管理職向け|人事考課表の書き方とサンプル、記載時の注意点を紹介!

管理職向け|人事考課表の書き方とサンプル、記載時の注意点を紹介!

多くの企業で、MBO(目標管理制度)などの目標管理、評価制度が導入されています。

 

管理職は、目標設定と人事考課、フィードバックを通じて、メンバーのモチベートや成長を促すことが大切です。

 

記事では、管理職に欠かせない人事考課の概要や、人事考課表の記載内容やサンプル、項目を紹介します。
そのうえで、後半では、人事考課表の書き方で注意すべきポイントも解説しますので、参考になれば幸いです。

<目次>

人事考課表とは?

考課表(一般職)

 

人事考課とは、人事評価制度に則って行なうメンバーの評価のことです。

 

もちろん、人事考課は、「あの子は最近がんばっている!」「良い感じになってきた!」といった評価者(上司)の主観だけで評価するものではありません。

 

部門や職種が異なるさまざまなメンバーの評価を適切に実施するために、人事評価制度が定められています。

 

人事評価制度で多く導入されているのが、“マネジメントの父”とも呼ばれる経営学者ドラッカーが提唱したMBOをもとにしたものです。

 

MBOとは、「Management by Objectives」の略語であり、日本では多くの場合「目標管理」と翻訳されています。

 

MBOは、わかりやすくいえば、組織の目的・大目標と紐づける形で、部門やチーム、個人の目標を決める考え方です。

組織の理念・ビジョン

  • >組織の目標・計画
  • >部門・チームの目標・計画
  • >個人の目標・計画

なお、MBOは、一般的には目標管理や人事考課のためのフレームワークや管理ツールとしてとらえられていますが、ドラッカーは、MBO本来の意味は「Management by Objectives and Self Control」だと述べています。

 

この「Self Control」こそが、MBOの運用や効果的な人事考課をするうえで本質的なポイントです。

 

組織が課題解決や目標達成をするには、メンバー一人ひとりが自身のコントロールを行ない、主体性を発揮することが不可欠です。

 

そして、MBOでは、個々人が果たすべき役割、貢献すべき目標が明確になるからこそ、権限委譲してメンバーの主体性を引き出すことが可能になるのです。

 

ドラッカーは、MBOの本質を以下のように定義づけています。

  • 1.社員の主体性を引き出し、セルフマネジメントを促進する
  • 2.目標によって個人の力を組織のゴールに集約する

最初の話に戻りますが、人事考課は、上記の1と2を促進・実現するためのものです。

 

単なるパフォーマンスの評価だけではなく、上記を意図することで、より効果的な人事考課が実現するでしょう。

 

人事考課で使われる人事考課表、いわゆる目標管理シートも、「目標設定-達成に向けた実行のセルフコントロールと支援-実行の振り返り」という一連のサイクルを回すためのものです。

 

目標管理シートを人事考課表という場合は、実行の振り返り部分にフォーカスが当てられています。

 

人事考課を通じて、個々人に適正な評価をすると同時に、次の目標達成サイクルにつながるフィードバックをすることが大切です。

人事考課表の記載内容とサンプル

人事考課表のフォーマットは自由です。ただ、MBOに基づいて人事考課表や目標管理シートを作るうえでは、以下のような項目を盛り込むことが一般的です。

 
人事考課表のサンプル
>>人事考課表のサンプルをダウンロード

 

この章では、MBOの考え方に基づく人事考課表に必要な項目と、効果性の高い目標管理シートにするうえでのポイントを解説します。

 

基本情報

基本情報では、以下のような項目を記載します。役職などに加えて、評価制度などに基づくグレードを記入することもあります。

  • 氏名
  • 所属
  • 役職 など

 

個人目標

設定した個人目標を記入します。人事考課を適切にするうえでも、目標はSMARTの法則に則って設定することが大切です。

  • S:Specific(具体的)
  • M:Measurable(測定可能)
  • A:Achievable(達成可能)
  • R:Relevant(上位目標とのリンク)
  • T:Time‐bound(明確な期限)

