営業の目標設定、達成につながる目標設定の基本や5つのポイントとは?

営業の目標設定、達成につながる目標設定の基本 5つのポイントとは?

営業活動で売上アップなどの成果を出し続けるには、適切な目標設定を行なってゴールを目指すことが大切です。しかし、初めて営業部門に配属された新人や、感覚的なやり方で成果を出してきた人の場合、営業活動で目標設定する必要性がわからないこともあるかもしれません。

 

本記事では、営業活動において目標設定を行なう意味と重要性を確認したうえで、営業の目標設定の基本となる「SMARTの法則」や、効果的な設定と達成のために実践したい5つのポイントを紹介します。

<目次>

営業活動において目標設定を行なう意味と重要性

ゴールに向かう人のイメージ

 

営業活動における目標設定は、以下の意味合いで非常に重要となります。

 

企業の売上・利益に直結する

そもそも、企業が事業を行ない、成長を続けていくには、売上をあげ、利益を出すことが不可欠です。利益が出なければ、以下のようなことが実現しません。

・メンバーの給料アップ
・ボーナスの支給
・新規事業への挑戦
・商品の改良
・組織の拡大 など

ビジネス組織において、「営業」は企業の売上に直結する最前線の活動です。企業の営業活動においては、「何を達成するか?」という明確なゴールが大切です。もちろん他部門などにおいても目標設定は重要です。

 

しかし、営業部門や営業職の個人目標は、事業計画などにも直結する意味合いが特に強くなります。

責任範囲や役割を明確化する

組織においては、各個人の責任範囲や役割を明確化することが大切です。営業部門においても同様で、目標設定を通じて、役割や責任を明確化することが重要となります。

 

例えば、東京都内でオフィス機器を売る企業があったとします。目標設定を通じて、適切に個人の役割分担や責任を決めなければ、アクセスが良かったり成約につながりそうなお客様にアポイントが集中したり、営業先の偏りや奪い合いが生じるかもしれません。

 

また、各営業担当が何も考えずに自由に活動するなかで、同じ企業に何度も連絡にいってしまい、クレームなどが生じる可能性もあるでしょう。

 

一方で、Aさんは渋谷区で売上300万円、Bさんは新宿区で売上500万円……というように、それぞれのゴールと役割を適切に定めた目標を設定した場合、活動の重複などが起こらず、かつ、それぞれが責任と自由を持ったうえで、組織として適切な営業活動ができるようになります。

社員のモチベーションを高める

営業が求められた数字を出し続けるには、モチベーションを高め、維持することも大切です。初めて営業活動をする新人などの場合、初めての体験や新鮮な経験が多く、受注の喜びなども非常に大きなものになるでしょう。

 

しかし、同じ営業活動を続けていると、受注にこぎつけることへの喜びも少なくなり、営業の仕事自体に飽きる可能性も出てきます。しかし、人はゴールが明確になることで、達成したいというモチベーションが生じる性質があります。

 

また、目標設定に対する参画感、目標と仕事に対する個人としての意味付け、達成するための計画策定、自己決定権の提供などを通じて、さらにモチベーションを高めていくことも可能です。

営業の目標設定で基本となる「SMARTの法則」

営業の目標設定はSMARTの法則に則る必要があります。SMARTの法則は、ジョージ・T・ドランが提唱した手法であり、効果的な目標を設定するための大原則となるものです。

 

SMARTは、効果的な目標設定に必要な5つの要素の頭文字をとったものとなります。

・S:Specific(具体的か?)
・M:Measurable(測定可能か?)
・A:Achievable(達成できるか?)
・R:Relevant(上位目標にリンクしているか?)
・T:Time‐bound(期限が定められているか?)

では、SMARTの法則を用いた営業の目標設定方法を解説しましょう。

Specific(具体的)

Specificとは、具体的で明確な目標を設定することです。言い換えれば、以下のように漠然としたものは、目標ではなく夢や理想、方針です。

・日本中のお客様に買ってもらう
・競合に負けない
・日本一の営業マンになる など

SMARTの法則でSpecificを意識する場合、先ほど紹介したように「渋谷区の新規顧客で500万の受注を獲得する」といった誰が見てもわかる具体性が重要となります。

Measurable(計測可能)

営業の目標設定では、計測可能であり、達成の可否や進捗を第三者にも共有できるMeasurableを意識することが大切です。Measurableは、先述のSpecific(具体的かつ明確)とも大きな関連性があります。

 

達成の判断が感覚的なものになったり、人によって判断が異なったりする表現の場合、人事制度などには使えません。また、上司や周囲が進捗を把握してサポートすることも難しくなるでしょう。当然のことながら、振り返りも困難になります。

 

