう。

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