SMARTを使うと、以下のような目標になります。

  • 営業職:1Q(4~6月)でリピート契約を3件獲得し、売上500万円を達成する
  • 販売職:12月25日までのクリスマスキャンペーンで、新製品Aを500個売る など

なお、人事考課に利用する場合には、「A:Achievable」部分で難易度をどう設定するかに関して、組織内での認識統一が大切です。

 

MBOでは、多くの場合、目標の達成率を一つの軸にして人事考課を行ないます。
目標達成率を軸にすることで、扱っている商材、能力の違い、また、職種の違いを超えた人事考課を実施できるでしょう。

 

しかし、たとえば、同じ営業職でも、Aさんは前年比100%の売上目標、Bさんが前年比200%の売上目標を設定していた場合、達成率で平等に評価することができなくなります。

 

したがって、MBOを人事考課に利用する場合には、「難易度」の統一や扱い方が重要となります。

 

目標の達成施策

目標達成をするために、どのような行動や施策を実施するかの基本計画をまとめたものです。

 

たとえば、販売職の個人目標「12月25日までのクリスマスキャンペーンで、新製品Aを500個売る」の場合、以下のような達成施策が考えられるでしょう。

  • 10月末までにポイントカード会員への案内(メルマガ・ハガキ)を送る
  • 新製品Aを店内の目立つ場所に並べる
  • 新製品AのPOPをつくる
  • クリスマスキャンペーン中は、購入特典をつける
  • SNS発信とメルマガ配信頻度を月1回→週1~2回にアップする など

人事考課におけるフィードバックは、以下のように達成施策と成果の組み合わせによって大きく変わってきます。

  • 「計画をやり切って、成果が出た」
  • 「計画をやり切っていないけど、成果が出た」
  • 「目標達成に十分な計画を作成してやり切ったが、成果が出なかった」
  • 「そもそもの計画精度が不十分だった」
  • 「作成した計画を十分にやり切れず成果が出なかった」

なお、上司はMBOで設定した目標に関して、部下の達成を支援していく役割になります。

 

上司は人事考課表でフィードバックをするわけですが、目標設定、計画立案、計画の実行に十分に関わってサポートすることが必要ですし、部下の評価はある意味で“上司のマネジメントに対する評価”でもあります。

 

評価基準

人事考課の視点では、MBOで設定した目標の達成度を軸として評価を実施することが大半です。

 

ただ、営業職における売上目標のように、すべての職種がシンプルな数値目標になるわけではありません。
だからこそ、評価基準を設定する必要があります。

 

売上目標の場合にも、そのまま達成率=評価ではなく、下記のように状況に応じて評価基準を設定することが必要です。

 

たとえば、「12月25日までのクリスマスキャンペーンで、新製品Aを500個売る」という目標に対する評価基準は、単なる達成度ではなく以下のようになるかもしれません。

  • S:500個以上が売れた(極めて優れている(10点))
  • A:450~499個が売れた(優れている(8点))
  • B:400~449個が売れた(普通(6点))
  • C:300~399個が売れた(やや不十分である(4点))
  • D:299個以下だった(かなり不十分である(2点))

評価基準の設定方法は、以下の記事を参考にしてください。

 

実績

目標と施策の達成度を記載します。たとえば「12月25日までのクリスマスキャンペーンで、新製品Aを500個売る」の場合、以下のようになります。

  • 【目標の実績】12月20日に、製品Aを530個販売した
  • 【施策1の実績】12月1日には、製品Aを店内の目立つところに並べ終えた
  • 【施策2の実績】12月1日には、新製品のPOP作成も完了した
  • 【施策3の実績】12月10日の段階で、購入特典をつけていた
  • 【施策4の実績】12月に入ってからクリスマスキャンペーンの忙しさで、SNSとメルマガの配信頻度が週1回に低下した

 