例えば、先ほどの「渋谷区の新規顧客で500万の受注を獲得する」という目標が、「渋谷区で新規開拓を進める」などの漠然としたものだった場合を想像すると、Measurableの重要性は理解しやすいでしょう。

Achievable(達成可能)

Achievableは、現実的に挑戦、達成できる水準の目標であるということです。例えば、3年間連続で平均1,000万円前後の受注だった人が「来年は1億円の売上を達成する」という目標を立てるのは、非現実的である可能性が高いでしょう。

 

「いつか年間1億円売れるようになる!」という夢や理想、高い目標を心に期することは素晴らしいですし、努力やモチベーションにもつながります。ですが、「来年に1億円の売上を達成する」という高すぎる目標では、行動計画などを立てることが難しくなります。

 

一方で、「来年は年間2,000万円の売上を達成する」という目標であれば、現実的にチャレンジできる範囲であり、やり方の改善や上司のサポート、自己成長などによって達成できる可能性が十分にあるかもしれません。

 

反対に「来年は1億円」などの非現実的な目標を立てた場合、行動計画が立てられないことはもちろんのこと、目標達成の成功体験が得られず、自信や自己効力感も高まりづらくなります。

Relevant(関連性)

組織におけるすべての目標設定は、事業計画や事業方針、究極的にはミッションやビジョンを達成することにつながっている必要があります。そういう意味で目標設定する際には、上位目標の実現に貢献できるかという視点が重要です。

 

例えば、営業部門全体で「今年は新規営業に力を入れて、新規顧客で年間1億円の受注をする」という方針や目標があるのに、全メンバーが「既存顧客での受注目標」だけを掲げてしまったとします。

 

これでは各メンバーが目標設定しても上位目標である「新規顧客で年間1億円の受注をする」という部門目標を達成することはできないでしょう。したがって、場合によりますが、全員ではなくてもある程度のメンバーが「新規顧客で年間1億円の受注」を達成することに貢献する目標を持つ必要があるでしょう。

 

また、例えば10人の営業メンバーで1,000万円の部門売上を目指す場合、もし均等に分担するとしたら、1人平均で100万円の売上目標が必要になるわけです。これが、全員が50万円の売上目標を設定していたら、全員が目標達成しても部門目標は達成されません。

 

以上のように、営業の目標設定では、個人目標はチーム目標の達成に、チーム目標は部門目標の達成に、部門目標は全社目標の達成に、といった形で、全社目標やビジョン、事業計画の実現に貢献するように設定される必要があります。

Time‐bound(期日)

目標にはいつまでに達成するかという期限の定めが必要です。一般的な目標管理制度は、3ヵ月や6ヵ月、12ヵ月などで期間設定されています。

 

また、短期の行動計画などであれば1週間や1ヵ月、逆に中期の事業計画や経営計画であれば、3年や5年といった時間軸もあり得ます。

 

期限が設定されなければ、行動計画の作成やアクションの納期、また進捗管理や振り返りが困難です。組織における目標設定で期限が設定されないということはほとんどありませんが、目標設定するうえでは欠かすことができない要素です。

営業の目標設定を効果的にする5つのポイント

POINTのイメージ

 

営業の目標設定を効果的に行ない、達成につなげるためには、以下のポイントが大切になります。

 

SMARTの法則を守る

先述のとおり、営業の目標設定では、SMARTの法則を守ることが大原則です。

 

初めて目標設定する新人営業などの場合は、上司と一緒にSMARTの法則に沿っているかをチェックしましょう。ただし、営業職は比較的SMARTな目標を設定しやすい職種です。

 

したがって、大事なのは以下のポイントになります。

KPIツリーを使ってKPIマネジメントに取り組む

目標を設定したら、達成するための具体的な行動計画を作る必要があります。行動計画の作成に役立つのが、目標を数値分解するKPIツリーという考え方です。

 

KPIイメージ

例えば、SMARTの法則で「12月までに120万円受注する」という目標を立てたとします。受注金額という目標は、例えば、以下のように分解できます。

・売上金額=受注数×受注単価
・売上金額=(商談数×受注率)×(商材単価×受注数)

KPIの洗い出しができたら、次は、例えば「商談数50件を達成するためにはどうすれば良いか?」「受注率を3%高めて15%にするには、どのような施策が打てるか?」といった形で、さらに細かいKPIやKAI(行動指標)に分解したり、KPIやKAIを達成するための施策やアイデアを考えていったりします。

 

「商談数50件」というKPIに分解することで、例えば、ニーズがありそうな見込み客のリストを作る、トークスクリプトを作って上司にフィードバックをもらうといった施策を考えやすくなります。

 

また、KPIツリーを使うことで、毎日10件の新規顧客に連絡するというKAI(行動指標)を決めたり、〇月〇日までに500件のアプローチリストを準備するといったToDoを決めたりと、より精度の高い行動計画が作れるようになります。

数字に意味付けをする

組織における目標というのは、多くの場合、営業部門や上司からの指示で設定されることになります。特に営業職の場合は、売上目標もしくは受注目標という数字で目標設定することが多く、「部門目標を分解した数字」が自分の目標になりがちです。

 

この場合、目標が「他人事」となりがちです。他人事の目標は、やらされている意識も強く、当事者意識を持ちづらいものです。

 

営業職が、設定したゴールに向けて高いモチベーションで計画を実施するには、設定した目標に対して、意味付けをすることが大切です。意味付けでは、以下のように「目標達成したら、自分にとってどのように素晴らしいことが起こるか?」を見える化することが有効になります。

・営業部門トップで表彰される
・給料アップで奥さんが喜ぶ
・自信が付く
・チーム目標が達成されて、チームの皆が笑顔になる など

「何のために」という意味付けを思い出すことで、計画実施中に困難にぶつかっても、高いモチベーションを維持しやすくなります。

質を改善する施策や定性目標を設定する

例えば、「12月までに既存顧客で100万円の売上を立てる」という目標を設定し、KPIツリーで分解してKPIマネジメントをする場合、管理する対象は訪問数やアポイント件数などの数字になりがちです。

 

「量」の数字はもちろん大切なのですが、「量」だけで計画やKPIを考えるとどこかで限界が来てしまいます。そこで大切なのが「提案率」「受注率」「顧客単価」といった「質」の数字です。
「質」の数字(KPI)を動かすのは、「量」の数字を動かすよりも困難です。

 

しかし、たとえば、毎日のロープレを通してセールストークを磨いてステップ率を改善したり、ソリューション提案できるようにレベルアップすることで単価を上げたりといった工夫をすることで、2倍の量をやらなくても2倍の成果を出すことができるようになります。

 

その意味では、営業の行動計画、達成計画を作る際には、「量」のみで計画を作るのではなく、「質」の数字を動かすための施策や以下のような定性目標を設定することが有効です。

・アイスブレイク力を高める
・○○の商品知識を身に付ける
・10社のお客様と信頼関係を作る など

科学的なマネジメントやツールを導入する

営業のマネジメントにおいては、科学的なマネジメントやツールの導入も重要です。もちろん、設定したKAIをやり遂げたり、スキル向上に向けたロールプレイングを継続したりするうえでは、モチベーションや気持ちなどは非常に重要です。

 

一方で、数字で分解できるからこそ、目標達成や成長に向けた自分の強みや苦手分野は数字に表れてきますし、数字を見てマネジメントすることが大切です。

 

この数十年でSFAやCRMといった顧客マネジメントや営業管理のITツールは大きく進化しました。また、トークスクリプトや商談品質を改善するための録音や録画、分析ツールなども進化は著しいものがありますので、活用していくことが大切です。

まとめ

営業活動における目標設定は、企業の売上や利益に直結するものです。営業職の目標設定は、以下「SMARTの法則」に則って考える必要があります。

・S:Specific(具体的か?)
・M:Measurable(測定可能か?)
・A:Achievable(達成できるか?)
・R:Relevant(上位目標にリンクしているか?)
・T:Time‐bound(期限が定められているか?)

また、営業部門で目標設定の効果性、目標達成の確立を高めるには、SMARTの法則以外に以下3つのポイントも大切になります。

・KPIツリーを使ってKPIマネジメントに取り組む
・数字に意味付けをする
・質を改善する施策や定性目標を設定する

営業は数値による目標設定がしやすい反面、目標がチームや部門の売上目標を分解した「落ちてきた数値目標」になったり、「目標=プレッシャー」になったりしがちです。したがって、自分事としてモチベーションを維持するためにも、意味付けの要素は特に大切となります。

 

意味付けには、以下の「目的・目標の4観点」というフレームワークを使うことがおススメです。興味がある方は、ぜひ以下の資料をダウンロードしてください。

著者情報

近藤 浩充

株式会社ジェイック|取締役 兼 常務執行役員

近藤 浩充

大学卒業後、情報システム系の会社を経て入社。
IT戦略事業、全社経営戦略、教育事業、採用・就職支援事業の責任者を経て現職。企業の採用・育成課題を知る立場から、当社の企業向け教育研修を監修するほか、一般企業、金融機関、経営者クラブなどで、若手から管理職層までの社員育成の手法やキャリア形成等についての講演を行っている。
昨今では管理職のリーダーシップやコミュニケーションスキルをテーマに、雑誌『プレジデント』(2023年)、J-CASTニュース(2024年)、ほか人事メディアからの取材も多数実績あり。

著書、登壇セミナー

・社長の右腕 ~上場企業 現役ナンバー2の告白~
・今だからできる!若手採用と組織活性化のヒント
・withコロナ時代における新しい採用力・定着率向上の秘訣
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