本人評価

目標や施策は、設定・実施をして終わりではありません。

 

達成の確度を上げたり、本人の成長につなげたりするには、目標管理シート/人事考課表で実行した施策や結果をきちんと振り返ることが大切になります。

 

振り返りを成長につなげるサイクルは、教育学者であるデイビッド・コルブが提唱した「経験学習理論」がわかりやすいです。

 

コルブは経験から学ぶプロセスを、以下の「経験学習モデル」にまとめています。

<経験学習のステップ>

  • 1.経験:やってみる
  • 2.省察:やったこと・できたことを多様な視点から振り返る
  • 3.概念化:振り返りから得た“学び”を、ほかの場面でも応用できるようにする
  • 4.試行:“学び”を実際に試してみる

先述の【施策4】は、経験学習モデルにあてはめれば、たとえば、以下のように振り返ることができるかもしれません。

  • 1.12月に入ってから、クリスマスキャンペーンの忙しさで、SNSとメルマガの配信頻度が週1回以下に低下した
  • 2.忙しい日は残業になるため、夕方や夜の更新を毎日行なうことは不可能
  • 3.そのため、どのような繁忙期でも配信できるように、出社~開店前の1時間で作業をすることにした
  • 4.なお、繁忙期はお店のかき入れ時でもあるので、一人でも多くのお客様に製品Aを買ってもらうために、配信頻度を週2回に上げていきたい

人事考課表は、目標の設定期間を一つの区切りとして、人事評価を決定すると同時に、本人自身の振り返り・上司からのフィードバックを通じて、経験学習モデルのサイクルをまわすための仕組みでもあります。

 

本人評価では、評価基準に則って自分の目標達成度を採点すると同時に、未来に向けて振り返りを実施してもらうことが大切です。

 

本人コメント(総括)

上述したとおり、目標の達成率、施策への取り組み方、成果状況などを踏まえて、自分の感じたことを以下のように総括します。

  • 目標で設定した期限よりも5日も早く、新製品A・530個の販売を達成できた
  • 商品ディスプレイなどもクリスマスキャンペーン前に行なえたので、準備面での問題はなかった
  • ただ、キャンペーン本番の繁忙期が始まると、SNS投稿やメルマガ配信をする時間がとれなくなり、配信頻度が低下することもあった
  • 今回は、SNSやメルマガの本数が少なくても530個の販売ができたが、最初に決めた週1~2本を継続できたら、もっと売れたかもしれない
  • 1月からは営業時間前の1時間でメルマガ・SNS関連の仕事をやることにして、早く習慣化していきたいと思う

 

一次評価

新人であればOJT指導者、また、一般メンバーであれば上長が同じように評価します。

 

本人評価を踏まえたうえで、達成の難易度、プロセスの取り組み方などを加味して、評価しましょう。

 

一次評価者コメント

本人のコメントと一次評価を踏まえてフィードバックします。

 

ポジティブフィードバックとネガティブフィードバックをうまく使い分け、良い行動の習慣化や、行動の改善につなげましょう。

 

今回の成果や取り組みに対して評価することはもちろん大切ですが、それ以上に重要なのは「次の人事考課サイクルにおける目標設定、計画、取り組みの質が向上すること」であり、すなわち「本人が成長すること」です。

 

二次評価

先ほどの評価基準を使い、管理職などが評価します。一般的な二次評価者は、本人の上長の上長です。

 

二次評価を入れることで、評価の公正性や平等性を担保します。

 

二次評価者コメント

二次評価でもフィードバックを行ないます。

 

二次評価者の場合、一次評価者ほど本人と直接的な関わりがないため、より大局的な視点でフィードバックすることが多くなるでしょう。

人事考課表の書き方で注意すべきポイント

白背景に指を掲げる女性

 

人事考課表をドラッカーがいうMBOの本質につなげていくには、以下のポイントに注意する必要があります。

 

具体的な事実や数値をもとに記載する

目標・施策・実績・それぞれのコメントのすべてにいえることですが、売上や具体的な数字や事実を踏まえて、フィードバックすることが大切です。

 

たとえば、以下のように具体的な数字・事実ではない抽象的、曖昧な振り返りや評価者コメントになると、お互いに納得感がある人事考課、また、成長や改善につながるフィードバックにならなくなります。

  • 【本人の振り返り】4月はあまり頑張れませんでした。5月はもっと頑張ります(⇒「頑張る」が具体的に何を意味するのかわからない)
  • 【評価者コメント】今年度は、ダメなところが多かったですね。来年度は、もっとしっかりやってください。(⇒「ダメなところ」と「しっかり」が具体的に何を指すのかわからない)

 

相対評価ではなく絶対評価(他社員と比較しない)

たとえば、AとBの評価者コメントでは、どちらが受け入れやすいでしょうか。

【A】

昨年は月平均50本のテレアポができていたのに、今年はだいぶ本数が下がっています。営業先が増えて仕方がない部分もありますが、来年は時間管理を工夫して、まずは計画している本数をきっちり達成していきましょう。

【B】

あなたの同期のKくんは月平均50本のテレアポができているのに、Sくんは月平均35本でしたね。このままでは、Kくんに差をつけられてしまいますよ。

【B】は他人との相対評価です。特に他人と比較してダメ出しする相対評価は、本人に「恥ずかしい」「自分は劣っている」などの気持ちが生じやすくなります。

 

そのため、人事考課では他人と比較するような相対評価はせず、相手の絶対的な成長に向けたフィードバックをすることが原則です。

 

未来に生かすためのコメント

先ほども少し触れましたが、人事考課は期間中のパフォーマンスを評価するための仕組みです。

 

ただ、大切なことは、次の人事考課サイクルに向けて、本人の主体性や能力を引き出したり、相手の成長につなげたりすることです。

 

単なるダメ出しや不足点の羅列をしてしまうと、相手の自信を傷つけたり、信頼関係を損ねたりすることになります。

 

したがって、人事考課を行なう際には、“フィードフォワード”の考え方も踏まえて、本人の成長や未来につながるフィードバックをすることが大切になってきます。

まとめ

人事考課表とは、MBO(目標管理制度)などで使われる目標管理シートのことです。

 

人事考課表という場合には、目標への取り組み期間が終わったあとの評価、フィードバックに重きが置かれています。

 

まず、人事考課表で設定する目標は、SMARTの法則に沿ったものであることが原則です。

  • S:Specific(具体的)
  • M:Measurable(測定可能)
  • A:Achievable(達成可能)
  • R:Relevant(上位目標とのリンク)
  • T:Time‐bound(明確な期限)

目標管理シートには、目標設定と同時に、達成に向けた基本計画や評価基準なども記入することが一般的です。

 

そして、目標への取り組み期間が終わった時点で、人事考課の材料として、達成状況への評価や振り返りを本人、一次評価者、二次評価者が記入する流れになります。

 

人事考課を通じてメンバーを成長させ、セルフマネジメントレベルの向上や組織の成長につなげるには、以下のポイントが大切になります。

  • 具体的な事実や数値をもとに記載する
  • 相対評価ではなく絶対評価
  • 未来に生かすためのコメント

MBOの仕組みやSMARTの法則に基づく目標設定を詳しく知りたい人は、以下の記事も参考にしてください。

著者情報

知見寺 直樹

株式会社ジェイック 執行役員|上海杰意可邁伊茲企業管理咨詢有限公司 副董事長

知見寺 直樹

東北大学を卒業後、大手コンサルティング会社へ入社。その後、株式会社エフアンドエム副本部長、チャレンジャー・グレイ・クリスマス常務取締役等を経て、2009年ジェイック常務取締役に就任。総経理として上海法人(上海杰意可邁伊茲企業管理咨詢有限公司 )の立ち上げ等を経て、現在はHumanResourceおよび事業開発を担当する。

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